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2021年9月20日月曜日

相続税は廃止すべきか存続すべきか

相続税を廃止した国が先進国ばかりwww(ぶる速)

 上のまとめ記事は大分前に見ていながらこれまで紹介するのが遅れました。結論から言うと、私も相続税はこの際廃止すべきだという立場です。

 相続税がなくなると金持ちは金持ちのまま、貧乏人は貧乏人のままという階層論に発展しがちですが、端的に言って、相続税がある現在においてもそれはほとんど変わりがありません。でも相続税をなくすとさらにその傾向が加速するのではという人もいますが、富裕層がその富を維持する率は確かに多少上がるかもしれませんが、中産層が無産層に落ちなくなる率も高まると私は見ています。

 上のまとめ記事でも言及されていますが、現代においてはガチな富裕層ほど資産を海外に移すなど対策を採ることによって、相続税から免れやすくなっています。実質的に、日本国内で相続税を維持しても富裕層からとれる量というのは年々狭まりつつあるのが現状です。この辺は清武氏の「プライベートバンカー」なんかでよく描かれています。
 一方で住宅などで1~2億円程度の資産を持つ中産層はというと、海外に資産を移すとなると運用益よりコストの方が大きくなるため資産を保全できず、結局のところ現在の相続税はこの手の中産階級が主な対象となってきています。中には資産が住宅だけで現金がなかった場合、相続税を支払うためだけに自宅を手放すなんて言うケースも実際にあると聞きます。こういうのを見ると、かなり不毛な感じがしてなりません。

 そもそも日本の相続税制度は、相続する人数によって課税額が変わってくるというやや妙な仕組みになっています。例えば親が死んで遺産を相続する際、遺産額が同じでも相続者の人数が1人の場合と3人の場合とでは、後者の方が税金として取られる金額が少なくなります。基礎控除が絡むことによってこうなるのですが、いまいち納得感のない制度だと思うし実際にそう指摘されています。
 またこの基礎控除の計算を始め相続税の税額計算は非常にややこしく、不動産なども相続するとなると価値の鑑定も必要となり、こうした税額計算や査定においても尋常ならざるコストを官民ともに負担しています。仮に相続税がなければこの手のコストは全部不要となり、また富裕層の流出を防ぐことによって国内に現金が流通することも考えれば、私としては相続税がない方が国としてはメリットがあると考えます。

 さっと調べたところ、相続税の全体税収割合は年によってばらつきがあるものの、大体2%前後で2兆円はあるようです。確かに2兆円は惜しいと思うものの、富裕層が日本国内に留まることによるメリット、中産階級の没落を防ぐメリット、税額査定にかかる社会的コストの排除のメリット考慮して、この際相続税廃止に世の中変わってくれればと思えてなりません。
 敢えて妥協するならば、不動産に関しては一般の不動産取引のように相続を譲渡と捉えて、譲渡に付帯する登記費用や税金は今のまま残すべきでしょう。さすがにこれなくしたら逆にややこしくなりそう(;´・ω・)

2021年9月17日金曜日

次の総理は河野氏で決まりか

 自民党総裁選は野田聖子氏の立候補によって四候補の争いとなりましたが、結論から言えば河野太郎でもうほぼ決まりじゃないかと見ています。あとは選挙後の党内運営を見越して、どれだけ他の候補に差を付けて勝つかの争いでしかないでしょう。仮に圧勝、特に一般党員投票で大多数の票を得られた場合、そのまま選挙後の支持率にも直結してくるため、上手くいけば小泉元総理のように党内重鎮と対立しながらも高支持率を維持して長期政権を築けるかもしれません。

 それだけに自民党内の他の議員からすると、今やどれだけ河野氏を応援してポストをもらえるかという猟官競争と化しているのではないかと思います。河野氏応援を表明している代表格としては石破氏がいますが、なんとなく大臣ポストではなく幹事長や政調会長など党内ポストを狙っての行為かもしれません。また本日には株価における空前の「菅ゲイン」を引き起こした菅総理も河野氏応援を表明しましたが、ちょっとこれは自分にとってはやや意外であったものの、かねてから有力ポストを河野氏に託すなどしていたことからあらかじめ後継者として目論んでいたのかもしれません。

