先週は月曜が中国だと祝日だったので土曜は1日しっかり休養を取り、日曜と月曜に頑張って仕事してもあまり影響ありませんでしたが、今週土日は2日合わせて6時間程度しか働いて無いものの、疲労からか目が痛いです(´;ω;`)ウッ…
話は本題ですが、誰もが知る不適切会計という言葉を生み出した東芝において先々週、去年の株主総会の疑義に対する調査報告書が出ました。各メディアでも大きく取り上げられましたが情報がやや断片的なのと、内容が実際かなり複雑ということもあって、いまいち核心が掴めなかったため、合計121ページある公開された調査報告書を先週から徐々に読み進めていました。
同じように核心掴めていない人もいるのではないかと思うので、あくまで自分が理解した範囲内でこの調査報告書の内容をここで簡単にまとめることとします。
1、提起された疑義は二つ
まず今回の調査は東芝の株主である、旧村上ファンドの幹部が起ち上げたエフィッシモというファンドが提案したことにより実施されました。調査対象は2020年7月末の東芝株主総会の運営が構成であったのかについてで、具体的な疑義として以下の通りです。
1、投票締切日間際にきちんと郵送された議決権行使書が無効とされたのは意図的な処理か
2、大口株主に対し株主提案を退けるため経産省と組んで非合法な圧力をかけていなかったか
このうち1に関しては東芝は無罪で、議決権集計業務を請け負っていた日本株主データサービス会社の不手際によるものだと断定しています。一方、2に関しては提起された疑いの通り、何の法的根拠もなく経産省職員が実質脅迫とも取れる恫喝を行って一部大口株主の議決権行使を妨げ、東芝側関係者もこれを把握していたと断じています。
2、議決権集計問題
先ほどの二つあるうちの一つ目の疑義についてまず解説すると、株主総会後、発送した議決権行使書の一部が票に反映されていなかったことに一部株主が気付き、東芝にとって不利となる株主提案の賛成票を意図的に「締め切りまでに届かなかった」ことにして、無効票としたのではないかと指摘されました。
この点について今回の調査チームが調査したところ、集計業務を日本株主データサービス会社が会社が作業負担の軽減、迅速化のため、行使書の郵送を請け負う地元郵便局と協議して、通常の配送方法ではなく、特定の時間帯に前後に届いた行使書をまとめて配送するという手段を取ったことで、本来なら有効とされる票が一部無効とされていたことがわかりました。
詳しい経緯については報告書に書かれていますが、確かに締め切りまでに届かなかった票も混ざってはいたものの、一部には通常の配送方法なら締め切りまでに間に合っていた票も含まれていて、この件に関しては完全に業務請負側の処理によるミスであったとしています。
また東芝側についてもこの処理ミスに関しては全く把握していた素振りは見られないそうです。その上というか、仮に無効票が有効となっていたとしても、東芝側に有利となる会社側提案の票比率がむしろ増える結果となるため、意図的に無効とする動機も見当たらなかったそうです。
そのためこの件に関しては東芝は無罪であるとしており、私もこの見解に同感です。
3、きっかけは東芝ITサービス株式会社の循環取引
続いて二つ目の株主総会への経産省による干渉案件ですが、すべてのきっかけは小見出しに掲げた東芝ITサービス株式会社の循環取引です。ここでは先ごろ2015年から2019年にかけて24件も架空の循環取引をしていたことがわかり、この件に関して東芝も調査して報告書を出しています。しかしこの報告書に対し株主のエフィッシモが内容が不十分であるとして再調査を要求し、どうしても聞かないってんなら株主権の行使も辞さないと伝えてきました。
