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2008年8月10日日曜日

スカイ・クロラを見て

 実は先週、友人に誘われて公開中の映画、「スカイ・クロラ」を見にいきました。詳しい内容は現在も公開中なので言えませんが、簡単に感想だけを書いておきます。

 具体的に言うと、この作品のテーマは終わりのない日常です。このテーマはこの映画の監督をしている押井守氏が何度も扱っているテーマで、「うる星やつら ビューティフルドリーマー」という作品でも、楽しい時間である文化祭の準備が永遠に続く世界というものを書いています。

 作中に、主人公は終わらない日常ということに対して、「普段歩く道、その中の些細な変化だけでは、満足することはできないのか?」という自問をしております。実は私も、このテーマについて昔から延々と考えていた時期がありました。高校時代には非常に中途半端な形でしたが、「永遠」ということについて考える小説も一本上げています。

 極論を言ってしまうと、人間というのは何かしら目に見える形で自らを含めた周囲の変化を確認しないと、生きていけない人間だと思います。共産主義の硬直化した社会や、同じことを繰り返すサラリーマンの日常、どちらも「人間的ではない」と大抵の人は批判します。逆に、変化が目に見えてわかる子供の成長などは、非常に好感を持って受け止められます。

 ちょっと話は外れますが、ゲームジャンルのなかでRPGというものが何で高く評価されるのかといったら、それはやっぱりキャラクターがレベルが上がるなどして成長するからだと思います。スタート時からずっと同じ装備で延々と同じ敵を倒すシューティングやアクションなどは、やっぱり辛口の評価を受け安いと思います。ファミコンの、「怒」はおもしろかったけど。

 しかしその一方、激しい変化に対して人間は極度の疲労を感じるのも事実です。最近だとめまぐるしい家電製品の進歩やパソコンの新機能に対して、「この際ウィンドウズは2000でもいいじゃないか」という人もでてきた……のかな、私はそうなんだけど。歴史的な事例だと、E・フロムがドイツでナチスのようなファシスト政権が誕生したのは、第一次大戦後に急激に民主化がが行われために国民は不安を感じ、逆に硬直的で保守的な政策を採ってくれるナチスを待望したためと分析しました。

 こういう風に言ってると、変化が全くないと嫌だし、かといって変化が激しくとも嫌だという。人間って本当にわがままですね。ただこれまた極論を言うと、変化の究極点というのは、やっぱり滅亡だと私は思います。それならばまだ、少ない変化でも満足できる人間の方がすばらしいのではと思い、レトロな趣味を持ち続けていこうと心に誓う次第であります。

日本の法人税は本当に高いのか?

 いきなりですが、日本はよく法人税の高い国だといわれています。特にこれを強く主張しているのは経団連、それも経団連会長でもあるキャノンの御手洗富士夫ですが、彼の言によると日本の法人税が高いままだと、有力な企業はどんどん税負担の少ない国へと本社を移転してしまい、将来的には税収が減ってしまうからという理由で、よく政府に対して法人税の引き下げを迫っています。

 しかし、私は前からこの御手洗の主張にどこか奇妙さを感じていました。というのも、先進国中世界で一番国民の税負担率が少ないアメリカを除くと、社会福祉が充実しているヨーロッパ諸国などでは国民の税負担率は日本の倍近く、北欧に至ると実際に倍以上ある国ばかりです。国民税負担率には法人税はもとより消費税や所得税といった個人の税金も含まれるため、一概に言い切れることはないかもしれませんけど、普通に考えたら税負担率の少ない日本の方がヨーロッパ諸国より法人税は低いのではないかと考えていました。

 そうしたら案の定、昔に知り合いがくれた資料、出典は分からないのですが恐らく去年の新聞の記事で、「日本企業負担 仏独の7~8割」という見出しの記事にて、日本の企業が負担する法人税、社会保険料の合計は、フランスやドイツに比べて遙かに軽いということが説明されていました。
 具体的に数字を出すと、記事には業種別に企業負担率を比べており、自動車製造業では、

