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2016年12月28日水曜日

上海の大江戸温泉取材記事の裏側

パクリ疑惑の上海「大江戸温泉物語」に行ってみた(JBpress)

 知ってる人には早いですが例の上海にある大江戸温泉に行って、上の記事を書いてきました。記事は昨日にアップされましたがYahooのトップにも掲載されてコメントもえらいついていましたが、何気にYahooトップに記事が掲載されたのはこれが初めてです。もっと早くてもよかったと個人的には思いますが。
 今回の取材は依頼されたものではなく、自分の方から連載コラムを持っているJBpressの方に持ち込んだ原稿でした。というわけで今日は楽屋裏ネタというかこの取材の裏側に何があったのかを記録がてら書いていきます。

<何故取材に?>
 まず、件の大江戸温泉については日本で騒ぎになる前からその存在を知っていました。というのも友人の上海人が今度オープンするから一緒に行こうよと誘ってきていて、どうせまたいつもの冗談だろうと思って聞き流してたら日本の方でパクリ疑惑が出てニュースが大きくなり、なんや大きく取り上げられるようになったなぁと他人事のように見ていました。
 そしたらこの前の日曜の晩、その友人から「今度あの施設に行こうと思うから、花園君明日休みなら行って下見して来て。ついでに取材記事書いて報告して(^o^)」と無茶振りしてきやがって、まぁ確かに月曜はたまたま休みだし興味もないわけじゃないから、ほんならよっこいせとばかりに行く羽目となりました。

 ただこの時、内心ではチャンスかもとは思っていました。というのもこの件は連日報道されるなど大きく注目を集めながら、どのメディアも施設内に入った取材は一切行っておらず、日中双方の業者の発表を垂れ流すだけの浅い報道しかしてなかったからです。ついでに言うと、契約関連については中国側の主張は恐らく現地報道を一部翻訳してただけだと思います。
 それなので仮にいま現地レポート書いたら多分一手に独占出来るということと、割合こういう系統の体当たり系の記事は昔から得意でもあったのと、報道が日を追って高まってきている中だからインパクトがあるだろうとは踏んでました。っていうか今書いてて思うけど、何で他のメディアは入りに行って取材しなかったのだろうか。このところ散々周りの人間に、「最近の記者は本当に取材しない」と当り散らしている中だったこともあり、一つ手本を見せてやるという妙な気持ちもありました。

<書き上げるまで>
 そんなわけで雨が降る中、気候変動を受けて体調が悪い中にもかかわらず早朝から取材に赴いたわけです。昼過ぎまで取材してから自宅に戻り、すぐ熊本県庁に電話取材かけた後、日本の大江戸温泉物語にも電話をかけたら広報課の担当者が不在とあったので、折り返しましょうかと言われたものの、「国際電話やからわしから掛け直す」といって帰ってくる時間を確認し、その間にJBpress側にこの件で記事いるかと打診しました。
 JBpressの担当者は生憎打ち合わせ中だったのでメールを一本書いて送り、大江戸温泉物語へ電話をかけるまでの間も記事を書き、さっき確認した時間にもっかいかけ直して取材を終えるとまた記事書いて、大体取材込みで4時間くらい記事を書きあげました。JBpressからは返信メールで「是非に」とあったので、とりあえずありったけの内容を4800字くらいで書き上げた原稿をブン投げ、「修正等はすべて任すしこっちの再確認は不要だから明日にも出稿してくれ。タイミングがマジ命」と伝えました。結果的にはこの判断はドンピシャで、やはり昨日のあのタイミングにアップして大正解だったと思います。そういう意味でこんな急な提案に乗ってくれ、多分夜遅くまで作業させてしまったJBpress側にはほんと感謝しています。

<コメントを見て> 
 そうして朝出社してYahooのトップページ開いたら自分の記事載っててオイヨイヨとか腹の中でツッコみつつ、Yahoo記事に大量についていたコメントを見てました。ちなみにそのコメントは今日も見返しましたが、ちょっと過激というか個人の人格批判系のコメントは非表示というか削除されており、Yahooの中の人たちもこういう仕事してるんだなと妙に感心しながら眺めてました。

