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2018年1月29日月曜日

人材派遣業界のマージン率とそのデータ 2018年版ザ・ファイナル

 もはや恒例となりましたが、また今年2018年も派遣業界のマージン率を調べたので余計な前置き抜きにして調査結果の方を報告していきます。

1、マージン率とは?

派遣労働者・労働者の皆様|厚生労働省

 派遣業界のマージン率とは、派遣会社が派遣先企業から派遣スタッフを派遣したことで受けるサービス料から、派遣スタッフの賃金を差し引いて残った金額の割合です。いわゆるピンハネ率にあたりますが、このピンハネした分がすべて派遣会社の取り分となるわけではなく、実際にはここから会社運営費、派遣スタッフの保険料や福利なども支払うため、マージン率が30%だからといって派遣スタッフの給与を3割もピンハネしているということにはなりません。
 またこうした数字であることから、マージン率は必ずしも低ければいいというものではなく、会社の業態や規模、派遣業種など諸々を勘案して考えるべきものです。こうした観点から私は予備調査を含めると2014年から派遣企業各社のマージン率データを、実質一人NPOみたく収集、分析、公開しています。

2、マージン率の公開義務とは

 派遣企業各社は2012年の改正労働派遣法によってマージン率を公に、誰もが見える形で公開するよう義務付けられています。ただ公開方法については「インターネットなどで」という文言を逆手にとって「事務所に来たら公開してやる」などと言い訳を作っては公開しないところが多く、また公開義務を果たさなくても罰則などないので、上記法令の公布からすでに数年経つものの依然と多くの派遣会社はネット上でマージン率を公開していません。
 ただ、厚生労働省はマージン率の公開について2016年にガイドラインを更新し、下記文言を追記しました。

「特に、マージン率の情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること。」派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針

 この文言から、ホームページなどで情報公開をしていない場合は文句なしにコンプライアンス違反になることが確定します。こうした方針もあってこれまで公開してこなかった大手派遣会社は2016年以降から一斉に公開へ転じるようになり、マージン率の公開率は依然と低い水準にあるものの、2016年から2017年にかけてはいくらか上昇しました。まぁそれでも公開していないところの方がめちゃ多いですが。

3、調査概要

※以下、括弧内の数字は昨年の調査結果数値

・調査期間:2018年1月2日~1月28日
・調査対象企業:一般社団法人日本人材派遣協会(JASSA)の登録企業+派遣大手企業数社
・調査サンプル企業数:695社(643社)
・リストアップ事業所数:2,180拠点(1,793拠点)
・調査方法:インターネットを使い該当情報の有無を各社ホームページ上で確認。

4、調査結果

・マージン率の公開率:27.5%(24.6%)
・全平均マージン率:30.7%(30.6%)

 
2017年
2018年
説明
情報公開事業所数
1,230件
1,688件
マージン率を公開している事業所数。
情報公開企業数
158社
191社
マージン率を公開している企業数。
サンプル企業数
643社
695社
調査対象企業数。

2018年マージン率調査結果前年比較表
 
2017年
2018年
2018年該当事業所
人数
(1日平均)
平均
320人
314人
最大
23,870人
26,809人
株式会社リクルートスタッフィング本社事業所
派遣先数
平均
200件
180件
最大
10,627件
10,324件
株式会社リクルートスタッフィング本社事業所
労働者派遣に関する料金の平均額(8時間)
平均
15,049円
15,382円
最大
46,792円
53,856円
日鉄住金総研株式会社
最低
9,362円
7,040円
アクティオ株式会社 名古屋営業所
派遣労働者の賃金の平均額(8時間)
平均
10,449円
10,615円
最大
30,389円
46,196円
日鉄住金総研株式会社
最低
6,463円
5,806円
株式会社ソラスト 青森支社森岡出張所
マージン率
平均
30.6%
30.7%
最大
63.5%
60.6%
株式会社ニチイ学館 津支店
最低
16.1%
14.2%
日鉄住金総研株式会社
前期比マージン増減率
+0.9P
+0.1P
情報公開率
24.6%
27.5%
※前期比マージン増減率:昨年もデータを公開していた事業所の今年と昨年のマージン率差平均

統計処理上の注意事項
1、「マージン率」では少数点第二位以下の数値は四捨五入で処理。
2、「マージン率」が「0%」以下の事業所は統計目的上、各種計算では除外。
3、「マージン率」数値は各社が発表している直近年度のデータを引用。
4、2016年11月末以前のデータしか公開していない企業は原則、「非更新」として除外。
5、公開データの対象期間が明らかでない企業は原則除外。


・統計結果データPDFのダウンロード
・全調査データPDFのダウンロード(期間経過につき2019年4月公開終了)


5、データ解説

 以上の通り、今年のマージン率の公開率は前年比2.9ポイント増の27.5%、平均マージン率は0.1ポイント増の30.9%でした。

 公開率は6.6ポイント増加した2017年時に対し今回の2018年は2.9ポイント増と微増にとどまりましたが、これは恐らく2016年にガイドラインで公開義務が強調されたことで、2017年までに公開するところはある程度、ほとんど出尽くしたということが大きいとみています。大手派遣会社が一昨年から公開に転じたことで中小も一気に公開へ動くかなと思っていましたが、実際はそれほど動かず、今年の状況から考えても恐らく今くらいの水準で頭打ちすることになると思われます。
 一方、平均マージン率の方はというと0.1ポイント増の微増でしたが、念のため昨年にもデータ公開していた拠点でマージン率の増減比で平均を取ったところそちらも同じく0.1ポイント増で、さらに外れ値を排除する中間平均を取ったところこちらでも同じ0.1ポイント増だったことから、実質的にマージン率は去年と今年で業界全体ではほとんど変動なしと言っていいでしょう。