  日本  :30.4%
  ドイツ :36.9%
  フランス:41.6%

 という結果になっており、続けてエレクトロニクス産業では、

  日本  :33.3%
  ドイツ :38.1%
  フランス:49.2%

 となり、両方ともに日本は他の二カ国と比べて低いということが説明されています。
 記事にははっきりと書いていないのですが、確かの法人税単体で見るならば日本は先進国の中で高い方なのですが、同じく企業が負担する社会保険料と合算すると、他の先進国より企業の負担は低いということを暗に示しており、御手洗の主張の、現行の法人税実行率40%から30%への引き下げの議論は間違っていると主張されていました。

 さらに続けて同じ記事にて、御手洗の主張のように法人税の高い日本から企業は本当に海外へ逃げるのかという点について、経済産業省の行った「公的負担と企業行動に関するアンケート調査」にて生産拠点の海外移転を計画している企業に複数回答でその移転理由を尋ねたところ、以下の結果が出たようです。

一位、労働コスト    :84.7%
二位、海外市場の将来性 :65.1%
三位、取引先の海外移転 :47.6%
四位、その他のコスト  :42.8%
五位、税・社会保険料負担:40.2%

 という結果となり、海外移転理由の第一位はやはり労働コストで、御手洗の主張である「税・社会保険料負担」を理由に挙げているのは複数回答にもかかわらず半分にも満たないため、こっちでもまた間違っていると記事で指摘されています。さらに同じ調査で「法人実効税が30%程度まで引き下げられた場合に国内回帰を行うか」という質問に対して、「検討する」と答えたのは17.8%で、「検討しない」が69.5%となり、こちらもやはり御手洗がおかしなことを言っているという結果になりました。

 このように、別にありもしない不安を煽って自分の取り分を増やそうとする御手洗の主張にはほとほと頭にきます。そもそも御手洗のいるキャノンは株式保有比率で見たら過半数を外国人投資家、企業が持っており、事実上外資系企業と言ってもよい会社です。そんな会社のトップが日本の経団連の会長をやっているだけでもおかしいというのに、日本政府に対してこんな妙な要求をするというのもおかしなことです。

 さらに付け加えると、「税金が高いから」という理由だけで海外移転を行うような企業は、いざ日本が危機に陥った際には平気で裏切るような企業のように思えます。そんな獅子身中の虫を飼っておくくらいなら、この際どんどんと出て行ったほうが日本のためになるでしょう。そんなわけで、まずはキャノンに出て行ってもらいたいもんです。こいつらは偽装請負を朝日新聞に指摘されるや逆切れして、朝日への広告を打ち切った連中だし。

2008年8月9日土曜日

郵政民営化の是非を問う

 前回、竹中氏の評価について長々と書きましたが、肝心の郵政民営化については敢えて一緒に書きませんでした。その理由というのは単純に、あれだけ長く書いている上にまた長く書いても大変だという理由からでした。もっとも、この問題はいろいろ見る側面があるので、別個に分けて書くべきだとは初めから考えていましたが。
 そこで今回は、あの9.11選挙から三年近く経っていることもあり、おさらいの意味も込めて解説します。まずいつも通りに結論から言いますが、私は郵政民営化は必要だと、あの選挙以前からずっと考えていました。というのも、この郵政民営化は郵政事業にとどまらず、様々な問題の発信源となっていたからです。

 今回解説する上でポイントとするのは、民営化の賛成派と反対派のそれぞれの主張です。まず反対派の主張から説明しますが、やはり一番の理由に挙げていたのは「地方の切捨てになる」という点でした。民営化して利益重視の事業運営が行われると、地方の郵便局はどんどんと閉鎖されてその郵便局に頼っている地方との格差がますます広がってしまう、というような言質です。この主張は民営化の討論が行われている時点でも相当報道されていますから、多分皆覚えていると思います。

