上のリンク先は島耕作シリーズのスピンオフ作品で、島耕作世界に転生したZ世代で島耕作マニアの主人公が初芝社員となって、ミッション形式で島耕作の偉業を陰ながら支えるという内容です。以前から作品について興味を持っており、完結していたこともあって先日の電子書籍のセール時に大人買いして読んだのですが、期待に違わず面白くて一気に読めました。
元々、島耕作シリーズについては運転免許の合宿中の宿舎に読んではいたものの、当時置いてあったのは課長全巻と部長シリーズの前半だけで、私自身は島耕作マニアとはとても言えない存在です。ただこの漫画では課長以前の話が割とメインだったためそんなに影響はなく、また恐らく島耕作を知らなくてもある程度内容が理解できるよう把握されており、構成の妙が光る作品な気がします。
それでこの作品を読んで感じたこととして、改めて島耕作シリーズの偉大さというか面白さに気が付いたような気がしました。現代においても比較的珍しいビジネス現場をメインとした漫画であることもさることながら、こうしてスピンオフが出るほど濃いキャラクターが多いというのも強みでしょう。
特に「逢いたくて、島耕作」で出てくる今野輝常というキャラに関しては自分もかなり記憶しているというか印象の強いキャラクターでいかにもな人の足を引っ張ろうとするだけのヒール役として登場しながら、その後も何度も登場しては動静が描かれてたりします。なおこのキャラに限らず、関西弁を使うキャラは島耕作シリーズの中で大体嫌味なキャラクターになっており、読んでて自分は「なんかこの作者、関西人に恨みでもあるのだろうか(;´・ω・)」と思ってたりしました。
その今野を含めてですが、今回このスピンオフ漫画を読んで気づいた点として作者の弘兼憲史氏はどのキャラクターも大事にする人だという印象を覚えました。前述の通り、いかにもぽっと出の嫌味なキャラクターですらその後何度も登場させるなど、使い捨てにすることがほとんどありません。後年に描かれた課長以前の話(平から係長までの時代)では、何年も前の課長連載時に出てきた上司系のキャラクターが再び登場したりしてそのキャラクターがより掘り起こされています。
意外とこういう風にキャラクターを間隔を置いて再登板させるというのはほかの漫画では見られず、ひどいのになると「タフ」シリーズをはじめ、途中でいなかったことにされることも少なくありません。そうした作品と比べると島耕作シリーズはメインストーリーを進めつつ一人一人のキャラクターを大事に使っているように思え、この点がほかの漫画と一線を画しているから現代においても評価されているのだろうという風に感じました。
もっともキャラクターを大事にする一方、退場(=死亡)させるときはすげぇ雑だという気もします。某キャラなんか自宅に飛行機を突っ込ませたりしており、最初読んだときはマジで笑ってしまったとともに、「もっと他に描き方あったんじゃないの?」という風にも思いました。