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2024年7月29日月曜日

桜田門外の変に参加した薩摩藩士とだんドーン

 「ハコヅメ」でおなじみの奏三子氏の幕末漫画「だんドーン」の4巻がこの前発売されて読みましたが、よくもここまで桜田門外の変を掘り下げたものだと感心して読んでました。特に、この桜田門外の変に水戸藩士に紛れて薩摩藩士が一人だけ参加していたということは知ってましたが、その人物がどのような人物であったのかを、この「だんドーン」で初めて知りました。

有村次左衛門(Wikipedia)

 その唯一の薩摩藩士が上記の有村次左衛門で、負傷した井伊直弼を駕籠から引きずり出し、彼の首を取ったのも彼だったそうです。私はてっきり水戸藩士の参加者と仲の良かった薩摩藩士が助っ人的に参加したのだとかねて思っていましたが、実際には島津斉彬死後の調停工作で薩摩藩と水戸藩がタッグを組んでいた際、連絡役などで両藩の仲介となっていたのが彼だったそうです。そうした縁からこの桜田門外の変にも参加したとのことでしたが、まさか井伊の首まで取っていたとは。

 それでこの「だんドーン」の襲撃シーンですが、非常に迫力のある重苦しさが強い仕上がりとなっています。守勢の彦根藩士らの奮戦ぶりもしっかり描いており、手や指が切り裂かれるシーンなども実際の襲撃場面をしっかり研究して描かれているように見え、「大老の井伊が暗殺された」という教科書の中では字面だけの場面がこれほど迫力ある場面だったとはとこれまた感心させられました。

 中でも、水戸藩士らに囲まれる中で井伊がいる駕籠を孤軍奮闘とばかりに彦根藩士が守る中、上記の有村次左衛門が示現流ならではの咆哮を挙げて襲い掛かるシーンは見ていて強い恐怖感をこちらも覚えました。
 知ってる人には早いですが、薩摩藩士が習っていた薬丸示現流という流派は、一太刀目でで必ず相手を殺せるよう全力で振りかぶる剣法で、外したら隙が多いものの、下手に受け太刀したら刀ごと真っ二つにされることもあったという防御を捨てた捨て身剣法として有名です。しかもそんな全力斬りを例の「キエー」という奇声とともに振りかぶってくるのだから、相手からしたら恐怖以外の何物でもないでしょう。

 しかもこの桜田門外の変では乱戦入り乱れ、襲撃側も同士討ちするなど現場は非常に混乱していたそうです。そんな乱戦の最中、奇声挙げてこっちに大きく刀を振りかぶってくる示現流の使い手を前にしたら自分だったら逃げ出すと思います。このあたりの示現流の使い手の恐ろしさが「だんドーン」では非常にうまく描かれており、実際に単行本の作者コメントによると「実に立派な襲撃でした」などと水戸藩士のようなメールが送られてきたそうです。

 その作者の奏三子氏自身もこの回で、「これからが維新の始まりだ」ということをにおわせるセリフを入れています。「ハコヅメ」の時も思ってましたが変なところで凝り性で手を抜かない人のようで、歴史考証やストーリー構成が非常によく練られており、「陽気な人斬り半次郎」こと桐野利秋も次の巻から登場するとのことなので非常に楽しみです。
 ちょっと大げさかもしれませんが、非常に構成が優れるだけに将来大河ドラマの原作に使われるかもしれません。

2024年7月28日日曜日

「報われたい」と思わない精神

 先日、前から気になっていたタフシリーズだけど巻数多くてこれから追いかけるにはきついなと思っていた矢先、聖人キャラと呼ばれる主人の父親でおとんこと宮沢静虎が主人公との外電作品「オトン」だと2巻しかないことに気が付き購入して読んでみました。元々、作者の猿渡哲也氏については迫力ある筋肉の描写はすごいと思っており、この外伝作品でもその個性がはっきり出ていて非常に楽しめました。
 何気に猿渡氏については、平松伸二氏のアシスタントになる際に持ってきたスケッチブックに、いろんな角度や形をしたたくさんの「手」しか描かれていなかったというエピソードが今でも強烈に覚えています。

 話を戻すとそんな普段はさえない銀行サラリーマンに見えて、いざバトルとなったら物凄い容赦ないおとんですが彼の名言にこんなのがあります。

「他人のために何かをやったとしても、決して見返りは求めるな。 もし、それを望んだらその瞬間、お前の行動は醜悪なものになる。」

 実に名言この上なく誰に対して伝えても恥ずかしくない言葉で、見返りではなく自己実現、「自分がそうしたい」からを行動原理にしろと息子である主人公に伝える際の言葉だそうです。
 この言葉を聞いてもう一つ自分の頭に思い浮かんだ言葉として、見出しにも掲げた「報われたい」という言葉です。結論から言うと「報われたい」と思った瞬間、その時点でその行動は本人にとって望ましくない行動になるという風に思います。

 人間誰しもギブアンドテイクというか損得勘定で行動を決めます。何故その行動を取るのかというと自分にとってメリットがあるからで、わざわざデメリットがあること確実な行動を取る人間はまずいません。ただその損得勘定については人によって個人差があり、目先のメリットのみ追及する人もいれば、長い目で見てここで泥被った方が後々有利になると考える人もいれば、自分が強い責任感を持ち続けることによって最終的にメリットが得られるとひたすら耐える人もします。

 そこへきて上の「報われたい」ですが、この言葉の意味としてはこれまで継続、積み重ねてきた行動が今は価値を生まないけど今後しっかり価値を生んでほしいという願望にほかなりません。さらに掘り下げるとこの「報われたい」と考えた時点で、恐らくその行動はその人にっては「本音ではもうやりたくない」という行動になり下がっているものと思われます。
 そのように踏まえると、この言葉が発する心理状況はすでにギャンブル依存症などと同じく「サンクコスト」と呼ばれる心理に近く、「これまでコストを支払ってきたんだから取り返すまではやめられない」という状態にあるのではないかと思います。具体的には、資格試験の勉強を何年も続けてきたけどずっと受からない、同じ会社にずっと働き続けたけど自分の思うように評価されないなど。

 こうした状況で「報われたい」と思った時点で、すでに支払ったコストを取り返せるような恩恵が得られる可能性は低くなっていると思います。であれば、過去のコストに関しては損失としてしっかり認識し、現状の自分にとって何が最善の行動となるのか、改めて見直してみた方がずっといい気がします。「今更仕切りなおせない」という人もいるでしょうが、伊能忠敬だって40代から勉強し始めたのだし、何かを始めるのに遅すぎるということは実際にはほとんどないと私は思います。

 以上を踏まえてさらに付け加えると、「報われる」という言葉は一種の呪いのようだと思います。「頑張ってれば報われる」と言いますが、努力の方向性が間違っていたらそんなこと起こるはずないし、事の成否は運の要素も絡み、努力が正しくても報われない現実というのは確実にあると思います。
 たとえ報われない可能性があったとしても成功に向けて努力し続けたいという精神は崇高で立派であるし、そうした行動は成功を掴めなくても、その本人にいろんなものを残すと思います。しかし途中で、「まだ報われないのか?」などと思った時点で、もはや本人が「やりたい」という気持ち以上にこれまでのコストから「今更やめられない」という状態に至っている可能性が高く、「いつか報われる」という言葉というか概念に引っ張りまわされているような状況に陥っている可能性が高いでしょう。

 そういう意味では冒頭のオトンの言葉じゃないですが、「いつか報われることを夢見て」という概念は根本から持たない方がいい気がします。以前からも言っていますが、将来よりも今を必死で生きる方がもっと重要だし、今を真剣に生きることでかえって将来が開かれると私は思います。なので「報われる」というのは、あまり多用すべき言葉じゃないのが結論となります。

2024年7月27日土曜日

中国の妙な検閲基準と違和感感じる幽霊の描き方

中国で『リメンバー・ミー』上映禁止、しかし検閲官が大感動して上映OKに(THE RIVER)