 もう一つの反対派の主張は、保険業についてでした。現在も一応続けられていますが、郵便局は簡易保険といって、審査の基準がゆるくて誰でも入りやすい保険を商品として取り扱っています。収入の低い世代などはこの保険に頼っている世帯も多く、もし民営化が実行された場合、真っ先にこの簡易保険が潰されると主張していました。
 そもそも、この民営化は簡易保険を叩き潰すために行われているというのが反対派の主張でした。彼らの言うところによると、あの悪名高き年次改革要望書(知らない人はぐぐって)によって、アメリカの保険会社を日本で儲けさせるためにこの民営化は行われたというのです。

 からくりはこうです。簡易保険がなくなることによって、無保険の世帯が大量に出てきます。そういった世帯に対してアメリカの保険会社が新たに保険商品を売って、儲けるというのが小泉政権やアメリカ政府が狙っていたというのです。保険というのはある程度先進国でなければ商売が成り立たないので、すでに成熟し切ってこれ以上のアメリカでは毛から利用がない保険会社が儲かる場所といったら、ほいほい言うことを聞いてくれる日本しかなかったというのが、標的になった理由です。その先兵として送り込まれたのが、例のアヒルで有名なアフラックとアリコです。友達が勤めておいて言うのもなんだけど。

 この反対派の主張は確かに一理あります。郵政選挙の前後、専門家たちはこの主張は非常に複雑で分かり辛いため、有権者達にはほとんど伝わらなかったのが彼らの敗戦の原因だと分析していました。しかし、私に言わせてもらうならば、報道面では選挙中、刺客候補ばかりが取り上げられて賛成派、反対派ともに政策面での主張はほとんど取り上げられず、選挙前はどちらかというと反対派の方がよく取り上げられており、「分かり辛い」という理由で伝わらなかったという指摘は当てはまらないと私は思います。むしろ、ほかの主張理由の説明に力を入れていたり、反対派の政治家の説明力不足が最大の敗戦の原因だと私は分析しています。

 これら反対派の主張に対して、賛成派はどんな主張をしていたのでしょうか。まず一番多く取り上げられていた主張は小泉元首相による、「民間にできるなら民間にやらせろ。その方がサービスもよくなる」という主張でした。別にこれだけならあまり説明することもないのですが、これに加えて選挙中に小泉元首相は、政府の財政赤字を減らすために公務員を減らさなければならなく、そのために郵便事業を民営化するのだと主張しました。これは一見、もっともらしく見えるのですが、郵便局で働いていた人間は公務員全体で見るならばそれほど多くなく、もし財政再建を目指すならばもっと大きくやらなければならないと、英字雑誌「エコノミスト」にて指摘されており、事実その通りです。

 ここで話はすこし外れますが、そもそもこの郵政民営化を小泉氏がやりたがったのは自身の報復のためだと言われています。小泉氏は父親の急死によって留学を切り上げて帰ってきて衆議院選挙に臨みましたが、それまで父親を支えてきた地元の郵便局関係者の組織票約5000票が小泉氏には回らず、そっくりそのままライバルの候補者へとついてしまったらしいです。結果は5000票の差で小泉氏は落選してしまい、事実上郵政票の裏切りにあって負けたに等しかったようです。もっとも、次回の選挙で初当選を果たしたのですが、この時の怨念が小泉氏を民営化へと動かしたという説が有力です。

 さて話は本筋に戻るや唐突ですが、「財政投融資」というのは皆さんご存知でしょうか。通称「財投債」と呼ばれるものですが、この資金の元はいうなれば我々国民が郵便局に貯金しているお金です。この貯金、まさかそのまま文字通りに「貯めておかれている」と考えているわけじゃないですよね。
 実はこの貯金というのはそのまま貯められているわけじゃなく、政府の一般会計、つまり用途が示されている予算とは別に特別会計という用途が示されない形で、様々なものへと使用されてきました。その主な用途というのはこれまた悪名高き道路財政、つまり道路建設へと主に使われてきました。もちろん、使った分は返済されることが条件なのですが、今までどれだけ使われてどれだけ回収されているのか、私はまだその詳しい内実を書いた報告書等は見たことがありません。