 このほかデータ面について一言ずつ付け加えると、相変わらず歪な会社は介護派遣大手のニチイ学館で、全体的に派遣料金に比して極端にマージン率が高く、全体でも同社津支店が全国ナンバーワンとなる63.5%のマージン率を叩き出しました。
 一方、その逆については、日鉄住金総研株式会社が14.2%でマージン率が最低でした。実際にはこれよりも低い数値の拠点もあったものの、系列他拠点との比較から行政などから支援を受けている可能性が高い数値だったため除外しました。ただそれ以上にこの日鉄住金総研、何がすごいかというと派遣料金、派遣労働者賃金でもトップであるということです。名称からしてコンサルタントの派遣をしているかと思いますが、去年まで公開してなかったのに今年から公開し始めたらあっさりトップを取ったあたり、「覆面パトカーかよこの会社」などとみていて思いました。
 普通、派遣料金とマージン率は比例関係にあるのですが、ここだけ妙な反比例数値出してきて全体の統計をかなり歪なものに変えてしまっています。散布図も作ったけど、なんか言葉の出ない表になったので今年は公開しません。

6、大手派遣会社の公開状況

 大手派遣会社は既に昨年調査時の段階でほぼすべてが公開に転じており、公開してなかったのは子会社のマイナビワークスに事業移管していたマイナビと、私の電話取材にクソなめた態度を取って取材拒否してきたライクスタッフィングくらいでした。マイナビは昨年取材時の回答通りに昨年中にマイナビワークスで情報公開しており、今年のデータにも収録しています。
 ライクスタッフィングも、広報を出せと言ったら毎回「いない」と答え、いつ帰ってくると聞いても「わかりません」、マージン率公開は義務だと言っても「それが?」で、取材拒否ですかと聞いたら「はいそうです」などとほざいてたくせに、私が記事出した数ヶ月後にはこっそりデータを公開しだしてきました。真面目にこの会社はその姿勢的に、派遣労働者の方に私はお勧めできません。

 それ以外の大手については今回特に取材もしてませんし改めて言うことありません。強いて言えば、テンプスタッフがグループ再編で社名を「パーソルテンプスタッフ」に変え、その他の会社もいくらか名称やら事業が変わって、調査するこっちとしてはややこしかったくらいです。まぁでも、大手で最初からデータ公開していたのはここだけで、何気に筆者の中国進出でお世話になった会社でもあるのでいろいろと思い入れが深い会社です。
 あの時の担当者、今の俺見たらどんな顔するだろうな……。

7、調査中に目についた会社

 基本的にこの調査では過去1年以内にデータを公開している会社が対象で、1年超もデータを更新していない会社は情報公開に不熱心だとして除外しています。ただ、会計期間が1~12月の会社は12月終了直後の1月にデータを取りまとめるのは大変だと思え、こうした会社については公開しているデータが「2016年1~12月」であっても収集しています。逆を言えば、2016年11月までのデータしか公開していなかったらその時点で「非公開企業」の烙印を押すわけです。
 そんな風な作業中、株式会社ゆーらむという如何にも緩そうな名前の会社のマージン率を見て非常に驚愕しました。というのもそのデータの対象期間が2017年1~12月で、公開日は2018年1月19日だったためです。実質2週間でデータを統計整理したということですが、自分がこれまで見てきた中で段違いに早い対応であったことから目を見張りました。恐らく普段からきちんとデータを整理していると思え、その点では信頼がおけそうな会社です。

8、調査を終えて

 上のグラフを見てもらえばわかりますが、2015年の調査時のデータサンプル数はわずか390件だったのに対し、今年は1688件と約5倍にまで膨れ上がりました。データを公開していない企業もサンプルとして加えると2000件も突破していますが、調査開始前の段階で恐らくこれくらいにはなると見越して進捗管理していたこともあり、今年はそんなに作業で苦労した覚えはありませんでした。
 ただ、昨年はこちらの調査を優先するとしてJBpressへの記事執筆は毎月2本のところを1本に減らしていましたが、今年は普通に2本書きながらこちらの調査も完遂してのけて見せました。自分でも思いますがいろいろと頭おかしい気がします。

 このようにして5年にも渡りこの派遣業界のマージン率を定点観測してきましたが、調査は今年までとし、来年以降はもうやめるつもりです。本当は今年もやるべきか悩んでいたのですが、去年に一つネタを仕込んだので、その義務感から無理やり続けました。

 では一体何故調査を打ち切るのかというと、一つはデータ公開企業が当初の5社中1社から4社中1社になるなどある程度増えて、一定の役割は果たしたかなと思えたこと。もう一つの理由は当初からあったもので、そもそもこの調査は派遣労働者に一度もなったことがない自分がやるものかと疑問で、然るべき団体なり関係者がやるべきだとずっと思っていましたが、この5年間で私以外にこうした調査をする人はとうとう誰も現れませんでした。なんやねんもう……。
 それ以上に、折角会社側と交渉する格好のデータ作ってやったのに、当事者の派遣労働者自体があまり私のデータに注目するそぶりすら見せず、なんとなく応援する対象として如何なものかと疑問を感じたことも大きいです。もちろん中にはコメントくれたりした人などしっかり評価してくれる人もいますが、それにしたってもっとやる気とか見せてもらいたいものでした。

