話は本題ですが、以前にちょっとタイトルに引かれたので「満州アヘンスクワッド」という漫画を読んでみました。時代と舞台はそのタイトルの通り戦前の満州で、この満州を舞台にした麻薬取引活劇漫画といったジャンルなのですが、一目見て時代考証がかなりいい加減だと感じたのと、なんかアヘン中毒者の描写の誇張が過ぎて現代におけるパリピ系の人にしか見えないなどといった点から、1巻を読んでもうそれ以上読むのをやめてしまいました。また上記の描写のほか、ヒロインの父親が満州のアヘン王こと杜月笙だと明かされるシーンを見て、
「またかよ(´・ω・)」
という風に感じた点も、自分の中で評価を下げた一因です。なんで満州、アヘンときたら毎回の如く杜月笙が出てくるんだか。他に人いないのかよ。
その杜月笙さんですが、知ってる人には早いですが戦前の上海にて青幇(チンバン)というマフィアのボスで、アヘン王であったと日本ではよく紹介されています。中国でも有名人で、この人の名前を挙げると「ああ、あの人ね」みたいな感じの反応が見えます。
ただ、彼に対する見方は日本のそれとは違って、マフィアのボスという点は間違いなく一致しているものの、どちらかというと「蒋介石のマブダチ」みたいな評価がなされているようです。
何かのネタになるかと思って調べてみたのですが、まず青幇は確かにマフィアとして裏社会、特に犯罪関連の賭場や麻薬取引を取り仕切る団体であったものの、その成立は18世紀くらいで、組織内に専用の名前を持つ位階などを設けるなど、マフィアというかは秘密結社、イルミナティみたいな組織に近いような印象を覚えました。
その上で当時の青幇ですが、何も杜月笙がただ一人トップだったというわけじゃなかったようです。どうもシノギごとに部門が分かれてて、アヘン取引部門は杜月笙がトップであったものの、彼のほかに当時の青幇にはもう二人のトップがおり、その三人による三頭体制で運営されていたようです。なので青幇の当時の最高権力者=杜月笙というのはやや日本人の間違った見方かもしれません。
その上で最初に書いた内容に戻ると、どうも蒋介石は国民党の派閥抗争に孫文ともども負けて零落していた頃、自らの資金稼ぎのために上海で株取引に明け暮れた時代があったそうです。その時に大損して、殺し屋差し向けられるくらい大借金抱えた際に、自らの保身を条件に青幇に加入したそうです。
青幇側としても、国民党関係者との縁故を作っておくことは得策だと考えて彼の加入を受け入れ、借金を棒引きするとともに、陰から蒋介石の活動をサポートするようになります。この過程で、蒋介石と杜月笙は意気投合し、互いに義兄弟となったそうです。
そんな両者の関係が最も花開いたのは1927年に起きた上海クーデターです。第一次国共合作を経てとりあえずは連携していた国民党と共産党でしたが、共産党勢力の追放を画策した蒋介石率いる国民党が上海市内にて、突如共産党員らを襲い大量に殺害した事件です。この事件時に大活躍したのが杜月笙で、配下の手下たちを使って共産党員を襲い、成功へと導いたとされています。
このように見てみると、やはり日本の杜月笙に対する見方はアヘンこと麻薬王のみに集中しているきらいがあり、彼の実像からむしろ離れてしまっている印象すらあります。この辺また調べて記事化するかもしれません。