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2023年11月23日木曜日

中国では疎外論が知られていない?

 なんか中国で謎の咳が流行っているという報道が出ていますが、自分の周りでも風邪ひく人がこのところ増えています。ただ症状としてはそれほど重くなく、気温の変動が激しいために体調崩している人が多いだけのではないかと思っておりそれほど深刻視していません。

 話は本題ですが、以前に自分の友人がこのブログの記事で「疎外論について書いた記事が一番面白かった」と話してくれたことがありました。詳細はリンク先の14年も前の記事に書いていますが、全共闘世代ならいざ知らず、現代においてこの疎外論について触れられることは実際そう多くはないでしょう。

 ここでもこの疎外論について簡単に説明すると、要するに人間がその利便性のために作ったシステムや価値観が時代を経たり場面が異なったりすることで、概念だけが独り歩き(疎外)して逆に人間を束縛してしまうという現象のことを指しています。卑近な例で用いると、「経済」という概念はもともとは食料などの物資を公平かつ効率的に分配するために編み出された概念でしたが、現代においてはたびたび「経済」を維持するために生活の我慢や犠牲が強いられたりすることがあり、そのような状態を「疎外」と呼んだりします。

 この疎外論は共産主義概念の創立者、ではないけど大きく体系化したマルクスが提唱した概念で、彼のが科学的社会主義思想は現代においては実際に応用できないし応用したとしてもうまく機能しない無価値なものとほぼ完全に判定されていますが、疎外論だけに関しては今でも十分通じるというか、普遍的な概念として私を含め高く評価する人がいます。
 ちなみになんで私がこの疎外論について詳しいかっていうと、かなりガチな共産党闘士時代を経て温厚となった大学の恩師がこの方面に詳しく、授業の合間にこうした社会主義豆知識をよく教えてくれたからです。現在連絡を出せず、本当にこの恩師には申し訳ない気持ちがします。

 それでこの疎外論ですが、「社会主義国の中国なんだから一般教養としてみんな知ってるはずだよな(*‘∀‘)」などと思って周りの中国人に「疎外論ってすっげーよな(^ω^)」などと話題に出してみたところ、みんなしてキョトンとした顔され、若干空気を悪くさせることが何度かありました。
 これはどういうことだと思って色々調べたところ、調べ方が悪かっただけかもしれませんが、どうも中国ではこの疎外論はほとんど知られていないような気がします。中国の大学ではマルクス主義精神の一般教養科目が必須科目となっていて大学生は全員講義を受けるようになっているのですが、肝心要のこの疎外論については教えられていないようで、なんかすごいもったいない気がします。

 あくまで私個人の見解ですが、中国は疎外論を教えたらまずいと思っているわけではなく、マジで単純に理解している人が少なく、学界においてもほとんど知られていないんじゃないかとみています。そうなると中国のマルクス研究はいったいどんなレベルなんだといいたくもなってきますが、まぁ実際中国もマルクス主義が空辣な概念だということはほぼ理解しており、だから時代を経たこともあってあんまりみんな興味ないのかもしれません。
 それを言ったら日本でも、私の学生時代と比べてもマルクス主義に関する研究や議論がさらに後退したなという気がします。私の時代でも酔狂な人間はいくらか学んでおり、2008年のリーマンショック時に格差議論が過熱した際は「今だからこそマルクス」という全く実態に合っていない空辣な宣伝文句とともにマルクス本が売り込まれていましたが、あの時代を最後に、日常生活でマルクスの名を見ることはなくなった気がします。

 私個人としては、やはり資本主義を比較分析するうえではマルクス主義経済システムの知識は少しはもっておいた方がいいと思い、経済学に興味ある人にはぜひ手に触れる程度で学んでほしいと思っています。マルクス主義を学ぶことで、「資本主義には市場原理があって限界があるが、社会主義の搾取には限界がない」というある中国農村調査の結論の意味が分かるようになるし。
 ちなみにこの結論を中国人の同僚に話したら、「なるほど(゚д゚)!」とすごい真面目な顔して納得してました。多分あの同僚はきちんと資本主義経済システムとマルクス主義経済システムを理解しているから、あの結論をすぐ理解できたんだと思う。

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