・有村次左衛門(Wikipedia)
その唯一の薩摩藩士が上記の有村次左衛門で、負傷した井伊直弼を駕籠から引きずり出し、彼の首を取ったのも彼だったそうです。私はてっきり水戸藩士の参加者と仲の良かった薩摩藩士が助っ人的に参加したのだとかねて思っていましたが、実際には島津斉彬死後の調停工作で薩摩藩と水戸藩がタッグを組んでいた際、連絡役などで両藩の仲介となっていたのが彼だったそうです。そうした縁からこの桜田門外の変にも参加したとのことでしたが、まさか井伊の首まで取っていたとは。
それでこの「だんドーン」の襲撃シーンですが、非常に迫力のある重苦しさが強い仕上がりとなっています。守勢の彦根藩士らの奮戦ぶりもしっかり描いており、手や指が切り裂かれるシーンなども実際の襲撃場面をしっかり研究して描かれているように見え、「大老の井伊が暗殺された」という教科書の中では字面だけの場面がこれほど迫力ある場面だったとはとこれまた感心させられました。
中でも、水戸藩士らに囲まれる中で井伊がいる駕籠を孤軍奮闘とばかりに彦根藩士が守る中、上記の有村次左衛門が示現流ならではの咆哮を挙げて襲い掛かるシーンは見ていて強い恐怖感をこちらも覚えました。
知ってる人には早いですが、薩摩藩士が習っていた薬丸示現流という流派は、一太刀目でで必ず相手を殺せるよう全力で振りかぶる剣法で、外したら隙が多いものの、下手に受け太刀したら刀ごと真っ二つにされることもあったという防御を捨てた捨て身剣法として有名です。しかもそんな全力斬りを例の「キエー」という奇声とともに振りかぶってくるのだから、相手からしたら恐怖以外の何物でもないでしょう。
しかもこの桜田門外の変では乱戦入り乱れ、襲撃側も同士討ちするなど現場は非常に混乱していたそうです。そんな乱戦の最中、奇声挙げてこっちに大きく刀を振りかぶってくる示現流の使い手を前にしたら自分だったら逃げ出すと思います。このあたりの示現流の使い手の恐ろしさが「だんドーン」では非常にうまく描かれており、実際に単行本の作者コメントによると「実に立派な襲撃でした」などと水戸藩士のようなメールが送られてきたそうです。
その作者の奏三子氏自身もこの回で、「これからが維新の始まりだ」ということをにおわせるセリフを入れています。「ハコヅメ」の時も思ってましたが変なところで凝り性で手を抜かない人のようで、歴史考証やストーリー構成が非常によく練られており、「陽気な人斬り半次郎」こと桐野利秋も次の巻から登場するとのことなので非常に楽しみです。
ちょっと大げさかもしれませんが、非常に構成が優れるだけに将来大河ドラマの原作に使われるかもしれません。
1 件のコメント:
かなり難しい歴史に関する文章ですので、commentを控えたく。
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