 上の記事によると、ピクサーの「リメンバー・ミー」という映画は幽霊がわんさか出るので中国では本来検閲ではじかれるところ、内容を確認した検閲官が「めっちゃええやん」と判断して逆にプッシュされる形で公開に至ったとのことです。事の真偽はどうあれ、「幽霊が出る」というのは実際に中国の映画やゲームの配信において弾かれる要素で、その理由について中国人の同僚に聞いたら、「非科学的だから(´・ω・)」とのことでした。
 なら気功使う拳法家とかはありなのかよという気はするんですけどね……。

 しかし、実際には中国で制作される時代劇などのドラマでは普通に幽霊が出てきます。中国版大可越前こと包公(パオコン)の話でも、幽霊相手に裁判するという話もあり、上記の検閲規定に引っかかるのではないかと思いました。その点についてもまた中国人の同僚に話を聞いたら、「中華人民共和国の建国前だからそれはいいの(´・ω・)」とのことでした。
 いや、原作が建国前だったら現代でドラマ化していいとかいい加減過ぎないって気はするんですけどね……。

 ちなみ「非科学的」という枠の中には「人語をしゃべる動物」も当てはまるそうです。なので海外の映画で人語をしゃべる動物が出たら「あれ宇宙人だ」という解釈で検閲をパスするそうです。なので、ポケモンとかも宇宙人扱いになっていると推察されます。
 ってか、幽霊には厳しいくせになんで宇宙人にはやたら寛容なんだよ、宇宙人の存在なら科学的なのかよって気もしてくるけど。

 それはともかくとしてちょっと前から思っていた点として、日本人と中国人で創作における幽霊の描き方が大きく違うことに最近気づいてきました。元々学生時代に、前述の包公に関する説明文で「しかし彼の裁判には日本人にとってはやや違和感を感じる、幽霊なども裁判に参加する場面が登場する」という記述を見ていたのですが、これを見たときはそこまで気にしなかったものの、最近になって中国人が描いた漫画などを見て、その幽霊の描き方に物凄い違和感というか率直に言って受け容れづらい感情をはっきり覚えました。

 具体的にどう違うのかというと、基本的に日本の幽霊はまずまともなコミュニケーションが取れないのが普通です。守護霊なんかだとまだ会話できる奴もいますが、その姿は守護対象者にしか見えないなどごく限られ、あくまで陰の存在として縁の下の力持ちに徹します。一方、怨霊に至っては仮にその姿が見えたとしてもまともな会話はまず成り立たず、それどころか恨みの対象だけじゃなく無関係にに襲い掛かってくるバーバリアン的な特質も持ちます。こんな感じで日本の幽霊は、まともにコミュニケーションが取れず交渉はまず不可能で、畏れ、触れないべき存在として描かれるのが普通じゃないかと思います。

 それに対し中国の幽霊ですが、マジで日本と真逆です。普通に一般人もその姿を視認することができれば会話もまともにでき、それ以前に誰も相手が幽霊だと思わずに接しているというパターンが多いです。幽霊の側も普通に職を持って働いてたりすることが多く、何かをきっかけに同僚に「実は俺って幽霊なんだよσ(゚∀゚ )オレ」的にフランクに正体ばらしてきたりもします。
 日本人的には、「そんな幽霊がいるか!」と思わずにはいられません。

 まぁ上の例は極端なものですが、どっちかっていうと僧侶や占い師などあまり目立たない職業についていて、主人公らに密かに助言したりする立場で幽霊キャラは登場してくることが多いです。でもって後半に入って「なんであなたはそんなに何でも知ってるんですか。は、まさか!?」的に幽霊だとわかるパターンが多いのですが、日本みたく足が見えないとか姿がすすける、影がないといったテンプレ特徴を欠いていることが多く、日本人的に言えば「幽霊らしくない」幽霊が本当に多いこと。

 自分の感覚で語ると、中国の幽霊は死を超越した仙人的な立ち位置で描かれることが多いのに対し、日本の幽霊は現世から切り離され、親類などごく一部のインナーサークル内にしか影響をもたらさない人格として描かれており、端的に言って存在感に大きな差があります。なので日本人からしたら、「幽霊がそんな堂々としていていいのかよ」という違和感が常にまとうため、確かに中国の捜索における幽霊の描き方にはついていけない日本人が多いのではと思います。

 この辺、むしろ日本人的には西洋の幽霊や霊魂の方が感覚的に身近であるような気がします。あっちもごく親しい人の前にしか出ないことが多いし。
 そう考えると冒頭に描いた中国の「科学的」って概念も若干疑問というか、もしかしたら自分の考える「科学的」とは違った意味なのかもしれない。

2024年7月24日水曜日

日本の未来を暗示させるユニバース25

 やはり自分の体はお米が合っているのか、さっきへとへとで食欲ないから自宅で冷凍チャーハン食べたら逆におなかすいて、今めちゃくちゃ餓えています。最終兵器のUFOでも食べようかなぁ。ってか仕事忙しすぎ。昨日なんか依頼物差し替えの上に納期短縮を要求されて「なめんなよ(´・ω・)」って相手に凄んじゃったし。


 話は本題ですが、上のカルフーンさんというのは米国の科学者です。なんで急にこの人引っ張り出したのかというと、「ユニバース25」という実験を行った責任者で、上のWikiのページ内にこの実験の内容が書かれてあります。
 そのユニバース25ですが、この実験を私が知ったのは先日もこのブログで紹介したこのところ「竜送りのイサギ」と並んではまっている、生物学大好きっこがうんちくを垂れ流す漫画の「あくまでクジャクの話です(あくまクジャク)」の2巻巻末にて紹介されていたからで、その内容に自分も驚きを禁じ得ませんでした。

 では一体どういう実験だったのかというと、ネズミを使った実験です。この実験では建物内に巣穴と餌、水を完備し大きな空間を用意し、そこに雄雌4組8匹のネズミを放つところから始まります。実験のコンセプトとしては生命の危険のない状態でネズミがどのように繁殖するかを観察することが主眼であったことから、文字通り衣食獣の三拍子が揃った環境を用意したわけです。
 当初、ネズミたちは広いものの閉じられた空間に放り込まれて戸惑いを見せたものの、一定期間を経て慣れると繁殖活動を行うようになり、個体数は日数とともに順調に増えていきました。この空間に用意された巣穴には約3840匹が収容可能であり実験者たちもこの個体数までは順調に増えていき、この数を超えたあたりで領土を巡って血で血を争う戦国時代がおっぱじまると予想していたようです。

 ところが想定外なことに、実験開始から315日目に個体数が約2200匹に達すると、この時点をピークに個体数は逆に減っていくようになりました。同時に、ネズミたちもそれまでになかった異常な行動を取るようになっていったそうです。
 具体的には、巣穴スペースがまだあるにもかかわらず縄張りをつくって他のネズミを追い出すようになったり、親ネズミが子ネズミに虐待を加えたり、同性愛を始めるネズミが出たりしたそうです。それ以上に深刻だったのは、雄が求愛や繁殖行動を取らなくなり、だらだらと生きるだけ、いわゆる食っちゃ寝なライフスタイルを取るようになりました。

 その結果、個体数はどんどんと減少していき、最終的にこの空間にいたネズミは絶滅するに至ったそうです。絶滅直前にこの中のネズミを外に出して別の群れに混ぜても見たそうですが、そこでも出されたネズミは繁殖行動を取ることはせず、その遺伝子を後代に伝えずに死んでいったそうです。

 恐らくほかの人もそうでしょうが、私がこの実験内容を見て真っ先に思い浮かべたのは、少子高齢化でヒートアップしている今の日本の現状です。ある時点をピークに人口拡大が止まり、男性が求愛行動を取らなくなり、虐待事件やニートが増えたりとか、同性愛者が増えてるかはわからないけど日本の現状を見させられているようで、最初は作り話じゃないかと本気で疑ったりもしました。しかし調べてみると本当に行われた実験とのことで、ネズミ社会ですら今の日本のようなことが起こるのかとびっくりさせられました。

 冷静に考えるとそれもそのはずというか、今の日本の少子化現状は何も日本に限らずほかの先進国でもほぼ同様に起きています。米国やフランスなどの克服した国は基本的に移民を入れており、一時は高福祉こそがカギだと言っていた北欧諸国もこのところ少子化が激化しています。
 それらの状況を踏まえると、社会が一定の段階まで発展、成熟すると人口は減少に転じる方がネズミ界同様自然な結果のように思えてきて、仮にそうだとすると、このままいくと日本人もネズミのように絶滅に至るのかもしれません。