 逆に、河野氏の最大の敵は同じ候補の高市氏ではなく、そのバックの安倍元総理でしょう。はっきり言えば、安倍元総理は河野氏を目の敵にしており、というのもどんな行動に出るかわからないところがあるだけに、森友問題などを蒸し返してくる可能性を恐れているのだと思います。逆を言えば、今の安倍元総理は政策や人物の力量ではなく、自らの保身のためだけに応援対象を決めている節があります。議員を続けているのも同じで、きついこと言えば堕ちたものだという風に見えます。

 そんな目の敵にされている河野氏ですが、前述の通り他の候補と比べると次に何してくるかわからない行動に予想ができないタイプの人間です。なので総裁選を前に今は脱原発などに関する発言を封印していますが、無事に総理に就任した暁には再び脱原発に動く可能性は十二分にあるでしょう。
 ただ、自分が行おうとしている政策を事前に表明しないのは、普通の政治家だったらマイナス点ですが、この脱原発に関する河野氏の今の態度はむしろ彼にしては成長したものだと私には感じます。それこそかつては空気を読まずに発言することが多かったですが、こうした状況をわきまえて一部の行動を封印、っていうか我慢するようになったのはそれはそれで政治家としてプラスな点でしょう。私個人としては原発の全放棄は難しいと思うものの、脱原発に向けた取り組みは必要と考えるだけに、いい意味で河野氏が裏切ってくれることを期待しています。

 その他の候補に関していうと、チキン岸田に関してははっきり言って党内外から総スカンでしょうし、あれだけの優柔不断ぶりを見れば次の選挙でも右往左往した態度で自民党全体への支持も落としかねません。ちょっとひどいかもしれませんが、彼みていると鳩山元総理がたまによぎります。
 対抗馬の高市氏については、彼女、というより実際には安倍元総理が手綱握っており、政策方針は安倍-菅ラインが維持される可能性が高いです。ただこれまで見ていて高市氏自身がそれほどこれはと感じる政策発言をしたのを聞いたことがなく、またカリスマ性の点でもやや見劣りするだけに、党内をまとめるのも難しい気がします。

 最後に出てきた野田氏については、最初に断っておくと私自身がこの人のことをあまり好ましい人物とは思っていません。そもそもこの総裁選も推薦人を確保できないと予想されていましたが、ギリギリになっての今回の立候補を見ると、何か思惑があってのことかと陰謀を疑いました。
 具体的には、自ら立候補することで特定候補の票を割る、分散させることが狙いかと疑いました。相手はもちろん河野氏でしょう。もっともそんな寝技もできる人じゃなければ、票を割らせるには黒幕の人物選定はあまり上手くない気がします。それこそ石破氏が立候補していたケースの方が、河野氏に来る票は大きく割れていたでしょう。

 日本は今頃台風でしょうが、こっちは秋らしい涼しい天気となりました。その一方でやらなきゃいけない書類処理が滞って若干ストレス抱えたまま、明後日からの3連休を迎え、その間にまた記事を一本作らなきゃといけないプレッシャーが嫌です。
 なお中国は明日土曜が出勤日となる代わり、月曜が休みに、でもって火曜が中秋節の祝日で3連休となります。辺に1週間ペース崩される方が嫌で、本当最近仕事辞めたくなってきてます。

2021年9月16日木曜日

変形しなくなった戦闘機

 年齢を重ねた結果なのか、最近やたらΖガンダムに出てくる「アッシマー」という機体を高評価するようになりました。なんでアッシマーがいいと思うのかというと、

・機体が堅牢(散弾ではなぁ)
・変形する
・空飛べる
・構造がめちゃシンプル

 上記の特徴からです。

 特に変形機構に関してはゼータガンダムとか昔のプラモだったら変形させてる最中にボロボロパーツが落ちるくらい構造的にはかなり無茶というか複雑な変形のさせ方だったのに対し、アッシマーは前屈しながら土下座するような感じで元の姿からは想像できない丸っこい形に変形します。しかも変形の仕方がかなり単純なことから機体が堅牢というのも非常にうなずけるし、何より劇中で見せた超短い変形時間とやばいくらい空を飛び回る航空性能から見て、地味に兵器としてみたらかなり優秀な機体なんじゃないかと思うようになりました。

