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2012年7月2日月曜日

外国でストレスを感じない人間

 一泊二日の出張から今日帰ってきたら自分が住んでるサービスアパートメントでカードキーがないとロビーに入れないようになってました。多分、年がら年中ドアの隙間に広告(大抵マッサージ屋)を入れる人間が後を絶たないせいだと思うけど、気軽に外とか出づらくなるし、財布にもう一枚カードを入れないといけないと思うとなんだか億劫な気がします。っていうか今週は今日までの出張を筆頭にやけにイベントが満載で、更新が少なくなるかもしれません。

 話は本題に入りますが、学生時代に受けた心理学の授業で今日の表題になっている「外国でストレスを感じない人間」という解説がありました。その授業の孔子じゃなくて講師曰く、人間というのは文化圏の異なる外国に行くとどれだけ対策を施しても、どうしてもストレスというものを多かれ少なかれ受けてしまうそうです。ただ2種類、ある種の人間だけはこの手のストレスを全く受け付けない人種がおり、てっとり早く明かしてしまうとそのうちの一種類は真の意味で国際人と呼べるような完全に先天的な特殊な人間、もう一種類が今回の話の肝ですが、何かしら信仰を持っている宗教家だそうです。

 私がこの話を聞いた際に真っ先に思い浮かんだのは、デーブ・スペクターが言う「日本初の外タレ」ことフランシスコ・ザビエルです。何もザビエルに限らずどの時代でも伝道者というのは今の時代のようにインターネットもなければ航海中に客死することも珍しくなかった時代に言葉も何も通じないところへどんどんと赴き、エネルギッシュに活動してます。仏教でも鑑真のような人物もおりますし、そうした歴史的孤児を考慮するだに先ほどの話にはなかなか信じさせられるものがあります。
 更に最近は現実に海外に暮らしてて、やっぱり信仰心がある人間というものは外国で強いとよく実感させられることも多いです。私自身は普通の人に比べれば恐らく信仰心が高い方ですが特定の宗教に染まってるわけじゃなく毛の生えた程度ではありますが、身近にキリスト教の洗礼も受けてて毎週日曜に教会に通っている人が身近に複数おり、その人たちを見ていると本当の意味で海外生活を楽しんでいるようにしか見えず、ほかの日本人と決定的なまでに違って、日本に戻ってゆっくり暮らしたいとかいう素振りを見せることが全くありません。もう一つ止めに付け加えると、この手の人間らは語学能力も極めて高い人間が多いです。

 先日にまたNHKで見た企業の新卒採用現場特集とやらで、なにやら国際社会に強いとかいう理由で留学帰りの学生をターゲットに募集をかける企業が増えていると報じられていました。またそれとは別の報道で、「これからの時代は"倭僑"となれる人材が必要だ」とかいう「華僑」にかけた記事も見受けましたが、私に言わせるのならば"倭僑"というイメージに合う人間はとっくのとうに日本から出ていてそもそも国内に残っていないのではないかという気がします。むしろそれだったら上で書いてある通り、初めから海外で働かせる気なら宗教を信仰している人材を語学能力を無視してでも取る方が効率的な気がします。

 あと最後に蛇足ですが、信仰を持っていれば外国での生活に強いというのであれば悪魔主義者(サタニスト)はどうなのかという疑問がもたげます。とはいうものの国際的なサタニストというのも、なんだか想像しづらいような。

2012年6月30日土曜日

何を以って景気回復とするのか

 先日に消費税増税を含む一体改革法案が衆議院を通過したのは記憶に新しいかと思います。これら法案に対する反対意見として、「不況期の今に増税するべきではない。財政再建は景気が回復してからだ」という声がたくさん、っていうかこれ以外の反論はほぼなかったかと思います。こういった意見を主張する人はまだしばらく赤字財政が続くこととなっても景気刺激策を打ち、公共事業などをしていくべきだという案を披露していますが、私はこうした意見には真っ向から反対です。またでかいことを書いてしまうのならば、彼らの言う景気回復という状態は今後永遠に日本には訪れず、あるとしたら今の40代以上の世代がすべて死んだ後に来るでしょう。

 あまり長くする話でもないのでちゃっちゃとまとめてしまいますが、上記のような意見を主張する人が言う「景気が回復した状態」というのはほぼ間違いなくあの90年代前後のバブル景気の時代で、当時くらいに税収が集められる状態を指していると私は感じます。しかし以前からも書いておりますがあの高度経済成長期という時代は冷戦に挟まれた特殊な状態であったことから実現したのであって、少なくとも日本一国がどう努力したところで再現することは不可能と言っていいでしょう。これは言い換えるならあの時代ほど景気が良くなることはもう有り得ず、今の税収、経済規模でどうにか国をまわしていくしかない。更に言えばあの時代を無理に再現しようとしてムダ金使った分の借金を返しつつやるしかない、というのがかねてからの私の持論です。

