さっき家帰ってGmailつけようとしたら例のGoogleの障害でつながらずちょい焦りました。何かトラブルあると中国からだとアクセス制限あるのでいろいろ手間取るから嫌です。
話は本題ですがこのブログでも何度も取り上げている「チェンソーマン」がアニメ化するニュースが出ましたが、正直何も驚きありません。単行本の8巻と9巻の刊行ペースが普段より遅かったため予感あったのと、これだけの作品だからアニメ化しないわけないとみていたので、何を今更的な感すらあります。ちょうど「進撃の巨人」がもうすぐ最終回を迎えるタイミングとあって、漫画界の主役転換の時期にあるのでしょう。
さてそのチェンソーマンは「この漫画が凄い」という賞でトップ取ったそうですが、「次に来る漫画」とか「男がはまる漫画」とかそういった漫画ランキングが毎年どこかしらで行われていますが、この手のランキングってどれ見ても基準が面白いか否かで、男女のどの年齢向けかで分けられているに過ぎません。逆を言えばプロ野球みたく分野別の評価は全く行われておらず、はっきり言ってしまえば売れるかどうかの浅い評価で決まっている感があります。
もちろん売れることが漫画にとっては至上命題であり、梶原一騎の「俺の本はノーベル取った川端康成より売れてるぞ」という、多分悔しいから言ったセリフはまさに真理だと思います。どんなに批判評価が多くても、売れたものが一番偉いというのがこの手の世界の原理です。
ただ、ランキングなり評価というのは埋もれているけど実はすごい作品を引き上げるという役割もあります。芥川賞も当初はそうした目的で、あくまで新進作家の奨励賞的だったのですが最近は「如何にして作品を売り込むか」という目的で売れそうな「キャラ」な作家を選ぶ賞に成り下がり、日本の小説から文学性というものがどんどん薄れていくことなりました。ぶっちゃけ、あと20年は盛り返すことはないでしょう。
それで話を戻すと、ふと考えると文学性を評価する漫画賞とかないなと気づいた次第です。そもそも文学性とは何かですが私の定義は
以前書いたこの記事のように、物語とを推しての追体験、疑似体験の深さや汎用性、そして究極的な選択問いがあるかだと考えており、この定義に照らすなら文学性を盛った漫画はあってしかるべきです。
文学性を盛った漫画の議論となるまず出てくるのは「寄生獣」で、私自身もこの作品は「捕食者と非捕食者の逆転」というテーマで、現代を舞台にした世界で疑似体験性も高く、下手な文学小説よりもずっと文学性を備えていると私も見ています。そのほかの文学性を持った作品というと、世界的名著を漫画化した作品が挙げられることがありますが、そうしたものよりテーマ性で見るならあんまこの手の議論で見ないけど手塚治虫の「火の鳥」とか来るかもしれません。もっとも私は断片的に読んだ限りであまりこの作品にのめり込めなかったですが。
なおソ連人民の敵であるうちの親父は火の鳥の初版本かなんか持ってたらしいですけど、小銭欲しさにあっさり古本屋に売って、あとで後悔していました。
このほかシュルレアリスム的な漫画であればつげ義春の作品がそれにあたり、あと歴史大作で言えば原作付とはいえ横山光輝の「三国志」などは十分な文学性を備えた傑作と言えるでしょう。歴史系の作品であれば他にも注目すべき作品はあり、贔屓も入りますが詫び寂びの概念と当時の文化的転換を描いた「へうげもの」などは、独自解釈も含まれており20年後も読まれ続けるのではと思う傑作と考えています。
翻って先ほど言った疑似体験性の面から見て文学性の高い作品を他にあげるとしたら、地味にジャンプで連載していた「暗殺教室」はもっと評価されていいと思います。一見エンタメ作品に見えますが私が考えるこの作品のテーマは「後悔」であり、「あの時ああすればよかった」、「なんでああしなかったんだ」、「だからこそ、二度と同じ過ちを犯してはならない」というテーマを、名門校の落ちこぼれ生徒たちを軸にして描いているように思え、少年少女向け作品としてみれば稀に見る傑作であったと密かに評価しています。
このように、文学性に着目した漫画賞というのはまずこの世にないでしょう。一部の漫画評論家はこうした文学性に着目した批評を寄せていますが、それでも世間の漫画の文学性に対する目はまだまだ少ないでしょう。もっとも漫画自体をそんな文学性とかなんちゃらで高尚化していいものかという葛藤は私にもありますが、本来文学性というのはそんな高尚なものではないはずで、作品を面白く読めるとっかかりになるメリットもあると思うので、もうちょいこっちに目を向けてもいいのではというのが私の意見です。
なお芸術性に関して私は、「どれだけ長く愛されるか」がバロメーターだと述べ、10年、20年先まで読まれるかが非常に重要と以前から書いています。先ほどの「へうげもの」はそうした意味で芸術性が高いと考えているのですが、ひょっとしたら意外に芸術性が高いのではと思うもので、「彼岸島」があります。
最近に至っても「今のパーティが最強だよな」とか「糞みてぇな旗がまた出てきやがった」など関連掲示板で激しく盛り上がっていますが、なんていうかあの不条理さと意味不明なセリフ、でもって全体ストーリーは遅々として進まないのに無駄にスピーディに進む展開は、意外と100年後くらいに「21世紀漫画における奇書」として評価されるのではと思うようになってきました。最近も建物の中で「行くぞ」と言った次のコマで「ザブ・・・ザブ」とイカダで漕ぎ出す場面になるなど、言葉で言い表せない「え、そんなんありなの?」な展開は逆に凄いような気がしてきました。
その彼岸島で個人的に残念だと思うのは、オンラインゲームが存在しないことです。それこそ「彼岸島オンライン」みたいなタイトルで彼岸島の中を人間と吸血鬼に分かれて互いに殺し合うゲームにすれば、原作のセリフを連呼するファンですぐ溢れかえるんじゃないかと思います。戦闘も、そこらへんから日本刀とか丸太が生えてきて拾えるようにしても「原作再現!」と逆に評価されるだろうし、適当なゲーム設定であっても彼岸島の世界なら許されるでしょう。なんで誰も作らないんだろうか。