 一体何故ネズミ社会が崩壊したのかについては色々意見があり、閉じられた空間だったからとか近親間の繁殖が進んだとかありますが、実験の研究者たちは社会が完成されて社会における役割を持たない個体が増えていくとこうなっちゃうんじゃないのという見解を示しており、自分も何となくそんな感じがします。
 その上で適当なことを抜かすと、食料など生存に不安やストレスのない状況に安住すると、逆にその環境にストレスを覚えるようになるのかなと感じる節があります。こう考えるのは、適度なストレスは程よい緊張感からむしろ心身にいい影響を与え、完全ノーストレスな環境は逆に体に悪いという実験結果を以前に見たからです。

 どちらにせよ、自分が見た中で一番不気味というか変に見直に感じてしまうのがこのユニバース25という実験でした。どっか別の組織が似たような実験してくれないかな。

2024年7月21日日曜日

ロシアの地獄は停戦後より始まる

ウクライナ大統領、ロシアとの交渉示唆 前線の現実とトランプ氏復活の観測で(CNN)

 もしトラ(もしも、トランプが資本論を読んだら)からかくトラ(かくれトランプ油地獄)と呼ばれて久しいですが、ウクライナ戦争にその影響が波及することはほぼ間違いないでしょう。こうした動きを受けCNNも書いている通り、ぜれんすきー大統領も停戦を検討するようになったとのことですが、敢えて違った見方をすると停戦する方がロシア、否プーチン政権に打撃を与えられる可能性もあるだけに、自分も一考の余地があるのではと思えてきました。
 端的に言えば見出しにも掲げた通り、ロシアにとっての本当の地獄は停戦後より始まると思います。こう考えるの領土条件は何であれ、停戦した後からロシアの経済的打撃が本格的に始まり、かえって戦争という大義名分を失い、経済の混乱と矛盾が一気に顕在化するのではと思うからです。

 現在すでにロシアは、欧米各国を中心に経済制裁を受けています。現在まともに取引している主要国としては中国、インド、イランの3ヶ国程度に限られます。
 このうち中国は最近になり、ロシアと取引を行う中国系銀行に対し米国が制裁をちらつかせていることで取引を一部取りやめる動きが広がってきているようです。また仮に制裁を気にしないとしても、中国の不況は今後深刻化するとみられ、そこへきてただでさえ経済が先ゆかなくなっているロシアとの付き合いを続ける場合、その悪影響が中国国内にも広がる可能性があります。具体的には、ロシアの取引先が債務を踏み倒しまくる可能性があり、今後も取引を続けるかと言ったら少なくとも停戦した場合には拡大はしないのではという風に見ます。

 またもう一つのイランに関しては、ここへきて改革派の政治家が大統領に当選しました。これはイラン政府が、恐らくイスラエルの衝突を見て融和外交に切り替える方が無難と判断した結果と言われ、仮にその場合はロシアとの関係が薄まり、米国などと融和路線に転じる可能性があります。
 もっともこの辺はトランプ就任後にどうなるかまだ分からない点がありますが。

 以上のような国際関係に加え、仮に停戦したとしても欧米のロシアに対する経済制裁は継続される可能性が高いというか、確実です。そうなればロシアの経済、特にハイテクや食料関係の輸入が滞り、ロシア自慢の原油プラントもメンテが行き届かずに生産が滞る可能性があります。
 それに加えロシアでは開戦以降、多大な戦死者を出したばかりかエリート人材の国外流出が続いており、国内労働力の空洞化が起こることは確実です。さらに日本を含む欧米からのロシア投資も切られ、あらゆる面で経済にマイナス要素が目白押しです。

 それでも現在のロシアは戦争中にもかかわらず国家としては運営され続けています。ただこれは逆の見方をすると戦争中だからまだ経済が回っているとも言え、軍需を中心に国家政府支出を増やして無理くり回しているようにも見えます。これはつまり、停戦した場合は現在国をまわしている国家支出は抑えざるを得なくなり、仮に無理やり支出しようとしても民生などに回らなくなってその点で国民の間で不満が高まる可能性もあるでしょう。
 もちろんロシアは今回の戦争で失った軍費の補充に動くでしょうが、そもそも主要部品も手に入らない状況では補充しきれない可能性が高いし、仮に補充に動いた場合は国庫の更なる枯渇を招き、財政的にもっとおかしくなる可能性があります。下手すりゃ、一回停戦して時間を置いた方が、ロシアの国家及び軍事面での弱体化も起こるかもしれません。

 ただこれは逆を言えばウクライナにも同じことが言えます。それだけに仮に停戦するとしたらウクライナに対する復興支援が非常に重要になると言え、この復興支援がうまく回れば、ロシアとの差を大きく目立たせ、その後の外交でもよりイニシアチブが握れるかもしれません。
 もっとも今の日本でウクライナにどれだけの経済支援を行えるかは疑問です。端的に言って、もはや日本は経済大国ではなく東洋の不思議な文化国になっており、プラント建設支援とかもぶっちゃけ中国の方が上なんじゃないかとすら思います。
 まぁそれでも、ロシアに対し東西から領土問題を吹っ掛け続けられる共通のパートナーにはなれると思うので、日本政府には今後もウクライナに対する支援を継続してもらいたいものです。

あの濁った中国の空が懐かしい(PM2.5)

 このところ毎週末は仕事が忙しく体調が悪いため極楽湯などのスーパー銭湯に行ってましたが、今週末はいきませんでした。理由は毎回風呂に入るたびにその後猛烈な頭痛に悩まされ、週末のうち半日を頭痛でのたうち回るようになっていたからです。原因は血行不良状態からお湯に入って流れが良くなって老廃物とかが色々廻ってるせいかなと思ってたのですが……。

 そんな感じで、昨日の土曜は風呂に行かずに近くの大型スーパーに昼食と買い物だけ出かけて帰宅したのですが、その後自宅で再び軽度ですが頭痛を発しました。幸い、頭痛薬を飲むだけですぐ解消しましたが、事ここに至って頭痛の原因は風呂ではなく単に日射病であることに気が付きました。そんなに長い間外で自転車こいでいるわけじゃないものの、やはり頭は直接日光にさらされているだけに、知らず知らずに熱がたまって後からヒートアップしてたんだと思います。
 そこへきて、スーパー銭湯では全身の体温も上がるもんだからなおさらアツアツになり、極度な頭痛を起こしてたんだと思います。麦わら帽子とかあんま被るの好きじゃないけど、さすがに検討した方がいいかもしんない(;´・ω・)

 そんな上海の夏の暑さですが、このところの最高気温は大体38度から39度の二択で、最低気温は30度まではいかないものの29度か28度で、一昨年とかに比べれば一段、っていうか1度低い程度です。東京では最高気温35度で大騒ぎしていて、たった数度とはいえ「涼しそうでいいなぁ(´・ω・)」とか本気で思います。マジで35度と39度では差がはっきりわかる。

 あくまで個人的な主観ではありますが、日本と同じく、上海も前はこれほどまでには熱くなかった気がします。詳しい気温とかは覚えていないけど、10年くらい前はもっと涼しく、今のように十数分自転車こいだだけで日射病になるなんてことはありませんでした。気温以上に、日差しが10年前と比べて破壊力が増しています。

 その10年前の上海ですが、今となっちゃもう死語となりつつあるもののPM2.5という言葉とともに大気汚染がもっぱらの話題でした。実際、2014年くらいまでは空は常に濁ってて青空が見えるなんて極端な見方ではなく年に数回くらいだったような気がします。でもって空気も味があるというか、排ガスを筆頭にいろんな匂いが常にしていて、成田に着くや「あれ、空気が味しない!?」なんて本気でびっくりした経験すらあります。

 それがこの10年、具体的には自分も実際にJBpressで記事化しましたが2018年くらいになるとすっかり大気がきれいになって、青空も珍しくなくなり、空気も味しなくなりました。マジで。それとともに、気温は上がり、外出ると簡単に日射病になるなど、夏の厳しさが増してきているようにも感じます。

