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2023年8月23日水曜日

原発処理水反応に見る中国外交の拙さ

 恐らく今は甲子園に次いで原発処理水の海洋放出が騒がれているトピックでしょうが、中国では先週あたりはいったんトーンダウンしたのに、今週に入ってからまた激しく報じられるようになりました。ただ中国における国際報道は基本的にお上が決めるので、中国人の関心が高いというよりかは中国政府が「騒げ、宴だ!」的に指図しているので、民意かというとそうでもありません。
 もっとも中国人がこのニュースに全く関心がないというわけでもないでしょう。このところまた忙しくて周りの中国人に話を聞いていませんが、やはりできることなら海に流してもらいたくないでしょうし、日本産の魚介類を食べることに抵抗を感じる人は少なくないと思います。そこへきて官製報道で大きく取り上げられれば、嫌が応にも不安は高まるでしょう。

 ただあくまで私個人の感想で述べると、恐らく2ヶ月も立たずにこのニュースに対し中国人は関心をなくすと思います。

 こう考える理由はいくつかあり、まず既に中国は日本産魚介類に対して検査を強化して事実上通関を止めており、市場で日本産魚介類を食べる機会がかなり減ってきてるからです。直接目の前で並べられるならともかく、そうでもなければそこまで気にし続けられるとは思えません。
 むしろ、今思いついたけど中国近海にも放射能が流れてくると盛んに煽っているから、中国近海で獲れる魚介類の方に風評被害きて、中国の漁師が困る事態になるような気がします。っていうか多分そうなるだろうし、不安払拭するためにモニタリングしたら日本以上にトリチウム含有量多いのがばれたりして延焼させるかもなぁ。

 関心が長く続かないもう一つの理由として、今中国の経済がマジでやばい状態でリストラも普通にありふれていることから、経済懸念が強すぎて国際問題に気が回らないという予想です。そして最後に、今回中国が大きく煽り過ぎているからこそ、かえって長く続かないという見方です。

 人間というのは感情を出すのにもエネルギーを使うもんで、激しく激怒し続けるというのは案外難しかったりします。国際問題とかでもそうで、短期間にワーッと騒ぎ立てられるものほど翌年にはきれいさっぱり忘れられるのに対し、ちょっとした事の積み重ねによる不信感の増大なんかは逆にその後も長く覚えられる傾向があるように思えます。
 今回の原発処理水に関しては、放出後に健康被害が目に見える形ではっきり出る人が続出すれば話は別ですが、報告されているデータが真実だとしたら逆に体調悪くする方が難しい水準です。放出後も日本人が国産の魚介類をおいしそうに食べていて健康でい続ければ、「なんでこんなことにいつまでも騒いでいるんだろう?」と逆に自問するようになるでしょうし、何か月、何年にもわたって「日本の魚介類はやばい」と騒ぎ続けようにも、多分そこまで気力も持たなくなってくるでしょう。そこらへん含めて、騒げるのはもって2ヶ月じゃないかと考えています。

 以上が中国世論に対する私の個人的見解ですが、今回の中国の反応としてはむしろ、中国外交の拙さというか手数のなさの方が気になります。今回何故中国がこれほど大きく騒いでいるのかというと、一にも二にも日本が米国などと組んで行う中国に対する半導体規制に腹立ってて、その意趣返しとして嫌がらせをしたいということに尽きます。口では中国人の健康のため放出に反対だと言っていますが、この国の政府が国民の健康を考慮するなぞアヘン戦争以前からしてまずありえません

 中国としては日本の半導体規制参加はマジで頭の痛い問題らしく、だからこそやたらと「米国の手先め、恥ずかしくないのか!」などと盛んに非難してきて、今回の原発処理水問題で騒ぐのも、あわよくば半導体規制からの離脱を日本に促したいという狙いもあるように見えます。
 ただ仮にそうだとすると少し奇妙な点として、半導体の問題で何故水産物に話を広げるのかということになります。敢えて邪推すると、半導体規制に対抗する材料が中国にはほかにないという外交における手数のなさが今回の問題で透け出ているのではないかと思います。

 一応、今月から半導体材料のガリウムとゲルマニウムの輸出規制を中国は開始していますが、それ以外には半導体問題で目立つアクションはありません。まだ隠し持っているのかもしれませんが、かつてのレアアース規制と比べるとずいぶんと大人しいなという印象を覚えます。
 むしろ過去のレアアース規制で、日本を含む世界各国でレアアース代替が一気に進み、中国はそれ以前に持っていたレアアース市場を一気に失って未だ挽回できていないという痛い経験もあるだけに、あの時と比べると今の中国の貿易紛争における態度は大人しいもいいところです。今回の日本の魚介類を狙った世論誘導を見ていると、マジでほかに手がないのではないかと思うくらいで、仮にこれから日本や米国が半導体規制をどんどん強化していっても、何ら対抗策が打てないかもしれません。

 それにしてもこの原発処理水問題、時間をかければかけるほど中国にとっては不利になる外交問題だと私は思うし、反対するならデータをきちんと示して代案出せばいいのですが、それすらできないあたり中国外交は合理性と自己利益の追求を失ってきているようにも見えます。以前と比べていてもこのところの外交の拙さは目に余るほどであり、また経済絶好調時代も東南アジアを筆頭に上から目線の外交を繰り返して恨み買ってるから、これから景気が下振れしていってもマジで誰も助けてくれない気がします。

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