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2010年2月20日土曜日

煮え湯を飲むとどうなるか

 最近本当に硬い記事ばかり書いていて婚後一年過ぎた夫婦のような倦怠感を感じているので、久しぶりに砕けた記事でも書こうかと思います。例によって過去の私の体験談なのですが、この話は私が高校生の頃の話です。

 その日は学校で期末テストがあり、テスト前に私は水筒に入れて持ってきておいたお茶を飲みつつ教科書をめくりながら復習をしているとある友人が、
「おいお前ばっかり飲んでないで、俺にも一口飲ませろよ( ゚Д゚)」
 と、私の飲んでいるお茶を求めてきたので、私は一計を持ってこう答えました。

「いいよ(・ω・)」
「えっ、本当にいいのかよ?(゚Д゚;)」
「いいけど、口つけて飲むなよ(・ω・)」
「わかってるって(・∀・)」
 
 実はこの時魔法瓶に入れて持ってきていたお茶というのは自分でもびっくりするくらい熱いお茶で、最後の友人の「わかってる」という言葉を聞ききながら心中、「いや、わかってないのはお前だって(゚Д゚;」と、突っ込みそうでした。なおこの場にはもう一人別の友人がいたのですが、その友人は私が何をしようとしているのかをすぐに察して敢えてこのやり取りには加わらず、横を向きながら黙ってててくれました。
 それにしてもこの友人があまりにもうまいこと引っかかってくれたので水筒を渡す際に噴出してしまうのを我慢するのに必死でしたが、何とかこらえて水筒を手渡すと、その友人は真上に大きく口を開けるとゆっくりと水筒を持ち上げて行き、真っ赤に燃えるほど熱いお茶を直接喉へと降り注ぎました。

 この時の光景を、先ほど黙っててくれた友人は後に、「スローモーションのように見えた(;´Д)」と評しております。
 見事に私の術中にはまった友人はお茶を注ぎ込むやすぐに噴出し、その後猛烈にむせかえっていましたが、横で見ていた私達はというと今か今かと必死でこらえていた分を発散するかのように爆笑していました。よく苦しい思いをさせることを「煮え湯を飲ます」といいますが、文字通り煮え湯を、しかも喉に直接飲ませたのは私くらいなものでしょう。

 もちろんこの後友人にはこっぴどく怒られましたが、運悪くその日の晩の友人宅の夕食はキムチ鍋で、火傷した喉では満足に食べられなかったそうです。我ながらひどい事をしたとは思いますが、あれほど見事に引っかかってくれるともうなんていったらいいかわからないもんで、今でもこの時のことを思い出しては噴出してしまうことがあります。

2010年2月19日金曜日

高橋大輔選手、銅メダル獲得!

 不況のニュースばかりで依然と国全体で根暗ムード満開の日本ですが、本日は本当に明るいニュースが入ってきたということで私も一筆したためておこうかと思います。

「喜怒哀楽」の思い込め=高橋、たどった4年間の道(時事通信)

 すでに各所で報道されているように現在開催中のバンクーバーオリンピックの男子フィギュアスケート競技にて、日本の高橋大輔選手が見事三位に選ばれて日本男子フィギュアスケート史上初の銅メダルを獲得しました。
 このバンクーバーオリンピックではすでにメダルを獲得している選手がほかにも何人かいる中でどうして私がこの高橋選手のみを取り上げようと思ったのかというと、彼のこのオリンピックに至るまでの苦難の道のりを考えるとその努力を称えずにはいられないと感じたからです。

「高橋選手らしい演技を」 京で病院関係者 声弾ませ応援(京都新聞)

 高橋選手は上記のニュースでも報道されているように、今回のオリンピックの前にひざの靭帯断裂というスケート選手としては選手生命を脅かしかねない大怪我を負っていました。しかしこの不幸というより他のない大怪我をリハビリにて見事克服し、その後長い怪我の間のブランクを乗り越えて今日の表彰台にまでどれだけ苦難と努力の道を歩んできたのかというと胸が熱くなってきます。実際にテレビで放送された彼の演技を見ていて、私も思わず涙をこぼしてしまっていました。

 私は以前、しかもこのブログをしていて一番文章が荒れていた頃に書いた「私の好きな野球選手」の記事にて書いたように、メジャー昇格を直前にして大怪我を負ってしまいながらも諦めずにその後本当にメジャーのマウンドに立った桑田真澄選手を尊敬していると書きましたが、今回の高橋大輔選手も桑田選手同様に一個人としてその努力、その不屈の精神に心から尊敬するとともに今回の銅メダル獲得を祝福したいと思います。高橋選手、おめでとうございました。

