その加藤茶についてですが、リアルで今かっら20年近く前のテレビ番組に出演した時のエピソードが、自分にとって一番面白く感じました。それはどういうエピソードかというと、ドリフターズ時代のいかりや長介との関係です。
当時のドリフターズではグループのギャラの約半分をいかりや長介が、残り半分を他のメンバーで分け合うという分配の仕方をしていたそうです。もっともいかりや長介によると、様々な経費はいかりや長介が払っていたことから手取り収入で言えば他のメンバーより「ちょっと」多い程度だったとのことです。
ただこうしたギャラの取り分に限らず、様々な面でリーダーとして他のメンバーに高圧的な態度をとるいかりや長介に対し、加藤茶は普段から激しく不満を感じていたそうです。そんな矢先、いかりや長介が得意げな顔で「外車買っちまったよ」と高い外国車を購入したことを自慢してきて、とうとう堪忍袋の緒が切れたそうです。そしてついに、いかりや長介への復讐を実行することを決断しました。
その復讐とは何かというと、買ったばかりの外国車のホイールに自分が小便をかけることでした。結構長々やっていた甲斐もあってかある日、いかりや長介が洗車していたところに出くわしたのでどうしたのかと聞くと、「なんかタイヤが犬の小便臭いんだよ」と語ったそうです。それを聞いてますます図に乗り、小便攻撃はその後も続けられたそうです。
番組内で上記のエピソードについて紹介VTRが流れた後、カメラを向けられた加藤茶はスタジオ内でも当時のいかりや長介の横暴ぶりについてあれやれこや話して我慢ならなかったと語り、司会者から「それではいかりや長介さんに今何か一言ないですか?」と向けられると、加藤茶はカメラ目線に向き直って不敵な表情で「おい長介!」と言ったその瞬間、
「なんだよ?」
という言葉とともに、バックからなんと生前のいかりや長介本人がいきなり出てきました。テレビ特有の仕込みだったのかもしれませんが本人登場の前振りは一切なく、リアルタイムでテレビ見ていてその突然の登場ぶりには見ている自分もリアルに驚きました。そして画面上の加藤茶も、先ほどまでの不敵な表情が一転して一瞬で顔面蒼白となり、腰砕けとなって後ずさっていました。
その後、スタジオで並んだ二人に司会者が「どうでしたか今のエピソードは?」と水を向けると、「いやいや、僕は昔からいかりや長介派で……」といった感じで手のひら返してへりくだった態度を取る加藤茶に対しいかりや長介は、「まぁ当時はみんな忙しくて不満もいろいろあったと思う。そうした不満の解消になっていたのであれば、今更何か言うことはない」といった感じで水に流すような感想を述べていました。
自分が知る限り、この時のいかりや長介登場時のワンシーンが加藤茶の出演番組で一番笑った瞬間でした。それくらいあの登場の仕方は神がかっていました。
同時に、この番組を見終わった後で改めてドリフの面々を思い返すと、どれも一騎当千級のコメディアン達であり、これだけの実力者たちともなると相当我も強かったのではと思うのと同時に、そんな強者たちを一定に統率していたいかりや長介はどれだけ凄かったのだろうということを何故か学校の同級生たちと話していました。いかりや長介について上記の加藤茶を始め所属メンバーたちは揃って「横暴」、「独裁者」、「死ねクソ野郎」などとその態度などを口を開けば非難し続けていますが、逆を言えばそうした厳格さなしにはあのメンバーが揃って活動することもなかったのではと思う節があります。最近、妙な友達意識の高まりからか「コミュニケーション力」ばかり取り沙汰されて「リーダーシップ」という言葉を見る機会が減っていますが、リーダーシップの一つの形として未だにいかりや長介モデルというものが私の中に存在し続けています。
それにしても昔と違って現代は芸人の賞味期限が短いというか、ドリフのメンバーのように長年愛され活躍するコメディアンは減った気がします。まぁ昭和という時代もあったからこそでしょうが、年取ってから円熟味を増す芸人が減っているというかなんというか。
一方で一発屋と思いきや長々活躍していると思う人に狩野英孝がおり、意外とこの人は今後も活躍し続けるのではと密かに評価しています。