 最後に、これまで名指しは避けてきましたがどうせ最後なのと、最近になって忘れていた感情を取り戻したので思い切ってぶちまけると、以下のブログ管理人だけは私は許すことができません。

ニャート

 何故許せないのかというと、過去にこのブログの管理人は私のデータを引用して記事を書いていますが、その際に調査中最も高かったマージン率(50%)の数値だけを引用して、さも派遣会社は給与の半分をピンハネしているかのように印象付ける記事を仕立てているからです。
 実際にはマージン率は25~30%くらいが平均で50%というのは例外もいいところです。そんなごく一部の数字だけ切り取って悪く見せるというのは卑怯この上なく、またそんな引用の仕方で私のブログ名もそのまま引用されるとあっては腹立たしいことこの上ありませんでした。いわば派遣会社を批判するためだけに、都合のいいデータだけ毟り取られたようなものです。

 昨日の記事でも書いていますが、事実や現実に対して平等かつ公平に、ありのままの視線でとらえることがライターとして肝要で、都合のいい部分だけ切り取って報じるというのはまさに最近流行のフェイクニュースそのものでしょう。
 私の記事の引用は適切なものであればもちろん何も言いませんしむしろ光栄ですが、上記ブログの引用は不適切を通り越して失礼もいいところで、捻じ曲げた事実を私のブログ名を書く当たりまともな神経とは思えず、そんな人間の書いた記事載せるBLOGOSも何考えているんだと不信感持ちまくりです。っつうか、BLOGOS経由で正式に抗議したろかな。

 こんなこと言えるのもこれが最後のマージン率調査だからでしょう。といってもまた来月には別角度でこのマージン率公開にかかわる問題をまたJBpressに書く予定です。マージン率とはそこそこ長い縁となりましたが、来年以降に私のような定点観測する人間がいないとなれば、今以上に公開率とか下がるかもなという一抹の懸念を抱えた上で、筆をおかせてもらいます。

2018年1月28日日曜日

成田空港での中国人暴行事件報道について

 例年と同じく今年も自宅では一度たりとも空調暖房を使っていませんが、さすがに室温が11℃を切ると辛く、作業も心なしかものすごくペースダウンします。データができたので本当は今日中にも厄介な記事をアップしようと考えていましたが、一人お祝いパーティと称して寿司食ってきてから作業を再開したものの、九時過ぎた時点でなんかやる気なくなったので明日に回します。
 代わりにと言っては何ですが、早めに書いといた方がいいと思うのでこちらの話題に触れます。

成田空港で航空会社職員に暴行・傷害の中国人逮捕(産経新聞)

 先の記事へのコメントで上記ニュース記事のリンクが貼られました。もしかしたら見る人によっては驚かれたかもしれませんがそのコメントへの返信として私は、「何の意図があってこんなニュースを見せたのだ」とかなりきつい口調で問い詰めています。このような態度となったのは先週にJBpressで出した記事への反発から妙なコメントを書く人間が増えていたため変な意図があるのかと勘繰ったのと、このリンクが付けられた産経の記事自体に対して強い嫌悪感を感じたためでした。
 その後の私の返信への返信で特段の意図はなかったとのことだったので、私の考え過ぎに過ぎず、コメント主の方には失礼な態度を取って申し訳ありませんでした。ただ、この記事自体への反感と、その報道姿勢についてはやはり納得いかない点が多く、その点について少し解説します。

 私はこの成田空港で中国人男性が暴行を働いた事件についてはリンクが貼られる前の段階で、中国語で記事を読んでいました。その記事の中では見間違えだったかもしれませんが、「当事者となった中国人団体は当初は羽田空港にいたが、大雪で便が欠航となり代替便に乗るため数十キロ離れた成田空港へ移動させられた。そしてそこでも欠航に遭い、空港で一晩明かした」と書かれていたと覚えていますが、現段階で中国語の記事を読んでもこの「羽田空港」の下りはなく、この点に関しては事実ではなかったようです。

航空便欠航の成田空港で中国人客が逮捕騒ぎ、中国大使館「LCC利用で過剰な権利要求は避けよ」(レコード・チャイナ)

では実際に現場ではどんな事が起きていたのですが、産経と違ってちゃんと報じているのは上のレコチャイの記事です。基本的にこの記事内容は中国語の報道内容を訳したものですが、産経よりかはきちんと当時の現場詳細が書かれています。
 私の方から簡単に説明すると、ジェットスターの成田→上海便を予約していた180人(うち日本人は5人)は搭乗手続きを終えて待っていたものの大雪で欠航となったわけですが、この際にジェットスターからは中国語で欠航を説明することはなかったそうです。また「規約に書いてある」と主張して、ジェットスター側は乗客らに対してホテルの手配や食料配布等は一切行わず、半ば放置していたそうです。事情が分かる日本人5人は自主的に空港から離れたものの、中国人乗客は状況をきちんと把握できず、また把握していたとしても大半が旅行からの帰途ということもあって対応策が取れなかったのか搭乗エリアに残っていたものの、11時に同エリアが閉鎖されることから出ていくように職員らに促されたようです。

