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2021年4月15日木曜日

鉄の竜騎兵


 上記動画は「THE COCKPIT」というアニメ短編集に収録された「鉄の竜騎兵」という作品です。なんでこの動画を急に紹介しだしたのかと言うと、この作品のタイトルが「鉄の竜騎兵」だということをつい昨夜に知ったからです。

 元々、この作品の原作はヤマトでお馴染みの松本零士氏で、ビッグコミックで1970年代後半からちょこちょこ掲載された「戦場まんがシリーズ」の一つです。なおアニメは1993年の制作となっています。
 この作品ですが、当初はテレビ放送されたものをビデオ録画されたものを見たのではと思っていましたが、アニメ制作年から考えると、ツタヤでレンタルしてきたのを自分は見ていたのかもしれません。というのも見たのは小学校3年生頃という記憶があり、1993年だと割と年代的にも一致するからです。

 無論、こんなミリタリーな作品を自分からみようと思うはずはなく、見るきっかけとなったのはソ連人民のてきである親父です。借りて来たシーンは全く記憶にないものの、なんか自宅でやたらご機嫌で「大人のアニメや」といいながら親父が見ていたので、自分も連れだって一緒に見ることとなりました。
 当時見た感想としてはちんぷんかんぷんもいいところで、特に冒頭で日本軍が野砲を打ち込んだところ米軍から反撃を受けて連隊が陣地ごと吹き飛ぶシーンについては、画面では壮年のおっさん二人が防空壕に潜り込み、出てきたら陣地が跡形もなく吹っ飛んでいたという風に映るので、子供の頃の私はてっきり撃ち込んだ後の野砲が暴発して周り全部吹き飛んだという風に理解していました。防空壕に潜り込む前に兵士も、撃つべきじゃないのに言わんこっちゃないなどと砲撃したことをなじるセリフがあったことも影響しています。

 また結末に関しても、まぁ救いのない結末であり、見終わった後の感想としてはあまり言い物ではありませんでした。そもそも何故敵軍に単身でバイク乗って突撃するのかそのメンタリティが当時わからず、また途中で降ろされた若い兵士も救われない結末であり、なんでこうなるんやという感想でした。
 そんな風にあまりいい印象を覚えていなかったものの、記憶には結構よく残っている作品で、昔わけわからない戦争アニメを見たというのは割と記憶していました。ただそれがどんなタイトルで、どんな媒体で作られたものなのかなどが全く分からず、テレビのスペシャル番組などで作られたものじゃないかという風に誤解していました。

 ではなんで昨夜にこの作品の正体を突き止めたのかと言うと、話せば長くなります。

 まず先日に公開された藤田信雄の記事で機嫌よくなって、彼が乗っていた零式水偵のプラモを作りたくなりました。元々、晴嵐のような水上機を一つ作ってみたいと前から思っていたことからAmazonでひたすら水上機プラモを検索してはお気に入りに入れていく作業を行っていたところ、水上機もいいけど陸上機、それも陸軍の戦闘機もまた作りたいと思っていろいろメーカーとか比較しているうちに三式飛燕のエピソードをまた読みたいと思ってWikipediaを見始めました。
 そうして飛燕のページを見ていたら末尾にこの飛燕が登場する作品として「戦場まんがシリーズ」のリンクがついており、どんな漫画やねんとリンクを辿ってみたところ、冒頭でオムニバス形式の戦記漫画で松本零士が書いており、OVA作品も出ているという記述を見て、「もしかして子供の頃に見たあのアニメもここからでは?」と、この時点でなんか妙な予感がありました。

 そうしてそのページを読み進めたところピタリと予感が的中し、まさに自分が子供の頃に見たアニメのプロットが「鉄の竜騎兵」の項目に書かれていました。思わぬところから自分の記憶をの確認再現を果たして驚きつつ、改めて確認するため動画検索をしてぶち当たったのが最初の動画でした。

 今回改めて感じたのは、子供だった頃の自分の理解力です。戦争の背景や兵器の仕組みなどが分からなかったことから冒頭に書いた誤解をしていましたが、10歳くらいの年齢だとああいう誤解をするのがかえって自然なんだなと大人の立場からみて感じます。
 よく同じ時代に放送されていた「Vガンダム」でも、子供の頃は主人公の13歳の少年が敵機をバッタバッタ撃墜するのに心躍らされたけど、大人になってみると少年兵を「使えるから」という理由でこき使いまくる主人公の周囲の大人に狂気を感じるといった感想を見ますが、これもそういった戦争という背景やルールがわからないことによる誤解の一種だと思います。少年兵の問題もまた、この点に集約されるでしょう。

 そういう意味ではちっちゃい子供にあれこれ戦争はどうとかこうとか教えるべきかという点について、やはり難しいという思いがします。全く教えなければそのまま無理解のままだし、かといって中途半端に教えても、物事を変な風に誤解して捉えてしまう可能性があり、アプローチの仕方が難しいです。まぁ水木しげる戦記は見せても全く問題ないでしょうが。
 私自身も軍属じゃないので戦争がどんなものかを理解しているかと言ったら無理解もいいところでしょうが、戦争は言うのとやるのとでは大きな違いがあるという点だけは肝に銘じておくようにしています。ただ自分が子供だった頃に「戦争はやったらダメ」と頭ごなしに言い続けるのもまた違うような気がして、そういう意味では案外、自分の戦闘機プラモ趣味のように、兵器というある意味感情のない中立的な道具というミリタリー趣味方面から徐々に入っていくのが意外と無難かもしれません。

2 件のコメント:

片倉(焼くとタイプ) さんのコメント...

アニメ版 鉄の竜騎兵の監督である高橋良輔氏は1981年に「太陽の牙ダグラム」という
アニメを製作しています。 ダグラムの第1話の冒頭では、主人公メカであるダグラムが
錆付き朽ち果てた姿で出てきます。実はこの場面 鉄の竜騎兵の冒頭の場面(破損した
バイクが長年風雨にさらされ錆びついたスクラップになったいる場面)のオマージュ
なのです。
そのため高橋監督は 自分の作品のオマージュ元であるアニメ版の製作に志願して参加
したそうです。

ダグラムは 地球の植民地である惑星デロイアが独立を求めて、ゲリラ活動、後半には
独立戦争を仕掛けるというお話です。 子供だけでなく、その親世代までも視聴者に
取り込むことを目的としているため、高年齢層向けの内容となっています。
主人公からして、地球の大物政治家の息子として生まれながら、デロイア派のゲリラ
に参加して地球側に攻撃を仕掛けています。また主人公はその出自を除けば
ただの一兵卒であり物語を動かしていく立場にはいませんでした。 物語を動かして
いたのは大物政治家や高級軍人、財界のトップといった大人たちでした。 
物語の最後は、政治決着により 主人公側が敗北するという結末になっています。
今ならこんな作品は作られないだろうなぁ

花園祐 さんのコメント...

 「鉄の竜騎兵」の冒頭のシーンには制作者の強いこだわりを感じていたのですが、そういう背景があったとは発見でした。ダグラムも作品内容は全く知らなかったのですが、そういう高所の政治劇が左右する世界観は最近のアニメでは見られず、現場のよくわからない一兵士が戦況をすべて逆転させてしまうのばっかということもあり、もう少し現実的な作品が確かに最近欲しいです。