 そうした判断から、最近会社のPCで適当なフォルダを作る際、「アッシマーキャノン」とか、「陸戦型アッシマー」、「リックアッシマー」などと無駄にアッシマーのバリエーションっぽい名前をつけることが増えてます。ティターンズがエゥーゴに負けたのは、アッシマーのバリエーションを増やさなかったからだと最近は思うようになってきました。

 そうした真面目なガンダムジョークはさておき、アッシマーに限らずΖガンダムではたくさんの変形メカが出てきます。これはその前に放映されていたトランスフォーマーがバカ受けしていたため取り入れたと言われていますが、そのトランスフォーマーも元をたどれば、当時の戦闘機業界が空前の変形ブームに沸いていたからこそ変形を取り入れたと考えられます。

可変翼(Wikipedia)

 1970年代において、「可変翼のない戦闘機なぞ戦闘機にあらず!」みたいな風潮がちょっとあったようです。可変翼とは文字通り、飛行中に翼の角度が変わる戦闘機を指し、代表格は現代においても人気の高いF-14ことトムキャットですが、それ以外にもMig-23(よく「ミグ兄さん」と呼んでる)とか英国のトーネードなどもあります。
 飛行中と一言で言っても、水平飛行しているのか旋回、上昇しているのか、あと速度によって望ましい翼の角度や形は異なります。そうしたケースバイケースに対応させればもっと早くなるんじゃね的に生まれたのが可変翼システムで、実際コンピューターが自動制御で翼を可変させるF-14なんかはその機体の大きさに反して桁違いな格闘能力を持ち合わせていたそうです。

 しかしその一方、可変翼だとゼータガンダムじゃないですが変形機構を載せるために構造が複雑化し、部品点数も増え、また可変部分が壊れやすくなるなどデメリットも少なくありませんでした。実際、F-14なんかは運用コストが桁違いに高く、米国以外で採用したのは皮肉にも後に米国の敵となるイラン空軍だけでした。
 そうした運用面の事情に加え、時代の進化に合わせてエンジンパワーが桁違いに向上していった結果、翼の空力性能なんか気にしなくても強いエンジンでぶっ放せばどうとでも機体を制御できるようになり、「可変翼っていらなくね?」的なノリで80年代には早くも新規の開発機体は出てこなくなりました。そういう意味で、ガンダム世界と違って現実世界では変形する兵器は今やほとんどありません。

 ただ、最初のアッシマーの話に戻すと、地上を動き回りつつ空も飛べるという兵器というのがもしあれば、かなり便利というか有意義な役割を持てます。それこそアッシマーが量産の暁には、日本は米国にも勝てるんじゃないかって気がします。
 もちろんガチなアッシマーじゃなくても、空陸両用、というより空も飛べる準戦車みたいな兵器でも十分です。特に垂直/短距離離着陸(V/STOL)できる機体は現代においてもハリアー、F-35を始め、航空機の運用で重きをなす長い滑走路が不要となり、戦術の幅が極端に広がることから現代においても重宝されています。ハリアーなんか、トムキャットが退役した今でも現役だし。

 そういう意味では仮に戦闘機をベースとした場合、マクロスに出てくるガウォーク形態、戦闘機から陸上に着陸できる形態への変形機構であれば意外と価値を持つのではないかという期待があります。現実に今の時代、戦闘機は高い速度が出せること以上に、低速度でも失速せずに着実に地上のターゲットを狙える攻撃機の方が需要が高いとされ、A-10なんかそれのおかげで立派なご長寿となってますし。
 つまり、空も飛べる軽戦車みたいな兵器で、上空から目標地点に降り立って機銃を打てるような変形可能な兵器なんかあったらいいなとか思っています。時代はなんか空飛ぶ車ばかり取り上げますが、むしろ地上を歩ける/走れる飛行機の方がずっともっと価値があるでしょう。無論、「空飛ぶアッシマー」の方がもっと価値があります。