 この財投債、貯金好きの日本人をバックに抱えてるもんだから世界でも最大級の資金量を持っており、そんなにあるもんだから政府も無駄遣いに無駄遣いを重ね、これまで何度も指摘されていたにもかかわらずとめることができずにいました。それならば問題の根をたたけとばかりに打ち出されたのが、この郵政民営化で、私も小手先の改革では効果は望めないと考えていたので、郵政民営化を支持する第一理由としていました。

 さきほどに簡易保険について専門家らが、複雑で分かりづらいと言っていたことを説明しましたが、私の目から見るとこの財投債の存在と用途の方がよっぽど分かりづらく、また問題の根が深いと思います。それで考えたら、政策討論の国民への浸透については両者条件は同じだったのではないでしょうか。

 さらに言うと、賛成派の方が反対派の主張に対してきちんと対案、対策を出していたようにも思えます。まぁ口だけかもしれませんが、簡易保険は維持することを確約し、地方郵便局維持のために後年行われる株式の公開益3兆円を維持対策費に回すことを約束したりして、それなりに賛成派は答えは出していたのですが、逆に反対派は賛成派の民営化が必要な理由に対して、ただ反対するだけで問題の解決法を何も出していなかったように思えます。

 その代表的なものが、地方の郵便局にある「特定郵便局」の局員の問題についてです。この特定郵便局の局員や局長は基本的には世襲でした。世襲なので、そこの郵便局の人の子供はなんの条件もなく公務員となり、局員などをやってました。はっきり言いますが、反対派はこの制度だと地元との結びつきが強いとか言ってましたが、これは明らかに憲法に違反した制度です。世襲で公務員になれて、給料ももらえるなんて馬鹿げています。でもってこの制度を変えないと約束する代わりに、その政治家を支える組織票となっていたのですからどんだけ間違ったことをやってるのか。この間違っている制度も民営化によって廃止するという賛成派の主張に対し、民営化反対派はなんの対案も出しませんでした。そりゃ対策出したら自分の票田をなくすんだしね。

 財投債の問題も何の対案もありませんでした。こちらは道路利権とも結びつくので、考えるわけないでしょうね。
 以上のような理由すべてを分析し、私は民営化賛成派を支持するに至りました。案の定というか、書いてて疲れました_(._.)_

核廃棄物の地下貯蔵について

 今日は私の住んでいる関東は比較的涼しく、久しぶりにロマンシングサガミンストレルソングとかをやっててゆっくり過ごしました。
 さて唐突ですが、私はアニメ作品のガンダムが好きです。どのシリーズも大抵見ているのですが、つい最近まで「ターンエーガンダム」は見ていませんでした。理由は例の、あの前衛的過ぎたメカニカルデザインです。結構面食いだったのかな、アニメ放映当時の私って。

 それがつい最近、映画で公開された総集編のようなリメイクバージョンを見る機会があったのですが、見てみるとこれがまた非常に面白い。ストーリー自体はゲームの「スーパーロボット大戦」や「Gジェネレーション」などで知っていたのですが、改めて映像で見てみると舌を巻くほどのいい出来で、主演声優の朴路美氏なんて、早くから監督の富野氏に見出されていただけあって主人公キャラを見事に演じきっていました。

 実はこれを書いている時点で、映画公開版は前後編ある中で前編しか見ていないんですが、その前編ではラストシーンが一番よかったと私は思っています。そのラストシーンの内容と言うのは、新たな武器を探そうとして前時代の遺跡の発掘をしているところ、なんと核弾頭を見つけてしまい、さらに運の悪いことにその発掘現場で戦闘が起こってしまうのです。核弾頭がどんなものか分かっている技術者は必死で先頭をやめさせようとするのですが、最悪なことに戦闘の余波を受けて核弾頭は起動してしまいます。

 核弾頭が起動したために、その兵器としての恐ろしさを知る主人公のロラン・セアックらは戦闘をやめて現場を離脱しようとしますが、現場にはまだ自力で脱出不能となった味方がまだ残っていました。しかしそのほかにも離脱の援助が必要な味方がおり、ロランはやむなくその味方を見捨て現場を離れます。