外国人参政権裁判談話の問題

 今連載中の「移民議論の道標」とも内容が密接に関わるので、さすがにこのニュースは見逃すことが出来ません。

「政治的配慮あった」外国人参政権判決の園部元最高裁判事が衝撃告白(産経新聞)

 記事の内容を要約すると、平成7年にて永住外国人に地方参政権が付与されないのは憲法上の平等に反するという在日韓国人から国への訴えに対し、判決では必ずしも違反ではないとした上で判決後の談話(傍論)にて園部元最高裁判事が、「(地方参政権が永住外国人に付与されることは)憲法上禁止されていない」という発言をしたことに対し、発言主の園部氏自身があの発言をしたことについて、

「(在日韓国・朝鮮人を)なだめる意味があった。政治的配慮があった」

 と振り返り、法の最高監視者でありながらかなり無責任な行動を取っていたということを報じています。このニュースを見た私の第一印象は、こんな無責任な人間が最高裁判事をやっていたという時点でいろいろと思いやられました。

 まず当時のこの発言の余波について説明しておくと、かねてから永住外国人に参政権付与を主張してきた在日韓国、朝鮮系団体が俄然勢いづき、従来の主張をさらに強めて現在に至るまで請求の大きな根拠の一つになっております。

 私がこの園部氏の発言に呆れている点はどこかというと、法に対して厳格であって政治的中立を保たなければならない裁判官ともあろう人間がまさか、「なだめるために政治的配慮をした」という、裁判官として決してあってはならない理由で以って、いくら法的拘束力がないとしても社会に大きく影響を与えかねない迂闊な発言を法廷で言ったというところです。しかもそんな重大な発言をしておきながら、「裁判官は言い訳をしてはならない」という鉄則を再び破って、「在日韓国、朝鮮人のような特別永住者にならともかく一般永住者にも参政権を与えようとする民主党の政策はありえない」などと、引退したからといって元裁判官がここまでペラペラしゃべっていいのかと感じてしまいます。まぁ個人がどう考えるかを規制してもいけないのですが。

 この地方参政権についての議論は本筋の連載の後半にて行いますが、自分も含めて冷静に問題点を整理して議論する必要のある問題だと考えております。それゆえ、「なだめるため」という理由で発言するなどは持ってのほかということを今日のまとめとさせていただきます。

2010年2月18日木曜日

移民議論の道標~その五、犯罪人引渡し条約

 前回の記事にて私は現在の日系人の移民(=出稼ぎ)受け入れには大きな問題があるとして、すぐにでも現法体制を改正するべきだと主張しましたが、その最大の要因ともいえるのが今回の主題となる「犯罪人引渡し条約」です。

犯罪人引渡し条約

 この条約は読んで字の如く、それぞれの国同士で国外逃亡犯を捕縛して引き渡すという条約のことです。何故この犯罪引渡し条約が問題なのかというと、現在の日本の外国人登録者数で第三位の人口を誇るまでに至ったブラジルとの間に日本はこの条約を結んでおらず、目下の所、日系ブラジル人が日本で犯罪を犯したとしても日本の警察に捕まる前にブラジル本国に帰国したら刑罰を課せない状態にあります。

ブラジル人「以前から盗み」…名古屋ひき逃げ(読売新聞)

 上記のニュースは先月に三人もの人間が亡くなった名古屋市で起きたひき逃げ事件のニュースですが、リンク先に書かれているようにこの事件の犯人は出稼ぎに来ていた日系ブラジル人でした。彼らはこの事件が起こる以前から常習的にカーナビなどを窃盗しており今回ひき逃げ事件を起こしたことでようやく捕まったわけですが、仮に警察に捕まる前に本国に高飛びされていればカーナビの窃盗容疑はもとより、ひき逃げの容疑についても追求できなかったでしょう。

 実際にそのように高飛びされたという例はこれまでにも報告されており、日系ブラジル人によるとされるひき逃げによって実際に人が亡くなっているものの、その容疑者がすでにブラジルに帰国しているために罪に問えないという、亡くなった方の親類によるドキュメンタリー番組を私も見たことがあります。

 そもそもこの犯罪人引渡し条約、今回調べてみて私も驚愕したのですがなんと日本は世界的にもこの条約を交わしている国数が非常に少ない国で、現在韓国とアメリカのたったの二ヶ国とだけしか結んでおりません。参考までに他国の条約締結国数をここで紹介すると、