 ここに至って事態を把握した在日中国大使館の方から職員が派遣され、ジェットスターらと手分けしながら一部乗客をホテルへ収容したものの、依然と100人近くが、恐らく取るべき手段が限られていたため空港に残って夜を明かしていました。そんな中、1人の乗客が食べ物を自販機で買おうと区切られたエリアへ移動しようとしたところ言い合いとなり、ジェットスター職員を突き飛ばして警察に捕まったというのが今回の事件のあらましです。なおこの騒動の際、ほかの乗客らは抗議の意味を込めて中国の国歌をみんなで合唱したことで騒ぎが大きくなりました。

 コメント欄にも書きましたが、何がどうであれ暴行自体は事実であり捕まった中国人男性を弁護するつもりはさらさらありませんが、少なくとも事件が起きた状況は平常なものではなく、中国語によるきちんとした説明もほとんどなかったとのことで、こうした暴行事件が起こるのもありうるといえばありる状況だったのだろうというのが私の感想です。現実に、大雪で列車が止まるたびに車掌が怒鳴られたり殴られたりするのは日本では日常茶飯事で、珍しい光景かと言われたらそうでもないでしょう。でもこっちは事件としてはあまり報じられませんし、日常的過ぎるだけに産経も多分報じてないでしょう。

 中国メディア、並びに大使館は揃ってこの事件について、「LCCはリソースが弱いことから緊急時の対応が不十分となることが多く、あらかじめ気を付ける必要がある」と踏まえた上で、騒動の際に国歌を大合唱する行為はいたずらに現地の人たちの敵愾心を煽るだけで、誉められた行為ではないと抑制するようにと比較的冷静に報じています。また中国人男性を逮捕した日本の警察らへの非難も少なくとも私には見られず、「大使館から弁護士などを派遣して収集に取り組んでいる」とだけ報じられています。

 繰り返しになりますが暴行自体はもちろん許されないものの、ジェットスターのやや不適切な対応や、きちんとした説明なく極寒の真冬の空に空港から出ていくようにと言われたりした状況を考えると、「中国人が空港で大暴れ」と詳しい状況説明なしに大雑把に報じる産経の報じ方の方こそ私は疑問に感じます。むしろ日本人ですら列車が止まったり遅延したりするたびに殴り合ってるんだから、「大雪時にはよくあること」としていちいち報じなくてもよかったのではとも思います。
 ただその一方、「日本人」が殴ってもニュースにはなりませんが「中国人」が殴ったらニュースにはなってしまうのは紛れもない現実です。外国人というのはどうしてもその不作法に対して現地メディアに注目されてしまうのは宿命でもあるため、今回の報道についてもいくらか仕方がないと思う自分もいます。

 ただこれは自分自身の意見ですが、外国人について敵対心を不要に煽る記事はやはりある程度メディアの側でも注意するべきではないかと思います。今回の件も、暴行に至るまでの過程が書かれているのと書かれていないのとでは印象が大きく変わるきらいがあり、2016年12月の新千歳空港出の騒動の際もそうでしたが、きちんと双方の立場に立った中立的な報道を心がけるべきだと外国人絡みの事件に関しては思います。そういう意味で今回の産経の報道は、自分には強い悪意を感じる報じ方です。
 仮にこの状況が日本人だったら、現地メディアはどのように報じるのか。こうした場合に日系メディアは今回の中国メディアのように比較的冷静に報じれるのか。結局はこうした議論に行き着くでしょう。

 あー、明日記事書くの嫌だなぁ。

2018年1月26日金曜日

上海雪景色


 日本はなんか最近大雪だワッショイ的な報道をよく見かけますが、ここ上海でも昨日は雪が降り、今朝も積もっていました。でもって自分はいつも通りにスーツ(春用)にコートも着ず、手袋だけ装備して出勤しました。なんだろうかこの、「ひのきのぼう」だけ持って冒険に出かけるかのような姿は。
 上の写真は今日の東方網の記事から引用したものですが、上海雪景色ともいうべき写真がたくさん載せられています。ただ注目すべきは写真の「白い」箇所ではなく、「黒い」方の道路です。

 見てわかる通りに、建物の上には雪が積もっているにもかかわらず道路にはほぼ全く雪が積もっていません。実際に私が今朝出勤(春用スーツ)した際に道路に雪が余り積もっておらず、「荒れだけ降っていたのだからもっと積もるかと思っていたのに」という考えがよぎりました。一方で、植え込みや塀の上などにはそこそこ雪が積もっていて、「もしかして既に雪かき済み?」とそこで気が付いたわけです。




 私の予想通りというか、まだ雪が降り続けていたにもかかわらず上海市内の環境関連公務員、警察、果てには武装警察まで動員して夜を徹して雪かきを行っていたようです。

階段には滑らないように敷物を設置 

 昼頃には自転車乗る人も

 実際に今日、あれだけ雪が降ったというのに事故などのニュースはほとんど聞かれず、朝のラッシュ時もほとんど混乱は起きていませんでした。ただ寒かったからか、半フレックス制な自分の職場では従業員の出勤はいつもより遅かったですけど。
 個人的に感銘したのはこちらのメディアがちゃんと雪かきしている公務員らを取材して、その活動をきちんと称賛しているということです。私の周りでもこれらの報道を見て警官らはよくやったと述べる人が多く、ちゃんと見るべきところを中国人はきちんと見ていると思えました。

お隣さんの雪かき時間、仕方がないのでしょうか。(発言小町)