 これは断言してもいいですが景気回復優先論者達は何を以って景気が回復したと判断するか、具体的な経済指標を示したことはないと思え、あるとしたらバブル期並みの歳入実現しかないでしょう。それこそ失業率が何%を下回ったら、GDPがどの程度に達したら、経済成長率が年率で何%成長に達したら財政再建に取り組むとか、そういった具体的な議論は今まで全く見たことも聞いたこともありません。更に言えば小泉政権時代に連続して経済成長を達成していた際も、「国民は景気回復の実感を持っていない」と言って景気回復には至っていないという強弁もありました。私に言わせるなら指標で確実に成長しているのだから、国民の実感云々は再分配の問題で、公共事業がいるかいらないかは別問題な気がしてならないのですが。

 以上のような観点から私が何を言いたいのかというと、景気回復優先論者はどのラインで景気が回復したと判断して財政再建に取り組むのか、具体的な数字を上げてもらいたいの一点に尽きます。仮にそれが現実離れした桁外れな数値だったらそこまでの話ですが。
 なお私個人の意見としては失業率が10%を下回って、GDPがプラス成長であれば今の国際環境であればまだ景気がいい状態なんじゃないかと思います。特に日本は今、少子化で人口も減り始めているのですからGDPは自然減するのが当たり前です。そういった点を考慮してほしいのですが、このところよく思うこととして、中国にいるせいかもしれないけど日本人はなんでこんなに経済指標を意識しないのかが不思議でしょうがないです。変なことを言うと日本のGDP成長率以上に中国のGDP成長率を気にしているようにも見え、一桁になったとか、成長が大幅に鈍化しているとかで大騒ぎしているのはやや滑稽に見えます。

2012年6月29日金曜日

暴れん坊将軍、足利義教について

 暴れん坊将軍とくれば徳川8代将軍の吉宗を誰もが思い浮かべるかと思います。余談ですがドラマの「暴れん坊将軍」では平均して35人が吉宗(松平健)に殴り倒されており、総数では約29000人にも上るそうです。
 そうした豆知識は置いといて、徳川幕府だけでなく足利幕府の将軍にも暴れん坊としか言いようのない将軍が一人おります。その激しい行動の割にあまり知名度がないと思うので、今日はその足利6代将軍の義教について簡単に解説します。

足利義教(Wikipedia)
 
 足利義教は6代将軍ではありますが、系列的には初代尊氏のひ孫で、3代目義満の3男です。6代目にしてはやけに系列が短いような気がしますが実はこれにはわけがあり、足利幕府は初代から3代目義満まではみな成人してから将軍に就任していますが、4代目義持(義満の息子)はわずか9歳、5代義量(義持の息子)も16歳と総じて就任年数が若いのが特徴です。こうした年若い就任は必然的に周囲の有力武士が政権を担ってしまうことになり、この点が足利幕府が終始将軍権力の弱い集合政権で終わってしまった最大の原因でしょう。
 それで足利義教の就任の経緯ですが、5代目義量は父親の義持が存命中に将軍位に就いたのですが、就任からわずか三年後の19歳で早世してしまいます。その後しばらくは義持が将軍につきましたが、この人の何が面倒かというとなんと死の直前まで後継者を一切指名しなかった点です。これには幕臣らも困り、しょうがないから有力血縁者の中からくじ引きで選ぼうということになり、くじの結果で既に出家していた当時34際の義教が6代将軍に選ばれることとなりました(くじ引き自体は八百長で初めから決まっていたという説もあり)。

 そんな偶発的な経緯から就任した義教でしたが、将軍となるや積極的に政治に関与します。それまで不可侵の存在だった社寺勢力等に対しても比叡山延暦寺を取り囲むなどして要求を貫き通したり、義教の将軍就任に異を唱えていた鎌倉公方の足利持氏を攻め滅ぼしたり(永享の乱)と、元坊主とは思えないくらいに果断な行動を取り続けました。
 これ以外にも有力武家の家督継承にもたびたび介入し、いろんな家で自分の意中の人物を当主に据え、逆に反抗しようとした人物に対しては刺客を送って暗殺することもままありました。こうした行動の多くは前向きに見るなら将軍権力の向上を目指してのものと見ることもできますが、私個人としては苛烈な義教の性格から来るものだったと考えています。義教は宮中に対しても強い態度を取り続けたことから当時の公家の日記には「悪御所」とまで評されており、一部は尾ひれがついたものもあるでしょうが「酌の仕方が悪い!(#゚Д゚)ゴルァ!!」と言って侍女の髪を切って無理矢理に尼にしたり、自分に説教しようとした日蓮宗の僧をしゃべれなくするために舌を切ったりと、かなり細々とした内容が残されております。