 そしてロランらが現場から相当の距離を離れた段階で核弾頭は爆発し、暗闇だった夜空が一瞬にして昼のように明るくなります。光がようやく収まったところで命拾いしたロランが、
「なんでこんなもの、作ったんですよっ!!」
 と、絶叫するシーンが最も印象に残りました。

 現在、日本政府は貯まり続ける核廃棄物の処理について、海底の地下深くに埋めることを検討しています。詳しい年数までは分かりませんが、核廃棄物が無害化するまで、恐ろしく長い時間がかかるらしく、場合によっては数千年単位の時間が必要とも聞きます。
 核廃棄物が無害化するまで、私たちの子孫は何代生まれ変わるのか。また海底深い地形が地上に隆起することは全くないのか。何も知らない子孫が、そんな核廃棄物を掘り返ししまわないとは限らないのか。

 この地下埋葬処理については、将来的にはこの前補助金を得るがために受け入れでもめた高知県の地域みたいに、力のない国へと押し付けられる可能性があります。私は原子力を否定するつもりはありませんし、今後のエネルギー事情を考えるなら必須の手段だと考えています。しかし、その負債を誰が背負うのかと言うならば、私はやはり一番電力を使用している東京が背負うべきで、この地下処理も東京の、誰もが目に見える場所ですべきだと思います。

2008年8月8日金曜日

冷凍餃子事件の日中の対応について

 もうどこでも報道されていますが、中国から輸入された冷凍餃子に農薬が混入されていた事件について、七月の日中首脳会談時に、回収した餃子を中国国内に流通させたところ中国でも中毒者が出たことから、中国国内で毒物が混入されていたことがほぼ確実と中国側から日本へすでに伝えられていたにもかかわらず、日本政府はこの事実を国民に全く公開しようとしていませんでした。いくら私が中国びいきだからといって、今回のこの事件への日中の対応には強い憤りを感じます。

 まず中国政府に対してですが、初めから中国国内で混入した可能性が高く、案の定今回の報道の通りにそれが確実視されたと言うのなら、何故その段階で公表しなかったのでしょうか。どうせいつまでも隠し通せていられるわけないのだから、誠実に判明したところで捜査情報を公表していればいいものを、こういうことを何度もやるから国際社会でも信用がなくなっていくということをまだ分かってないのでしょうか。中国のことわざでも、「恥を知って身を慎む」という内容のものがありますが、もう少しこういう言葉を見習うべきでしょう。

 次に日本政府ですが、中国側に事件の公表を控えてくれと言われて、はい、そうですかとばかりに一ヶ月も公表を見送って隠していたとは呆れてものが言えません。特に福田首相は消費者重視を打ち出して消費者庁の設立を図ると言っているにもかかわらず、消費者に対して全く逆の対応をしていたとはやってて恥ずかしいとは思わないのでしょうか。はっきり言いますが、福田首相は日本人の安全より、中国との関係の方が重要なのでしょうね。確かに外交上、機密な案件に関しては国民に事実を隠す必要のある情報もあると思います。しかし今回の餃子事件の場合は明らかにそんなレベルのものではないし、逆に言えば、この程度の情報すら国民に開示しないということは、どれだけ国民を見くびっているのかという話へとなっていきます。

 もうひとつ気になる点として、これもよく私が挙げますが、一体どこがこのスクープをすっぱ抜いたかがまた気になります。この情報をオリンピックが始まるこの段階でぶつけてきて、オリンピックへの報道の中でかき消そうとわざと政府が流したのではないかと、すこし疑わしく思っています。

 最期に、今日夕方に入ってきたニュースですが、中国の検疫当局でこの事件の担当もやっていた中国の官僚幹部が飛び降り自殺をしたそうです。ニュース元は香港の新聞で、この新聞社が自殺の事実の確認を取ったところ政府は、「否定も肯定もできない」と言ったので、まず間違いなく事実でしょう。本当に、日中そろって馬鹿馬鹿しい事をやる。