 最後に、もう何年も会っていない友人がいますが、もし再開できるなら「飛ばないアッシマーはただのアッシマーがー」と伝えてみたいものです( ´Д`)=3

2021年9月14日火曜日

朝日新聞の相次ぐ記事取り下げについて

 昨日今日と台風で自宅勤務となり、昨日はまだパソコン取りに会社行ったけど今日はマジでコンビニとの往復だけで若干存在が薄くなっている感じがします。
 っていうか何もなければこのまま有休取って寝てようと思ったのに、結構仕事くるしさ。

 話は本題ですが、何故かこのところ朝日新聞が外部からの指摘を受け、記事を取り下げる事態が2件連続で起きています。取り下げの経緯についてはそれぞれ報道している上記リンク先の記事に譲りますが、報じられている内容と経緯を見る限り、どちらも編集上のミスとは思えない経緯です。はっきり言ってしまうと、意図的に記事内容や写真を差し替えた捏造である可能性が高いと私は見ています。

 ただこの件で本当に呆れるというか怖いと感じるのは、捏造した事実以上に、記事や写真内容が事実と異なるにもかかわらず掲載したということについて、朝日側が一切担当者を処分していないという点です。それこそ共同だったら後者のツキノワグマの県であれば一発で担当編集長のクビが飛ぶ内容であり、共同ほど激しくしないにしても、やってないのだろうけど担当者への厳重注意や減給について一切発表しないというのは真面目に神経どうなっているのかと疑います。
 まぁ実際に記事を直接編集した奴は解雇以外ありえないのですが、これもしてないんだろうな。

 今回の連続取り下げ、並びに処分について一切発表しない点をみると、こう言っては何ですが、朝日社内ではこうした記事捏造が一般化しているのではないかと疑いを持ちます。もっともそれ言ったら裁判でも捏造と認定された筋金入りの従軍慰安婦関連捏造報道の頃からじゃんって話になるのですが、さすがに上記2件の取り下げで処分をやらないってのは、社内にいる人も捏造したってバレなきゃいいと取るに決まってるでしょう。ちょっといくら何でも、緩すぎる環境ではと思えてなりません。

 正直に言って、自分は去年まではそう感じなかったのですが、今年に入ってから文春が政治関連報道でスクープを連発するのを見て、大手新聞が本当に弱ってきていると感じるようになってきました。かといってウェブメディアはやはり人材不足もあり自分みたいな外部ライターに記事書かせたりするよりほかなく、また取材ネットワークも弱いという弱点もありますが、大手新聞はそうした取材ネットワークという既存資産すらどんどん陳腐化しつつあり、人材育成も正直言って上手くない、っていうかそろそろ業界特有の表現にカビが生えてきていることに気が付いていないようにも見え、今後5年間で劇的に力を落とすことになるのではとちょっと思うようになってきました。

 その間にウェブメディアが力をつけるかと言ったらこちらも悲観視しており、雑誌メディアがどう躍進するかに日本のジャーナリズムはかかってくるでしょう。

2021年9月13日月曜日

伊達記事の裏側

中国で馬賊になった伊達政宗の子孫、その豪快すぎる一生(JBpress)

 というわけで今日配信された自分の記事ですが、朝から見ている限りランキングは2位で、多分終日ランキングでも2位でしょう。1位は田中美蘭さんのDHCの韓国市場撤退に関する記事で、確かに内容的にこっちの方が価値が高いと自分も感じます。

 それはさておきこの伊達順之助ことダテジュンの記事ですが、真面目にこの記事は自分を含めごく限られた人間、下手したら一桁程度の人間にしか書けない記事内容だと考えています。というのもこの記事、紹介しているダテジュンは日本人ですがその活動は中国が中心であり、尚且つ存在自体かなりマイナーな人物です。自分もつい先日に趣味で買った、参考文献に挙げている「華族総覧」という本で初めて目にし、ネットで検索してもWikipedia二は記事あるけどそれ以外の言及となるとほとんど見られなかったことから、記事化でできると判断するくらいレアポケモンな存在の人物です。
 そんなダテジュンの記事を何故自分などごく限られた人間にしか書けないのかというと、突き詰めて言えば中国語で資料が読めないと事実内容が追えないというのが根拠です。