・フランス:96ヶ国
・イギリス:115ヶ国
・アメリカ:69ヶ国
・韓国:25ヶ国


 日本が条約を結んでいるアメリカと韓国はいろんな国と結んでいるのに、日本だけがここまで極端に少ないというのは素人が見たって明らかに異常でしょう。逆を言えば日本人は海外で犯罪を犯したとしても日本に逃げ帰れさえすれば罪に問われないということになり、そういった事情があるからこそ国連から東南アジアにおける日本人による(主に暴力団)人身売買に対して取締りがなされていないと注意されているのかもしれません。

 私は移民を受け入れるに当たって、引き受け元の国とこの犯罪人引渡し条約を結んでいるということが最低条件として必要だと考えております。大半の移民がそうでないにしろ、やはり一人や二人は犯罪を犯す可能性のある人間も混ざって入ってくるのを防ぐことは出来ず、仮にそうした人間が国内で犯罪を犯して本国に逃げ帰ったとしても刑罰を課せる体制でなければ日本人との間に不要な不信感を作りかねません。

 ただこの犯罪人引渡し条約を結ぶにあたり一つだけ厄介な国があり、それはどこかというと何を隠そう中国です。現在の日本における外国人登録者人口で中国人は韓国、北朝鮮人を追い抜き一位にもなりましたが、移民を受け入れるに当たって犯罪人引渡し条約が最低限必要だと説いておきながら、自他共に新中派と認める私でも中国とはこの条約を結ぶべきではないと考えております。

 というのも現中国共産党政府は外交において日本だろうとアメリカだろうとどこにでも強気に自国のルールを迫る性格があり、仮にこの犯罪人引渡し条約を結ぼうものなら、本来この条約では政治犯は例外として引渡し対象とされないのですが、恐らく中国は中国にとって煙たい要人が来日するたびにこの条約を盾に引渡しを要求してくる可能性が高いでしょう。それこそ今日オバマ大統領と会談したダライラマ十四世氏などはその筆頭で、下手すれば台湾元総統の李登輝氏にすら引渡しを要求するかもしれません。
 また中国は日本以上に刑罰に厳しい国で、麻薬の所持だけでも死刑で執行も判決が下りてすぐに為されるため、この点についても注意、検討する必要があります。

 ただ日中に跨る窃盗団などの摘発協力であれば中国政府、警察としても願ってもない話でしょうし、これはこの連載の後の方で解説しますが中国には日本が移民として受け入れるのに魅力的な人材が数多くいるため、麻薬、窃盗、殺人といった犯罪に限って日中警察で捜査協力、情報の共有化を進めた上で移民の一部受け入れを実施するべきだと私は考えております。

 最後にこの犯罪人引渡し条約についてですが、仮に日本が締結を求めても相手国がそれを受け入れないのではないかという懸念があります。まず欧米諸国からしたら死刑制度のある日本は敬遠されるでしょうし、また日本の警察や検察は足利事件の菅谷さんの例で明らかになったように強引な取調べをする傾向があり、その上代用刑事施設、通称「代用監獄」の存在など本当に法治国家かと疑うような制度や施設が盛りだくさんです。仮にこのような国から引渡し条約を結んでくれと言われても、私だったら遠慮してしまいます。

 よく中国の裁判や取調べには問題が多いと日本のメディアは報じていますが、確かに中国の制度よりは幾分マシなものの、日本の司法制度もいろいろと問題が多いということを認識しておくべきかと思います。


  おまけ
 この前上海に行った時に友人に、中国には暴走族はいないのかと尋ねた所、
「いないよ。そんなことしたらみんな警察に殺されるもん」
 といわれて、改めて中国警察の強さを認識させられました。実際に旅行するに当たって、中国は非常に治安がいいところです。

2010年2月17日水曜日

移民議論の道標~その四、日系人移民について

 この連載の二回目、「日本の現状」で移民にまつわる現在の日本の様々なデータを紹介しましたが、その中の特筆すべき存在として私はブラジル人の増加を挙げていました。このブラジル人、というより正しくは日系ブラジル人たちですが、彼らは経済界からの強い要望によって1990年に改正された入国管理法によって従来と比べ就労ビザが取得しやすくなったことから年々増加し、現在の日本において外国人人口の第三位につけるまで来ております。

 そもそも何故日系人が就労ビザが取りやすくなるよう入管法が改正されたかですが、当時の時代背景と前回「国籍の決定条件」の記事にて解説した血統主義と出生地主義の概念が深く影響しております。
 1990年当時の日本は言わずもがなのバブル景気真っ只中ということから経済も絶好調の頃で、企業はどこも人手不足で年々人件費も高騰を続けておりました。そのため経済界は政府に対して人件費が安価な外国人労働者の受け入れを当時に強く迫っていたのですが、政府としては不用意に移民を受け入れを始めて一挙に大量の外国人労働者が流入する警戒感を持っており、妥協策として日本人の子孫である日系人に限って就労ビザの発行を認めることにしたのです。

