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2023年8月6日日曜日

「いじめの構造」を読んで

 先日、ちょっと興味あったので森口朗氏の「いじめの構造」を読んでみたのですが、期待外れもいいところでした。この本ではいじめが起きる人間関係の構造について、スクールカーストをはじめとする要素をもとに4種類くらいのモデルを提唱していますが、本当に提唱しているだけで、実際の発生例などをもとに4種類のモデルに集約されるといった実証を一切しておらず、「こんな風に思うんだ!」としか書かれていません。しかもそのモデルもわかりやすいく4種類にまとめたというわけでなく、むしろ細かい条件や要素をあれこれ詰め込んでいるため汎用性が低いとしか思えず、当てはめられるケースの方が少ないんじゃないかとすら思います。

 ブログとかそういうレベルでこうしたモデルを提唱するのなら仮説提唱としてありじゃないかとは思いますが、何のデータも分析もなく、一切の検証家庭を省いて本にして出すというのは果たしてどうかというのが、一読して覚えた感想です。更に言えば、この提唱されたいじめモデルには何の発展性もないように思えます。
 具体的には、「このモデルのいじめにはこうした対策がグッド」とか、そういったモデルの応用例が何も書かれていないためです。若干、こういった人間関係にはいじめが発生しやすいのでこうした構造になら似あ要に気を付けるべし見たいには書かれていますが、OBなど学外の人間が絡むケースなんかどうしようもなく、本当に作者はこの本で何が言いたかったのか、マジで「こんなモデル考えたよ!」とだけ言いたかったのかで疑問です。はっきり言って、主観も明らかに強いし。

 その上でこの本読んで思ったこととして、いじめ対策というのは発生前より発生後の方が重要だなということは自分で思いつきました。前述の通り、元先輩などのOBや学外の不良集団が絡むいじめだと学内で事前に発生を防ぐことは非常に難しいです。であれば発生後にどういった対策を行うことで、自殺に追い込むなどの暴行や脅迫への発展を防げるのか、こういった対策手段とかをまとめる方がいじめ対策としては有意義なんじゃないかという気がします。
 現実に行われているものとしては、いじめ加害者と被害者の引き離しは良く行われていると思います。この引き離しがどれほど効果を上げるのか、また効果を上げない場合の要素とは何か、そういったものを私は知りたいのですが教育関係者はあんまこの辺について言及することがないような気がします。

 またいじめ発生後に採用した結果、劇的にいじめを消失させたようなエクセレンスケースなども、あんまり世の中で見ない気がします。ぶっちゃけ作者も言っているように、いじめ問題の議論は基本的に関係者の主観に基づく主張でしか議論されておらず、まずやるべきことは以前にも書いた通りに事例データを収集することに尽きます。犯罪にまで発展したケースと、そこに至る前に沈静化したケース、またいじめがよく起こるクラス状況と加害者と被害者関係や属性、議論の前にこういったデータをまず収集しろと言いたいです。「いじめの構造」の作者にも。

派遣拡大に関する竹中平蔵氏の言い訳について

 室内でも暑い中で今日は休日作業(リアル名ばかり管理職のため残業代なし)をしていましたが、疲れているときに「オイヨイヨ」と唱えると、若干元気になれるのでマジ大事です。会社でやると変人にみられるだろうけど。


 それで本題ですが、上記記事にて竹中氏が「派遣拡大をしたのは自分じゃない」と言い訳していますが、自分はこれに全く以って同意です。小泉政権時代に経済運営を担っていることから、竹中氏が社会問題化していった派遣問題を「放置」したことは事実であるものの、拡大自体はやっていないと私も考えています。
 では一体誰が拡大したのかですが、竹中氏の言うように厚労省と、政権でいえば小渕政権です。それまでの特定職種に限った派遣業から日雇い派遣を含む一般派遣を解放、拡大したのは小渕政権であり、問題が表出化したのが小泉政権時代なだけで、これで小泉政権を批判するというのはやはり間違いであるような気がします。