 厳しい評価をすればこのような苛烈な性格の持ち主が大成した例は少なく、いずれ暗殺か追放されると感じた有力守護の赤松満祐はやられる前にやってやれとばかりに、自宅に招いた義教を暗殺してしまいました(嘉吉の乱)。暗殺後、赤松満祐は幕府から追手が来ると考えて京都の邸宅内にしばらく残っていましたが、義教に権力を集中させ過ぎたせいで当の幕府は混乱し、何の追手も来ないことから義教の首と共に領国に帰ってしまう始末でした。もっともその後に追討軍が差し向けられ、一時的に赤松家は取り潰されることとなりますが。
 義教の政治は確かに一時的ではあるものの足利将軍家の権力向上にはつながりましたが、結果的には義教自身が暗殺されたことによって将軍家の権威はそれ以前より下がることとなりました。同じ強権力志向者でも、まだローマ帝国の背教者ユリアヌスの方がマシだったという気がします。

2012年6月26日火曜日

消費税増税を含む一体改革法案可決について

 もはや何も語るまい、と言いたいところですがそうも言ってられないのが今日の消費税増税を含む税と社会保障の一体改革法案可決です。まず結論から述べるとついに通ったかとホッとするとともに、よく決断したと野田首相に対して強い賛辞を送りたいと思います。結果はどうなるかまだ分かりませんが、良くも悪くも日本政治の大きなターニングポイントになると考えて間違いないでしょう。

 今回の採決について中国メディアも大きく報じており、今朝の朝刊でも「野田首相が政治生命を賭す」というような見出しで採決があることを報じておりました。そして採決後の今はどんな風かと思って新華社の記事をめくってみたら「湯手山芋」という四字熟語が見出しにつけられておりました。恐らく「火中の栗を拾う」という意味でしょうが、重要部分を翻訳すると下記の通り書かれております。

 1997年に橋本内閣が消費税を3%から5%に引き上げた後に橋本元首相は退陣に追い込まれたことから、日本にとって消費税増税は政治におけるタブーだった。

 と私から言うことなしの評論書いた上で、「日本の債務残高は世界一で、年間GDPの2倍以上もあってIMFなどからも消費税を15%以上に引き上げるよう勧告を受けていた」と書いてあります。その後は小沢の説得に努めたが結局物分かれて造反に至り、これでまた小沢が新党を作ったら四度目だと書かれてあります。外国人が書いたことを考えるとよくまとまっています。

 この中国の記事が書いている通り、今回の法案採決は野田首相にとって文字通り命がけの決断と言えるでしょう。私としては増税があと十年早ければと悔やんでならないし、これで子ども手当も放棄してくれていればパーフェクトと言いたいのですが、子ども手当に関しては民主党内への最低限の妥協なのかもしれない可能性があるので多少は仕方なく感じます。
 よく日本は国が保有する資産残高を財政に計上していない、実際は無借金国だという主張も見られますが、それにしたって今の支出が収入を大きく上回る状況は異常というよりほかがないでしょう。さらに言えば、今の自分を含む日本人が不安を持っているのは明日ではなく十年後や二十年後のような気がします。明日ではなく十年後や二十年後がどうなるかわからないがために貯蓄傾向が高まるのだし、なによりも今の自分より下の世代に負債や問題を引き継がせたくない、少なくとも借金を作った世代は自分が作った分くらいは返してから死んでいくべきだと思うので、私はかねてから増税によるプライマリーバランス回復を主張してきました。

 今後の政治の行く末ですが造反者が多数出たことによって、場合によっては解散につながる可能性もあるでしょう。また自民党も造反者を処分しろとここぞとばかりに強気な要求を出していますが、一歩間違えれば増税を推進したとして次の選挙で野田首相を中心とする民主党同様に大敗する可能性があります。どちらにしろ、次の選挙で野田首相グループが選挙で勝ち残るのは世間体もあって厳しいでしょう。
 それだけによくこんな決断をしたものだと、重ねて野田首相には尊敬の念を覚えます。ほかの人が見向きしなくとも、私一人は彼を高く評価していようと思います。