 一方、と言ってはなんですが、日本では最近上のように「近所の雪かきがうるさい」というクレーム話をよく目にします。前にも行政の人間が早朝に雪かきしていたら時間をずらせないのかなどと身勝手な意見を主張されたなどという報道があり、なんだかなという気持ちにさせられました。
 もちろんこういうクレームはごく一部の人間、だとは思いたいのですが、幼稚園の騒音で裁判が起きたり、実際に公園で子供が遊ぶのをほとんど禁止したりする例などを見ていると、先ほどの「ごく一部」は依然と比べると確実に増えているという印象があります。

 最近よく同僚とも話していますが、日本全体で心も貧しくなっているように見え、何でもかんでも中国を贔屓にするつもりは私もありませんが、裁判中であっても「あ、ごめん、今裁判中なう」みたいに裁判官が普通に携帯電話を取ったりするくらい社会全体がおおらかな中国が心の豊かさでも勝ってきているのではと思うような節があります。まぁもちろんそれは、生活が豊かなごく一部に限るということには間違いありませんが。

2018年1月24日水曜日

エイリアンよりも恐ろしい事

 英国の雑誌が2009年に行った「最高の続編映画ランキング」で、SFホラーシリーズの金字塔である「エイリアン2」がトップに選ばれていたそうです。

エイリアン2(Wikipedia)

 エイリアンシリーズは私も一通り見ていますが、確かにこのシリーズは2が最高傑作だと思います。ストーリーはもとより映像表現や演出が見事で、娯楽作品ではあるもののテーマ性などでも劣っておらず今見ても十分見ごたえある作品だと考えています。


 そんなエイリアン2で登場人物の中でひときわ目を引いたのは、エイリアンが跋扈する植民地で多々一人生き残っていた少女、ニュート(上記画像)だと思います。そのストーリー上の立ち位置はもとより演じた子役がかわいい上に演技も上手で、特にいっちょ前にヘルメットを被って並み居る屈強な海兵隊員たちの前で、「この子だって一人で生き残ってきたのよ」とシガニー・ウィーバーに言われて無言で敬礼してのけるシーンなど、覚えている方も多いのではないかと思います。実際この子役の演技は高く評価され、この作品で演技賞も受賞しています。

 ただこの子役、キャリー・ヘン氏はその後は演技を続けずに芸能界から引退してしまったため、その他の作品に出演することはありませんでした。しかしエイリアン2の愛らしい姿を覚えている人も多いためか、「あの子役はどうなっているの?」とネット上で尋ねる人は現在も少なからずいるようです。

エイリアン2で惑星LV-426の生き残りの女の子……(Yahoo知恵袋)

 上記リンクの知恵袋はまさにこのキャリー・ヘン氏のその後を尋ねたものですが、回答者が書いているように現在は小学校教師をしているようです。また上にリンクを付けた本人のWikipediaページには比較的現在の彼女の写真も載せられているのですが、先の知恵袋で質問した方はこの現在の姿について、「歳をとる方がエイリアンよりも恐ろしい事が分かりました(笑)」という感想を洩らしています。
 よく「ハリウッド映画に出演した子役の成人後の姿(悪い意味での)」と名の付く特集が各所で組まれており、「ターミネーター2」のエドワード・ファーロング氏とか「ホーム・アローン」のマコーレ・カルキン氏なんかはもはや常連ですが、自分にとっては上記の二人よりもさっきのキャリー・ヘン氏の方がインパクトがありました。人って、こんなに変われるんだな。

 それにしても先ほどの知恵袋の、「歳をとる方がエイリアンよりも恐ろしい事が分かりました(笑)」は本当に名言だと思います。少し言い方を変えて、「時の流れはエイリアンよりも恐ろしい」というセリフを私もどっかで言ってみたいと思って機会を探って入るのですが、なかなかこんなことを言う機会はなく、今に至ってもこのセリフを口に出すことが出来ずにいます。
 あと応用として「○○はプレデターよりも恐ろしい」という言い回しも作れないかと考えましたが、あまり具体的な内容が浮かばず○○に入れる語句を作ることが出来ずにいます。国語の問題とかに使えないだろうかこれ。

『エイリアン2』ナイフシーンはガチだった!キャメロン&キャストが30周年で同窓会(シネマトゥデイ)

 上の記事はエイリアン2の30周年同窓会を報じたもので、時の流れがエイリアンよりも恐ろしいことを証明したキャリー・ヘンも出席してます。それ以上に驚きなのは、アンドロイドのビショップがテーブルに広げた海兵隊員の指と指の間にナイフを高速で突くシーンは特撮ではなく、一切の編集無しで撮影したものだったという事実です。怖がる海兵隊員のあの顔は演技じゃなかったんだな。

  おまけ
 他ではあまり言及されていませんが、こちらはホラーゲームの金字塔である「バイオハザード2」は改めてみると、「エイリアン2」を相当参考にして作られたのではないかと思う節があります。どちらも第1作目は「恐怖からの脱出」に重きが置かれていたのに対し第2作目では「恐怖への打倒」こと、戦闘をメインとして置くようになりました。そしてバイオハザード2のクレア編では、エイリアン2のニュートのように、ゾンビがうろつく街を逃げ回って生き残っていた少女を保護して一緒に脱出する展開となっており、偶然ではないよなぁと思う場面が多いです。まぁ特に何か問題あるわけじゃないですが。
 むしろ注目すべきは最初に挙げた「脱出」から「打倒」へのテーマ変更で、両シリーズともにその後も続く大ヒットを遂げたことからも、ホラー物で第2作目を出すならこうしたテーマ変更の仕方がヒットの要因かもしれません。