 確かに竹中氏は政界引退後にパソナ役員を務めましたが、それは派遣拡大とはまた別の話ですし、それ以前にそんだけ派遣が問題だっていうのなら、それはその後に何も対策を採らなかった後の政策担当者の責任であるように思います。
 それ以前に、竹中氏は記事にも書かれている通りに日本は正社員が保護されていると主張し続けており、実際政権担当時代にあれやこれやと正社員特権を弱める方向に動いています。そういう意味では正社員と派遣社員の格差に関しては、正社員の権利を弱める方向でむしろ格差縮小に熱心だったと私は考えています。

 私自身も日本の正社員は守られ過ぎだと考えており、大体10年代中盤から出てきた「働かないおじさん」問題なんかその典型です。
 っていうか自分なんか今の職場で名ばかり管理職にさせられたのに、一般社員時代よりも残業してるし、チーム内でも残業エースでなんやねんこの職場とか内心思ってたりします。もっとも上には上がいるというか、ほかの管理職は自分以上にずっと残業しているというか働き続けているので、なんやねんと思うこの職場はそういう業界なんだと納得しています。

 話を戻すと、日本は解雇補償金に関する規定が一切ないなど法律上は解雇が異常なほど容易なくせして、正社員は社会的慣習によって強く守られているという、妙にちぐはぐな雇用環境になっています。その結果として、労働組合の強い大企業ほど整理解雇が難しく、労働組合がない、または弱い中小企業ほど横暴な解雇がまかり通るというおかしな雇用社会になっています。まぁだからと言って、大企業の社員が優秀であるという限りもなく、一方で中小企業には精神科勧めたいようなやばい社員も確かにいるわけですが。

 派遣社員に話を移すと、むしろ自民党は派遣社員の権利拡大や保護に熱心な方です。ひゃんタイに社会党や旧民主党をはじめとする野党の方が労働組合を支持基盤に持っており、正社員保護に偏っていることから、派遣社員に対する態度は冷淡であったのは間違いないです。にもかかわらず派遣社員は自民党、または竹中氏を批判することばかりで、こう言っては何ですがその格差が「放置」されるのも自然な成り行きだったとしか言いようがないです。
 私自身も過去にマージン率データとかいろいろ作りましたが、利用しようとする派遣関連者がびっくりするほど少なく、言い方悪いですが「この格差は問題なのだから、誰かが何とかするべきだ」という感じで、他力本願な人間が多いなという印象を覚えました。自分たちでもっと団体作るなり、行動力と時間のある人をリーダーにしたりするということすらやらず、私もマージン率データ作ったあたりで「派遣問題はもはや社会問題ではないな」という結論に至りました。

 さらに言えば、本当に派遣格差をどうにかしたいってんなら派遣社員の生産性をデータ化するべきでしょう。労働の貢献度がどれほどか、社会生産効率はどの程度か、また報酬引き上げによって効率はどれほど上昇するのかなど、そうしたデータを作ったりしないとだれも見向きしません。まぁ派遣社員の人たちからすれば、「誰かが作るべきだ」なのかもしれませんが。

2023年8月5日土曜日

日大アメフト部問題の理解できないタイムラグ

 本当に最近の日本はニュースが尽きないというか、ビッグモーターで盛り上がっている中で日大アメフト部でも違法薬物が出てきて部員が逮捕されるというニュースが出てきました。ちなみに学長の林真理子氏によると大麻は違法薬物ではないとの認識の様です。
 その日大は8月8日に記者会見をやると言っていますが、何でここでタイムラグが空くのか正直理解できません。部員逮捕にまで至っているのだからすぐにも会見を開いて、他の部員も摂取があったのか、ほかの部でもあるのか、二次販売などがあったのかなど現状わかる範囲でもいいから答えるべきなのではないかと思います。

 聞けば日大が違法薬物を発見してから警察に通報するまでもまたタイムラグというかかなりの日数が空いていたとのことです。呆れることこの上ない隠蔽体質としか言いようがなく、根っこが腐ってりゃトップをいくら変えても意味がないのか、トップがそもそも無力であるかのどっちかでしょう。