私の評価する政治家

 コメント欄でリクエストがあったので、目下の政治家の中で私がその能力の高さを認める政治家を何人か紹介します。

 まず、前回過去最大の文字数で投稿された竹中平蔵氏です。私がこの人を最も評価するのはコメント欄にも書きましたが、何をすればどう現実が動くのか、そういう政策の立案についてはピカ一でしょう。以前の記事でも書きましたが、銀行の不良債権をどう銀行に処理させるか、彼の編み出したやり方は見事にはまり、誰にも不可能とまで言われた不良債権の処理を実現させています。
 と、この点はほかの何人かも指摘しているのですが、逆にあまり言われていない彼のもう一つの長所とも呼べるのが、政治家として非常にタフである点です。記事にも書いていますが、就任当初は民間出身の大臣としてマスコミも好意的に扱ったのですが、彼の資産が意外に高かった事実が報じられるや、一気に彼への攻撃が始まりました。それだけにとどまらず、国会内でも何の後ろ盾もない、雇い主の小泉首相も全然かばってくれずに野党から人格攻撃ともとられかねないほどの激しい批判を受けていました。それにもかかわらず、この竹中氏はいつもの犬っぽい顔で平気な顔をしているのだから、底が知れません。

 もっとも竹中氏は目下のところ政界から引退しているので、現在の国会議員の中で政策能力の高さで見るならば、ミスター年金でおなじみの民主党の長妻昭氏でしょう。この人はもともと日経ビジネスという雑誌の編集者であったと言うこともあり、テレビに出てくる際の発言を聞いていてもしっかりと政策などに突いても見識があると感じられます。そしてなにより、腐敗した官僚のシステムと年金問題を暴いたこの功績はここ十年の歴史でも最大の功績と言っても過言ではありません。

 自民党の中で言うなら、政策や運営面では菅義偉元総務大臣が評判が高いとよく聞きます。この人も苦学して上ってきた叩き上げということもあり、内実は深くはいえませんが組織を引っ張る力では自民党随一と聞いたことがあります。
 逆に、以前に与謝野馨氏が政策通で、意外に総理大臣としては安定する人材なのではないかと書きましたが、先月のサンデープロジェクトでの長妻氏との討論を見ていたら、どうやら私の目が間違っていたのかと思うくらい稚拙な発言が目立ちました。はっきり言って期待して損でした。

 現状では、40代くらいの若手議員の質で見るならば、圧倒的に民主党の方が人材は豊富です。先ほどの長妻氏を筆頭に京都選出の山井和則氏など、発言やビジョンのしっかりした人材がよくそろっています。自民党はやはり老年層が多く、若手の議員も郵政選挙の際に相当殺してしまい、挙句に安倍政権の失敗の責任を取られて散々な状態です。

 そんな中で、多少の異論はあるかもしれませんが、参議院議員の山本一太氏はなかなか大した人間だと私は評価しています。その理由というのも、政権発足当初より安倍元総理を支持していたにもかかわらず、郵政選挙で離党しながらも選挙に勝った野田聖子を初めとする郵政離党組の復党の際に、はっきりと安倍氏のやり方を批判していました。また参議院の必要性について話した際、自身も参議院議員であるにもかかわらず、今のままなら参議院は必要ないとはっきりと言明しました。この二つの発言は自民党に籍を置く山本氏にとってすれば足を引っ張るだけの発言にも関わらず、果敢に批判を行ったと言う点は与党議員として私は高く評価します。

2008年8月7日木曜日

日本の建築業界について

 結構前に書いた、「時代遅れな日本の不動産業界」の記事にて、私は低レベルなサービスしかできない日本の不動産業界について解説しましたが、その後不動産業界に勤めており、大学でも建築学を学んだことのある方と腰をすえてゆっくり話をする機会があり、この業界について詳しく話を聞けました。