 思えば自分が子供だった頃も、日本は今ほど空が青くなかったというか空気も汚かった気がします。でもって夏場に35度に到達することはあまりなく、朝方なんかはかなり涼しくラジオ体操している最中に軽く体が震える感覚もあった気がします。何が言いたいのかというと、日本も中国も環境対策越して空気がきれいになった一方、平均気温を高めているんじゃないのかってことです。だって、普通に考えて、スモッグで汚れた空気の方が太陽光が地表に差す前に疎外するわけだし。

 そもそも、環境対策は地球温暖化を防ぐためにいろいろ手をこまねいているのですが、なんか逆に環境対策が進むにつれてどの地域も気温をアツアツにしているような気がします。もちろんさかのぼれば今以上に空気がきれいだった江戸時代なんかは今よりも平均気温が低くありましたが、現代の場合は空気がきれいになったのと、都市化によるヒートアイランドが相乗して気温が上がっている気がします。
 そういう意味では少なくとも中国においては、マジであの濁った空の時代が懐かしいです。個人的にも中国に出入りしたころがまさにあんな感じだったからノスタルジーもあり、濁った空カムバック、ノーモアブルースカイとか叫びたいです。

2024年7月19日金曜日

体操の宮田選手に対する猪瀬氏の反応を見て

・ 【悲報】猪瀬直樹さん、体操・宮田笙子の喫煙疑惑騒動に激怒「たかがタバコ、麻薬じゃない」(暇人速報)

 本日、パリ五輪出場を予定していた体操女子の宮田選手が禁止させられていた喫煙と飲酒をかましていたとのことで出場が見送られることが発表されました。最初は喫煙しか報じられてなかったので上の猪瀬氏や為末氏などから「これくらいで4年に1度のチャンスを不意にさせるのはかわいそう」という声もありましたが、その後飲酒もやっており、なおかつ日本国内のトレセンでも繰り返すなど常習的に規則を破っていたことが報じられるにつれ、「こりゃ出したら駄目だね」的な方向の意見が多くみられるようになってきました。

 私個人としては、成人を含め合宿中に喫煙飲酒をあらかじめ禁止していたとのことだし、なおかつ宮田選手はそもそも期間外も喫煙してはならない未成年であるということを考えると、こうした厳しい処置を取らざるを得ないのではないかという見方を持ちます。これをなぁなぁにする方がかえって問題だし、それこそ五輪が終わった後にこの件で写真とか動画が流出したら今以上の大騒動になること、そして宮田選手がかなり常習的な人間であることを踏まえると、この決断の方が正しいでしょう。

 なお写真か動画で思い出したけど日本でスマホのカメラシャッターを切ると音が鳴りますが、「あれってさ、そもそも動画で撮影すれば音鳴らないし、盗撮防止という意味では無意味だよね(´・ω・)」とこの前同僚が言ってました。
 あと日本で買ったiPhoneを中国にもっていって撮影すると、地域設定によるのか、シャッター音がしなくなるそうです。結構芸が細かい。

 話は戻すと上の猪瀬氏の反応を見て自分が真っ先に思ったのは、「さすが公職選挙法を無視するだけあって、規定に対する遵守意識が低いな」という感想でした。


 もうかれこれ10年以上前ですが、これは彼が都知事をやっていたころに発覚した事件で、都知事選前に徳洲会から5000万円の選挙資金を借り入れたにもかかわらず報告書に記載しませんでした。これはもちろん選挙違反に当たり、発覚当初は「私的な借り入れであって選挙資金ではない」と否定していましたが、今兵庫県知事で話題となっている嘘をついたら偽証罪が適用される百条委員会が立ち上げられそうになるや進退窮まり、嘘ついてたのと違反してたことを認め、都知事も辞任しました。
 まぁ辞任しただけ、兵庫県知事よりマシかもしんないけどさ。

 とはいえこの一件からしても猪瀬氏が遵法遵守意識が低いことははっきりしており、それだからこそ今回の宮田氏の事件についても上のような態度何でしょう。こう言っては何ですが、やはり上の立場に立つべき人間じゃないと思います。


 ただ上記の選挙違反事件に関しては、当時の状況を再現しようと5000万円に見立てた模型を鞄に入れようとして入らないというコントが非常に面白かったです。でもってNHKニュースが何故かこの時の映像を放送終了時にも入れ、下の画像のように「終」って文字を入れたのがシュールで最高に楽しかったです。






 まぁNHKじゃないけど、すでに終わった人間だという風に私も捉えています。さすがにこの人に比べれば、小池知事のがみんなマシだと思うでしょう。

2024年7月17日水曜日

釣りキチVS水木しげる

 水木しげるの自伝漫画である「水木しげる伝」(コミック昭和史)の中では同業の漫画家が何人か登場しますが、主だった人物を挙げるとつげ義春氏、池上遼一氏、白土三平の三人じゃないかと思います。

 このうちつげ義春氏についてはアシスタントも務めていたこともあり描写も多く、何となく水木しげるとも馬が合いそうな人であったほか、どことなく一目置いていたような感じで描かれています。池上遼一氏については鼻っ柱の強そうないかにも若者然としたキャラクターで描かれていますが、彼については「漫画狂の歌」でそのまま主人公として漫画作品も作られている点から言っても、若いころから非常に特別視していたことがうかがえます。もっとも、「漫画狂の歌」はまだ手に取ることができていないのですが。
 一方、白土三平については「乞食のような姿で、スパゲッティをおごってもらった」エピソードが描かれており、描写はそれほど多くないものの怪奇なキャラクターとして強く印象に残る描かれ方をされていました。実際、そんな感じの人だったらしいし。

 このほか手塚治虫については石ノ森章太郎との徹夜自慢を語り合う場面で描いていますが、全体として描写はほとんどないと言っても過言じゃありません。その分、「一番星」という作品で何でも一番じゃないと気が済まない手塚をモデルにして漫画を描いてはいますが、先ほどの白土三平が出てくる漫画家が集まってのフォーラムにも手塚と一緒に登壇しているにもかかわらず描写がない辺り、水木しげるも若干ライバル視していたのではと伺えます。

 以上のメンツに加え、ほんのワンシーンですがもう一人出てくる漫画家として、「釣キチ三平」の矢口高雄がいます。「水木しげる伝」の中で矢口はアシスタント希望者として秋田から上京して水木しげるを訪ねたものの、「秋田で銀行員してんのなら無理して漫画家なんか目指さない方がいいよ」と追い返したものの、「その後彼はガロで描くようになり有名になった」と紹介されています。
 実はこのくだりについて、矢口自身も自分の漫画で描いていたということをつい最近知りました。その作品とは「9で割れ!!」という矢口の自伝漫画なのですが、水木との出会いについて描いているというか、矢口の目から見て水木はどう映ったのかが気になり、矢も楯もたまらずすぐ電子書籍で購入して読んでみました。

 この「9で割れ!!」は、矢口が高校卒業後に秋田県の旧羽後銀行に就職してから漫画家になるまでの間を描いた自伝漫画です。なお銀行の閉店後の現金計算で違算が発生した場合、10万円出金するところを1万円出金してしまったなどの桁違いミスではないかを確認するため、まず違算差額を9で割っていたことから、こういうタイトルになっています。
 実は矢口の漫画を読むのはこれが初めてなのですが、非常に躍動感のある絵柄に読みやすいストーリーで、こりゃ一時代を築いただけあると感嘆させられました。特に最近やる人が増えている、両面2ページのうち上半分または下半分をページを跨ぐ見開き1コマにして、残りの半分のページは細かくコマを割るという手法を90年代にすでにこの作品で使用しているあたり、かなり先を行った表現手法を駆使していると思わせられました。

 話を戻すと、矢口と水木の邂逅のきっかけは矢口がガロに成人後、初めて完成させた漫画作品を投稿したものの落選し、落選理由を尋ねるために上京してガロ編集部を尋ねたことからでした。この時に当時の編集長からは絵があまり上手くなく、また年齢も24歳(本当は27歳だが矢口がサバを読んで投稿していた)で伸びしろがないと矢口は言われ、たいそう落ち込んだそうです。
 ただこの際に矢口は、後の「釣キチ三平」の主人公の名前につけるほど私淑していた白土三平に会わせてほしいと嘆願したそうです。しかし編集長は、「白土三平は人嫌いの激しい人で頼んだって会ってくれない。とはいえ秋田からわざわざ来たのだしプロの漫画家を一人くらいは紹介してあげよう」と、すぐその場で電話して水木に渡りをつけたそうです。
 こうしてアシスタント志望という水木の記憶とは異なり、プロの漫画家現場見学として矢口は調布の水木邸を訪れることとなりました。

