2018年3月2日金曜日

ITに疎い業種

 先日、今後のJBpress用記事の取材のためIT関連企業経営者の方と食事(焼鳥大吉)する機会があったのですが、ぱっぱと取材を終えると関係ない話で盛り上がり、「花園君のJBpressの記事読んでてよくわかるけど、なんか無理やり日本を持ち上げる記述入れてるよね」と、かなり玄人な読み方して読んでくれていることとか教えてくれました。
 そうした他愛もない話をした一方、二人で妙に意見が一致した話題として、IT方面の知識や感覚に対して極端に疎い業種がある、という話題がありました。具体的に言えばそれはメーカー系で、「何故彼らは必要なIT投資をしないのか」という点でしばらく話し合いました。

 私自身もメーカーに在籍したことありますし、大手メーカー企業に就職した友人らからも詳しく話を聞きましたが、製造業は大手、中小に関わらずIT方面の投資を怠る傾向が非常に強いです。では製造業はあまりITを必要としていないのかというとさにあらず、受発注管理から在庫・品番管理、決済管理などの面で、多数の仕入・販売・外注加工先を持つことから、むしろ他の業種と比べても先進的ITシステムの導入の必要性が高いことが多いです。
 にもかかわらず多くのでメーカーでは時代錯誤もいいところな古い管理システムを使用し続けていることが多く、今はどうだか知りませんが10年前にシで始まる液晶メーカーに勤めていた友人が言うには、「Windows以前の骨董品のようなシステムで重要な処理を行っている」と呆れながら話していました。

 またこれは私の経験ですが、最初に務めた商社では在庫管理にこれまた古い、緑色一色しか発行しないウィンドウのシステムを使っていたんですが、ある時期に別のシステムを導入したところ、現場で大混乱が起きました。理由は非常に簡単で、経営者が「安いから」という理由でしょうもないシステムに切り替えたことが原因でした。

 断言してもいいですが、大半の日系メーカーでは業務に管理システムが追いついておらず、それ固め生産性を著しく低下している面が大いにあります。では何故メーカーはIT投資をしないのかというと、単純にそんな余力がないだけということもありますが、それ以上に大きな要因としては、システム導入の決定権者は高齢の幹部に多く、彼ら自身がITに疎い上に現場処理作業に携わらず、その必要性を認識できないということがあります。
 またそういった環境に慣れてしまうと、当初は新規システム導入の必要性を感じていた現場社員ですら段々とそういったやる気を失い、途中からむしろ既存システム擁護派になってしまうというケースもあります。とくに中間管理職に上がった人間なんかに多いです。

 なので話をした経営者の人も、よく取引先に、価格交渉以上にどうして自分たちの仕事が必要なのかということを上の人間に説明するのが一番大変だとも語っていました。私自身も似たような経験を持つだけに、非常に納得できる話でした。
 こう言ったメーカーにおける問題を話した後、今度は私から、「メーカー以外にも、マスコミ業界もITに疎い人間が非常に多い」ということを口にしました。

 幸いというべきか私がかつて所属した新聞社は先進的な方で、システムも次々と更新されていった上に本社のITチームも優秀な人ばかりでした。ただ末端のライターはキーボードのブラインドタッチ以外はあまり強くなかったことから、ExcelやPower Pointなどで記事に必要な図表や資料を作る上でいくらか経験のある自分は割と周りから重宝されていました。
 しかしこれが他の新聞社や出版社ともなると違って、実際にそこで働いたわけじゃないですが、非常に古い記事編集システムとか資料管理システムを使い続けている所が多いと聞き、またオンラインでの業務運行や管理も非常に遅れているそうです。これにも先ほどの経営者も同調し、やはり取引先でそういうところがあるということを教えてくれました。

 ただマスコミ業界の場合はメーカーと違って膨大な受発注処理などがない分、その影響はまだいくらか小さいのですが、やや看過できないのがテレビ・ラジオ業界です。ラジオ業界については務めていた友人がやはり年配の幹部層が投資に不熱心だと話しており、テレビ局については広告でネットとは競合するからかもしれませんが、ウェブマーケティングなどを見ると呆れるくらいに手法が拙いことが多いです。
 ちょっと古いですが2012年にフジテレビがやったこれなんか、何を狙ってやろうとしたのか今でも意味が分かりません。これに限らず、折角たくさんコンテンツを持っているのにそれをネットに全く生かせていないというのはおかしいを通り越しているような気すらします。

