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2017年9月10日日曜日

学生時代における空前の食パンブーム

 先週も友人と後輩とともにまた上海にある温泉施設の「極楽湯」へ行ってきました。なお後輩とは度々言っていますが何故か彼は、関西人だからかもしれませんが服を脱ぐのがやけに早く、ついでに風呂を出るのもやけに早く一度も勝ったことがありません。まぁそもそも競争しているわけではありませんが。

 その後輩が私に、「花園さんの貧乏エピソードはいつも面白い」とこの前言ってきました。そんな自慢するような話ではありませんが、実際に私が学生だった頃は学費面などではなにも苦労することはなかったものの、やけに生活をケチって今思うと貧乏な生活を送っていました。そのころのエピソードと言っても正確には私というよりは私と特定の友人間で行われた奇妙な取り組みなのですが、確かに今思うとわけのわからない努力を投じ繰り返していました。具体的には、

・100円で買えるお菓子の中で一番腹持ちのいいものの研究(最終的にはビスケット)
・「きのこの山」を買うのにリアルで10分くらい立ちながら悩む
・鍋がないのでやかんでパスタを茹でる(これは友人)
・コスパを考えたスイーツとしてホットケーキを大量生産

 などなどあるのですが、今思うと不思議だったのは見出しに掲げた空前の食パンブームでした。
 当時、私たちは友人間で相手の部屋を訪問する際はどんだけ安くてもいいから何かしらお土産を持ち合うという暗黙の了解があり、その過程で上記にビスケットが考案されたりもしたわけですが、ある日私の友人が何を思ったのかお土産に食パン一斤を持ってきたことがありました。
 「なんで食パンやねん」と聞いたところ、「安売りしてたから」などとうまくキャッチボールできない会話をした後、せっかく持ってきてもらったのだからとその場で焼いてトーストにして、バターやジャムとか塗って二人で一緒に食べながらその日の晩も議論しました。この時気が付いたのですが食パンだとめちゃくちゃ腹持ちが良く、なおかつ余った分はそのままホスト側が総取りして以降の食生活にも活用できるというメリットがありました。やはり食パンの備蓄があると心にも余裕が出てきて、夜中とか小腹すいた時でも気にせず焼いて食べられるため、下手なお菓子とかよりずっと有用性に富んでいて下手なお菓子をもらうよりずっとありがたいお土産だったということが分かりました。

 それ以降、私も別の友人宅へ訪問する際には食パンを持っていくようになり、やはり相手から「なんで食パンやねん?」と言われると、「何も言わず受け取れ。そうすればわかる」と言いながら配っていましたが、しばらくたってから送った相手からはほぼ毎回、「この前の食パンほんま助かったよ」などと言われるなど常に好評でした。こうしていつの間にか、私の周りでは「訪問時には食パンを買っていく」という暗黙のルールが生まれ、空前の食パンブームが起こっていました。

 そんな食パンのやり取りの中で一番思い出深いのは、このブームを最初に作った友人をある日自分の部屋に招くこととなった夜でした。その日は夕方にも友人が来る予定だったので一緒に食べようと夕飯用にカレーを作って待っていたら、何故か待てど暮らせど来ず、大分時間に遅れてから夜になってからようやくやってきました。
 遅刻の理由は忘れましたがとりあえず夕飯を振舞おうとカレーをよそおうとしたら、「ごめん、昼間に食べたすき家のハンバーグ丼がものすごくまずくて今気持ち悪く、カレー食べられない」とまさかの拒否に始まり、「あ、しまった。お土産の食パン買ってくるの忘れた。今ちょっと買ってくる」と言い出したのですが、遅刻はするわ用意しておいたカレーは食べないわで私もこの時かなり不機嫌になり、「もう夜遅いし、食パンなんてもういいから」と止めました。

 その後、友人にはお茶を振舞い、また政治や社会問題について議論し始め、始めでこそ不機嫌だった私も議論に興が乗ってくるとそうしたことも忘れ、いつも通りに議論に明け暮れて機嫌も戻ってきました。また途中で友人も、「ごめん、やっぱりなんかおなかすいてきたから、カレーもらっていい?」と考え直してきたので、これには私もにっこりしてカレーをよそってあげました。
 なんてことはない一夜でしたがこの時の記憶がやけに印象的なのは、友人が食パンを買ってくるのを忘れたことを謝ってきたことで、それに対し私も「食パンなんてもういいから」と、後から考えるとよくわからないやり取りしていてなんかあとからじわじわと来たからでした。実際、別の友人にこのこと話したら、「なんかよくわからない展開だね」と言われました。

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