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2022年4月17日日曜日

財閥が金融業を持つ意味

 財閥についてあれこれこのところ調べていますが、例えばトヨタグループ、日立グループなどは従来から存在する日系財閥グループに対し企業グループとしては引けを取らないほどの規模を有していますが、この二つの企業グループを財閥と呼ぶ人はまず多くないでしょう。では何故トヨタグループなどは財閥と呼ばれないのかというと、一番大きな点としては、小規模なのは除き、銀行こと金融業をその企業グループに有していないことが大きいでしょう。
 現在でこそ銀行は3メガバンクに集約されていますが、昭和の頃は三菱、三井、住友の財閥御三家はそれぞれ系列銀行を抱え、これ以外にも今は亡き安田グループなども保険を含む金融業を抱えていました。基本的に財閥と呼ばれるにはこうした金融業の有無が大きなベンチマークとなるのですが、その理由について個人的見解を述べると、グループ内での再投資機能が大きなポイントになるのではないかと思います。

 基本的に財閥というのは、異なる業種の企業が複数集まって初めて財閥と呼ばれ、単独の企業規模がどれだけ大きかろうとも、業種が単独であればまず財閥とは呼ばれません。では異なる業種を複数持つにはまずどうすればいいかとなると、単純に異業種参入が必要で、それにはまず投資が必要です。
 そうして複数の業種を抱えるようになった後、儲けている業種で集めた資金を使って、今度また別の業種、若しくはすでに抱えている業種に再投資する必要があります。このサイクルを繰り返すことによってどんどん取扱業種を広げていき、財閥へとなっていくのですが、この再投資という行為に当たっては言うまでもなく、金融業務が重要となってきます。

 もちろん、既存の外部取引行を利用してこうした再投資を行うことはできますが、その際に金利や手数料がとられるのはもちのろんです。ただ、これがグループ内銀行であれば話は変わってきます。
 グループ内銀行を介す場合、その際に徴収される金利や手数料は回り回ってグループの利益として留保されていきます。いわば、グループ全体で見ればほとんど経費なしで再投資できるわけで、そういう意味で財閥化への過程においてはグループ内金融機関の存在が非常に重要となってくるわけです。

 もちろん、銀行を介さない直接投資や社債などによる資金支援を行うことも可能ですが、海外投資などになってくると送金手続きなどから銀行の存在が重要となってくる、また口座管理なども含めると、やはりグループ内銀行のあるなしではかかってくる支出が変わるでしょう。
 一応、トヨタも日立もグループ内にメガバンクほどではないものの一定の金融業系企業はありますが、やはり三菱や住友グループと比べると、この辺で再投資プロセスがやや変わってくるのではないかと思います。

 そういう意味では、現代において最も新しい財閥と呼べるのはソフトバンクグループかもしれません。ここは若干本社と距離あるけどSBI(ソフトバンクインベストメント)が存在し、異業種系企業の買収を始め、単純な企業投資も行っており、グループ内で集めた余剰資金を有効に活用しています。またこの前は新生銀行を連結子会社化しており、ますます金融機能を高めてきています。

 必ずしも金融なくして財閥なしというつもりはありませんが、やはり財閥の宿命たる再投資という行為を中心に考えるなら、金融のあるなしを財閥と数える条件とするのはやぶさかではないと思います。もっとも昔と違って、ネットバンクならともかく実態店舗のある銀行を始めようとなると許認可的に難しい時代でもあるので、旧来の「財閥」というコンセプトを未だ持ち続けること自体があながち間違っているのかもしれませんが。

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