<中国人認定>
 コメントの中でまず目についたのはやはり私への批判というか妙な推定で、「中国を持ち上げやがって、こいつきっと中国人だろ!」とか勝手に中国人認定されました。中には「いや、在日の中国人だろう」とか言ってるのもいましたが、「よりによってこの俺に向かってよくそんなこと言えるな」と、昨日話した友人もこのようなコメントを見て私と同じことを思ったそうです。
 仮に私が中国人だとして、毎日ブログで誰に頼まれることなく意味不明なことを長文で書き続ける中国人がいたとしたら、私個人としては軽い恐怖感を覚えます。日本人ならこういうブログも続けられるだろうけど、外国人でありながら日本語でこんだけ書き続けていたら相当恐ろしい人間に間違いないでしょう。どうせこのブログは見てないだろうけど、私に対して中国人認定する判断はそらないよなぁとか思います。

<この記者は馬鹿か?>
 あと目についたというか多かったのは「この記者は馬鹿か?」と書いたコメントです。まぁ確かに単純な記憶力だけならまず他人に負けることはありませんが実際に物覚えは悪い方なので馬鹿だと言われても言い返せないのは事実ですが、コメント欄ではどっちかっていうと取材方法をあげつらって馬鹿と書かれてあり、その中にはいくつか「?」となるのが多くありました。

 まず気になったのは、「電話取材しかしてないで何を偉そうに。取材ならちゃんと熊本県庁と大江戸温泉物語の本社へ行けよ」というようなコメントで、企業不祥事とか社長インタビューなら確かに訪問はしますが、普通の企業取材は広報への電話取材です。もしかしたら私の知らない世界で企業取材のために毎回出先へ乗り込むメディアもあるのかもしれませんが、少なくとも私はそんなメディアは見たことがありません。
 その電話取材についても、「企業の窓口に電話して聞いてもちゃんと答えられるわけないだろ。広報にアポすら取れない記者なんだろ」というのもありましたが、なんで大江戸温泉物語の広報課に電話かけてるのにこういうこと言ってくるかなと不思議に思いました。っていうか総合代表窓口が取材に答えるはずなどなく、広報課・部以外は絶対に回答しないってのに。また私が広報課に取材していないという根拠をどこで見つけたんだろうかと、思うだけなら勝手だがよくそれを文字に残せるなとその勇気と無謀さには多少は感心しました。まぁそれ以上に、自分の本職は今は記者じゃなく普通のサラリーマンなんだけどね。

 このほか中国人認定の根拠として記事中に「日式ラーメン」という言葉を使ったことを挙げてる人がいましたが、あの箇所は施設内の食堂に中華系飲食店が一軒もなかったことを強調する必要がある中、ただ「ラーメン」と書いたらどっちゃねんと混同する恐れがあり、日本のラーメンということで中国現地で使われている「日式拉面(日式ラーメン)」と表現することとしました。最近中国で日本のラーメンが流行ってるという報道をよく見てその中でも使われているのでわかるだろうと思いましたが案外そうでもなく、使っただけで中国人認定食らうほど普及してないというのは完全に想定外でした。

 あともう一つ気になったので、「五右衛門風呂が珍しいって、こいつ日本のスーパー銭湯に入ったことないんじゃねぇのか?」という記述については、少なくとも松戸のラドン温泉には五右衛門風呂はなく、私個人としてはあれ初めて見ました。松戸潜伏中はいっちゃん近くのラドン温泉しか行ったことなかったから普通に知らんかったよ……。

<出稿時に削除された文言>
 このほか楽屋ネタとしては、記事を書いたものの出稿される前に恐らく4000字以下に落とすため削除された箇所があります。もちろん削除される前提で大目に書いたわけなので特段問題ありませんが、消された箇所に書いてあった内容の一つに、施設内にある漫画ルームに置かれてあった漫画の話がありました。
 そこは畳み敷きで本棚に中国語に翻訳された漫画本が置かれてあったのですが、作品は「ワンピース」や「ナルト」などジャンプコミックスが中心でした。それを見て個人的に、「To Loveる」はないのか探したものの見つからず、元の記事にも「『To Loveる』はなかった」と明記してました。