 などと、いくつかこういった業界について書いてきましたが、本当にITに疎くて大問題な業種はメーカーでもマスコミ業界でもなく、一番は実は政治業界だと思います。

 中国の政治家、官僚は割と理系出身が多く、新規テクノロジーへの理解も比較的早いというか貪欲であるほか、その産業育成方法についても非常に習熟しています。例えば今度解説しますが、今年から中国では新エネルギー車への補助金を支給する際、車載電池のエネルギー密度が一定以下であれば全額切り下げるという政策を打ち出しています。これにより質の悪い車載電池は市場から一掃されることになりますが、あらかじめこうした政策方針をアナウンスしており、電池メーカー側も時間内に対策を取るよう示唆されていました。

 一方、日本の政治家は言うまでもなく大半が文系で、新規テクノロジーの理解についてもあまり期待できない人が多いです。また産業育成プランについても、はっきりいえばバラマキ政策しか能がなく、規制や支援について全く他の手段を持っていません。なんか誉め過ぎな気もしますが、中国の新エネ車に対する近年の規制と支援の使い分け方は見事なものだと感じ入ります。
 そういう意味ではやはり理系のトップ人材を育ててこなかったことが、技術大国敗北の主要因ではないかとも思えてきます。自分なんかはあり得ないくらいの文系ゼネラリストで理系とは真逆の存在ではありますが、無理をしてでも理系に進むべきだったのかと、今の日本の状況を見ていて思うところがあります。

14 件のコメント:

  1. 酷道マニア2018年3月2日 22:44

    システムの更新が滞っているのは、上層部がITに疎いというのもあるかと思いますが、やはり予算が不足しているというどうしようもない理由も多いと思います。
    メーカーさんなんて、いろんなシステム導入してますから、それ全部更新するなんて、天文学的な金額になっちゃいますよ。
    それでその更新できないシステムが古いOSにしか対応していないってこともよくあるんじゃないでしょうか。
    パソコンが壊れたけど、システムがWINDOWS XPにしか対応していないんで、中古ショップでXP機探すってのもよくある話みたいです。

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    1.  確かに中小メーカーであれば予算不足も理由として考えられるかなと思うのですが、割とメーカーの人ってしょうもないウソついたりしてくることが多いので、鵜呑みにはしない方がいいですよ。
       あとXPに対応しているのであればまだマシかと思います。この記事で挙げている某S社は10年前の時点で、Windowsが登場する前のPC-98もしくはMS-DOSを使ってたそうで、多分現代においてもこうしたシステムつあってる会社は少なくないと思われます。

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  2. 酷道マニア2018年3月5日 8:24

    無理に設備更新せずにPC98で稼働するシステムを使い続けるほうが合理的だと判断する企業は少なくないようです。

    https://www.google.co.jp/amp/s/anond.hatelabo.jp/touch/20160505213455%3fmode=amp
    こういう考えもあります。

    だからシステムを更新しないから、ITに疎いというのは、ちょっと無理があるように思います。


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    1.  うーん、見方にもよるでしょうが、まさにこれこそメーカーのしょうもない言い訳なのではと思います。
       リンク先に書かれている通りにWindows95登場以前のPCは非常に効果だった分、耐久性も高いというのは聞いていますが、古いPCであれば交換部品の調達だけでも一苦労で、日本人に多いですが緊急時のリスクが上の話だと完全に置いてけぼりな気がします。また「替えが効かない」と書かれてありますが、バックアップシステムとリモートコントロール次第ではどうとでもなるように思え、実態は「替える能力がない」であるようにも見えます。
       あと、こうした現場ラインでのシステム以前に、メーカーだと一般業務管理でもシステムの遅れが目立ちます。ラインのシステムはまだ独特な世界なので理解できないところもないわけではないですが、それほど費用が掛かるわけでもない汎用的なシステムですら導入が遅れているという点が自分からしたら不思議です。

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    2. 酷道マニア2018年3月5日 22:29

      緊急時の対策が疎かになっている点については同意します。ただまあ現実動いているものについて、リスクヘッジの観点から更新したいって言ってもなかなか通らないですよね…。うちの職場はメーカーではないですが、似たような話で難儀したことがあります。なかなか理想通りいかないものです。
      中国の企業はシステムの更新も短期間で行なっているんですかね?人材も豊富で予算も潤沢なんですかね?