  おまけ2
 エイリアンシリーズは4で一旦途切れた後、最近になって第1作目の監督をしたリドリー・スコット氏が「プロメテウス」、そしてその後の「エイリアン・コヴェナント」という続編作品を作られましたが、結果から言えばこけてしまい、計画されていたこの次の作品は打ち切りになったそうです。
 私も「プロメテウス」は見ましたが、見た理由というのもマーゴット・ロビー氏に並んで贔屓にしている女優のシャーリーズ・セロン氏が出ているからでした。見た感想としては、エイリアンは出てこないし、寝ていた所を無理やり起こしたムキムキの青い色したオッサンが大暴れする映画でしかない気がして、あかんなこりゃって感じでした。そのため、シャーリーズ・セロンも出てないので「エイリアン・コヴェナント」は見ていません。

2018年1月22日月曜日

我は求め訴えたり……

 コメント欄で猫娘がかわいくなった第6期「ゲゲゲの鬼太郎」に言及するコメントが来ましたが、この新しい鬼太郎については時代的に、かわいい女性キャラ出さないとどうにもならないから仕方ないかなと私は見ています。その一方、どうせリバイバル作るなら平成も終わりを迎えようとしている時代なだけに、「悪魔くん」の方がいいんじゃないかなという妙な感想も覚えました。

 悪魔くんの詳細についてはWikipediaなどで見ればわかるので省略しますが、私は1989年に放映されたアニメ版の悪魔くんを見ていました。こちらの悪魔くんは社会風刺的意味合いの強かった初代原作とは違って勧善懲悪な如何にもな少年ヒーローものでしたが、悪魔くんとそれに付き従う十二使徒が妖怪だったり西洋の悪魔だったり南米っぽい妖精だったりと和洋折衷バラバラであったのが印象的で、キャラ的にもみんな立っていたと思えて何故かこのところ再評価しています。

 ちょうどこのアニメが放映されたほぼ同時期に当たると思いますが、現在では「ペルソナシリーズ」に系譜がつながる「女神転生」というゲームとその原作となった小説もこの時期に出ていたと思います。この女神転生の特徴はグールやベヒモスと言った悪魔も、エンジェルやスサノオといった神々もすべてひっくるめて「悪魔」と総称しているのが特徴的なのですが、この概念は悪魔くんでも共通しており、世界で有名な悪魔のメフィスト・フェレスも、妖怪の百目も、ぶっちゃけUMAなこうもり男に鳥乙女もまとめて「悪魔」と総称しています。
 作者の水木しげるがそこまで意識していたのかまではわかりかねますがある意味これは、味方となれば「神」であり、敵対すれば「悪魔」だが、本質的にこの両者はどちらも同じような神霊的存在であることを暗喩しているようにも見えます。さっきの女神転生なんかはまさにこれがテーマです。

 現実に「悪魔学」という神話を辿ることで民族の盛衰や歴史の変化を追う民族学では、神霊がどのようにその言い伝えが変わっていくかという変化を捉える学問です。一例を挙げると、バビロニアの豊穣をもたらす神の「バアル」は、バビロニアと対立していたイスラエル地方のキリスト教やユダヤ教では邪心と扱われ、名前も「ベルゼブブ(バアルゼブブ)」に変えられ、「蠅の王」という立場に変えられています。元は同じ存在ですが、味方であるか敵であるかで姿を変えており、そう考えると神と悪魔は相反するものというより同じ存在を言い分けてるだけで、本質的にはやはり「悪魔」と総称する方が適切な気がします。
 こうした価値観から私はよく「神は信じないが悪魔と妖怪はいると信じている」と公言しています。また年齢が下の者に対しても、「この世に自分を助けてくれる神様はいないが、不幸へ引き込もうとする悪魔はたくさんいる」などと教訓めいた説法も繰り返したりしています。もっとも、そんな悪魔を従えるような悪魔くんなら別かもしれませんが。ああ、もっかいみてみたいな悪魔くん。

 最後に本題から外れますが、友人の嫁がやっている「陰陽師」というゲームで茨木童子という鬼が出てくるのですがこれについて、「最近は女性として描かれることの多い鬼」だと説明しました。実際に今昔物語で女性に化けて源頼光四天王の渡辺綱に復讐を仕掛ける話はあるのですが、これに限らなくても私は日本の鬼の性別はすべて女性なのではないかと思う時があります。大江山の酒呑童子もこの例にもれず、こちらは元はプレイボーイの男性であったと書かれていますがむしろ逆で、プレイボーイに恋文送っていた女性の怨念、もしくは送っていた女性そのものではないかと疑っています。
 こう思うのも楠圭氏の「鬼切丸」(続編がクソ過ぎる)の影響かもしれませんが、なんとなく日本の伝承に出てくる鬼の話を見ていて、鬼は女性性が強い存在のように感じられます。

  おまけ
 「太鼓の達人」の「おに」は難しすぎる。

2018年1月21日日曜日

気の長い猫



 特に書くことないのでこの前見た動画を貼っておきます。
 見てみればわかりますが、この画面の鳥は実にいやらしく寝ている猫の耳元で鳴き続け、それに対して猫はいくらかひっぱたくものの手加減をしています。もし自分が同じ立場なら全力で殴り倒しかねず、そう考えると自分よりこの猫の方が気が長そうです。