 ガロ編集部訪問から翌日、さっそく水木邸を訪れた矢口を最初に出迎えたのは当時アシスタントをしていた池上遼一氏で、矢口自身も「今や劇画界の第一人者」として池上の印象を「9で割れ!!」の中で描いています。
 その池上氏に案内されて作業室に入ると、水木は必死の形相で漫画制作を続けており、矢口が来たと言っても反応も示さず、執筆をそのまま続けていたそうです。そのあまりの迫力に矢口が驚いていると池上氏が「今がチャンスですよ。後ろからしっかり覗くんです」と促し、言われるままに水木の執筆状況を後ろから眺めたそうです。

 ここの描写が非常に鋭いというか細かく描かれてあったのですが、片腕のない水木は重い文鎮で原稿用紙を抑えつつも、時に体をねじって左肩で原稿用紙を抑えつつ描き続けていたそうです。その執筆速度は非常に速いものの、線の一本一本が非常に正確で流れるように描かれ、「これがプロの技なのか」と矢口も驚嘆させられたことが描かれてありました。

 その後、仕事がひと段落ついた水木はようやく矢口とあいさつを交わし、さっそく彼が投稿した作品を見せてみろと言って一読するやその絵を誉め、才能があると元気づけたそうです。しかしガロの編集長からはうまくない、また年齢的に伸びしろがないと言われたと矢口が伝えると、「あの人は漫画の編集長だが絵を描く人じゃない。あの人とプロの絵描きである僕のどっちを君は信じるんだい?」と言って、矢口を大いに励ましたそうです。この励ましには矢口自身も、「もしこの時がなければ、漫画家にはなれなかったかもしれない」と述懐しています。
 っていうか、「水木しげる伝」で描かれていたやりとりと全然違うじゃん……。

 その後、矢口は池上遼一氏を含む水木のアシスタントらから漫画の描き方に関してレクチャーを受け、教えてくれた中にはつげ義春氏もいたそうです。この時に池上氏からは線の描き方を教えられ、「単調な線を毎日数時間描き続ける。これを半年やって一人前」と言われ、線一本でこれほどまでするのかと驚かされたということが描かれてありました。
 その後、秋田に帰った矢口は水木プロでの指導を元に再び一から漫画の練習をして、本気でプロを目指すようになり、この時の水木プロでの経験は非常に重要であったと語っています。なお、当時の矢口はいっぱしの銀行員で、残業も珍しくない勤務をこなしながら夜自宅に帰ってからは漫画の練習と執筆をし続けたそうです。さらに夏場のシーズンに入ると、午前3時から起きて出勤前にひとしきり釣りをしてから銀行へ行っていたそうで、妊娠中の奥さんからは「あんたは漫画と釣りと、好きなことばかりして!(# ゚Д゚)」と怒られたそうですが、そりゃそうだろうとみていて思います。
 っていうかこのバイタリティはかなりやばいというか、そりゃ釣りキチ漫画だって十分描けるよ(;´・ω・)

 その後、矢口は「どうせプロなんてなれっこないんだし、仕事を疎かに漫画を描くのはいい加減にしとけよ」と上司に言われたことをきっかけに発奮し、すでに何度か読み切り作品が入選して掲載されていたこともあり、銀行を辞めて上京し、プロ漫画家へと転身を遂げることとなります。なお初めて連載作品を得るや真っ先に届いたファンレターは「鮮やかなデビュー、おめでとうございます」と書かれた、かつての上司からのものだったそうです。

 最後どうでもいいけど、「釣りキチ三平」というタイトルは「釣りキチ」が「気違い」と重なることから放送禁止用語的な扱いになっているそうで、伊集院光氏は皮肉って「釣り著しく好き三平」などとラジオで口にするそうです。
 正直、「気違い」に関する使用禁止は私も疑問に思うところで、こういうところで妙な言葉狩りはやめてほしいです。もっとも、「賭けキチ一平」というタイトルならたぶん誰も文句言わないだろうし、今なら注目集められるかもしれません(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾

2024年7月14日日曜日

上海で目立つようになった地方出身の若者

 先週ごろから、なんか上海の街中でいかにも地方から来たばかりのような若者の姿をあちらこちらで見るようになりました。一番厄介なのは電車の中で、横に立っていると平気で自分に対してもたれかかってくる人間が非常に増えており、「なんやこの田舎者は(# ゚Д゚)」と内心思いつつ何も言わずそっとよける毎日です。
 ちなみに中国の地方に行くとバスとかで人に寄りかかってくるのが普通です。上海に住んでから久しくこの感覚を覚えることはなかったけれども、今回久々にこういうオールド中国らしさを思い出すに至りました。

 そんなお上りさんの姿ですが、なんかスーツケースを抱え、仲間数人とともに周りを眺めまわしながら横に広がって歩く、でもって通行の妨げをするという姿が多いです。何となく想像してましたが中国人の友人にも確認してみたところ、どうやら今年7月頭に高校などを卒業したばかりの地方の若者が、集団就職とばかりに大挙して上海にきているようです。時期も時期だから、何となくそんな気はしてました。
 ただ以前というかここ数年において今年ほどこんなにお上りさんが目立つというか、目に入るというのは今までありませんでした。今年は明らかに多く且つ目立ち、この点についても友人に言及したところ、「どうやら不況で地方に就職先がないため、上海とか大都市にたくさん来ているようだ」と教えてもらいました。この点についても、自分の見立てと一致します。

 実際にというか飲食店を訪れていると、明らかに就職したてと思える若者の姿がこの1~2週間で目立つようになりました。昨日も朝食のパンとバナナを両方とも切らしてたので近くのマクドに朝マックへ行ったところ、「こうやって拭くのよ(=゚ω゚)ノ」とおばさんの店員がテーブルの拭き方を若い男の子に指導してました。その後、昼食に今度はお好み焼き屋に行ったら、これまた若い男の子がウェイターしていて、鉄板の温める温度などをこれまたおばさんの店員に何度も聞いてたりしました。でもってどのおばさんも、「こうやるのよ(=゚ω゚)ノ」と割と世話焼きな感じで教えてました。

 以前からも中国では地方の高校を卒業後に大都市へ出稼ぎに来る若者が多くいましたが、今年は上海に限ればさらに輪をかけて多いように思います。コロナ前なんかは地方でも雇用口が広がって大都市への流入が減っているなどという報道もあり、私自身も一度は出稼ぎに出たもののまた故郷へ戻って「やっぱ故郷が一番(・∀・)」という若者と会ったことがありました。
 しかし前述の通り、仮に見立て通りに不景気で地方に雇用口がなくてまた出稼ぎが増えているとなると、今後中国の地方都市はますますその勢いを失い、日本の地方都市みたく寂れに拍車がかかってくるかもしれません。この辺も日本の90年代とそっくりな気がします。

 逆に大都市では流入人口が増え、これまで以上に混雑化などの都市問題が激化する恐れがあります。まぁ中国なら天保の改革よろしく人返し令を実行してくるかもしれませんが、なんか以前とは異なる動きが見えたような気がしたのでこうしてまとめることとしました。

トランプ前大統領の暗殺未遂

 記事リンクを貼るまでもないでしょうが、仕事のし過ぎなのか(今日も家で作業してた)頭痛に悩まされながら起きてニュースを開くや、いきなりトランプ前大統領の暗殺未遂事件が報じられてて「映画のようやな」と一人ゴチてました。友人は正午ごろにチャットでこのニュースについて、触れてきたので、恐らく正午ごろまでずっと寝てたのでしょう。
 まぁ自分も9時に1回起きた後、すぐまた寝入って、正午に起きて昼食取ってからずっと仕事してたけど。ってか頭痛と鼻水がすごいから上海でも流行っているコロナにまたかかったのかと思って検査キット使ってみたら陰性だったし。だったら何なんだ犯人は(;´・ω・)