 何故日系人に限って政府は受け入れを始めたのかというと、私の見方だとまず第一に総受け入れ人数の規制があった上で、日系人であれば日本の文化や生活に慣れやすいだろうという目算があったのだと思います。もっともこれはあちこちの社会学の論文にて報告されていますが、両親がその国の出身者である移民二世であっても成人後に来日するのであれば適応するのは非常に難しいそうです。逆に成人前の14、5歳までに来れば適応する可能性は高いそうですが。

 この日系人に限るという条件は言うまでもなく血統主義に基づく政策ですが、こういった手法は何も日本に限らず遠くドイツでも同じようなことをしていると以前に聞いた事があります。ちょっと耳に挟んだ程度ですが、ドイツでも近年に移民の一部受け入れを始めた際、その条件としてかつて多くのドイツ人が移民として渡ったどっかの国の一部地域出身者に限って受け入れたそうで、日本と同じく血統主義に基づいているそうです。

 話は戻って日本の日系人移民の話ですが、この受け入れを始めたことから戦前戦後にかけてたくさんの日本人が移民したブラジルやペルーの日系二世、三世らが日本に移民、国籍が得られず就労ビザだけなので正確には出稼ぎにやってくるようになり、受け入れ開始から二十年経った今に至ると群馬県や静岡県、愛知県の一部地域で大きなコミュニティを構えるほど一般化して行きました。

 何気にこの辺が非常に重要なのですが、確かに日本全国の人口で比べると中国人、韓国人より日系ブラジル人の人口は一段低くなりますが、日系ブラジル人は自動車や繊維産業の工場がある地域に固まって居住する傾向があるため、地域ごとの人口割合で見ると前回に紹介した図録にあるように多くの都市で他の外国人を抑えてトップに立っているだけでなく、中には全住人の10%以上を占めている都市もあります。そのため現在民主党が国会に提出しようとしている外国人の地方参政権付与案に含まれているかまではわかりませんが(多分含まれない)、仮に日系ブラジル人にも付与されるとしたら一番力を持つ集団となる可能性が高いです。それがいいかどうかはまだわかりませんが、すでに大きなコミュニティを抱える集団ということもあってまるきりのけ者にするのはするで問題があり、地方参政権議論で彼らを無視するべきではないというのが私のかねてからの持論です。

 さてそんな日系人移民ですが、いきなりですが私は早期に現在彼らを受け入れている制度を改正する必要があるかと思います。それは何故かというと彼らを受け入れるに当たってあまりにも現在の制度には穴が多く、そうした問題点を改善していった上で受け入れを行わねばやってくる日系人、そして日本人にとってもよくないからだと思うからです。
 これは日系人に限らず他の外国人にも当てはまりますが、特にそれを強く感じるのは犯罪についてです。そういうわけで次回は、恐らくこの連載でも一、二を争う鬼門になるであろう外国人犯罪についていろいろ書いていこうと思います。

2010年2月16日火曜日

鳩山、小沢資金疑惑の残したもの

 ちょっと息抜きとばかりに政治系の短い記事を一本書いておきます。

 さて民主党は去年から続く鳩山首相の故人献金疑惑(脱税)、小沢幹事長の裏金疑惑と、事実上の民主党2トップの金にまつわる疑惑の紛糾から今年は始まりましたが、各世論調査からも明らかな通りに国民が彼らの疑惑に対する説明に納得していないもののこれらの問題は段々とうやむやになってきて、小沢氏の問題については検察も起訴を見送るなど投げ出す結果となりました。
 彼らの疑惑について各メディアは検察発表を鵜呑みにして余計なものも含めて逐一報道しておりましたが、この問題、というよりこの問題の結末についてきちんと掘り下げたメディアはほとんどいなかった気がします。

 あまり長々前置きするものでもないのでもう結論を書くと、今回のこの鳩山、小沢両氏の政治団体における資金疑惑が残した負の遺産とも言うべきものは、問題が発覚したとしても秘書の行ったこととすれば政治家本人は責任を免れるということにあるのではないかと私は思います。
 両氏とも報道や捜査によって明らかとなった疑惑に対し、チンパンジー(何故か福田元首相の顔がよぎった)が見たって筋の通っていない説明をした上で、「秘書が勝手にやったことだ」とまとめており、しかもそのわけのわからない説明によって実際にこれらの疑惑はうやむやになりつつあります。

