話は本題ですが目下開催中の米中貿易戦争。どっちが勝つのかと聞かれるまでもなく「米国側に決まってるじゃん」という声が大きいですが、私は逆で、長期的には中国に分があるのではないかと今考えています。理由は単純に、米国が貿易戦争を仕掛けているのは中国だけじゃないからです。
言うまでもないですが、米国というかトランプ政権が始めたこの関税競争は現時点においても完全なミスと断言できます。仮に中国限定で行うならばその封じ込めとしては価値があったでしょうが、愚かにもほぼ全ての国を対象にしたばかりか、最も脇を固めなければならないカナダ、メキシコの近隣諸国を最初のターゲットにするなど、これで成功する見込みなどありません。案の定、通貨、株価などのトリプル安を引き起こしてビビって本格実施を先送りしましたが、あまり反省する人間ではないので数か月後に程度を抑えてまた実行し、あらゆる指標を下げることになると予想しています。
それで肝心の中国との貿易戦争ですが、経済規模で言えば米国の方が上なので普通にやれば米国が勝てるはずなのですが、上記の通り米国は戦う必要もない同盟国にすら貿易戦争を仕掛けており、この状況をうまく中国が利用するなら勝ち目もあるのではと考えています。
具体的には、現在ほぼすべての国と企業がサプライチェーンの再構築を図っていますが、これを米国抜き、敢えて言うなら「Globalization without USA」を旗印にして、「米国だけがいないグローバリゼーション」体制へもっていくことに腐心するなら、逆転の目があるんじゃないかとみています。
そもそも中国以外の国も、トランプ政権の脅迫的な行為や朝令暮改に振り回されて基本どこもいい感情を持っていません。また仮にこれらの横暴な振る舞いに対策を取ったところ、次の政権でまたひっくり返されたら対策への投資がすべて無に帰すため、現状どこも見送るというか、トランプ政権が早く終わることを祈って耐えるという選択を採っています。言うなれば、米国との貿易を短期的にあきらめるという消極的選択肢です。
この間、中国が販売網を含めほかの国との貿易網を築くことができれば、文字通り米国を克服することになるのではというのが自分の見方です。もちろん米国も中国抜きの貿易網を作るチャンスがあるし、そもそもそれが当初の狙いですが、現時点ではこの可能性はほぼゼロだと私は考えています。理由はごく単純に上記の通り今米国は世界中からヘイトを買っているのと、トランプ政権が現状と将来に対する認識があまりにも拙く、そのような米国有利の状況を自ら作ることは絶対にできないという確信があるからです。むしろ敵を増やし、自らの状況をどんどん悪化させていくだけでしょう。
もちろん中国も無駄にエラそうな態度を取って無意味に敵を作る常習国ですが、今回のトランプ政権の動きを受けいくらか謙虚にならざるを得ないというか少し丸くなるのではという気がします。その上で100年に一度かもしれない米国の痛恨のミスに付け込んで、うまく立ち回れるなら、この貿易戦争においてもイニシアチブがあるのではと思ったわけです。
もっとも中国自身も不景気であるしこっちもトップの政策能力が拙いこともあり、このチャンスをうまくつかめない可能性の方が高いとも考えています。恐らくこの貿易戦争の帰結としては双方ともに大損害を抱えて終わる可能性が最も高いものの、米国は現時点で得るものはなく、中国は立ち回り方によってはそれがあるという見方から冒頭の見解へと至りました。
それにしても日本は、今後は米国が弱くなった後の世界を考えていかなければならないでしょう。確実に米国はこの2年間でそれ以前と比べ劇的に力を落とすこととなるため、そのような世界での立ち回り方を今から考えるべきかもしれません。
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