 要人警護に定評のある奈良県警とは違って、米国の警察は見事にトランプ氏を守っただけでなく犯人も射殺したとのことです。動機解明についてはこれからでしょうが、まぁトランプ氏を狙う人はそこそこいるだけに解明したところで大作なんかできるわけないのでだから何だってとこでしょうし、自分としてはあまり興味ありません。それよりも今後の政局が気になるというか、これでも次の大統領はトランプ氏で決まりでしょう。

 ただでさえ現職のバイデン大統領は健康不安説が高まっており、仮にその通りであれば彼の取り巻きによって傀儡化する、もしくはしている懸念もあるだけに、よその国とは言え私自身もそれでいいのかと不安に感じていました。米国民も同様で民主党内でも日本の岸田総理同様にバイデン下ろしの動きがみられ、大統領選への不安が高まっていました。
 そこへきて今回の暗殺未遂事件、またその直後にこれ以上ないくらい不屈の姿勢を見せたことから、トランプ氏への支持の動きは今後一層高まってくるでしょう。数々のスキャンダルがあるとはいえ、この事件を見て彼を応援しない人はほとんどいないと断言でき、次の大統領はもう今日この日によってトランプ氏に決まったも同然です。

 となると次に考えるのはトランプ氏が大統領になった後、どう動くかです。まず一番影響を受けるのはやはりウクライナと思え、ウクライナに対する米国支援が縮小、下手すりゃ打ち切られる可能性があります。これは日本としてはあまりいい状況ではなく、幸いというかNATOがウクライナの加盟に乗り出していることから、実現した場合はウクライナを西側の核の傘に入れることができ、これ以上のロシアの侵攻は防がれるという期待があります。
 もっともロシアもかなり苦しい状況に見え、本音では早く停戦したがっているように見えます。もっともロシアの場合、停戦した後が本当の地獄で、大量に失った労働力に加え西側からの経済性を受け、下手すりゃ「大きな北朝鮮」か「中国の経済植民地」ができるかもしれません。

 次に日本への影響ですが、ぶっちゃけそこまで大きな影響はないような気がします。強いて言えばこのところ続く円安を受け、日本に為替是正として中国に替わって大量の米国債を引き受けさせてくる可能性がある気がします。
 ここで出てきた中国ですが、一番の本丸はやはりここでしょう。中国に対する風当たりはトランプ以後は確実に強くなると断言でき、ただでさえ経済で弱っている状況なだけに、中国の経済的混乱はトランプ大統領の再任以降、さらに拍車がかかるかもしれません。速攻で行われるのは中国製EVへの関税引き上げ、下手すりゃ輸入停止、次に人民元への八つ当たり的攻撃、最後に中国籍者の米港不動産購入の制限または没収とかもあるかもしれません。

 よく日本国内の話ばかりされますが、本当の中国の金持ちや権力者が購入するのは米国の不動産です。日本の不動産を購入するのは日本に生活経験やビジネスでつながりのあるミドルアッパーでクラスで、割と平和的な人たちばかりです。
 本当のガチなアッパー、特に中国共産党幹部こそ米国の不動産を買いあさっており、だから反米を口にはするものの実際には米国との関係を何よりも重視するのが中国の当局関係者だったりします。

2024年7月13日土曜日

お札に相応しい人物とは?(漫画家編)

 先日の記事について友人に他に候補はいないかと尋ねたところ、「っぱ水木しげるっしょ」と、よくわかった回答してくれました。

 実は真面目な話、お札の顔に漫画家を選ぶのは以前からいい選択肢ではないかと考えていました。日本の文化輸出において忍者と並ぶ最強コンテンツの一つで、名実ともに日本の顔となる産業であるとともに、歴史や文化的な摩擦も少なく差し障りのなさでは非常にいい分類じゃないかと考えていました。
 また、近年の日本のお札は政治家よりも文化人を選ぶ傾向があり、そういう意味でも漫画家はうってつけであるような気がします。


 では漫画家の中から誰を選ぶかと言ったら、やはり筆頭候補は言うまでもなく漫画の神様こと手塚治虫でしょう。日本の漫画産業、ひいてはアニメ産業は彼なしでは切り開かれることはなかったと言われ、恐らく今後数百年にもわたり語り継がれるであろうことを考えると、お札の顔にするのに彼を抜くことはまずありえません。




 そんな手塚に続くと言ったらやはりこの人こと水木しげるでしょう。手塚ほどの影響力はないものの、京極夏彦氏や荒俣宏氏などその方面の著名人から熱烈な信仰を受けたり、また妖怪という概念を普及させて日本の民俗学、ひいては精神文化方面への功績は計り知れません。
 個人的な贔屓もありますが、やはり水木作品は心に残るというか読み終わった後も場面場面がはっきり記憶され、目に浮かぶのが大きな特徴である気がします。また過酷な戦争体験を経ながらも、下手すりゃ作品よりも本人が面白いという特段のユーモア性は群を抜いており、日本漫画史においてナンバー2となれば私の中では水木しげる以外ありえません。

 で、困るのはこの次のナンバー3です。順当に行くならギャグマンガの王こと赤塚不二夫なのですが、以前の記事にも書いたようにギャグマンガは流行の影響を受けやすく、赤塚も例外でなく近年はその名がかたられることもほとんどなくなってきていることを考えると、ちょっと厳しかなという気がします。
 そのほかの候補としては藤子不二雄やさいとうたかを、横山光輝、石ノ森章太郎、また存命の人物であれば永井豪氏や大友克洋氏がいますが、敢えて選ぶとしたら先日亡くなった鳥山明が最も相応しい気がします。日本漫画の世界的普及においては彼が歴代ナンバーワンといってよく、見方によっては先の2名よりも海外発信の面では上だとも言えます。

 なお同じ海外発信という点では、「キャプテン翼」の高橋陽一氏も十分候補になるでしょう。特に中東や欧州方面での人気はすさまじいと聞くだけに、存命中であっても彼であればお札になってもらってもいいように思います。

  おまけ




 闘魂三銃士で武藤札作ったし、蝶野札も作ってみました。やっぱプロレスラーは顔に力があるからお札が強く見える。


 何故か知らないけど突然浮かんだ山本昌の顔をやっつけで当て込みました。この人も独特の風味のある風貌しているだけに、お札に合う気がするんだけどなぁ。

2024年7月10日水曜日

お札に相応しい人物とは?

 自分は手に取ってないですが日本では新札に切り替えられ、福沢諭吉が淘汰されつつあるようです。そして新たにお金の顔となるのは渋沢栄一とのことですが、恐らく今までの慣れもあるせいか何となくしっくりこないという意見ばかり目にします。

 では誰だったらいいのか。この辺地味に面倒くさいのは戦前の人物だと韓国とか中国がいちいち文句言ってきて、実際渋沢栄一も日系企業の役員ばっか務めてたからさっそく韓国で文句言う人もいるそうです。どうせ誰にしたって文句言ってくるんだろうから、もうこの際三浦梧楼とかにしてもいいような気がします。
 まぁ冗談は置いといて、個人的に思う点としては「過去に功績のあった人物」にこだわらなくてもいいんじゃないかという点です。別にお札に使われるから日本の顔ってわけでもないんだし、単純に絵面で判断して、視認しやすく偽造されづらい人物だったら現代人でもいいんじゃないかと思います。むしろ芸能人とかの方が、後でスキャンダル起こされたらきついけど、とおりもよくていいようにすら思います。

 では具体的に誰が適任か。よくお札は髭のある人物の方が偽造されにくいと言われ、また濃い顔の人の方が映りもいいというのを前に聞いたことがありました。この条件に合致するとなると……

























阿部寛しかいないじゃんか

 上の画像はなんかお札に好きな顔写真を当てこめるサイトで作ったものですが、めっちゃいい自然にお札の顔となっています。ほかのお札でも作れはしますが、変に髪型とかが元のお札のが残されているため、いまいちいい感じには作れません。一応、作ったのを上げていくと。





 日本は樋口一葉verの五千円札しかテンプレがなく、なんでよりによってこれにしたんだよっていう気がしますが、元が元だけに女性の髪形にもかかわらず一目で阿部寛とわかるあたりさすがです。