 言ってしまえば仮に政治家本人が脱税なり裏金収賄なりを率先して行っていたとしても、これからはそれらの問題が発覚しても秘書のせいにすればどうとでも言い逃れが出来るということを今回証明してしまったようなものです。もし今回のようなことがまかり通るのであれば、かねてからザル法と言われてきた政治資金規正法はザル法を通り越して有名無実と化しかねません。
 私も以前はあまりに細かすぎてもと思ってそれほど賛成ではなかったのですが、やはりかつて鳩山首相が国会にて主張していたように、「秘書の責任は政治家本人の責任だ」とばかりに、今後は秘書が勝手にやっていたとしても政治家本人にも無条件で監督責任が課されるように政治資金規正法を改正する必要があるかと思います。

2010年2月15日月曜日

移民議論の道標~その三、国籍の決定条件

 なかなか前置きから抜け出せずにいますが、このあたりは移民を考える上で決して外してはならない非常に重要なところなので前もって解説をしておきます。
 さて一口に「移民」という言葉の定義を出すとしたら単純に、「国籍の違う人間が外国で定住する、もしくは働く」といったところでしょう。この定義の中に出てくる「国籍」という条件が移民を考える上で非常に大きな要素になることは疑いもないのですが、この国籍がどのように決まるか、またそれがどのように世界で扱われているかという点について意外と知らない人が多いのではないかと思います。

 まず日本人が見落としやすい事実として、グローバル化の中で海外ではすでに二重国籍がそれほど珍しくなくなってきております。二重国籍とはその言葉の通りに異なる複数の国の国籍を同時に持つということで、これを認めている代表的な国は言わずと知れたアメリカです。
 現在の日本では両親が日本人であるもののアメリカで生まれた人間については日米の二重国籍を認めていますが、成人後には日本、もしくはアメリカのどちらかを自分の国籍として選ばせており、基本的には日本単独の戸籍は日本人にしか認めておりません。

 ここで早速出てきましたが国籍は出生時に決まるのですが決め方には主に二種類あり、それぞれを「血統主義」、「出生地主義」と呼んでおります。
 前者の血統主義は両親、もしくは父親か母親のどちらかがその該当する国の国籍を有している場合、その子供にも国籍が認められるという考え方で、現在の日本の制度はこの血統主義に基づいております。それに対して後者の出生地主義は両親がどこぞの誰であれ、その国の領土で生まれた子はその国の国籍が認められるという考え方で、これなんかは先ほどの例に出てきたアメリカやブラジルといった国々です。

 そのため一時期流行っていて多分今でも続いているでしょうが、日本人の両親がハワイで子供を出産すると先ほどの二重国籍扱いとなり、将来的に日本国籍を維持するのであればアメリカ国籍を放棄しなければならないのですが、それまでであれば両国の国民が持つ権利を自由に行使できる立場になるのです。まぁうまい話には必ず落とし穴があるのが決まりで、権利を得られる代わりに義務も課されることとなるのでアメリカで徴兵が行われたら従わなくちゃいけなくなるというわけですが。

 この国籍の決定条件がどのように移民に影響を与えるのかですが、仮に出生地主義を採用している国で移民が行われた場合、その国に乗り込んできた移民一世は外国籍のままですが日本で働きながら子供(移民二世)を生むとその子供は移民先の国籍が得られることとなります。またこの場合、子供がその国の国籍が得られるのに親が外国籍のままというのはあんまりだということで、子供を生んだ場合は親にも国籍が認められる国もあります。
 しかしこれが血統主義である場合、たとえどれだけ長い期間移民先の国で働いたとしても移民一世はおろか、移民先の国で生まれ育って両親の母国に一度も行ったことがない移民二世も国籍が得られるわけでなく、母国が出生地主義を採用している場合には下手すりゃ無国籍扱いになってしまう可能性すらあります。

 そのため現在の日本なんかが典型的ですが、血統主義国では移民というよりも出稼ぎの受け入れという形で外国人労働者を雇い入れることが多くなります。もちろんどの方式を採用するかはそれぞれの国の自由ですが、フランスのように条件付で出生地主義を採用している国と比べると現状の日本は少子化に対応した移民政策ではないということがわかってきます。
 こういったところが移民議論の大きなキーポイントとなるのですが、単純に短期の出稼ぎ外国人を大量に受け入れるか、少子化の是正も踏まえてそのまま日本に根付いてくれるような外国人を受け入れるのか、その目的によってこの国籍条件は再考する必要が出てきます。

 ただ面白いことに、日本とドイツは血統主義を採用しつつ移民を受け入れるという政策を続けております。ここまで言えばわかるかと思いますが日本の場合それは日系ブラジル人移民のことで、明日にはこの件についてあれこれ解説します。