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    3.  これは今度、正式な記事として準備している話ですが、中国のシステムやソフトウェアはパッケージだと非常に安価で仕上がりも早いのですが、穴が多かったりカバーの至らない点が多いそうです。ただ、購入以降のサポートやアップデートは比較的細目で、安価な分、企業がシステムを更新するサイクルも早いそうです。販売するソフトウェア企業も、どちらかというと販売後のサポート収入を重視しているようにも見えます。
       日本の場合はどうもパッケージ販売の際に完成度を高めようとして、逆に細かいオーダーに対応しきれていなくなってしまってるように見えます。この辺は自分も興味がある分野でまた詳しい知人がいるので、後ほどきちんとした記事にまとめます。

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  3. システムが古いか新しいかというよりは、「その仕組みを見直せば明らかに業務効率が上がるのに、それをしようとしない」というのが多いかなと思います。
    この国ではコンピューター関連の知識はオタクのものというか、目立つのが好きな非オタク型の人は複雑な仕組みのものに興味を示さないという傾向があるかなとは思います。
    同時に、理系が社会的に弱い立場にある要因の一つに、専門のことばかりやっていて出世や全体最適に興味を示さないという側面もあるのかなと。
    海外では専門知識が凄い人は割りとリスペクトされますが、日本では詳しすぎる人はキモいと思われるんですよね。

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    1.  以前後輩に、「歴史に興味を持つ歴女が増えて来たとかいうけど、歴史に詳しくても男は絶対モテないよな」と言ったら、「花園さんの心の叫びを聞いた気がします」と言われました。理系に限らず、なんか知識を持っている人は逆に距離置かれるってのはほんと実感します。

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  4. いつも興味深いお話をありがとうございます。中国の軟件のお話、面白そうですね。
    「疎い業界」について、ですが、システムインテグレータ側の問題でもあるように考えさせられました。確かに、自社の営業が提示しているものを見ると、「これ、ほんとにクライアントの方々のためになるのかな」と思う部分もあり、かと言って導入現場の立場でなかなか容喙しにくいことも事実なので、お互い齟齬を抱えたままカットオーバーを迎えることもしばしばです。当方は運用に携わる側が多いので、日々板挟み。導入する側の皆様からすると、二の足を踏むのもわかる気がします。 

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    1.  高さん、コメントありがとうございます。
       やはり話を聞くと、営業段階できちんと顧客要望を聞き取れずになんだかお互い損しちゃい合うシステム設計が始まるというのが多そうですね。受注する営業側の問題ということもあるでしょうが、つい先日にこの方面で専門の友人に聞いたところ、「発注企業側のシステム管理者の質がここ数年、急激に落ちている」と語っており、こうした点も影響しているかもしれません。
       この記事ではどちらかと言えばシステム作成を依頼する発注側の問題点を指摘していますが、自分が見る限り、こうした問題指摘はまだ少ない気がします。システムの活用次第ではまだまだ日本の製造業は強くなると思うのですが、そうした問題提起をしてみようと思って書いてみました。

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  5. 発注側の企業が技術や経営方針を全部海外にオフショアしちゃったとかは無いですよね・・・

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    1.  まぁある意味某шプは持分ごと外資に譲りましたけどね。その方がいいと思ってたし結果的にもよかったですけど。
       海外へのオフショア開発の現状についてはあまり把握していないのですが、なんか日本市場でも海外の大手IT関連メーカーの現地法人がシステム開発を請け負ってたりしてるようです。もちろんこの場合、開発も営業担当も日本人となりますが、この業界って変にグローバルで実態掴みづらいです。

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  6. 文系理系関係なく、(良くも悪くも)中国のほうが大規模な実験をしやすい環境だから、というのもあると思います。

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    1.  この辺については多分来月書きますが、「実験しやすい環境」というのは確かに大きいですね。言い換えれば、「実験が許される社会」ともいえるのですが、今の日本はこれがないから新規ITサービスがなかなか出てこないのだとみています。

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コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。

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