 こう言っては何ですが、日大OBで宥免字だから林真理子学長が神輿に担がれたようにしか見えません。本来ならば問題解決のためにもコンプライアンス管理に強い人物を学長にするのが筋だというのに、言っちゃなんですが林学長に何かコンプライアンス方面で造詣があるのか私は全く聞きお呼びがありません。っていうかこの際だから、さっさと辞めるのもまた筋でしょう。
 その上でどういった人物が次の学長に望ましいかですが、単純にコンプライアンス管理ということで、警察幹部OBが単純にいいような気がします。もう学校経営なんて二の次であり、とにもかくにも不祥事を隠蔽する体質をどうにかしないと、日大は犯罪学校と呼ばれても仕方なくなるようにすら思えます。

 このほかよさそうな人材でいえば、民間企業のコンプライアンス関係者もいいのではないかと思え、その方面で強そうな企業で真っ先に浮かんできたのは任天堂とトヨタでした。両社とも社会影響力が強い会社であり、特に任天堂法務部なんかは無敗の最強軍団とまで言われるだけに、どうでもいい知名度なんか無視し、こういったしっかりした会社の法務経験者を引っ張ってきたらいいのではないでしょうか。
 っていうか、資質にコンプライアンス経験を無視して選んだ前回の選定がやばすぎる。

2023年8月4日金曜日

やばいくらいうれしそうな猫


 上の動画はいつも自分が見ている猫チャンネルの動画ですが、これまでたくさんの猫と一緒に暮らしながら最年少だったある猫に、今回初めて後輩ができた時の映像です。その後輩猫を見るまなざしですが、猫ながらうれしさを隠しきれないという表情を明らかにしており、こうもわかりやすく感情を出す者かと感心してみています。

 軽く背景を説明すると、この後輩で来てうれしそうな猫はトビという名前で、山中で片目が化膿した状態で拾われた子です。残念ながら左目は治ることなく失明しましたが、片目のハンデなんてなかったかのようにやたら元気で人懐こく、ほかの猫たちともコミュニケーション力抜群で生き生きと暮らしています。やっぱ猫界でもコミュニケーション能力って大事だなと、この子見ててつくづく思います。

2023年8月3日木曜日

次回選挙におけるワイルドカード

 先日の女性議員がフランスではしゃいだニュースを見て一部の女性議員が反論を主張しましたが、あの場ですぐ「この研修でフランスではこうした政策が使われていて……」などと研修成果を報告したらまだ見るべき点もありましたが、恐らくただの物見遊山なためそんな芸当など初めからできっこないのでしょう。っていうか少子化対策を学ぼうってんなら遠くに行かずとも福井に行けよ、っていうか福井住めよとか思います。
 ちなみに今調べてみたら福井は2021年の出生率で6位でした。それでもフランスより、福井行けよ。福井の方がフランスより楽しいし、福井でエッフェル塔の真似しても誰も後ろ指指す奴いないし。

 話は本題ですが、ぶっちゃけ今日本は広末の不倫に始まり、ビッグモーター騒動、福原愛氏の子連れ騒動など社会ニュースがやばいくらい楽しすぎて政治ニュースがほとんどありません。そのため政治論争もほとんど起こらず、増税に関してもあまり抵抗運動が広がっていないように見えます。
 なお私個人としては日本で税金を払っていない立場もありますが、結局のところ社会福祉支出は否応なく増えざるを得ない点を踏まえると、増税に関してはやむを得ないと思っています。軍備費に関してはもう少しウクライナの戦訓を取り入れてから予算を立てるべきだとは思うものの、特定の業界を狙い撃ちにするのではなく広く浅く増税するなら一般個人所得からやはり取るべきじゃないかと思います。