 それともう一つ削除された箇所として、銭湯内に置かれてあった資生堂製のシャンプー類については銘柄まで、アクエリアスとスーパーマイルドだったと細かく書いた上で、「ボディーソープのスーパーマイルドの方は洗い流した後の質感が非常によく、今度からこれ使おうと決意しました」という私個人の風呂場改革事情も元記事には書いていました。文字数的には確かに削る箇所はこの辺りで間違いなく不満はないのですが、多分ほかのメディアはこういうところには絶対触れないだろうという確信があったので書いておき、修正後の原稿でも「シャンプー類は資生堂」という記述は残してあったのでまずますでした。

2016年12月27日火曜日

インパール作戦に抗命した将軍

インパール作戦(Wikipedia)

 太平洋戦争に通じているものならインパール作戦について説明するまでもなく史上最低の作戦であることを承知でしょう。この作戦は大した戦略目的もないままインド側に対して「借り」を作ることを目的として編成から補給まで何から何まで杜撰極まりない計画で実行され、おびただしい死者だけを生んで失敗した作戦です。
 この作戦は功名心を持つ牟田口廉也によって遂行が進められ、途中で食料や弾薬が尽きて戦闘継続が不可能な状態にありながらも強引に継続されたのですが、最終的に撤退が行われた背景にはとある将軍の死刑を覚悟した抗命、つまり命令違反があったためでした。

佐藤幸徳(Wikipedia)

 インパール作戦の現場責任者に当たる師団長を務めた佐藤幸徳は元々統制派の将軍で、皇道派の牟田口とは過去に取っ組み合いの大喧嘩までしているという因縁がありました。牟田口の下に置かれた佐藤は補給を確実に行うよう司令部に約束して出撃したものの司令部はこの約束をあっさりと反故にし、進軍する最中で早くも手持ちの食糧が尽きるという憂き目をみます。
 進むも引くも困難な状況にあって積極的な攻勢を控えていた佐藤でしたが、戦況は悪化するばかりで、対峙する英軍は航空機から補給を受け続ける中で日本軍は制空権すら得られず航空機による支援はほぼ全く受けられず、敵軍の補給を「チャーチル支援」などといいながら奪い取ることで食いつなぐ有様でした。

 こうした状況を司令部へ何度も報告し佐藤は何度も撤退を提案していたものの司令部は意に介さず、前進のみを命ずるだけでした。このままでは完全なる絶滅すらありうると判断した佐藤は最終的に、恐らく日本陸軍に置いて最初で最後となる、師団長による抗命として司令部に無断で全部隊に対し後退を命じしました。
 この佐藤の無断での後退に司令部は直ちに反応し、佐藤以下の現場指揮官一同を更迭にしたものの、抗命による佐藤への処分は行いませんでした。これは佐藤を処分することによって陸軍人事に問題があったということになるのを恐れて、言うなればメンツの問題でしたが、それと共に軍法裁判に置いて作戦の失敗要因について佐藤が陳述することを恐れたためとも言われます。それがため佐藤の更迭理由については「精神異常のため」とされ、後に医者を送って精神鑑定も行わせていますが鑑定医が出した結論は「シロ」だったものの、その後も長く佐藤は「戦地で発狂した将軍」という事実と異なる風説が流布し続けました。

 結果的には佐藤の抗命を受け、東南アジア方面軍の間でもインパール作戦の失敗を悟る幹部らが出たため、抗命事件から一ヶ月後の1944年7月に正式に撤退が開始されますが、撤退が決まるまでの一ヶ月間、そして撤退決定後の実際の退却においても餓死者は出続け、その退却路は現在に「白骨街道」とまで呼ばれました。
 佐藤の命令違反については色々な意見がありましたが、彼の行動がなければ数千人の命は確実に失われていたとされ、現代においては肯定的な評価が多いように思え私もこれを支持します。一方で佐藤は後退の際に最前線で唯一善戦していた、水木しげるをして陸軍最強の指揮官と言わしめた宮崎繁三郎率いる歩兵第58連隊に対し味方の撤退時間を稼ぐように殿を任せ、これによって58連隊は孤立無援の中で大量の死傷者を出すという自体に追い込んでいます。ただこの時の宮崎繁三郎の戦闘指揮は凄まじく、部隊もよくその指揮に従って大いに善戦して味方の撤退を助けたと言われています。

