昨年から日本のトップニュースをひた走り続ける米価高騰ですが、本日より一部小売チェーンにて備蓄米の販売が開始され、朝も早くから大勢の人が並んで購入するなど事態が刻々と動いています。
一方、最初の入札でJAが購入した備蓄米は入札からしばらく経っても市場に全然流通していないと報じられていましたが、現時点の流通状況はどうなのかについて続報はありません。
この一連の米価高騰について、JAを批判する声は少なくありません。先の流通しない備蓄米いい、全国の多くの農家を束ねる中心的存在であることもあって、価格高騰を引き起こした主犯だとか、対応に問題があるなどといろいろ言われています。しかしJAの側もいろいろ弁解を行っており、今回の米価高騰は意図したものではなく突発的なもので、また根が深い問題ゆえに対応が難しいなどと主張しています。
そのため、今回の米価高騰はJAのせいかというトピックで今あちこちで議論が見られます。結論から述べると、私自身はJAの責任はめちゃ重く、実質的にこの高騰はJAのせいだという風に思います。
初めに述べておくと、私自身農業についてあまり詳しくなく今回のトピックは各種報道を見た上での判断に過ぎません。ただ農業には詳しくなくてもロジックには詳しい自信があり、報道で見受けた指摘やJA自身の発信の論理から上記結論に至っています。
・根拠その1、発言がコロコロ変わっている
当初、具体的には去年年末に高騰し始めた段階ではJAはまだ、政府要請を受けて米価高騰に対し対策に取り組むなどと主張してきました。しかし高騰がその後も続くと、「農家の手取り問題がある」、「JAだけの責任じゃない」などと責任転嫁をする発言へと変わり、現在に至っては今の高価な状態を「かえって今くらいが適正価格だ」などと主張するに至っています。
もちろん上記のJAの発信がJAの総意ではなく一部の人間の発言である可能性もありますが、少なくともこれら発言をJAが否定するような報道は見ていません。ただでさえ高騰が激化していてちょっとした発表によって消費者も影響されやすい状況であることを考えると、その迂闊な発信姿勢についてはかねてより疑問を思えていました。
そもそも上記の適正価格発言に関しては、理解の使用がありません。江戸時代みたく飢饉が起きているわけでもないのに、前年同期比で単価が倍にも高騰している状態を適正価格というのは何をかいわんやです。仮に末端農家の収入を考慮しての発言だとしたら、何故これまでに価格引き上げに努めてこなかったのかを問い詰めたくなります。
少なくとも1年でこれだけ価格が倍にもなったら米離れも十分起こり得て、それによって全体市場規模が縮小するリスクの方が高いと言わざるを得ず、今の価格が適正価格だというのら最低でも数年かけて今の水準に持ってくるべきで、1年で倍となったこの状況を是とする姿勢はどう考えても理解できません。
・根拠その2、価格安定に対する取組内容を一切口にしていない
今現在、コメの流通はほぼ自由化しておりJAが必ずしも全量を取り扱っているわけではないものの、それでも絶対数では圧倒的首位にあり、価格に対して政府よりも強いイニシアチブを持つ組織であると言わざるを得ません。もちろんそれでも価格は市場が決めることなのでJAの思うがままではないということは理解できます。
しかし、そのJAがこれまで米価安定について具体的に行った取り組みというのを私は一度も見たことがありません。見たことと言えば「出荷量はこれまで通り、または少し増やしているなのに流通しない」と言い訳くらいで、だったら何故流通経路というかサプライチェーンを確認しないのかと殴りたくなる言い訳でした。
少なくともある程度サプライチェーンを把握している立場であることから、コメの流通経路を追うなりしてどこか流通を止めていないか、または価格高騰を促していないかの調査くらいはやれよと思うものの、今のところそうした動きは見られません。そのため高騰の原因についても諸説乱れて無駄にヘイトを高め合っている状態にあります。
前述の通り日本は今飢饉にあるわけでもないし去年の収穫も劇的に落ちているわけでもありません。訪日外国人客の増加によって消費量がやや増えているという事実はその通りだと思うものの、単価が倍になるほどの消費量増加とは言えないでしょう。燃料費などの高騰を価格上昇の原因に挙げる人もいますが、何も原油価格や人件費が倍になったわけでもなく、やはり以上を踏まえるとすでに転売ヤーも出ているだけに流通が価格高騰の主犯だと考えざるを得ません。
その流通に対してJAは何をやっているのか。もちろん販売価格を指定することはいけませんが大量の米をスタックしている業者を調べるくらいの行動を取らないのかがかねてより疑問で、それ以外の価格安定化も消極的というか日本人得意の「やってますアピール」で何もしているように見えず、この点で批判を受けるのは当然だと思います。
・根拠その3、備蓄米が流通しないことの言い訳
農水大臣が小泉氏に代わるまで、JAは入札した備蓄米が流通しないことの言い訳として「精米に時間が価格」とも主張してました。しかし冒頭でも書いたように先の入札で備蓄米を得た大手栗チェーンは精米したうえでの販売を今日から開始しています。精米に関しては最もノウハウと供給能力を持っているのはJAと思うだけに、備蓄米流通の遅れに関してもその責は免れないかと思います。
ただこの最初に放出された備蓄米に関しては、入札で市場価格よりも高い金額での落札であった点から、JAでも赤字販売でなければすぐ流通させられない主張は至極もっともだと思います。私個人の意見としては、第1次報酬の備蓄米は余ってる分だけでも落札価格で政府が買い取り直し、前回入札の通り再び小売業者に配るべきなのではとも考えています。
全部書き切れたわけではありませんが、大まかな判断理由としては以上の通りです。特に2番目のサプライチェーンの問題については、ドン・キホーテが5次問屋まであるのが原因と小泉農相に意見書を出すなど根深い問題だと思え、これを機に大幅な改革を行うべきじゃないかと思います。
具体的には農家から小売業者までのサプライチェーンを効率、短縮化するように図り、両社のマッチングを支援するとかがありますが、政府主導でやるとなると農水族が抵抗するのは目に見えています。個人的にこうあってほしい案としては、今回入札に参加した小売業者らが共同で一次問屋業者を設立し、農家との調達取引交渉や分配まで行ってはどうかと考えています。
私自身はかねてからJAという組織を疑問視しており潰すべきだという立場を持っていましたが、色々報道を見るに農家の方からすればワンストップで農業業務取引を行える相手で必要だという意見が見られました。とはいえ業界改革は必要で、以前にも主張したようにJAが業界単独で存在することが一番の問題だと思え、対抗馬となる別組織を設立することが、JA自身にも改革を促す上で市場いいように思え、上記の通り小売業者らによる共同大規模代理店の設立が落としどころじゃないかと思うわけです。