 なお軍事費に関しては、アッシマーを量産するってんならどんどん予算付けるべきでしょう。マジあれさえあれば中国なんて恐くない。

 冗談は置いといて、政治議論はあまりないもののやはりマイナカードのミス問題は政権支持に直撃しており、保険証の廃止でも燻ぶっているだけに、仮に今すぐ選挙するなら間違いなくマイナカードが最大の争点になるでしょう。私としては富士通のシステム設計には疑問を感じるものの、初期エラーに関してはどうしても出るものだと思うのと、マイナカードの普及、運用によって抑えられる社会コストは膨大であるとの考えから、批判を恐れず「今ここでやらずにどうする」と保険証廃止などを徹底してほしいと考えています。
 その上で不安を取り除くため、マイナカードを詐欺などに不正利用した人間に対する厳罰法、具体的には最低でも懲役数年、最高刑死刑な法律を用意してほしいです。ぶっちゃけ個人情報の管理に関して、やたら厳格な中国にいるってのもあるけど日本はザル過ぎる。

 以上のような感じでマイナカード問題があって自民党としては次回選挙は守勢に回らざるを得ないと思いきや、状況を一転させるワイルドカードもあると私は見ています。具体的に言えばそれは統一教会問題で、選挙直前に活動停止、解散命令を出せばほかの議論は吹っ飛んで支持を集められるのではないかと思っています。
 真面目な話、今の日本における最大の政治問題はこの統一教会問題に尽きると思います。恐らく今も自民党議員の中には統一教会との関係を密かに維持している、または隠している人間がいると思いますが、その自民党への政治的癒着は明らかに問題であり、また統一教会のやってきた行為は文字通り詐欺商法の典型でここから多くの犯罪者も生まれ育ったことを考えると、今この時代に終止符を打たなければならない問題だと私は重視しています。

 この統一教会に選挙前にケリをつけられるものならば、見る人は見るだろうし、また保守勢力も自民への支持を強めることでしょう。ただ逆を言えば、これは野党にとってもワイルドカードとなり得るトピックでもあります。具体的にはこれほどの犯罪集団を野放しにしていると言って攻撃材料とすることができ、また選挙直前に癒着を断ち切れずにいる議員を暴露することによって、いくらでも形勢をひっくり返すことも可能でしょう。
 そういう意味では野党は統一教会と癒着している自民党議員を見張って、その癒着ぶりを示す証拠を集めることこそ最大の選挙対策になり得るでしょう。安上がりですごくいい案だと私個人的には思います。

 一方、敢えて上から目線で日本国民に対する次回選挙の課題を言えば、まともな野党を作る努力が必要でしょう。日本の政治発達に関してはやはりまともな野党を作れなかったのが一番の阻害要因で、目立ちたがり屋ばかりでなくきちんと政治議論ができる野党を作る選挙の土壌をもっと作らないと、日本政治は発達しないままが続くでしょう。
 具体的には特定の思想や心情ごとに有権者団体をもっと作ることに尽きます。個人としての票ではなく、敢えて組織票の一部となることで、その方針や信条に寄せる政治家が作られていきます。目下においてはビッグモーター事件もあるので、消費者保護を信条とする団体なんかあったらいいなを形にと思いますが、まぁ実際作る奴もいないだろうし賛同する人もいないでしょう。

 にしても2戦4発の巨人の岡本選手はマジやべぇ。やはりヤクルトの村上選手より岡本選手の方が上なのかと思わせられてしまう(;´・ω・)

2023年8月1日火曜日

10年前、20年前の中国とインドの評価

「中国はもう終わり、これからはインドの時代っすよ!」

 上のセリフは約20年前、当時「○○ハイツ一の武闘派」を自称していて学生だった私に対し、後輩が言った言葉です。なお武闘派といっても特定の団体には所属せず、やっていたことは雨が降りそうな時に後輩の部屋のベランダに干したまんまだった布団を取り込むくらいでした。