 戦後、佐藤は晩年にいたるまで発狂した挙句に命令違反を犯した将軍のレッテルを張り世間の風当たりもひどかったそうですが、結果から言えば彼の行動によって救われた将兵は少なくなく、死後に精神鑑定で問題がなかったことなどが明らかになるにつれ再評価が進んできました。
 現代でも上司の命令に反した行動を取るのは難しいながら、将兵の命を優先して命令違反を犯した佐藤は軍の士官としては確かにその責めから免れえないものの、一人物としてはやはり勇気ある人物だったと言えるでしょうし、反することが難しかった時代故にこうして紹介するべき人物だと私には思えます。

 なお最近、インパール作戦に従軍した経験のある人と話をしたという知人からこんな話を聞きました。その従軍者も撤退の最中、何も食べていなかったことから銃や背嚢といった荷物を徐々にすてながら逃げ帰っていたのですが、最後に手放したのは聖書だったそうです。元々、キリスト教の神父をやっていた人物だったそうですが、やはり聖書を手放した際は断腸の思いだったそうで、手放さなければその重みで歩むことすらできない状態だったと悔恨と共に話していたそうです。

2016年12月25日日曜日

日系企業は外国企業技術者をスカウトしないのか?

 まともなメディアなどでははっきり書けないのでこのブログで書きますが、このところ日本人ネットワークの中で旭硝子のとある部門の技術責任者が中国企業にスカウトされたという噂が出ています。真偽は確認できませんが仮に事実だとすればそこそこの人物だっただけにその方面の技術が全部流出するだろうと周囲は話して心配しておりますが、旭化成の事業は他分野に渡ってるから屋台骨は全然揺るがないだろうと一応私の方から述べておきました。

 この際、悪い癖ですがまた人と話をしながら余計なことを考え始め、これまでの日系企業の技術者がスカウトされる事例を思い起こしていました。90年代から00年代にかけてはやはり韓国企業からのスカウティングが多く東芝の半導体技術者の多くが週末アルバイト、もしくは転籍し、家電系メーカー技術者もたくさん移って行ったと聞きます。最近に関しては韓国よりも中国企業からスカウトされる事例をよく聞き、私の周りでも大手自動車部品メーカーの管理者やってる日本人の知り合いが、「もう何度もスカウトが来ていて、今よりも金を出すと言っている」と話しています。

 こうした話を聞いてて大半の日本人は、「スカウトを受ける方も受ける方だ」と、技術流出を行った日系企業技術者に対して非難めいた感情を持つのではないかと思います。私としてもこうした感情を持つのは自然なことだと思え、スカウトを受けた人を擁護することはしませんが、だからと言って批判する人たちに対して特段逆批判めいた内容を覚えることはありません。こういう言い方すると無関心すぎると言われるかもしれませんが、私としては「それが資本主義でしょ」といったところです。

 ここで終わればただのしょうもない雑談で終わりますが、ふと今回改めて日系企業技術者の流出なりスカウトを考え直している際、「日系企業は外国企業の技術者にスカウトをかけているのか?」という疑問を覚えました。詳しく調べたわけではありませんが具体例とか、大量にスカウトしたとか、スカウトした技術者が活躍したという事例は少なくとも私は知らず、上記の様に「スカウトされた」という事例が大量にあることを考慮するとなんていうか一方向的な流れが続いている気がします。

 先ほど私はスカウトされた日系企業技術者に対して擁護はしないと申しましたが、スカウトした韓国企業や中国企業に対してはアカっぽい資本主義者の立場から擁護をする気が満々です。何故なら彼ら外国企業からすれば自社発展のために最善の手を採らなければならず、また雇用・被雇用の自由は侵害してはならない上、退職後の機密守秘義務などを破ったりハッキングなどで情報を盗んだりするのでなければ技術者の引き抜きによる技術流出はある程度は認めなければならない面があると考えるからです。それこそ引き抜かれたくないのであれば、引き抜かれないための努力を敷く必要が日系企業にはあります。

 話は日系企業のスカウトについてですが、上にも書いた通り国内企業同士ならまだしも外国企業の技術者をスカウトしたという話はほぼ全く聞いたことがありません。経営者レベルであればソフトバンクや日産、武田薬品を始め海外の有能な人物をヘッドハンティングした事例がいくつもありますが、技術者となると恐らくはいるでしょうがその割合は韓国や中国企業と比べるとごくごく少数でしょう。では何故少数にとどまるのか、推測レベルで感がられる理由はいくつかあり、一つは日本我技術先進国で引き抜くより引き抜かれる立場に回りやすい事、もう一つの理由としては割と日系企業は自国の技術がナンバーワンだと信じ、海外企業の技術力を全体的に見下す傾向があるからではないかというのが長い前置きを経た今回の主題です。

