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2016年10月30日日曜日

中日新聞の記事捏造事件に対する処分について

 昨日一仕事終えた自分へのご褒美としてきゆづきさとこ氏の「棺担ぎのクロ。~懐中旅話~」の2巻をKindleで購入した所、タブレットPCでうまくダウンロードできないばかりか妙なエラーが出て再ダウンロードすらできなくなり泣きながら布団に入りましたが、ノートPCでダウンロードできないか試したところどうにかうまくダウンロード出来て読むことが出来ました。Amazonのレビュアーの一人が「大人のための絵本」と評していましたがまさにその通りで、読んでて何度も泣きそうになりました(ノД`)
 そんな私の心温まる読書録はさておき、久々に激怒させるニュースを見て血圧上がりました。

<中日新聞社>子どもの貧困関連記事の検証掲載 記者ら処分(毎日新聞)
「新貧乏物語」の削除問題を検証(中日新聞)

 ニュース概要は上のYahooニュース配信の毎日の記事の方が見やすいですが私の方から簡単に説明すると、中日新聞が「新貧乏物語」というタイトルで組んだ特集記事連載の「子供の貧困」をテーマにした複数の記事で貴社が事実内容並びに写真を捏造していたとのことです。この捏造記事は今年五月の紙面に掲載されほぼ掲載直後に捏造が発覚していながら紙面でのお詫び掲載は今月となる十月まで一切なされず、でもって捏造問題(中日自身は「削除問題」と言葉を変えているのがムカつく)の検証記事を今日30日に掲載したわけです。
 細かい内容は上記リンク先の検証記事内容を読んでもらいたいのですが、その捏造内容の幼稚さもさることながら最終的な社内処分の内容は正直目を疑いました。毎日の記事の記述をそのまま引用すると、「同社は、管理・監督責任として臼田信行取締役名古屋本社編集局長を役員報酬減額、寺本政司同本社社会部長と社会部の取材班キャップをけん責、執筆した記者を停職1カ月とする懲戒処分を決めた。いずれも11月1日付。」とあり同じ内容が検証記事にも書かれていますが、これを見て皆さんはどう思うでしょうか?

 私個人、というより元記者としての常識で語れば執筆した記者は問答無用で退職以外の処分は有り得ないと思えるほか、管理責任者であるキャップも更迭か降格に準ずるような処分を受ける以外有り得ないでしょう。こうした記事捏造や誤報については共同通信社が業界で最も厳しいのですが、過去の事件を検索すればわかりますが共同であれば執筆者は即刻クビになり、編集長クラスも直接自分が見たり指導していなくても確実に更迭されます。管理責任者の処分については状況次第で考慮の余地もありますが、これだけの捏造をした記者がクビにならず、わずか一ヶ月の停職で済むなんて自分の常識ではまずもって有り得ません。

 しかもこの中日の捏造記者、取材対象の子供がさも貧乏で苦しく、小学生ながら惨めそうに働くような写真を自作自演して撮影しており、やり方が非常に悪質です。なおこの写真捏造の経緯について検証記事では記者とカメラマンの意思疎通に問題があったなどと書いていますが、この程度の取材でカメラマンなんて使わせてんじゃねぇよと見ていてイライラしました。これくらいは記者本人にカメラ持たせて撮らせれば済むだろうに無駄金使いやがって。
 もう一つの捏造記事に至っては中学生の少女が部活の合宿費一万円が出せなくて寮に宿泊できなかった(実際には支払って宿泊している)と少女本人に取材せずに書いてたそうですが、こうした貧困物の記事というのは非常にセンシティブで記事内容によっては取材対象の子供が学校などでいじめられるきっかけになることもあるだけに、何故こいつらはさらりとこんなこと書いているんだと言葉を失いました。それこそこのケースだと、記事を読んだ周りからすれば少女が嘘ついて貧乏をかこついているようにも見えかねず、非常に危険な記述にしか思えません。

 またお詫び記事の掲載が遅れた理由として中日新聞は、「写真の問題発覚後から男性記者が精神的に不安定になり、詳しく事実関係を聞くことができない事情もあった。」と言い訳をかましていますが、自分らは病気だろうななんだろうが相手の事情なんて一切気にしないで普段取材しているくせに身内には随分甘いんだななんて、反吐が出るような言い訳に見えます。第一、こんな悪質な捏造をやった記者に同情の余地なんてなく、精神が不安定になろうがおかしくなろうがこういう輩はどうせこの先生きてたって世の中にとって百害あって一利ないんだから自殺にまで追い込んだっていいってのに何をか言わんやです。というより、この記者は十一月一日付で停職一ヶ月都の処分ですが、五月に捏造が発覚してからも記事書いているんじゃないかと思われるのですがその点については何も言及しておらず、そもそもクビ以外有り得ないというのにまだ仕事をさせている時点で組織としての中日新聞の異常性を感じざるを得ません。

 たとえば取材者が嘘をついたためなどの無自覚な誤報であれば処分はともかく再起のチャンスは必要です。しかし意図的に、しかもセンシティブな内容で写真や事実を捏造する行為はジャーナリストの世界ではただの一度たりとも許されず、やったが最後退場してもらう以外有り得ません。何故ならこういうことを一度やった人間は確実に再びやらかすことが目に見えているからです。
 今回の中日新聞の検証記事を読む限りだと再発防止策について何も触れていないことからまるで反省している素振りがなく、最初に捏造が発覚した後もほとんど検証せずに別記事の捏造に気づくまで一ヶ月程度かかっており、自浄作用が全く働いておらずその処分内容の軽さから言っても真摯に反省しているとは私にはとても感じられませんでした。多方面にケンカ売るのも我ながらどうだと思いますが、外部検証委員として参加した木村太郎氏、吉田俊実氏、田中早苗氏、魚住昭氏の四名の方々は本当にこれでいいとでも思っておられるのでしょうか。私だったら「処分が軽すぎ無反省だ」と断じた上で、今後の対策について何も言及していない点などを挙げて余計な火の粉を浴びないように委員を降ります。しゃらくさいのではっきり言うが、この四人はこの件で何を検証をしたというのでしょうか。

 そんなにキャリアあるわけじゃなく偉そうなことを言える立場でありませんが、ジャーナリストの仕事を私は神聖なものと考えています。強引な取材や横柄な態度で周囲の人間を困らせることはいくらでもありますが事実を正しく報じるという姿勢があればこそそうした行為もある程度は許容されるもので、大前提となる真実を捏造するような行為は人殺しよりも許されない行為であるとすら思います。
 自分が記者だった頃にはまさにこういう姿勢を徹底的に叩き込まれ、それこそ仮に捏造でもしようものなら多分ボコボコにぶん殴られて窓から放り投げられただろうと思うくらい厳しく言われました。そうした信念は昨日今日作られるものではなく、今回の処分内容を見る限り中日新聞の今の姿勢は昨日今日作られたものではないんだなと感じました。

  おまけ
 記者時代に記事内容がしょぼかったりして上司に怒られた際によく、「お前のせいでまた血圧上がるだろこの野郎! 俺、病気だから血圧上がったら大変なんだぞ!」と怒鳴られていましたが、記事内容がしょぼいことには反省しつつも、(血圧上がって大変になんだったら毎晩酒飲み歩くなよ……)と、心の中で反論していたのはここだけの内緒です。

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