 なお阿部寛のほかに顔が濃くてお札向きな人物として自分の中で浮かんできたのは、プロレスラーなんかが割合いいように思え、とりわけ武藤敬司氏あたりはいいのではないかと思います。っていうか武藤氏をお札にするなら、蝶野正洋氏、故橋本真也と合わせて闘魂三銃士で三枚のお札に対応させたらもっといい気がします。多分手に取る外国人も本国に持ち帰りたくなるでしょう。
 
 最後に今回の新札切り替えを受け私の周りでは、「日本人はまだ現金使ってるんだ(´・ω・)」と言う中国人が多いです。っていうか最近の中国人の子供に至っては、そもそも現金自体ほぼ見ないで育っているので、「現金って何?(´・ω・)」とか言いそうです。


  追記
 結局作っちまったよ……。




2024年7月8日月曜日

都知事選の結果を見て

 昨夜窓際の床に裸足で立ったらめちゃ熱を感じました。これが本当の床暖房ってやつかと割りながら、冷房かけても涼しくならない部屋で暑さに耐えてました。

 話は本題ですが昨日開票された都知事選ですがやはりというか現職の小池氏が当選しました。っていうかこの選挙で小池氏の当選を予想できなかった人は政治で語るべきじゃないというくらいはっきり結果が見えたもので、何の驚きもないしイベント的にも面白みありませんでした。
 その小池氏に真っ向から立ち向かったのは蓮舫氏ですが、代名詞である二位どころか石丸氏にも負けて三位という惨憺たる結果でした。恐らく立件民主党としては、小池氏に負けるにしても二位となってその存在感をアピール出来たら御の字と考えてたのでしょうが、まさかまさかで三位という結果になり、巨額の選挙資金をかけて自らの地位を下げるだけの結果になったという感があります。

 もっとも私はやや違う見方をしていて、蓮舫氏は頑張った方じゃないかと評価しています。何故かというと蓮舫氏は都知事選なのに全く無関係な国政の話をしては小池氏を通して自民党の批判を繰り返し、あまつさえ現行制度の内容すら勘違いした発言を繰り返すなどしており、普通こんな人には票なんて集まりません。ぶっちゃけ、1万票来るのも怪しいと言っていいほどの人材であり、それでありながら三位にまでこぎつけられたのは逆の意味ですごいんじゃないかと私は思います。言い方変えると、有権者は蓮舫氏に対して政治家としての質を全く期待せずにいたのじゃないかとも思います。

 そんな今回の都知事選でしたが、全く無関係なポスターを貼ったり、公開演説番組でパフォーマンスを行うなど、初めから真面目に選挙活動をする気のない不道徳な候補者が今回目立ちました。別に日本の道徳心が落ちたとかそういう風には思ってないのですが、単純に選挙供託金が300万円だとすると、テレビやラジオに広告出すよりもずっと安価で露出を増やせてしまうということから、今後もこの手の人間が出てくるのではないかと思います。

 そういう意味では今後の対策として、都知事選など投票規模の大きな選挙に関しては思い切って供託金の金額を引き上げる、具体的には1000万円くらいにしてもいいのではないかと思います。反対に地方議員選挙など立候補者数が定員ギリギリ、もしくは無投票当選が決まったりする選挙に関してはこちらも思い切って供託金額を無料にする、もしくは立候補しただけで準備金10万円くらい包むのもありじゃないかという気がします。っていうか変に一律にせずこういう風にしないと今後制度として持たなくなるでしょう。

2024年7月7日日曜日

今中国で一番勢いのある日系企業は?

 日本も猛暑と聞きますが上海もやばいくらい暑くて、ガチで蚊やコバエがいなくなりました。今年は意識して暑さに耐えるよう6月中は薄着を控えていたこともあり、冷房なしでも比較的暑さにも耐えれていますが、外出て自転車を押しながら陸橋渡ってまた乗り出したら、ほんの少しの時間でシートがめちゃ熱くなっててビビりました。

 それで話は本題ですが、かつて自分が今中国で一番勢いのある企業、または製品やサービスは何かと聞かれたら、迷わずヤクルトと答えていました。この10年くらいヤクルトは中国で異常に売り上げを伸ばし、工場も作るそばからフル稼働で増産に次ぐ増産が続いていたのですが……


 上の記事は今年2月のものですが、去年あたりから販売が不振となって事業規模を縮小し始めたそうです。スーパーとかに行くといまだにヤクルトはどこでも見かけられるので致命的って程ではないとないと思いますが、それでも以前と比べると伸び悩んでいるようです。

 ではそんな曲がり角を迎えたヤクルトに代わって今一番勢いのある日系企業はどこか。結論から言うと、自分はファミレスのサイゼリヤではないかと思っています。

 サイゼリヤも以前からずっと中国で好調を続けていますが、近年はそれに拍車がかかっているとでもいうべきか、前以上の勢いと強さを感じます。中国人の同僚もよく「またサイゼ行ってきた(´・ω・)」と話し、中国人の友人にサイゼに行くことあるかと聞いたら「ちょうど今日行ってきた(´・ω・)」と返事されたりするなど、マジで中国人はサイゼに通い詰めています。

 一体何故サイゼがこれほど中国で今勢いがあるのかというと、日本でもファミレス業界で好調をキープしている理由と共通しますが、敢えて言えばやはりその圧倒的な低価格路線にあるでしょう。安けりゃ客が来るのは当然ですが、中国に関してはこのところの不景気でみんな財布のひもが固くなっており、安い商品やサービスに前以上に引き寄せられるようになってきた感じがします。
 この辺、2000年代初頭の牛丼屋が繁盛していた日本と同じような光景に見え、端的に言えばデフレ下らしい傾向がはっきり見て取れます。

 もう一点サイゼの強みを挙げると、サイゼのメニューは子供でも食べやすいものが多く、親子連れが訪れやすいのが大きな強みです。中国のレストラン、特に中華系は四川料理をはじめ子供だと食べれるメニューが少ない店が多く、家族連れで外食しやすい店が意外に少なかったりします。その点でサイゼはメニュー面で強く、また格安ワインをはじめおっさんたちも通いつめやすいメニューがあり、間口が圧倒的に広く感じます。

 話を戻すと、サイゼのこのところの中国における繁盛ぶりは間違いなくデフレの影響が少なからずあるでしょう。反対に高級品はこのところどこも苦戦しており、化粧品も安い低ブランドが勢いを増してきています。
 この辺を掘り下げると、今後中国ではこの手の低品質、低価格な商品やサービスが延びる可能性が高いと予想しています。日系で言えばダイソーや山善などで、逆に弱まりそうなのは無印や資生堂といったところです。そういう意味で今後の中国ビジネスは、デフレの影響をどれだけ意識するかがカギになってくる気がします。

2024年7月4日木曜日

武田信玄はクズ

 しかのこのこのここしたんたんが耳から離れない……。

 話は本題ですが以前にJBpressで「評価が逆転した歴史人物」として、石田三成や田沼意次を取り上げたことがありました。この記事では評価がいい方向に逆転した人物を挙げているのですが、好評だったら続きとして逆方向の評価が下がっている人物を取り上げようかと思っていました。ただあんま好評でなかったのと、書き方によっては反発される可能性が大きいと思って結局執筆を見送りましたが、もし敢えて今書くとしたら、武田信玄について書いていたでしょう。

 武田信玄とは言うまでもなく甲斐こと現在の山梨県を根城にした戦国大名で、織田信長が最も恐れ、また三方ヶ原で家康にうんこ漏らさせたことからも、人によっては戦国最強武将(上杉謙信を除く)とも呼ばれる超有名戦国武将です。実際に彼の存命中に武田家は最盛期を迎え、甲斐一国から現在の長野県こと信濃も併呑するなど周囲に押しも押されぬ勢力を築いてはいるのですが、近年見ている限りだと彼の評価は年々下がっているように思えます。
 一体何故下がっているのかというと、外交にあまりにも一貫性がなく、その結果として大きな負債を後代の武田勝頼に残し、結果的に武田家を滅亡に追いやったとみられるようになったからです。