2018年1月18日木曜日

煽り見出しの裏テーマ

 最近思うけどどうして自分はこうも無駄に働き続けるのか不思議です。わかる人にはわかるでしょうがこのところこのブログは2日刻みで更新をしており、もちろんこれには理由があります。っていうか今週週末は友人と音楽ライブにも行くし、調査も進めなきゃいけないし、何より次のJBpress記事書かないといけないしで気が狂いそうです。

どこがおもてなしだ!中国に完敗の日本のサービス(JBpress)

 ハイそんなわけで昨日配信したのが上の記事です。当初は中国の自動車メーカー紹介記事でも書こうと実際に前取材も進めていたのですが、実際に執筆へ移る直前のある夜、もしかしたら夢だったかもしれませんが寝る直前に、「せや、中国のサービス事情を日本以上と書いたら反発する人多くてアクセス稼げそうやー。前にブログでも同じネタ書いとるし、取材なしでぱっぱと書けるわこんなもん」と思いつき、予定変更でこっちの記事が仕上がったわけです。やっぱこういうのは締め切りギリギリになるほど閃くものです。
 今回のこの記事はその内容から大きく反発されるだろうということは初めから想定してはいましたが、配信当初からヤフコメはどんどん伸びていって500件超えたあたりからちょっとビビりました。その後も伸び続けて現時点で1300件を超えていますが、ここまでの反応があるとは全く想定してはいませんでした。どうせどう書いても反発されるんだからアクセス数を稼ぐために煽り系にしましたが、やっぱWeb記事は見出しが何より大事です。

 それにしても毎回そうですが、頑張って取材した記事より全く何も取材せずにその場の勢いで書いた記事の方が注目されてしまうのは非常に複雑です。まぁ業界関係者の間では、取材した記事の方が良く褒めてもらえるのですが……。

 記事内容については読んでもらえばいいので割愛しますが、ヤフコメを見る限り最も批判がなされている見出し、特に「見出しと内容が一致しない」という指摘について少し解説しようと思います。結論から言うとこれは意図的なもので、反発されたらOK、何か意図を疑われたら二重丸、「もしかして」という想定までされていたらパーフェクトで、逆に何も感じさせられなかったら大失敗という評価区分で臨みました。

 当初この記事の見出しは、「中国の方がマシ?日本の劣悪なサービス分野」でした。こちらも煽るような見出しですが最終版に比べればまだ抑えてあり、尚且つ「おもてなし」という言葉も入っていません。最終版の見出しは編集部から提案されたもので、「おもてなし」という単語を入れるべきかで少し悩んだものの、記事自体の内容と「おもてなし」は直接関係しないものの、裏テーマにはむしろ直結する言葉となるため、これで行くことにしました。
 ちなみにこれはブログの方で顕著ですが、私が挑発的な言葉を用いる際はほぼ確実に相手に特定のキーワードなりを言わせて言質を取ることを目的としています。そういう意味では今回は目論み通りの結果に至ったと考えています。

 もったいぶらずに書くとこの記事の裏テーマとは、「日本語における『サービス』という言葉の定義と範囲」でした。この裏テーマは見出しと、記事内容を見た後の反応で確かめ、これから書く記事の根拠とする目的でこの見出しにしました。

 今回の記事へのコメントで最も多かった内容として、「書かれているのはサービスというより営業形態、商習慣だ」、「おもてなしとは意味が違う」、「中国人店員の態度の話かと思ったら全く違った」等ですが、こうした反応を敢えて持たせるために今回このような見出しに私はしたわけです。そもそも何故見出しと内容に齟齬を感じる人が多かったのかというと、それもこれも日本語における「サービス」の定義範囲が極端に狭いからです。

あまり体力が残されていないためちゃっちゃと書くと、日本人が「サービス」という単語を聞いて思い浮かべるのは十中八九「接客態度」で間違いないでしょう。店員、従業員、営業担当の態度や言葉遣い、礼儀、お辞儀の仕方で、今回の記事で取り上げたような契約サービスや保守・アフターサービス、カスタムオーダーを思い浮かべる人はまずおらず、そもそもこれらが「サービス」という言葉に含まれるとは考えない、それどころか否定する人もいるのではないかと思います。その上で、サービスの単価は無料であるという意識も強く、お金を取ったらもはやそれはサービスではないと考えるケースも少なくない気がします。
 そのため「サービスが悪い」というとこれも意味は「従業員の態度や応対が悪い」と取ってよく、実際これ以外の使われ方をするのは極稀でしょう。同時に「サービス競争」というのもどっちかっていうと従業員をどこまでへりくださせるかの競争になることが多い気がします。

 今回、私がサービスが劣悪だと考える日本の業種として銀行、不動産、携帯電話を挙げましたが、唯一不動産に関してはサービスというよりかは指摘の通りに商習慣の差という方が適切だと考えますが、他二つに関してはやはり「サービス」というくくりで語るべきだと考えます。そう考えるのも、サービスというのは対人接客だけでなく、今回の記事で槍玉に挙げた契約関連サービスや先ほど挙げた例、そして業務システムも含まれると私は考え、少なくとも英語や中国語の「サービス」にはこうした意味が含まれています。というよりむしろ、英語や中国語のサービスにおける「対人接客」の割合はむしろ低く、業務全体の効率性や合理性、バランスを言い表すことの方が多い気がします。
 いくつか例を出すと、「価格は安いがアフターサポートが少ない」は「価格は高いが並のサービス」を上回るとか、飛行機のチケットのように追加料金でキャンセル権利が得られるなどの複数の選択肢が設けられているとか、こうした値段と内容の一致性、そして各ニーズに応えられる選択肢の量などがサービスの評価基準であると私は考えます。