 断言してもいいですが、部品レベルならまだしも携帯電話を製造する技術で言えばもはや中国企業の方が日本より圧倒的に上です。私も愛用しているMEIZUの携帯を今日昼間まで会っていた親父も驚きながら使ってましたが、逆に親父の持っていたソニーエリクソンのスマホのレスポンスの悪さになんやこれと私の方は思ってました。カメラ切り替えなんてやけにラグあるし。
 しかし、日系企業がこうした携帯電話分野で中国企業、っていうよりむしろ米アップル社から技術者を引き抜いて自社技術の発展を促したという事例はありません。真面目な話、アップル社からはあの手この手で技術者を引き抜くくらいの凄みが日系企業には足りません。

 携帯電話に限らずとも自動車分野などでもドイツ系やフランス系企業から引き抜きをしたって話も聞かず、むしろ日系企業は引き抜きをすることに対して必要性すら感じていない振りすら覚えます。その背景こそ、「ジャパンアズナンバーワン」じゃないですが密かに日系企業は日本の技術は世界トップだという、誇張した言い方をすれば自惚れに近い感覚があり、引き抜きという選択肢を頭から外しているのではないかと密かに思うわけです。

 結論を述べると、私は日系企業はもっとスカウトによる引き抜きを率先して行う、もしくは選択肢に入れるべきだと思います。何故ならこうした引き抜きを選択肢に入れることで、自社の技術者の流出リスクが把握しやすくなり、対抗策も組み立てやすくなるからです。またそれにより本当に評価されるべき技術者が正しく評価されることに繋がれば社内活性化にもつながるように思え、比較的技術者に対して冷遇だとする日系企業の習慣に新風が吹きこむことも期待できます。

 あくまで仮定に仮定を重ねた上での提言ではありますが、スカウトについて日系企業は取られてばかりではなくたまには「奪う側」に回るというか、「やられたらやりかえす、倍返しだ!」っていうセリフの一言でも言ってみろというのが私個人の意見です。

メディアが行う貧困特集の問題点

 何も現代に限らずいつの時代も新聞やテレビは「貧困特集」と称して貧困層とされる人々を取り上げた記事や番組を特集していますが、結論からいうと近年みる貧困特集は私から見ればそれほど面白いものはなく、物によっては不快感すら覚える内容が多いです。ほかの人はどう感じているのかは断言できませんが、NHKが以前に行った貧困特集でネットを中心に大批判が起きたり、中日新聞が記事を捏造した事件を鑑みると私の様に不快感を感じる人もある程度入るのではないかと思います。
 では何故不快感を覚える、っていうかつまらないのかというと、結論から言えば問題点が多く特に上から目線で書かれることが多いからだというのが私の考えです。

 基本的に貧困特集は収入が少なかったり支出が多かったりするなどして家計上で生活の苦しい世帯が取り上げられますが、全体として「可哀相な人たち」というスタンスで紹介される事が多いです。無論、確かにそうした貧困層は憐憫に値すると私も考えますが、だからと言って「可哀相」というスタンスで紹介してしまうとバイアスがかかり、必然的に上から目線での報道になりやすいです。
 この辺は私が社会学を学んでいた際、こうした対象に対しては余計な感情は一切挟まず、ありのままに報じたり紹介したりする必要があると厳しく教えられましたが、やはりそうした一程度の距離を置いた態度というものがこれらの報道にかけていると思います。わかりやすく述べると「可哀相な対象」として取り上げるのではなく「こうした人たちがいる、これが現実」というようなスタンスが欠けており、変に可哀相だという風に描いてしまうとなんとなく感情を強要されているような感じがして私個人としてはあまり馴染めません。

 加えて、こうした貧困特集で必ず引っかかる点としては、特集される人たちよりもっと悲惨な人たちはいくらでもいるということです。そうした人、またはそうした人たちを知っている人たちからすれば、「何だこの程度で」という感情を催すでしょうし、上記のNHKの特集はまさにこれで炎上しました。こうした点から言って殊更に支援が必要だと唱えることも個人的には反対で、やはりそういうのは行政の問題だと割り切りそこにあるものを報じるだけであるべきでしょう。