 前述の通り、ダテジュンは結構昔の人物で、彼の長男が書いた史料などはありますがその足跡を追った資料となるとかなり限られてきます。また書籍ならまだいくつかあるものの、ネット上となると彼に関する日本語での言及はほとんどなく、私が記事で言及した掖城事件についても、Wikipediaでは足跡欄に一文だけ入っていますがその詳細に関しては一切触れられていません。
 では何故掖城事件に関してここまで私が書けたのかというと、中国語のウェブサイトを読むことができたからです。参考文献に中国版Wikipediaこと百度百科も入れていますが、これ以外にも掖城事件に関しては地元なだけに紹介している中国記事は結構あり、それらに関して一通り目を通した上で記事を書いています。

 なお一部の中国語記事ではダテジュンこと張宗援について、「元々は日本人で姓は大島であり、皇族に連なる人物」と明らかに間違った説明をしている記述も目にしました。そのため複数の記事を比較し、説明記述が重複していて確実性の高い部分のみ記事に採用しています。
 ちなみに多分大島というのは別の大陸浪人と間違え、皇族云々は華族の定義を勘違いして書かれたのではと思います。

 話を戻すと、前述の通りダテジュンは中国での活動がメインですが、その中国における行動や業績についてはあまり日本語媒体では描かれていません。むしろ中国語媒体の方が充実しており、それら中国語媒体情報に触れられ、尚且つこんなマイナーな大陸浪人を追ったりするほど歴史的好奇心が強く、それでいて記事にまとめ上げられる人物となると、ちょっと偉そうですが本当に限られてくると思います。
 そういう意味で、この記事は歴史に造詣が深く且つ中国語が読めるという自分の強みというか真価がはっきり表れた記事だと考えちます。真面目にこの方面であれば自分は他の作家にない圧倒的な強みがあり、きちんと深みを持たせていけばこの分野である程度の地位は築けるのではとも考えています。まぁほかに書きたい内容あるからやらないけど。

 記事冒頭の提籃橋監獄についても、ここでダテジュンが処刑されたと知ったのは中国語媒体からです。なおここは一応軍事施設なので、当たり障りないよう割と遠目に写真撮った上で、誰が撮影したかについては触れないようにしました。まぁこの辺りは戦時中のユダヤ人のゲットーもあって軽い観光地化しているから、これくらいなら多分大丈夫だろうと踏んでるけど。

 以上をまとめると、この記事自体にはそこまで思い入れはない、というか記事にも書いている通りその粗暴さは目に余るし、現代であれば言い方悪いけど金嬉老みたいな人間になっていただろうと思えてダテジュンに対してはあまり好感を持っていません。ただ自分のスキルと強みを抜群に生かした記事だとは認識しており、その点では「上手く自分を使いこなした記事」という風に評価しています。

2021年9月12日日曜日

個人情報の国家管理に関する思想の対立

 前回までの記事で、米中は既に自国IT系企業を通して国内外の個人情報収集に明け暮れ、それに対し欧州はIT大手規制を名目に米中の動きに抗していると主張しました。地味にこの辺が現代における主要な思想対立ではないかとみており、即ち、個人情報をどこまで国家が一元管理し、共有すべきなのかというテーマが今の世界に起きている主要な対立じゃないかと考えています。

 結論から言えば、個人情報を国や企業が一元管理化した方が、国家管理面での効率はすこぶるよくなります。マイナンバーが未だ普及し切れていない日本を尻目に、国民IDを配布している企業は既に多く、中国に限りません。しかし中国の場合はこの国民IDを自国のIT大手に二次利用させることによって、コロナの市中感染の激減、ワクチン管理などに成功しています。
 先日報道が出ていましたが、日本が12月にもワクチン接種のスマホ証明書を発行するというニュースを見て、「まだやってなかったの?」と正直思いました。っていうかなんで初めから組まないんだそういう大事なのとか思います。