 いったんまとめると、日本人の「サービス」という言葉が示す内容は「接客態度」に異常に集約されており、その定義と範囲が極端に狭すぎる傾向があると言いたいわけです。これがどんな弊害をもたらすのかというと、本来サービスというくくりで見たり評価したりする各業者の業務、特に効率性についてあまり目がいかず、「あそこの店員の態度は……」などと接客態度しか評価基準とせず、明らかに消費者にとって不合理な対応や業務形態については誰も批判せず、野放しとなっているのではと、私には日本社会がこのように見えます。
 それこそPCデポの解約騒動のように大きな事件になれば批判されますが、普段の生活で業務形態をとって「サービスが悪い」と対応改善を求める声が上がることは日本ではほとんどないし、メディアも「サービスの劣悪な業界ランキング」みたいにして取り上げることはありません(中国はよくやっている)。
 特に強く言いたいのは、今回私が取り上げた3つの業界についてこうして正面からそのサービス形態を批判するメディアはこれまでほとんどいなかったことです。何故あまり批判されてこなかったかというと比較対象がなかったからで、同じ業界の企業同士ならばともかく、業界全体ともなるとその良し悪しを図ろうにも比較対象がないからそのサービスの悪さが認知できない上、「同業他社もそうなのだから」で片づけられていたからです。だからこそ比較対象として私は中国の事情を持ってきたわけです。

 仮に日本語の「サービス」の定義がもっと広く、「接客態度」だけでなく先ほど挙げた経済合理性、ニーズへの柔軟な対応、手続きの簡便さも含まれていれば、「サービス競争」というのはもっと多角的に分析されていたような気がします。しかし何度も言う通り、サービスの定義があまりにも狭すぎるため、業務全般の良し悪しを多角的に評価、認知することが日本では極端に少ない気がします。言ってしまえば、「日本人はサービスの視野が狭い」と私は言いたいのです。

 実際、ヤフコメを見る限り私が今回の記事で挙げた3つの業界の「悪いサービス例」を多くの日本人は「慣習」や「営業形態」と受け取ったわけですが、サービスというのは価格、人員、システム、効率性、合理性、一致性、即応性、柔軟性などの多くの要素を総合的に考慮して評価すべきだと私には思え、少なくとも「接客態度」だけで評価を決めるべきものではありません。さらに言えば、中国を含め世界はこうした価値観でサービス競争を繰り広げて研鑽を深めており、接客態度だけに注力したまま他の面がおざなりとなっている日本のサービスはどんどん置いていかれ始めているのが現状なんじゃないかと、誇張ではなく私はそう考えています。
 その上で、「接客態度だけよくて他はゴミみたいなサービス」にお金を払う人間はいるのか、国際競争力の観点から見てどうなのと言いたかったわけです。だからこそああいう見出しにして、私が認識する「サービス」と日本人の抱く「サービス」には大きな距離があることを端的に示し、証明するため、日本がその「手厚い」と自称するサービスの代表的キーワードとしている「おもてなし」をそのまま残したというわけです。

 なお私の中では、本当に「おもてなし」するというのであれば顧客に不利なアドバイスや説明なんかすることはなく、またカスタムオーダーにも柔軟に対応するだろうと考えるため、今回の記事の見出しに据えても特に問題はないとも考えています。もっとも読んだ人を最初に「おもてなし=接客態度&サービス」というイメージへ誘導させるというのが主眼でしたが。

 こうした今回の裏テーマ、意図については自分でいうのもなんですが非常に高いハードルを掲げていると自覚しており、それとなく無意識でもいいから、「なんかこの書いてる人とサービスの定義が違うな」とだけでも意識してくれればいいかと当初考えていました。ただコメント欄を見ていると、極数人ではありましたが私の意図していた内容をきちんと受け取っているかのような、具体的には「日本のサービスは接客態度に非常に偏っている」というようなコメントを書いている人がおり、これは想定外で且つ素直にうれしく感じました。
 結論を書くと、日本人のサービスの定義は接客態度に偏り過ぎており、そしてそれは、今日の記事では省略しますが多方面で競争力を落とす要因となっており、日本の生産効率を下げる原因の一つにもなっています。この日本人のサービス観を証明する上では、まぁうまくいったなというのが今回の記事の収穫です。

  おまけ
 NewsPicksのコメントを見ていると記事末尾に書いた、「これら業種のサービス改善には外資参入が必要」という記述に賛同する人がそこそこいて、見る人は見るなぁと感じるとともに、「中途半端に文字数余ったから適当に書いて埋めた記述なんだけどなぁ(;・∀・)」ということを言うべきか悩みました。

  おまけ2
 ヤフコメの中で、「比較対象を中国とせず、欧米にしておけば病的な人たちの反発を買わなかったのにね」というコメントがあり、「やさしいこと言ってくれるじゃん(・∀・ )」とか思いました。まぁ事実その通りでしょうがその一方、比較対象が中国じゃなければここまで反発を買えない、もといアクセスを稼げないという事情もあるのでなかなか難しいところです。

  追記
 改めてヤフコメ見てると「だったら中国に移住しろよ」とか「住めよ」って書く人多いけど、「いや、ずっと中国住んどるからこんなん書いとるんやろ」と返信したくなります。っていうか日本に年間半月も帰らんし。
 自分の記事のヤフコメには自画自賛にならないよう一切コメントも、「そう思う」ボタンも押していませんが、一回全部に返信したろかな。