 その上で個人的に許せないのは、貧困者の声を記者らが代弁するかのようにして作っているのがなんか納得いきません。これまた上記の中日新聞の特集なんか捏造してまでこれをやってましたが、そのほかの貧困特集でも、「本当に彼らはこんなことを言うのだろうか?」と感じる様な言葉や意見が記事本文などに書かれることが多く、見ていてリアリティに書ける記述が散見されます。断言してもいいですがそういった記述はまさに上から目線の記者たちが作っているもので、「如何に同情を引くか」という視点で以って書かれています。
 私個人の意見で述べると、やはりこうした貧困特集などにおいては記者らは最低限の仕事だけを済ませ、貧困者自身に素直な気持ちを述べさせたり書いてもらうことが一番いいと思います。収入は少ないがそれでも楽しくやってるという人もいるでしょうし、取材に来た大新聞の記者らの給料は高額で内心ムカついているとかでもよく、素直な本音を彼ら自身に述べたり書いてもらってそれを編集なしでそのまま出すことこそが最もリアルな声で傾聴すべき対象であると私は考えます。

 そういう意味で何故新聞社や放送局は、自社の派遣社員自身に派遣格差を書かせないのかいつも不思議に思います。新聞社や放送局内の派遣格差ほど面白いものはない上、またすぐ近くに当事者がいるんだからその当事者自身に語らせればいいってのに何故やらないのか、いっつもこの点が不思議に感じています。そもそも、格差問題を格差のトップ側が報じたりするのも変で、やはりボトム側が自ら声を挙げて発信するべきでしょう。そういう意味ではトップ側の新聞社や放送局は逆に、「セレブ特集」みたいなのを組んでどれだけ楽しく暮らしているかを自分で語ってみるのも手かもしれません。

看了「你的名字。(君の名は。)」

 今日25日はクリスマスですが、金曜から今朝までは上海に遊びに来ていた親父の相手をしており、午後からは日本はもちろん中国でも大ヒットを続けている映画「君の名は。(中国題:你的名字。)」を見に行きました。唯一問題だったのは、一緒に見に行った相手が後輩(♂)で、男二人でクリスマスに恋愛映画を見に行く羽目となったことです。

 事の発端は二週間前、後輩と友人の上海人と一緒に昼食した帰り、途中で通過した映画館で「君の名は。」が上映されていることを知って、そういえばこれまで中国の映画館に入ったことがないことを思い出し、大ヒットしている作品であることから今度一緒に見に行こうと後輩が言い出したこともあって見に行く約束をしていたのですが、何故か知りませんがその見に行く日が今日となり、よりによってこんな日に二人して見に行くこととなったわけです。

 昨夜にあらかじめ上映している映画館をネットで調べて後輩に伝えたところ、「自分が予約しておく」と後輩が言うので任せたところすぐに、「すいません、アプリのウォレットの金額足りないので送金してください」と言い出してきたので後輩に100元(約1800円)を送金して、受け取った後輩は携帯アプリを通じて予約したそうです。
 なお映画館の一人当たり入場料金は50元(900円)でしたが、IMAXなど特別な映画館だと100元くらいになるとのことで、普通の映画館なら日本と比べて割安感があります。

そんでもって今日午後、親父を一人で空港へ送り返した後で後輩と合流し、映画館へ赴きました。待ってる間に館内の売店などを見ていましたが、ポップコーンも25元(450円)くらい、飲み物も10元(180円)くらいで、場所にもよるでしょうがやっぱりここでも日本に比べるとあこぎじゃないなと後輩と言い合ってました。あと待ってる間、近くの階段にヒールが引っかかり、床にダブルニープレス(両膝突き)をかましている姉さんがいましたが見ていて痛そうでした。

 そうこうしているうちに開場されて映画館に入りましたが、館内は前評判通りにほぼ満席で、客層としては比較的若い年齢層の男女、やや女性が多いような感じでした。上映前の予告が終わって本編が始まると比較的静かにみんな見ていましたが、コメディなシーンでは割とみんなして声を挙げて笑うなど、日本の映画館と比べると比較的感情をはっきり出す傾向がみられました。米国の映画館も割とこんな感じらしいと聞くので、むしろ何一つ物音を出すべきでないとされる日本の映画館のの方が世界的にも特別であるのかもしれません。