 こうした個人情報の一元管理、二次利用の程度においては恐らく現代世界においては中国が最も広範で、厳格という意味では北朝鮮じゃないかと思います。こうした一元管理の結果、政治的に不規則な発言は目を付けられ、政府にたてつく人間もその行動は既に監視済みであるためいろいろ妨害されることとなります。そうした面が、日本人からしたら反対の理由となるでしょう。
 その一方で、犯罪者の摘発や、証明書などの各種行政管理コストなどの面で、上記のような監視社会国家は圧倒的な優位を持ちます。未だ日本が実現できていない領収書の完全電子化、連番制も既に中国は実現しており、ぶっちゃけ管理会計に関しては好き勝手に損金に入れられやすい日本より中国の方がカチッとしてます。

 短くまとめると、個人の目線はさておき、国家単位の目線に立つならば、国民(+外国人)の個人情報を国が一元管理、収集する方が圧倒的にメリットが大きいです。そしてそれはそのまま、国家としての強さに直結し、今後の世界においてはどれだけ一元管理化がなされているかが国としての勝敗を分ける大きな分水嶺になる可能性があると私は見ています。端的に言って、中国のようなことをやるの方がどんどん強くなっていきやすいということです。
 とはいえ、中国みたいなパノプティコンに居たくないという感情も強いでしょう。そんな人たちの折衷案として、「国は個人情報を収集してないよ♪」と言って、自国の企業に収集させて企業から召し上げるのが米国型パノプティコンと言えるでしょう。個人情報をどれだけ収集するかIT大手企業が決めてるだけと経済の自由を建前にして、自由と監視を米国は両立できるというわけです。

 もっとも中国も米国も、自国内ならまだしもそれを他国の領域内でもやるからこそ問題であり、こうした国際間での個人情報取得に待ったをかけ、両国の覇権主義にセーブをかけようとしているのが冒頭の欧州の動きです。前回記事でも書いた通り日本はこうした個人情報を巡る動きに無頓着ながら、マイナンバーも拒否するくらい個人情報収集に拒否感を示しており、その一元化の遅れ具合から見ても状況的には欧州側の立場に立っているように見えます。

 ただね、真面目に今後こうした管理面での一元化に遅れれば遅れるほど、国家として著しい弱体化につながる可能性が高いと私も見ています。欧州側もそう見越していて、あくまで規制するのは国境を跨いで個人情報を収集し続けるIT大手であり、時効kのIT系企業または国家機関が情報を収集することに対して対策を採っているようにも見えます。それに対し日本はこのままでいいのかってことです。

 言いたいことをはっきり書くと、どこまでの個人情報をみんなで公開し合って共有するか、そしてそれをどんな風に管理運用するかを、もっと国全体で議論するべきだと思います。管理面に関して中国は堂々と「俺(政府)がやっちゃるけん」と言ってて、米国は企業側に若干任せていますが、私個人としては日本政府は確かに筒洩れしやすくあまり信用できませんが、それでも企業よりはまだ政府がこの手の情報は管理すべき立場だと思え、政府に任すべきだという立場を取ります。

 その上で、差し出すべき個人情報としては生年月日に3親等までの血縁関係といった情報とかより、何よりも給与情報だと思います。リアルタイムで給与収入情報を得て課税額とか管理できれば、確定申告なしで公平な課税の実現できたら、日本のこの手の管理コストを大幅に浮かせられることができます。ついでに言えば脱税も減る。
 あとは犯罪対策で、もっと監視カメラ増やしてせめて顔認証システムくらい入れろと言いたいです。


 上の記事見てまた呆れてたのですが、例の硫酸男事件で監視カメラの映像から捜査員が見抜いたって話ですが、多分中国ならもっと早く効率的に捕まえてたことでしょう。というのも顔認証システムが発達してて、最近なんかアプリと連動させることで支払い時に一切スマホをかざさずとも顔認証だけで支払えるようになっています。
 監視カメラの映像確認は労力半端ないと「ハコヅメ」で書かれてましたが、こういうところこそITを運用して効率上げてかなきゃいけないのに何言ってるんだこいつらと、記事書いた産経は何も悪いわけじゃないですが、日本の警察の頭はどうなってんだとか正直思いました。