 そういうどうでもいいのは置いといて、20年前、時期にして00年代中盤においては「BRICs(ブリクス)」という言葉がまだ存在しました。これは当時の経済新興国であったブラジル、ロシア、インド、中国(チャイナ)、南アフリカ(サウスアフリカ)の頭文字を取った言葉で、中でも同じアジア圏にあることから中国とインドが日本人の中では特に比べられていたと思います。
 あれから20年を経て、「アジアNIES」がとっくに死語となっているように、このBRICsももはや死語になっているというかここ5年内には確実に一度も耳にしたことがありません。もっともBRICs自体、2008年のリーマンショック辺りから語られることが少なくなり、それぞれが単独で議論されるようになっていった気がします。

 中でも中国はドイツ、日本を追い抜きいまや世界第二の経済大国で、少なくとも先の後輩の言う通り、00年代中盤で「もう終わり!」でなかったことは間違いありません。ただ最近色々な記事にもでているとおり、調査媒体にもよりますが中国の人件費というか給与はこの20年で約20倍も上昇しており、もはや低賃金国と呼ぶには相応しくありません。経済規模もさることながら個人レベルであってももはや発展途上国とは言えないまでに発展したものの、このところ書いているように今年、というより去年の上海ロックダウン辺りから目に見えて不況感が強まっており、俗にいう「中所得国の罠」に陥りつつあります。

 自分が中国に係わりだしたのは約10年前ですが、その頃も大分所得は上昇してはいたものの、まだ発展途上国らしい気風が強くありました。逆に、今は当時のようなアニマルスピリッツに溢れた若者は減り、起業家精神は大きく後退していると断言できます。そういうことを振り返るならば、ちょうど転換期の中国を自分はうまく観察できる時期にいたのでしょう。

 一方、「これからはインド」と後輩に言われたインドですが、ロシアやブラジル、南アフリカと比べるならばこの20年で比較的順調に成長を続けているという気がします。日本国内で報じられているかは分かりかねますが、2022年の自動車販売台数で1位は中国、2位は米国で3位はこれまでずっと日本でしたが、去年にインドが日本を追い抜いて3位に入っています。人口の差があるとはいえ、世界3位の自動車大国となるまでにインドも経済成長しており、かつて同ランクと扱われた中国とは今も差があるものの、発展潜在力でいえば20年前の予測の通りだったというべきでしょう。

 とはいえ今もインドは犯罪やカースト制による社会的差別が色濃く、経済成長における足かせは少なくない気がします。20年前の時点で私はまさにこうした社会的制約が中国に比べて圧倒的に強く、また旅行でインドを訪れた際に停電が頻発していたことなどからも、比較的に言えば中国の方がずっと成長しやすい土壌があると当時考えていました。
 もっとも、最近のインド事情について自分もあまり把握していないだけに、そのような社会的制約は以前に比べたら今はだいぶ改善しているのかもしれません。また中国と比較するならば、米国と第二の冷戦のような対立が強まる中で、中国の周辺国に対する投資や経済移転を米国がこのところ主導しているだけに、インドにその恩恵が今後降りかかる可能性も十分あるような気がします。だとした場合、インドの時代とやらはまさにこれからの10年かもしれません。

 まぁインドの時代が来るとしても、旅行で訪れた際のあまりの暑さ、ほこりっぽさ、殺伐とした風景から、たまに旅行で行くならともかくここに住んで働きたくはないなと思っただけに、仕事で赴任となると多分普通の日本人は持ちこたえられない気がします。確かに国同士が仲が悪いから中国企業の進出が弱く日系が進出する余地はあるっちゃあるんですが。

2023年7月31日月曜日

中国経済に関するリチャード・クー氏の評論

 アラブ人顔で会社でのあだ名が一時期「ビンラディン」だったうちの親父の写真を今日、中国人の同僚に見せたところ、一目見るなり「新疆(ウイグル)人だ!」という声が上がってきました。中国人からしたらああいうアラブ系の顔は新疆人に見えるということを、今日発見しました。


 話は本題ですが、上記リンク先にあるエコノミストのリチャード・クー氏の中国経済に関する評論が面白かったので紹介します。なおクー氏については「クーさん」と呼ぶとすごくかわいく聞こえるなと思います。