 映画の感想に映ると、中だるみするシーンが一切なくヒットするというのも十分頷けるほど面白い作品だと私にも思いました。個人的に気になったのは風景シーンの色使いを明確に分けている、具体的に言えば東京のシーンではややもやがかった色使いに対して飛騨のシーンではビビッドな色にまとめているところで、この辺りを意識して行っているのかということに驚くというか唸らされました。
 ストーリーにつちえも展開がスピーディに二転三転してうまく連結しており、むしろこの時間でよくここまでまとめあげたものだとこちらも合わせて感心する内容で、欠点という欠点は私からは見つけられなかったほど高い完成度を誇るといったところです。

 私はこの新海誠氏の作品を見るのはこれが初めてですが、見ていた感じだと中国人の観客の受けも悪くなく、恐らく今後も世界中で売れ続け真面目に「千と千尋~」越えもあり得るんじゃないかと思います。これまで名前の知られていない監督の作品がこうして世界中で大ヒットするというのは普通に考えればあり得ないだけに、単純に作品の質だけでここまで来ていることを考えると実に恐ろしい人物が世に出たものだという気がします。

 最後に中国人の観客が声に出して笑ったシーンの一つに、「それって美人局じゃないの?」というセリフを言うシーンがあったのですが、このシーンの字幕を見て初めて「美人局」の中国語が「仙人逃」ということがわかり、こっちもなかなか面白い漢字を当てるなと一人で感心してました。

2016年12月22日木曜日

サイバーエージェントの「Amoad」広告の不作為

 なんか今日は珍しく書くことないのでサイバーエージェントとの過去のちょっとしたやり取りを暴露しようと思います。

 それは2015年初旬の事でした、突如サイバーエージェントから私の所へブログの内容が素晴らしいので是非広告枠を置かせてくださいと依頼するメールが来ました。ブログ内容が素晴らしいって、自分のブログほど過激派なブログはそうないので本当にちゃんと読んでるのかと一回尋ねるメールを送った所、「読みました」と返事が返ってきましたが、多分その担当者はちゃんと読んでなかったことでしょう。自分のブログ読んでたらこういう風に書かれるリスクだって感じ取れたでしょうし。

 で、言われるがままにそれまで置いておいたGoogle Adsenseの広告枠をわざわざ撤去してまで「AmoAd」とかいう妙な広告枠を設置したものの、何故だかこれが全く広告が表示されず、一体どうした物かと相手側に対応を求めたところそれから一年半にもわたって何も返事がきませんでした。その後で元のGoogle Adsenseに戻しましたが、何気に作業が結構面倒くさかったです。

 何故そんな過去の話を急に蒸し返したのかというと、この前のDeNAのウェブ記事炎上問題でサイバーエージェントも大量の記事配信を停止したと報じられたのを見て、まぁここはそんな会社だろうなと思いつつこの件を思い出したからです。基本、記者というのは相手の弱みに付け込むのが仕事なもんで、今を置かずにいつ攻めるとばかりについ先ほど、「一年半も連絡寄越さず何やってんだてめぇ」みたいなメールを送りつけました。返事が来るかはわからないですが、たまにはこういう突っこんだこともやらないと人生面白くありません。

 なお、「対応をするからしばらく待っててください」と返事しながら一年半も無視することも言語道断ながら、このサイバーエージェントの広告配信プログラムも技術的にいかがなものかと非常に胡散臭く感じました。いろいろ説明見ましたが広告料還元のシステムも曖昧だったし、なによりブラウザやブログソフトによって広告が表示されたりされなかったりだなんて技術的にかなり低レベルなものに思えてなりません。
 私が使っているこのBloggerなんて非常にシンプルな作りなのだからそれほどプログラムに影響を及ぼすとは思えないし、第一本体とは独立したウィジェットにはっつけたというのにそれでもうごかないってなんなんってレベルです。