2012年6月25日月曜日

JALのこれまでの再建、東電のこれからの再建

 先日にダイヤモンドが出したJAL再建の記事が面白かったので、ちょっとここでも紹介します。

【企業特集】日本航空(上)破綻2年で営業利益2000億円 JAL式アメーバ経営の真髄(ダイヤモンド)

 こういってはなんですが、わずか2年でここまでJALの業績が回復するとは私も想像だにしませんでした。今回このダイヤモンドの記事を検索するに当たって「JAL 再建」で検索したら破綻当時の日経ビジネスの記事、「JAL再建計画に信憑性なし」が引っかかってきて、なんていうか隔世の感があります。ただ結果的には日経ビジネスの予想は外れてしまったわけですが、なにも日経ビジネスに限らなくてもJALの再生がうまくいくなんて誰も思いもしなかったでしょう。
 ここだけの話、私も日経ビジネス同様にJALの会長に就いた京セラ出身の稲盛会長をあまり評価しておらず、財界人脈の少ない民主党のなけなしの人事だと見ておりました。京都ブラック企業四天王の筆頭、FF4で言うなら火のルビカンテに当たる京セラ出身ということから、恐らく社員のクビを切るだけ切って見かけの数字だけでよくするのではと本気で信じていましたが、破綻前と比べてJALはニュースになるような整備不良やヒヤリハットの件数は減っており、またサービスなどに対する評判もあまり悪いものを聞きません。むしろ苦しいのはわかるんだけど、ANAの方がこのところなんか妙な報道が目立ちます。

 JALはまた再上場するとの報道も出ておりますが、ここに至っては稲盛会長の力量を認めざるを得ません。こんなことを友人と話している最中にふと、「この際だから東電も稲盛に任せた方がいいんじゃないか」という発言が出てきました。既に時期東電会長職には下川辺氏が内定しておりますが、どうしようもない組織なだけにもっとドラスティックな人事が必要だったのではないかと思えてなりません。それこそ口を開く傍から嘘八百を並び立てる役員が多いだけに、稲盛会長のようなクビ切れる人間、ほかにも挙げるなら必殺技がコストカッターな日産のゴーン会長とかのが適任な気がします。

 といっても、JALをやった後で今度は東電というのもなんだか大変ですし、日産のゴーン会長に至っては現業を離れることはないでしょう。となるとほかに経済界に人材はいるかという話になってきますが、パッと思いつくあたりなら幸之助精神の破壊者こと中村邦夫パナソニック会長とかもいますが、大穴で言うならオリンパスのマイケル・ウッドフォード元社長もありかもしれません。
 ここだけの話、東電の幹部人事はこの際だからほかの条件はともかく外国人を招いた方が好都合かもしれません。これまで独占産業で海外市場の感覚を全く持ち合わせておらず、明らかに世間一般とずれた感覚を有している組織なだけにトップだけでも社内常識に染まらない、っていうか国内の様々な反動勢力の影響を受けない人間が必要でしょう。トップを変えれば何とかなるというのは代々の阪神タイガースの思想ですが、東電に関してはトップにすべて壊してもらわないと何も始まらないでしょう。

2012年6月24日日曜日

政府の自殺対策について

 前にも書きましたが日本人は自分たちで自殺率が高い民族だと考える傾向がありますが、世界ランキングで言えば第8位で、韓国をはじめとしてまだまだ上には上がいます。さらに「先進国中で最も自殺が多い」と負けじと言ってくる人もいますが、先ほどの世界ランキングと比較するならそれでは韓国やロシアは先進国ではなくなってしまうので、私としてはちょっと無理な言い方な気がします。
 それはさておき未だに自殺者数の増加は歯止めのかからない状態が続いておりますが、政府のここ数年の自殺対策は一体なんだったのかというくらいに効果がありません。政府自身も「無駄な仕事でした」とはっきり認めていますが、そうやって素直に間違っていたといいつつ自殺対策のPRキャラクターにAKB48を使う当たり、多分何も反省してないんじゃないかという気がします。

 いきなり結論を言いますが、私の見立てだと政府は初めから自殺対策なんてする気が全くないんだと思います。さらに言えば今のうちに人口減らしとけと言わんばかりに、自殺者が増えることを歓迎しているのではないかと思う節があります。一体なんで私がこんなことを言い出すのかというとさっきに上げたようにPRキャラクターにAKB48を使ったという点で、日本の自殺は他国と比べて50代以上が大半という特殊な国(他国は若者が多い)であることを考慮すると、若者向けのキャラクターよりも50代以上の年寄りにも通じやすいキャラクターじゃないと意味がない気がするからです。それこそ北島三郎とか加山雄三など、往年のスターを使った方が認知度から言って効果が高いという気がします。