こうしたエフィッシモ側の態度に警戒感を強めた東芝経営陣は、「そうだ、日本政府を使って奴らを叩き潰そう」的な結論にどうも至ったようで、その手段として改正外為法が選ばれ、泣きつき先に経産省が選ばれました。
4、改正外為法
地味に本件でキーワードとなるのはこの、2020年6月に改正された
改正外為法です。これは外資の日系企業に対する投資をより円滑にして誘致することを目的に改正された内容となっていますが、一部の重要産業、また軍需関連産業(コア業種)に対しては、外資投資比率の制限、または投資の事前承認制とすることを定めています。
東芝とエフィッシモが揉め始めたのは2020年3月で、6月ごろに改正が予定されていたこの改正外為法にかこつけてエフィッシモを株主から排除することを画策します。具体的には、外資であり東芝そのものの支配を画策しているなどとして、保有している東芝株式を日本政府の命令で強制売却させるということも目論んでいたようです。また強制売却に至らずとも、それをちらつかせることで上記の循環取引再調査に関する株主提案を取り下げさせようとしていました。
5、話違うじゃん(;´・ω・)
ただ、このような東芝の期待を一身に背負った改正外為法でしたが、可決前に出てきた具体的内容はどちらかというとこれまでよりソフトで、外資による日本向け投資ルールをよりはっきりさせるという内容が中心で、外資排除的な文言は思ってたより少なかったそうです、東芝にとっては。正直、この内容だとエフィッシモに強制売却を命令するには無理がある(実際無理がある)ということが分かり、どうしたもんかなとやたら東芝に肩入れする経産省職員(K1課長)と相談し始めます。
6、K1課長
本件のキーワードが改正外為法なら、キーパーソンはこのK1課長(けーいち課長)です。報告書を読む限り異常なほど東芝に肩入れしており、上記の改正外為法による外資排除案について省内で同案件を統括する部署にわざわざ確認しに行ったりしてくれています。結果から言うと、「(外資排除命令は)いや無理だろ」、「むしろエフィッシモの意見に他の株主も同意じゃね?」的に担当部署から言われちゃいます。
ここで何故かけーいち課長は妙なやる気を出し始め、自らエフィッシモに面談を行って再調査の株主提案を取り下げさせると言い出してきました。でもってそれを実行しました。
7、マジビビる(;´・ω・)
何故か突然面談を要求してきたけーいち課長(とその仲間の経産省職員)に対しエフィッシモもひとまず受けて話を聞き、コロナがどーたら、余計な混乱は避けるべきだなどといろいろ言われ、エフィッシモ側も東芝絡みで日本政府が動いてきていると感じちょっとビビり始めます(けーいち課長談)。そのため妥協策としてエフィッシモは、再調査提案は取り下げないものの、東芝を丸ごと支配しようというつもりがないという気持ちの証として取締役の推薦人数を減らす用意があることを経産省職員に伝えますが、言われた経産省職員は「それじゃダメダメ(ヾノ・∀・`)ナイナイ」と、あくまで提案内容を丸ごと変えるよう要求しました。
8、嫌味を言って喧嘩別れ
上記やり取りを経てエフィッシモ側は態度を硬化させ、当初の計画通りに再調査を提案した上で、取締役も3人を推薦することを経産省職員に伝えます。これに対し対応した経産省職員は、エフィッシモ側が直前に東芝側の役員候補指名決議日程を伸ばしてくれと言っていたのに結局元の内容を維持してきたことを槍玉にあげて、「なんで延期しろっつったの?」、「一社会人としてどうなの?」的な嫌味を言ったそうです。
なお一連のやり取りに係った経産省職員は、このような外資投資に関して外資企業を指導する部署に属しておらず、このような行為を行う権限も一切なく、上記行為は越権行為だと報告書では指摘されています。一社会人としてどうなの?