 前述の通り、信玄は甲斐一国から信濃、あと静岡県東側ことの現在の静岡市(当時は駿河)に至るまでの勢力範囲を築きました。これだけ見れば戦国大名としては十分評価に値するのですが、ここに至るまでの過程で、外交で反復常ならぬ態度を繰り返した結果、周辺大名からは総スカンを食らってたりします。

 元々、武田家は今川家と家族ぐるみで仲が良く、今川家に嫁いだ姉妹を見に父親が駿河を訪れたところで信玄は親父を追放し、家督を乗っ取るくらい今川家とは仲が良かったです。自分で書いててアレな気がしますが。
 その今川家は国境を接する北条家とは、その始祖の北条早雲の代から親戚ぐるみで付き合っており、武田家以上に深い関係を保っていました。そうした関係で、なおかつお互いに国境を接していたことから、武田家、今川家、北条家の三家は文字通りの三国同盟、いわゆる甲相駿三国同盟を結び、今川義元が桶狭間で亡くなるまではの同盟は非常に機能しました。

 特に、武田家と北条家の共通の敵である上杉謙信に対し、謙信が関東に来るや武田家は信濃北部に攻め入り、また謙信が越後に戻るや北条家は関東北部に攻め入るという、交互に殴りかかる戦略で謙信を大いに苦しめました。多分これがなければ、謙信は関東全域を支配した可能性もあったでしょう。

 しかし1560年の桶狭間の戦いで今川義元が亡くなるや、武田家は今川家に対しそっけなくなります。跡を継いだ今川氏真を頼りなく思ったのか、最終的には徳川家康と組んで一緒に今川家に攻撃して滅亡させ、徳川家は浜松を、武田家は駿河を支配するに至ります。
 これに怒ったのが北条家で、たくさん親戚もいることから武田に対抗して今川家に援軍を送るほどでした。これにより、武田家と北条家の同盟も解消となり、昨日の友は今日の敵と相成ります。

 ただこうした今川、北条との同盟関係の破綻以上に武田家にとって大きかったのは、今川家から嫁を貰っていた嫡男の武田義信が抗議の自殺を遂げたことでしょう。これにより信玄は跡継ぎを失い、後継として自分が滅ぼした諏訪家の姫から生まれた武田勝頼を指名することとなります。
 しかしこの継承は非常にややこしいものがあります。勝頼はすでに諏訪家を継承することとなっていたため、武田家を率いる立場にはなるものの、武田家の正当な継承者としては指名されませんでした。武田家を継承することとなるのはあくまで勝頼の息子であり、勝頼はその後見人としての立場しか認められないという不安定な立場にされたため、後の武田家の統率に影響を与えたとされます。

 こうして対外的にも対内的にもヒビを入れた後、信玄は長年の敵であった上杉謙信とは足利義昭の斡旋を受ける形で和睦します。これ自体はおかしいものではないものの、結果論となりますがむしろもっと早くに謙信とは和睦し、織田家や徳川家と戦っておけばよかったのにということになります。
 むしろ対上杉に集中するため、織田家や徳川家とは互いに不干渉という同盟関係を維持したことで、結果的に両勢力の拡大を許してしまい、武田が天下を取るチャンスをみすみす失ってしまったともいえます。まぁこれは予測し辛いが。

 結果的には外交方針に一貫性が余りにもなく、また今川家のように超絶仲良かった他勢力も裏切ったことから信用を無くしており、次代の勝頼の代にいろんな負債を残すこととなりました。その勝頼は上杉家の後継争いの際に上杉景勝に肩入れするなど、より一層上杉家の関係強化に取り組んでますが、時すでに遅しで織田家にあっさりとやられることとなります。
 単純にこのような反復常ならない態度から、武田家の孤立を信玄は招いたと思えます。はっきり言えば三国志の呂布のような態度もいいところで、名将と呼ばれるにはあまりにも黒すぎる気がするのですが、この点は織田家に恐れられた、うんこ漏らされた家康が「負けるのも仕方ない相手」と持ち上げたこともあって、なんか名将扱いされるようになった気がします。

 実際のところ、信玄の代に武田家は織田家とは直接ぶつかっていないことから、本当に武田家が強かったのか疑問視する向きもあります。勝頼の代には長篠の合戦で織田家に大敗してるし、またその滅亡時も信長の息子の信忠が軽く攻撃仕掛けるつもりで進軍したらめちゃよわよわで、そのまま武田家を丸ごと潰しちゃってますし。
 なお以前にもこのブログで書きましたが、武田騎馬軍については実際にはその存在は怪しいです。存在したか定かじゃないのに代名詞のように語られてきた辺り、武田家の実力誇張の大きさが知れます。

 以上のような見方から、近年に武田信玄はクズという評価が強まってきており、少なくとも以前のような完全無欠な名将という評価からは陥落しています。領国統治に関しては確かに見るべき点がありますが、上記の通り外交姿勢や拡大戦略では疑問に思うところがあり、やはりその点も評価に酌むべきでしょう。
 もっとも拡大戦略が二転三転したのは周囲と同盟結んで敵を絞ったところ、その絞った先の敵がよりによって戦国最強の上杉謙信で、どうあがいでも彼を攻略できなかったためにあります。仮に相手が謙信でなければ北進に成功してもっと勢力も拡大できたかもしれませんが、この点は確かに不幸な点だったと言えるでしょう。

2024年7月2日火曜日

アニメ史で何故か語られない東映アニメーション

 今や巨大な産業となった日本のアニメ産業ですが、その発達史を追うような気地鳴り番組ではほぼ確実に手塚治虫が作った虫プロが触れられ、ここから日本のアニメ史は始まったかのように語られます。でもってその後にはジブリが続き、近年においては評判の高い京都アニメーションがよく取り上げられるように見えます。まぁエヴァのガイナックスはこの前消滅したけど。
 しかしこうした日本のアニメ史に関する報道や解説を見ていて密かに不思議に思う点として、東映アニメーションについて誰一人として触れることがありません。

東映アニメーション(Wikipedia )

 東映アニメーションとは東映傘下で始められ現代もなお続く動画スタジオで、なんとその発足は1947年と戦後まもなくで、虫プロなんかよりもずっと早くにスタートしています。また制作した作品は「北斗の拳」や「ドラゴンボール」をはじめ、日本はおろか世界中で視聴されるトップクラスの人気作品を数多く揃えています。
 まぁ貸し切り状態の映画館が続出した「ポッピンQ」も作ってるけどね。

 そもそも、虫プロの発足自体が東映アニメーション出身者が参画しており、日本のアニメ史を語るのであれば本来なら東映アニメーションから始まるのが筋なはずです。しかしながら前述の通り、東映アニメーションは虫プロやジブリ、あとガンダムのサンライズなどと比べると、その活動や歴史について触れられることはほぼ、っていうか全くありません。
 ここで簡単にその理由について推測で述べると、一つには宮崎駿氏や富野御大などの大物というか一般にも知名度のある名物監督がおらず、いまいち注目が低くなっている可能性があります。ただそうした大物の不在以上にでかいと思うのははっきり言うと、この会社がかなりブラックなことで有名で、常に労働関連で裁判を抱えていることから、東映アニメーション出身者もあまり多く語らないのではないかという気がします。

 その辺の下りは上のWikipediaによく書かれていますが、よくアニメ業界の過重労働は虫プロに絡めて語られることが多いですが、ぶっちゃけ虫プロなんか生ぬるく感じるような激烈な話が東映アニメーションには多いです。

 ただ会社の労働環境はブラックだとしても、日本アニメ界への影響というか貢献では明らかにでかい組織なだけに、もっと東映出身者らから過去の製作現場やスタジオとしての発展史などについてもうすこし語ってほしいものがあります。

 オチらしいオチにやや欠けますが改めて東映アニメーションについて調べた時に感じたのは、意外と日本のアニメ史については作品の変遷について述べられるばかりで、制作側のスタジオやクリエイターについてはあまり触れられてきていないような気がします。この点は明らかにマイナスだと思え、今後こうした点についてももっと光が当たり、労働環境の改善を含め議論が深まればと思います。

 さて「久遠の彼方」やらなきゃ。ツンデレでヤンデレな妹キャラめちゃつよい。