 私個人は自由主義を標榜していて監視社会はないならないで済ました方がいいとは思っています。とはいえ、犯罪にしろ管理コストにしろ、なくなることで社会が大きなメリットを得られ、それによって救われる人がいるというのなら、多少の自由の制限は仕方ないという風に考えています。
 このように、どこまで自由への制限を許容するのかが、今まさに起きている思想の対立点であるように思え、この議論を避けて着地点を見誤ると、それこそ帝政ロシアみたいな結末になるのではないかという危惧があります。

2021年9月11日土曜日

個人情報収集を巡る米欧の対立

 去年あたりからいろんなサイトで「これこれこういうわけでサイト訪問履歴とか使うけど同意してね」的にOKボタンを押すよう要求するポップアウトが出るようになっているかと思いますが、これは主に欧州のクッキー法(クッキー規制)の影響によるものです。サイト訪問者に対し意図しない個人情報の収集をしてはならないという規制で、主な対象は言うまでもなく米国企業のGAFAどもです。

 一体何故こうした措置を欧州が採ったのか。表向きはプライバシーの保護の観点から個人情報収集に暴走するGAFAを抑えるというのが建前ですが、この考えも無きにしも非ずも、その本質は米国IT大手の独占体制を崩すという経済的目的、また国の安全保障を念頭にした防衛目的の方が本音であるでしょう。
 先日友人にこの概念を少し説明したところ、「雇用も影響するのでは?」という指摘がありましたが、実にもっともな指摘でした。IT産業の場合、自動車産業などと違ってサービス提供先(この場合は欧州)にIT大手はそれほど多くの従業員を雇用していません。なので欧州側からしたらIT大手を叩くだけ叩いても、自動車産業などと違って自国の雇用にはほとんど影響しないこともあり、制裁金とかいくらでも課せられる背景があるでしょう。

 前回の記事で私は、米国と中国はその自国企業のITサービスに関して一見すると鋭く対立しているように見えるが、本質的には同じ目的で動いており実は思想的には全く一緒だと指摘しました。それに対し、上記の通り欧州は米中とは真逆で、企業(バックには国がいる)による個人情報の収集に対し「それはいけない」的に批判的なポジションにあります。そういう意味では、ITサービスの規制に関して秦の対立構図は米国対中国ではなく、米中対欧州ではないかというのが私の見方です。

 それに対し日本については、はっきり言ってこの問題に関しては無頓着です。思想がないと言ってしまえばそれまでですが、中国は信用できないけど米国は信用できるという前提があるため、米系IT企業に個人情報を抜かれまくっても全く気にしません。むしろ進んで抜かれているようにすら見えます。
 一方で中国に対する警戒心は強く、一時話題になった中国系アプリや携帯電話に「個人情報を抜く機器や機能がある!」といった報道には、自分が見ている限りでは一部誇張というか事実にそぐわぬ報道が見られました。まぁ中国は抜いてるだろうけど。

 一見するとこの対立はごく単純で当たり前のように見えますが、地味に現代における主要な思想対立なのではないかという風な気がします。資本主義と共産主義の対立が共産主義の敗北で終わった後(90年代)、資本主義の中でも統制経済派と新古典派の対立が始まり(00年代)、リーマンショックで実質的に親古典派が敗北(どの国も政府財政の拡大、為替介入が一般化=政府の経済的役割の拡大)して以降、自分が考える世界的な思想の対立はまさに上記の米中と欧州の対立じゃないかと思います。
 IT大手規制の何が思想対立なのかとお思いでしょうが、具体的に言えばこれは、個人情報の保護と政府・経済効率のどちらを重視するかの対立じゃないかと見ています。その上で、この思想対立の観点で見るならば、さっきはどっちつかずと書いた日本は明確に欧州側、つまり個人情報保護重視側に立っていることになります。本人は意図せずですが。

 次回はその辺の、個人情報取り扱いを軸にした思想対立について解説します。