9、3Dインベストメントへの脅し
エフィッシモについて細かく書きましたが、やはり論点はエフィッシモの再調査提案にあるからです。東芝と経産省職員はエフィッシモが出す再調査提案、並びに推薦する取締役の当選を非常に恐れ、これを何としてでも阻止するために他の大口株主にも根回しをするようになります。その一つが3Dインベストメントです。
例のけーいち課長がまた変なやる気を出して、エフィッシモと本格的に揉め始めた2020年6月に3Dインベストメントにも面談を申し出ます。この面談でけーいち課長は「悪い投資家も世の中に入るもんだよね」的に説明し始め、3Dインベストメントが「うちに問題あるわけじゃないならもう帰りたいんだけど。他の投資家の話なんて聞きたくない(´・ω・)」と言ったら、
「隣が大火事になっている隣でバーベキューをしていると、それでは済まなくなることもある」
という、多分関連ニュースで一番引用されている名言を発したそうです。
この「隣」というのはエフィッシモを指すとみられ、発言の意図としては「エフィッシモの提案に賛成したらどうなるかわかっているよな?」という恫喝で間違いないでしょう。このように解釈できない奴は空気読めないと言われて日本じゃ生きてけないでしょう。
結論を述べるとこの恫喝は3Dインベストメントの意思決定に影響を及ぼしたとされ、エフィッシモ側の提案に細かくは覚えていませんが完全賛成を取らないようにしたようです。経産省の作戦勝ちとなりまいた。
10、HMCへの脅し
HMCとはハーバード・マネジメント・カンパニーという米国のハーバード大学系のファンドで、かねてからの東芝の大口株主です。
HMCは2020年3月、循環取引問題で東芝の株価が下落した際に、もう少し株価対策を行うようレターを送っています。ただこのレターで、「うちの出資者の目もあるからこういうこと言うけど、東芝のことは応援してるよ(^_-)-☆」的な文言も入っていたそうです。そして東芝はこのHMCからのレターに対し、約3ヶ月間無視して返信を送らずにいました。
こうした東芝側の不遜な態度にカチンときたHMCは202年5月、東芝が要求した電話会議を拒否し、レターでやり取りするよう要求してきます。友好的だと思っていたHMCのこの態度に慌てた東芝は経産省に泣きつき、けーいち課長らとHMCのレターを共有し合って、最終的にHMCにコネのある経産省のM氏を通してコンタクトを取ることとしました。
どうもこのM氏を通して、HMCにも3Dインベストメントみたく脅しをかけたみたいです。特に株主総会直前に一部議決権行使票が集まって票読みが始まってきた辺りからは猛烈にやり取りが繰り返され、エフィッシモ提案の阻止に動いていたことが報告書内で細かく書かれています。
11、提案阻止も……
最終的にエフィッシモ、3Dインベストメント、HMCは互いに互いの提案や推薦取締役への投票を控えることとなり、会社(東芝)側提案が強く反映された取締役選任に至ることが出来ました。
しかし総会後、HMCが東芝役員に対し、「うちが議決権を行使しなかったのは日本のある人物から圧力を受けたせいだ。そいつは正式な業務権限を持つ者じゃなかったことが後でわかり、非常に悔しい。次は投票するから待っていろ(ΦωΦ)フフフ…」的な連絡をしてきました。
この圧力問題がフィナンシャルタイムズ、ロイターなどの記事が徐々に取り上げて疑惑が立ち込めていきます。ある意味決定的となったのは2020年12月に出たロイター記事にHMCに接触してきた経産省職員のM氏がツイッターで「脅したわけじゃない(;´・ω・)」と、接触を認めるかのようなツイッターを寄せたことだと思います。
ロイター記事が出る直前にはエフィッシモなどを含む複数株主が圧力問題に関して東芝に調査を要求しており、2021年1月に監査委員会がこの件について調査を開始し、A法律事務所(匿名になっているけど大体わかる)に委託して調査が行われました。結果は、
1、HMCへの圧力はなかったよ
2、東芝は無関係だよ
3、HMCに怪しい人物が東芝の総会直前にいろいろ言ってきたけど関係ないよ
というかなり凄い内容の報告書を出してきました。それどころか東芝関係者は、「これ(HMCが出した疑惑)は東芝を陥れようとするブラフだ!」などとメールに残しており、今回の報告書でも槍玉にあげられています。いい仕事するよね。
なおA法律事務所はこの最初の調査時において、エフィッシモに関する東芝と経産省の生々しいやり取りメールを見ていますが、それらはガン無視しています。調査範囲じゃない言うつもりでしょうが、コーポレートガバナンスを失墜させかねない行為を見て見ぬ振りするその姿勢には頭が上がりません。
無論こんな報告になっとする馬鹿は普通いないので、2021年3月の臨時株主総会にて当初の提案通りに調査担当者に今回の調査チームが選任され、こうしてこの事件が明るみに出たわけです。
既にへろへろなためこれ以上の言及は避けますが、敢えて一言だけ言うと、この会社を生かすことが果たして日本にとって有意義なのか、強い疑わしさを覚える内容です。また社内にあまりにも人材がいないというか、この際だからソフトバンクにでも買われて血を入れ替えてもらった方がいいんじゃないかという気持ちしか覚えません。