 ちなみにこの陽月秘話のアクセス数は一日当たり大体600PV位で、広告料はGoogle Adosenseをそれほど真剣にやってないのもあって、数ヶ月に1万円が入ってくるか来ないかです。自分としてもこのブログは本気で稼ぐつもりは全くなく、むしろ商売っ気から遠ざけてあくまで趣味の媒体として使いたいため、今後もこの方針を維持することと思います。
 なお姉妹サイトの企業居点はもう少し広告枠の設置個所を凝っているため、アクセス数も多いことから広告料はあっちの方が多いです。といってもそっちも数ヶ月に1万円が入ってくるか来ないか程度で、入ってきたら「ああこれで漫画買える」というようなお小遣い的な感覚しかありません。むしろ企業居点だったら、自動で配信される広告枠より広告記事を書いて乗っけるの方が価値あるのでしょうし、何気にそういう記事書くの得意なんだけど肝心の広告主がいないなぁ(;一_一)

2016年12月21日水曜日

日本の賃上げ運動を見て奇妙に感じる点

 昨日はまるで人は健康体でありながら一日に何時間寝られるのかを競うかのようにずっと寝ていましたが、今日はちゃんと起きていました。なので真面目なことを書きます。

 最近なんで専門家でもないのに労働問題ばかり記事書いているのか自分でもよくわからないですが、日本の賃上げ運動を見ていていつも不思議というかおかしいんじゃねとよく感じます。何故そう感じるのかというと原因ははっきりしており、香港で現地の賃上げ運動を見ていたせいだからですが、香港と日本で何が違うのかというと賃上げ幅の根拠です。
 香港では毎年、年末にかけて来年度の賃上げ要求が労組を中心に行われるのですが、その際に叩き台となるのはCPIこと消費者物価指数、もっと卑近な言葉で言えばインフレ率です。香港ではこのCPIを軸に労使間で前年度の上げ幅や昇給率を含めて議論を行い、来年度の賃上げ幅の交渉を行います。

 説明するまでもないでしょうがCPIとは何かというと、単位当たり通貨の価値の変動率を表します。たとえばCPIが5%上昇(5%のインフレ)したということは通貨の価値が5%下落するのと同義で、それまで1万円で大根を100本買えていたのに、CPIが5%上昇すると1万円で購入できる本数が95本に代わるといった具合で、5%下落(5%のデフレ)するとその逆が起こるわけです。

 仮にCPIが前年比で5%上昇していたとなると表面上の賃金(名目賃金)は変わらなくてもその賃金額の価値である実質賃金は5%下落するということになるため、次年度に5%賃上げされなければ何もしなくても給与が下がるも同然です。もっとも日本の場合はずっとデフレが続いているので経営側からすれば実質賃金はずっと上がりつづけていると主張できるわけで、賃上げ見送りの理由にしやすい所ですが。
 なお先程統計局で見たら、今年10月の日本のCPIは0.1%の上昇で、日銀の2%インフレは遥か遠くにある状態です。

 話は戻りますが香港ではこのインフレ率をまずたたき台にして、その上で既存社員の昇給率や前年度の賃上げ幅を様々に考慮しながら労使間で交渉が進められます。たとえば労働者側はCPIは前年比でほとんど変わっていないにしても前年度に昇給幅がそれまでより抑えられていたら今年こそはと主張したり、雇用者側はCPIが上昇していたとしても前年に最低賃金が引き上げられていることなどを理由にして今年は見送りたいなどと、それぞれがそれぞれの立場で意見を主張し合って落としどころへ持って行くという、非常に理路整然とした運びを行っています。

 それに対して日本の賃上げ運動ですが、最近は官制賃上げとまで言われるように政府に言われて労組側が動く始末で、しかもその労組側もこれという根拠を挙げずにベアアップを主張したりするなど、はっきり言って議論がちぐはぐな感じがします。それこそ非正規を含めた過去一年の昇給幅や、産業全体の収益率の上昇幅などを盾にとって労働者に還元すべきなど主張すればいいのに、なんて言うかお祭りみたいにわっしょいわっしょい言ってるだけで、「何故その金額を要求するのか?」という根拠が全く見えません。はっきり言えば幼稚な運動に見えます。

 ある意味、香港だからそういう理知的な賃上げ運動が繰り広げられているのかもしれませんが、日本の労組ももうちょっとその辺を見習って、何の根拠もない変な要求をするのではなくきちんと筋道立てて要求すべしだと思います。もっとも労組に限らず、なんで日本ってCPIを始めとしてPMIとか地方別GDPなど主要経済指標をほとんど見ないのか前から不思議に感じてます。