 ただ最近の自殺だと若者の自殺率も有意に増えており、若者の対策も全く必要でないわけではありません。根本的に自殺をなくすことは不可能に近いですが、もうちょっと傾向と対策をそれこそ社会学者に練らせて予算を無駄に使わない対策をやってもらいたいと陰ながら思います。

2012年6月22日金曜日

第一印象を悪く見せる理由

 自分が自分を最も偏屈足らしめている性質の一つに、敢えて第一印象を悪く見せるというものがあります。これなんか私と親しい人間などはよく知っているでしょうが、普段は赤い人みたいに常人の3倍くらいしゃべる癖に、初対面の相手に対しては割と不機嫌そうな顔してぶすっと黙り続けることが多いです。後から聞いてみると、「なんか怖そうな感じがして取っつき辛そうだった」という声が聞かれますが、これらの印象は意図的に与えていると自負します。

 一体なんでこんな面倒くさいことをするのか。一見すればただ人見知りしやすいということで片づけられますが普段の私を見ている人からは「人見知りはあんなにしゃべらない」とのことで、私も違うと思います。結論を書いてしまうと初対面の際は自分を売りに出すより相手の性格や話し方、教養、反応速度を測る方に集中して、自らの情報は極力出さないようにしています。その上で最大の目的を言うと、第一印象で相手を決めつけるような人間とはなるべく関わりたくないとの思いがあり、逆に第一印象にとらわれずに二回、三回と会っていく中で相手を見極めようとしてくれる人と付き合っていきたいとも考えており、そうした人間をスクリーニングするという意味合いでこんなことをしております。

 よく友人からはこんなことするのは間違っていると言われており、人を試す、試さない以前に自分が損するから辞めるべきだとよく諭されます。言わんとしていることはよくわかるのですが、自分の経験上、第一印象を一度定めてしまうとそこから全く相手の人格を動かさない人間はよくおり、しかもこういった人間に限って平気で嘘をつけば相手の痛みを気にせず行動する人間が多いです。私自身もこれまでにこういった輩に何度も痛い目に遭わされており、それだったら初めからビジネスライクに、必要以上に接触しないことが自分にとっても相手にとってもいいように思うようになりました。
 またほかの人はともかくとして自分の場合は周囲の話を聞くと、短時間じゃ測りきれないところが多いそうです。考えてみると日本史や世界史、政治や社会事情などといった知識に強みがあるということや、フォースと共に生きていることは数時間話しただけではわからず、後からいろんな意味で変わってる人間だと気付いたという評価をよく受けます。言ってしまえば、私の場合は第一印象ではやや伝わりづらい人間性が多いために、単純に長い目で見てくれる人ほど評価してもらいやすい性質があるということです。

 私自身もこれまでいろんな人間と会ったり、実際に指導したりしましたが、やはり第一印象というのはあまり当てにならない気がします。ちょこっとひねってみると思わぬ一面が見えたり、逆になんでも卒なくこなせそうに見えるけど少しやらせてみると極端に苦手な分野を持ってたりすることがわかったり、基本的には長い目で相手と話したり一緒に行動しないと評価はしきれないものです。
 翻ってこの頃の日本社会ですが、これはこんなことをしている私だからはっきり言わせてもらうと、なんでもかんでも第一印象で決めつけようという空気が社会中にはびこっている気がします。新入社員面接然り、商品のマーケティング然り、政治家の活動然りで、中身にはあまり目を向けず外っ面ばかり見て何もかも決めている人があまりにも多すぎます。もちろん見た目がいいということに越したことはありませんが、それは中身が伴って初めて言えることで、中身も何もないのに見た目ばかり気にされるというのは本末転倒で、それであれば見た目が悪くともまだ中身がしっかりある方がいいに決まってます。

 前にも新書で第一印象で評価はすべて決まるとかいうタイトルからして気に入らない本が売れてましたが、これも厳しく指摘させてもらうと中身を審議するのが面倒だからなるべく上っ面で判断したいという欲求が今の日本人にあるからだという気がします。日本には折角「質実剛健」という言葉があるのに、この言葉を多用しているのが自分だけというのも寂しいを通り越して複雑な気持ちになってきます。
 私が友人からかなり激しくやめるようにと言われながらもわざと第一印象を悪く見せ続けるのも、こうした今の風潮に無駄かもしれないが反抗したいという思いがあってのことです。第一印象で何もかも決まってしまう世の中だからこそ、第一印象だけで決めない人間が必要なんだと、声を大にして言いたいわけです。