そのシナリオについてですが、一つ優れていると感じた点を挙げると、作中に登場するサイコパスの描き方は抜群に上手いと感じました。
前にネットの掲示板で、漫画や小説に出てくるサイコパスはなんか小悪党感が強く見ていて萎えるという評論がありましたが、これについては深く同感します。基本的に露悪的な描かれ方して、自分のやった悪事を無駄にアピールしたり、ハンター×ハンターのヒソカみたく弱い奴には強気で強い奴にはビビるというか避ける特徴を持つことが多いため、不気味に描こうとしているんだろうけどぬぐい切れない小物感が激しくなることが多い気がします。
それにし対し上述の「真昼の暗黒」に出てくるサイコパスなのですが、割とおっちょこちょいで結構ミスったり詰めが甘かったりしていて、完璧とは程遠いキャラになっています。また自分の悪事の露見に関しては非常にビビってて、先ほどに上げたダメなパターンの露悪性に関してはほぼ皆無です。
その一方、ある意味でサイコパスとされる症例の最大の特徴である罪に対する呵責のなさ、自覚のなさは非常にはっきりしており、「世間には認められないんだけどやめられないしなぁ」的なノリで悪事を延々と繰り返し、ばれないようにこそこそ工作しています。直近の事件で言えば、座間市の事件の犯人が一番近いイメージです。
またこの「真昼の暗黒」に登場するサイコパスの特徴として、非常に事務的で感情を見せないという特徴も、いい感じに描けているように感じます。唯一子供の遠慮のない食べ方に眉をひそめますが、それ以外は落ち着いた成人然していて、「ああ本当にトチ狂った人ってきっとこんな感じなんだろうなぁ」という印象を覚えました。そういう意味で、サイコパスの描き方がやたら冴え渡っているという作品な気がします。
こうしたサイコパスに限らずとも、特殊な人間を描くに当たってはやはり想像だけでは限界があるような気がします。実際にその手の人間と会話したり接触がないとこういうものってなかなか描けないと自分は考えており、それが最初に挙げた「小物感漂うサイコパス」の量産につながっているのでしょう。
そんな自分はこれまでどんな特殊な人物に会って来たかですが、実はそんなには会っておらず、比較的穏当な人間関係の中で過ごせてる気がします。せいぜい言って過去に強盗殺人してた人と、上場から破産まで経験した人くらいです。