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2014年7月16日水曜日

不死身の弁護士

 以前ネット上で、「國松長官ってタイラント並にタフじゃね?」という議論が起こりました。この國松長官というのは1995年に何者かに狙撃されて三発の銃弾を受けた國松孝次元警察長官のことで、この事件で使われた銃というのが「コルト・パイソン」という口径の大きい弾を使用する銃だったのですが、國松元長官は手術中に三度も心臓が停止するなど危険な状態となりながらも無事回復を果たしました。
 この時使われた「コルト・パイソン」なのですが、この銃は有名なホラーアドベンチャーゲームの「バイオハザード」にも出てくる銃で、ゲーム中では強力な威力を誇る銃として出てきます。その威力たるや雑魚のゾンビだったら確実に一撃でふっとばし、ラスボスである前述の「タイラント」という敵にも有効な武器となります。こんな銃から発射された弾を三発も受けていながら生還したということで、「ゾンビ<國松元長官≒タイラント」という妙な図式が成り立ち、上述の様な議論となったわけです。
 
 なおこの事件ですが、実行犯は結局逮捕されないまま現在では時効となったものの、事件当時に地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教が警察の捜査をかく乱するために実行したのではないかと疑いの目が向けられていました。実際はどうだったのか、現在公表されている材料からだと私には正直判断しかねないものの、時効となった際に警察幹部が、「それでもオウムが怪しい」と主張したのはちょっと負け惜しみもひどいのでは、犯人を捕まえられなかったのにいうセリフなのかなとやや不審に感じました。
 ただ警察がオウムを当時に疑ったというのは無理もない話で、実際にオウムは地下鉄サリン事件以降に警察捜査をかく乱するために物騒な事件を起こしております。そもそも地下鉄サリン事件自体、公証人役場事務長逮捕監禁事件でオウムに捜査の手が伸びようとしたことから疑いの目をそらす、捜査をかく乱するという目的で起こされたものでした。
 
 以前からこのブログで取り上げていますが、オウム事件についてはいずれしっかりとまとめ直して見たいと前々から考えてて密かに当時の事実などを調べているのですが、最初に挙げた國松元長官も相当タフな人でしたがそれに負けず劣らずタフだったというか不死身もいい所じゃないかと思える、滝本太郎弁護士について今日は紹介します。
 
滝本太郎(Wikipedia)
 
 滝本弁護士はオウム真理教が殺人を含む暴力的な手段を用いるきっかけとなった坂本弁護士一家殺害事件の被害者である、坂本弁護士と旧知の間柄だったことからオウムの被害対策弁護団に加わり、まだオウムが世間に広く認知される前の段階から脱会者の救済を行いながらオウムに対し激しい批判を繰り返しておりました。そうした活動の中には麻原彰晃が超能力を持つ証拠だとして空中浮遊をした写真を出していたことから、「空中浮遊なら俺も出来る」と同じような写真を撮影して信者らに見せるというなかなかユニークな行動もあり、こういった活動から滝本弁護士が関わった信者の大半は脱会していったそうです。
 ただこうした滝本弁護士の姿勢はオウムにとって目障り極まりなく、自然の流れというかオウムの殺害対象リストに載ることとなります。そして実際に暗殺計画が実行されたのですが、なんと滝本弁護士はオウムに4度も暗殺が仕掛けられながらも無事に生きながらえるという驚異的なタフネスぶりを見せています。その内訳は「滝本太郎弁護士サリン襲撃事件(Wikipedia)」に詳しいですが、簡単にまとめると下記の通りです。
 
1、駐車中の車のフロントガラスにサリンが噴霧され、一時視力が落ちたものの命に別条なし
2、車のドアノブにVXガス(液状)が塗布されるも、手袋をはめてたのでノーダメージ
3、同じく車のドアノブにVXガス(液状)が~以下同文
4、ボツリヌス菌が塗られたコップにジュースを注がれ飲むがノーダメージ
 
 どれをとっても「これでどうして死ななかったの!?」と思うくらいガチな暗殺が仕掛けられていますが、滝本弁護士は悉く切り抜けて現在においても元気に存命されています。無論、オウムという危険な団体を相手にしていたことから滝本弁護士は日頃から対策などを取っていたでしょうけど、それにしてもこの危機の潜り抜け方は不死身と言ってもいいんじゃないかと思います。逆を言えば、カルト団体やヤクザ団体を相手にする警察官や弁護士関係者は、常にこのような危険と隣り合わせで仕事をされているのだということも示唆しており、これらの仕事をされている方には本当に頭が下がります。
 
 なおもはや私の趣味と言っていい赤軍派など極左団体の関係史においても、警察官が刺されたり撃たれたり、果てにはその家族が爆殺されるといった悲劇が70年代前後には頻繁に起こっていました。そう考えると戦争がないだけでも十分に大きいですが、近年の日本は本当に平和というか安全になったと思えます。これは時代が変わったためか、それとも社会が成熟したためか、どちらであるかについては議論の余地がありますが、どっちにしろ社会をいい方向に持っていこうという努力は続けなければと思う次第です。と言っても、そんなの思うの私だけか。

2 件のコメント:

潮風太子 さんのコメント...

そちらも連日お暑いのでしょうか?
お久しぶりです(^^)
あともう一人不死身の弁護士を挙げるとしたら、
かの安田好弘でしょう。
いや、この人の「屁理屈型弁護手法」が、
日本の治安を大きく変えたと言っても
決して過言ではないでしょう多分。
この人もよく暗殺されずに生き残っているなと、
大事件の際に毎回登場するたび思います。

さて人治国家の中国にあってメディア系含めて、
名物弁護士って存在するんでしょうか?
また人治国家中国のB級裁判仰天判決例なんぞ、
ありましたら是非ともご紹介いただきたく存じますm(_ _)m

花園祐 さんのコメント...

 皮肉な話ですが、安田弁護士に関しては彼の活動によって逆に死刑肯定派が増えているような気がします。このネタについて今度また書いてみようかな。
 あと中国の弁護士についてですが、企業紛争に関しては多少有名な人もいますが、人権派弁護士となるとほぼ皆無です。海外で有名になる人はいますが、そういう人は中国国内だと公安に張り付かれますし……。