10年前のあの頃はフリードリヒじゃなくてゴーンがいた時点でなんでそんなに日産危機論を言えたのかというと、その時点で日産は何年もまともな新車を発売していなかったからです。当時はまだコンパクトカーのノートに関しては頻繁にモデルチェンジを繰り返していましたが、あれから10年経った現在においてはさらにひどくなっているというか、マイナーモデルチェンジすらほとんど行われず、何年も前に発売した車をずっと売り続けているような状態です。一応、セレナに関してはフルモデルチェンジをまだ数年後にやってはいますが、それでもかつてと比べるとそのブランド価値は同クラスのアルファードとは比べるものもないくらい開いており、もうこの差を埋めることは金輪際ないでしょう。
話を戻すと2010年代中盤の時点で日産は新車をまともに開発する能力がなくなっていたのではないかと思います。日本市場だけでなく中国市場でもほとんど新車がなく、一応途中で出した「シルフィ」は中国で大ヒットして年間販売台数でも首位に入ったこともありましたが、既にこのシルフィも旬が過ぎて売れなくなっています。それどころか現在の中国では日産に売れる車はほとんどなく、かろうじてエクストレイルがファンの間で売れてる程度です。
それほど深刻なくらい新車が出せなくなっていた日産なのですが、2010年代においては人気の高かったキューブを廃番にしてしまっています。あれこそモデルチェンジすれば旧ユーザーは確実に買い替えたと思うし、その後のホンダ・Nボックスのヒットを見ると、あのクラスの需要は非常に高かったと思うだけに惜しいと感じるとともに、日産は何を考えているんだと今だけでなく当時も感じました。それ以降もキューブに限らず新車は出ないのに廃番にする車種は増え続け、そのラインナップは往時に比べると今は非常に貧相なものとなっています。
ではそれ以降、日産は何を売っていたのかというと、アライアンスに加えた三菱に作らせたekシリーズこと日産・サクラでした。自分とこでは一切開発せず、三菱に開発させて量産させた軽自動車ばかり売るようになり、登録車はどんどんと先細っていったのがこの10年だとみています。とはいえ三菱をアライアンスに入れる前から日産はほとんどまともな新車を出さなくなっていたので、この傾向は三菱との提携による結果だとは思います。むしろ三菱がいなければ、日産の日本国内販売が今のように追いつめられた状況になるのはもっと早かった気すらします。
そもそも何故日産はこれほど新車を開発できなくなったのか。確かに00年代と比べると10年代に入ってからはグローバル車戦略もあってどのメーカーも開発期間が延び、新車投入ペースは悪化していく傾向がありましたが、それを考慮しても日産の投入ペースほどには悪化していません。終いには過去に発売した車をガワだけ少し変えて「新発売しました!」と言い張る詐欺的な売り方までしてたし(フェアレディZ)。
時期的に考えると、大体リーマンショックあたりの時点で日産の開発リソースがかなりおかしくなっていたような気がします。まだ当時はジュークなども開発してましたが、それ以降はどんどんと何も作らなくなり、現在に至ってはまともな新車を作れるのかすら怪しさを感じるほどになっています。資金力とかそういうものではなくやはり日産自体の開発リソースがなくなったという風に思えてきます。
一部報道では、開発プランが下から挙げられてもあれこれリスクを挙げては上層部が握りつぶすことが続いていたと報じられていましたが、この10年の日産の新車投入状況を見る限りそんなレベルじゃないような気が私はします。どちらかというと、「作りたくとも作れない」ような状況であるように見え、三菱への開発丸投げを見てもそうした事情があるからのように感じます。
見方を変えると、今の日産は三菱なしじゃ成り立たない気がします。そして、今日産が持つ財産の中で最も価値があるのは三菱に対する持分だと思え、ホンダも本音では軽自動車シェア、技術の拡大のため日産以上に三菱を欲しているように見えます。にも拘わらず資金調達手段として三菱株の売却を誰も口にせず、報道も出ないことに前から奇妙さを感じており、もうなんか裏で話ついてるんじゃないかとも穿っています。
最後に、自分が日産が身売りを決断したなとはっきり感じたのは今年1月、社用車のADバンの廃止を発表した事典です。この手の社用車というのはフォークリフトなどと同様に、自社グループや下請けに無理やり買わせることができる車であり、赤字を出そうと思っても出せないような車種です。にもかかわらずマイナーチェンジしないのはともかく廃止を発表したということは、もう企業としての独立運営をあきらめたんだなと思いました。
こちらも後出し孔明っぽいですが、当時はここまでブログに書いてなかったので批判されても仕方ないと考えています。
以上をまとめると、ADバン廃止発表の時点でもう日産は破綻がほぼ決まっていましたが、自動車メーカーとして開発力的に詰んでいたのは三菱との提携前辺りじゃないかと考えます。当時に三菱を一部買収することで命脈を永らえさせましたが、実質的に10年前の時点でほぼ詰みに入っており、死んでいた命を10年永らえさせていたようなものです。
既にホンダからも提携を拒否られているように、日産の価値はもはやほとんどなく、追浜工場を閉鎖して九州に生産能力を統合させると言っても、その九州の工場もいつまで持つかという話でしょう。まだここまで口にする人もいませんが、日産のブランド自体存続できるのかというような状態だと私には見えますが、そこまでの危機感もってる人はまだ多くない気がします。
それはともかくアルピーヌ・A110は欲しい。円安のせいで日本国内の販売価格がモリモリ上がってるけど。
日産自動車の事は「オッサン自動車(中高年=オッサンにばかり人気の車を作る)、追パブ(追浜工場の従業員が通うパブの通称。セクハラと誤認される通称なので使用には注意)とネタにしてきました。 ですが私は日産の事が嫌いではありません。社用車とはいえADバンを長年乗り続けてきたのですから。そのADバンの生産終了には何とも言えない物があります
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