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2021年9月12日日曜日

個人情報の国家管理に関する思想の対立

 前回までの記事で、米中は既に自国IT系企業を通して国内外の個人情報収集に明け暮れ、それに対し欧州はIT大手規制を名目に米中の動きに抗していると主張しました。地味にこの辺が現代における主要な思想対立ではないかとみており、即ち、個人情報をどこまで国家が一元管理し、共有すべきなのかというテーマが今の世界に起きている主要な対立じゃないかと考えています。

 結論から言えば、個人情報を国や企業が一元管理化した方が、国家管理面での効率はすこぶるよくなります。マイナンバーが未だ普及し切れていない日本を尻目に、国民IDを配布している企業は既に多く、中国に限りません。しかし中国の場合はこの国民IDを自国のIT大手に二次利用させることによって、コロナの市中感染の激減、ワクチン管理などに成功しています。
 先日報道が出ていましたが、日本が12月にもワクチン接種のスマホ証明書を発行するというニュースを見て、「まだやってなかったの?」と正直思いました。っていうかなんで初めから組まないんだそういう大事なのとか思います。

 こうした個人情報の一元管理、二次利用の程度においては恐らく現代世界においては中国が最も広範で、厳格という意味では北朝鮮じゃないかと思います。こうした一元管理の結果、政治的に不規則な発言は目を付けられ、政府にたてつく人間もその行動は既に監視済みであるためいろいろ妨害されることとなります。そうした面が、日本人からしたら反対の理由となるでしょう。
 その一方で、犯罪者の摘発や、証明書などの各種行政管理コストなどの面で、上記のような監視社会国家は圧倒的な優位を持ちます。未だ日本が実現できていない領収書の完全電子化、連番制も既に中国は実現しており、ぶっちゃけ管理会計に関しては好き勝手に損金に入れられやすい日本より中国の方がカチッとしてます。

 短くまとめると、個人の目線はさておき、国家単位の目線に立つならば、国民(+外国人)の個人情報を国が一元管理、収集する方が圧倒的にメリットが大きいです。そしてそれはそのまま、国家としての強さに直結し、今後の世界においてはどれだけ一元管理化がなされているかが国としての勝敗を分ける大きな分水嶺になる可能性があると私は見ています。端的に言って、中国のようなことをやるの方がどんどん強くなっていきやすいということです。
 とはいえ、中国みたいなパノプティコンに居たくないという感情も強いでしょう。そんな人たちの折衷案として、「国は個人情報を収集してないよ♪」と言って、自国の企業に収集させて企業から召し上げるのが米国型パノプティコンと言えるでしょう。個人情報をどれだけ収集するかIT大手企業が決めてるだけと経済の自由を建前にして、自由と監視を米国は両立できるというわけです。

 もっとも中国も米国も、自国内ならまだしもそれを他国の領域内でもやるからこそ問題であり、こうした国際間での個人情報取得に待ったをかけ、両国の覇権主義にセーブをかけようとしているのが冒頭の欧州の動きです。前回記事でも書いた通り日本はこうした個人情報を巡る動きに無頓着ながら、マイナンバーも拒否するくらい個人情報収集に拒否感を示しており、その一元化の遅れ具合から見ても状況的には欧州側の立場に立っているように見えます。

 ただね、真面目に今後こうした管理面での一元化に遅れれば遅れるほど、国家として著しい弱体化につながる可能性が高いと私も見ています。欧州側もそう見越していて、あくまで規制するのは国境を跨いで個人情報を収集し続けるIT大手であり、時効kのIT系企業または国家機関が情報を収集することに対して対策を採っているようにも見えます。それに対し日本はこのままでいいのかってことです。

 言いたいことをはっきり書くと、どこまでの個人情報をみんなで公開し合って共有するか、そしてそれをどんな風に管理運用するかを、もっと国全体で議論するべきだと思います。管理面に関して中国は堂々と「俺(政府)がやっちゃるけん」と言ってて、米国は企業側に若干任せていますが、私個人としては日本政府は確かに筒洩れしやすくあまり信用できませんが、それでも企業よりはまだ政府がこの手の情報は管理すべき立場だと思え、政府に任すべきだという立場を取ります。

 その上で、差し出すべき個人情報としては生年月日に3親等までの血縁関係といった情報とかより、何よりも給与情報だと思います。リアルタイムで給与収入情報を得て課税額とか管理できれば、確定申告なしで公平な課税の実現できたら、日本のこの手の管理コストを大幅に浮かせられることができます。ついでに言えば脱税も減る。
 あとは犯罪対策で、もっと監視カメラ増やしてせめて顔認証システムくらい入れろと言いたいです。


 上の記事見てまた呆れてたのですが、例の硫酸男事件で監視カメラの映像から捜査員が見抜いたって話ですが、多分中国ならもっと早く効率的に捕まえてたことでしょう。というのも顔認証システムが発達してて、最近なんかアプリと連動させることで支払い時に一切スマホをかざさずとも顔認証だけで支払えるようになっています。
 監視カメラの映像確認は労力半端ないと「ハコヅメ」で書かれてましたが、こういうところこそITを運用して効率上げてかなきゃいけないのに何言ってるんだこいつらと、記事書いた産経は何も悪いわけじゃないですが、日本の警察の頭はどうなってんだとか正直思いました。

 私個人は自由主義を標榜していて監視社会はないならないで済ました方がいいとは思っています。とはいえ、犯罪にしろ管理コストにしろ、なくなることで社会が大きなメリットを得られ、それによって救われる人がいるというのなら、多少の自由の制限は仕方ないという風に考えています。
 このように、どこまで自由への制限を許容するのかが、今まさに起きている思想の対立点であるように思え、この議論を避けて着地点を見誤ると、それこそ帝政ロシアみたいな結末になるのではないかという危惧があります。

2 件のコメント:

ルロイ さんのコメント...

日本社会で生きてると、アメリカのような巨大企業も、中国のような強権政府も生まれ得ないのではないかという感覚を持ちます。
日本では組織が大きくなると内部で縄張り争いを始めて分裂するからです。
そのためGAFAのような企業は生まれ得ず、得た個人情報はおそらく自分たちだけが得をするために使われますし、現在の民主主義を貫く限り政治家はそれぞれの縄張りに利益誘導して自分の島の民のみを囲おうとするので、そもそも国民全体を管理するという意思を持ってない印象があります。

動物である限り縄張り意識はあるものだと思いますが、日本では古くから全体効率よりも身近な小集団を優先する傾向が強く、民族として一元化というものに興味がないようです。
立地的にアメリカや中国ほどの人口になり得ない国なので、それで当然なのかもしれませんが、そういう背景もあるからこそかつて欧米に対抗するために天皇を神格化して一つにまとめようとしたのだろうなと思います。

花園祐 さんのコメント...

 自分から見ていて日本人って集団になると組織保護以外の一致した目的をほぼ全く持たない傾向があるように見えます。そのため社会への貢献や新技術の開発など、チームで一つの目的に向かえず、なんか妙な組織保護にのみ走って派閥争いをしがちです。大目的を持つのが苦手なのかもしれません。
 そういう意味では、大目的を共有化できていると思うのは若干宗教入っている京セラ、次いでオーナー家意識の高いトヨタですね。昭和期ならまだ復興という目的で日本が一致して動けましたが、現代においてはやはり厳しいでしょう。