技能実習制度そのものについては説明を省きますが、この制度で日本にやって来る外国人は少なくない比率で借金を抱えていると言われています。というのも、実習生の斡旋屋にビザ手続きや受け入れ先探しなどの代行費用をかなり取られ、人によっては日本円で数百万円単位の費用を借金で賄って日本にやってきているそうです。もちろんこれらの費用の大半はピンハネで斡旋業者の懐に入るものなのですが、ほとんど利益を取らない良心的な代行業者もいるものの、「値段が安くて怪しい、人身売買されるのでは」と怪しまれてかえって利用してくれないそうです。
そのような多大な借金を抱えて日本にやってきても技能実習生には労働法が適用されず、最低賃金を下回る時給で酷使されるケースが大半です。雇用主によっては前時代的な扱いをする人もいると言われます。こうした状況、特に大きな借金を抱えて低賃金で不当に酷使されるとなれば、私自身も犯罪を犯してでも一発当ててみようかという思いがよぎると思います。こうした環境でなければ善良な人でも、この状況なら犯罪を企図することは十分あり得るでしょう。
そもそも私が今回ネパール人について興味を持ったのは、日本での犯罪報道がほかの国の人に比べて極端に見られないことがきっかけでした。実際の統計データで見ても在留人口に比べて犯罪発生率は他国出身者に比べて極端に低くなっています。
ネパール人が何故日本であまり犯罪を起こさないのかというと、ネパール人元々の気質もあるかもしれませんが、一番の要因はやはり日本での生計手段が比較的確立されていることに尽きるでしょう。多くのネパール人は技能実習生ではなく「調理師」の技能ビザで入国しており、入国後は日本のカレー屋から生活をスタートする人が多いです。インネパカレーは既に日本で一般化していて利用者も多く、専攻して日本にやってきたネパール人も彼らを雇う形で生活を保障しており、技能実習生と比べるならその生活の安定度は大違いです。
最も冒頭に挙げた書籍によると、ネパール人の中でもあくどい斡旋屋がおり、こちらも数百万円単位の日本渡航費用をむしり取って日本に同胞を送る人もいるそうです。また日本に着いても書類上では正常な給与を支払っているように見せ、実際には最低賃金以下で酷使する人も同じくいるそうです。
それでもまともな雇用主に当たれば技能ビザで来たネパール人は最低賃金以上の給与を得られ、また同胞らの支援を受けて生活することができます。変な職場にあたっても、運の良さにも左右されますが別のカレー屋に移るなどの自由が技能実習生に比べあります。逆を言えば、技能実習生は最初にいい斡旋屋、雇用主に当たらないと逃げ場がありません。
以上を踏まえると、日本での外国人犯罪の増加というか懸念の広がりはそもそも、外国人が増えていること以上に技能実習生の制度的問題にあると思います。かねてから私はこのひどい制度は早く廃止すべきだと唱えてきましたが、今回改めてこの制度の問題点を強く感じ、日本における外国人犯罪対策、そして外国人への偏見を防ぐためにも廃止すべきだと感じました。
恐らく多くの技能実習生は苦しい環境の中でも頑張って日本に溶け込もうと努力しているかと思います。しかし犯罪事件が少しでも起きるとやはり偏見というものは広がり、せっかく日本に貢献してくれている外国人にもよくない目が広がってしまいがちです。これは味方を減らすような行為であり、こうしたお互いに不幸になるすれ違いを防ぐうえでも、犯罪に走らせかねない技能実習生制度は廃止すべきで、少なくともあくどい斡旋屋の取り締まりだけでもすぐやるべきです。
0 件のコメント:
コメントを投稿
コメント、ありがとうございます。今後とも陽月秘話をよろしくお願いします。
注:ブラウザが「Safari」ですとコメントを投稿してもエラーが起こり反映されない例が報告されています。コメントを残される際はなるべく別のブラウザを使うなどご注意ください。