 まず最初に私から、日本の不動産業界は本当に質が低いかどうかを尋ねてみたところ、やはり「低い」と断言されました。その根拠として、外国では建築年数が経てば経つほど家賃が上がっていく例を挙げてきました。何故建築年数が経つほど家賃が上がっていくかというと、海外では建築年数が長いということは、逆にそれだけ強度に対して保証があるという証拠になるからです。それに対して日本はというと、知っての通りに建築年数とともに家賃代はどんどん下がっていきます。それだけにとどまらず、家賃代が低下していくために所有者によって古いアパートやマンションはどんどんと壊されていくという、別の弊害も生み出しているとその方は指摘していました。

 実はこの時指摘してくれた内容こそ、私が前から一番聞きたかった内容でした。かつて姉歯元建築士によって引き起こされた強度偽装事件の際、文芸春秋にてこの事件を語った建築学者が、この事件のそもそもの原因は「ビルト&スクラップ」で考える日本の建築業界の価値観にあると指摘していました。この「ビルト&スクラップ」というのは文字通り、建築物を建てては壊すという、日本の建築業界の慣習のことです。
 何故こんなことをしているのかと言うと、建てては壊すを繰り返すことによって誰が一番儲かるか、これも誰でも分かることですが工務店を初めとした建築業者です。つまりわざと長期の使用に耐えられない設計で建築物を建てることによって、年数の経過とともに壊させ、また新しい建物を作らせることによって日本の建築業界はみんなで自分たちの収入を確保していたのです。

 単純に考えて見ましょう。初めに多少お金がかかっても百年の使用に耐えられる家を一軒作るのと、十年ごとに作っては壊してを繰り返して百年後までに十軒もの家を作るのとでは、どっちがお金や労力、資源がかかるのでしょうか。言うまでもなく後者の方がかかりますし、なんというか自分で掘った穴を埋めるという無駄な動作を繰り返しているような滑稽さすらあります。

 言い方は悪いですが国もこうした建築業界の慣習を応援していた向きがあります。というのも、地震大国と言われつつも日本の建築基準は実際にはそれほど厳しくないという噂を聞きます。なんでかというと、そりゃやはり建築業界の人間を潤わせるためです。実際に、阪神大震災以後の建築基準法の改正では耐震基準がそれまでより緩くなっています。

 日本の場合は地震大国ということもあり、災害の度にたくさんの家々が破壊されるので単純に外国と比べるのもなんですが、外国では非常に長く建築物を使っています。たとえばアメリカの有名なクライスラービルなどは1930年に建築され、今でも改装を繰り返してニューヨークを代表する高層ビルとして使用されていますし、私が行ったことのあるインドでは、ガンジス川沿いの建物はそのほとんどが15世紀、日本で言うと戦国時代に建てられたものです。もちろん、今でも人が住んで使用されています。やはり石造りの建物はよくもつので、ヨーロッパでも百年単位で使われている家はまだ数多く残っているそうです。

 日本は地震が多いから、とは言わずに、逆に地震にも耐えられる強固な建物を今のうちに多く作っておくべきではないでしょうか。そうすることによって日本の子孫に対し、真に遺産を残せると私は考えています。

  追伸
 報道もされていますが、あの姉歯事件の後に建築審査を厳しく行うよう改正された建築基準法によって、建築業界のどの会社も新規着工が減ってどこも経営が悪化しているらしいです。つい先月も大阪証券取引所の二部上場企業の、準ゼネコンとも呼べる建築会社が破産申告をしましたが、先ほどの方が言うには大手ゼネコンも台所事情は相当追い詰められているそうです。
 宮崎学氏などはその著書の中で、建築業界は学歴のない人間でもすぐ働けて、雇用の維持の面で重要なのだから談合も必要だし、国も保護すべきだと主張していますが、あんだけ無駄金を投入しておきながら前述のビルト&スクラップの貧弱な建物しか建てられなかったのだから、今こうして潰れていっても私は何の同情も湧きません。公共事業もどんどん減らされていますし、恐らく大手ゼネコンも一社か二社はこれから潰れるのではないかと思います。