 そのクーさんの評論ですが記事にもある通り「バランスシート理論」がベースとなっており、これは経済規模に関して支出と収入は常に同規模となるはずであり、経済規模を拡大、つまり経済成長するには社会が一定の借金をしなければ理論上実現しないという、言われてみてなるほどという理論を唱えています。
 この理論をもとにすると、経済成長を続けるには社会における借金額が増え続けなければならず、具体的には銀行の貸出量(マネーサプライだっけ?)が増え続けなければなりません。しかし中国は2016年の段階で先行きへの不安から借金を減らしていこうとする動きが社会に見られ、実際に貸出量も先細って言ったそうです。その点から見ると、中国の不況は2016年時点ですでに始まっていたというのがクーさんの見方です。

 この見方については私も同感で、不況というのは好景気と思われている時点ですでに始まっているものだと考えており、今の中国は市民レベルですら不況を実感するくらいまで具現化しているものの、その端緒という意味では確かに2016年くらいから始まっていたのかもしれないという気がします。何故かというと、銀行の定期金利がちょうどこのころ辺りから5%を切るようになり、その後もずっと目減りし続けていたからです。
 最近は諸般の事情で私は定期預金をやらなくなりましたが、2017年くらいなら4%台の金利は余裕でしたが、2019年になると3%台後半すらなくなり、羽振り悪いなぁと思いつつスマホで定期預金をよく申し込んでいました。今思うと、ああした市場金利の落ち込みを見過ごすべきじゃなかったかもしれません。

 以上のような見解を踏まえてクーさんは、景気打開のためには財政出動が否応にも必要であり、コロナ対策に追われ財政基盤が揺らいでいる地方政府には期待できず、中央政府が大規模な対策を打つべきであり、対策をきちんと打てれば何とかなるという見方を示しています。それに対し、


 そのクーさんの意見に対しこちらの藤和彦氏は、現状に対するクーさんの分析には同意しつつも、果たして大規模な財政出動を中国が行えるのかと、疑問を呈しています。何故行えないのかという理由に関して藤氏はあまり説明しておらず、文面を見る限り根拠がやや弱いと私は感じますが、実際に中国政府が財政出動に踏み切れるかに関しては自分も疑問視しています。

 その理由としては、中国の税収、貿易黒字による外貨獲得が弱まってきており、今投入した分の資金を将来に回収できるかという点で懸念があること。次に、クーさんも指摘している通り中国では既に人口減少が始まっており、経済規模、税収が今後も拡大し続けるかという点でも大きな懸念があるという理由からです。
 これまで、特にリーマンショックの起きた2008年であれば中国は人口が拡大しており、それ以上にプライマリーバランスが常に黒字で尚且つ更なる増収がはっきり見込めました。それだけに大量の資金投入を行ってリーマンショックからいち早く脱することができましたが、今の人口が先細っている中国で同じことできる、というより政策担当者が決断できるかと言ったら、確率は確実に以前よりは低くなるでしょう。そういう意味ではクーさんの言ってる通りに、まだ人口減少が始まっていなかった段階でバブル崩壊にあった日本の方が状況的にマシだったのかもしれません。

 私個人の見方では、やはり日本の例に則るとしたら財政出動は出動でも、景気刺激のためのインフラ投資などに使うのではなく、まとめて不良債権処理に用いる方がいいのではないかと思います。中国の消費者が借金をしないのは先行き不安からであり、その不安の源泉は不良債権というか借金の規模によるものであれば、経済規模は一時縮小するものの、損切りしてでも不良債権処理に舵を切るべきではないかというのが自分の見方です。不良債権はいつまでたっても不良債権であり、特にデフレに入ってしまえばその重みはますます増してくることを考えれば、デフレに入る前のインフレ段階で思い切り処理するのが最善手というわけです。

 ただ、既に恒大不動産をはじめ国が傾くくらいの負債を抱えた企業も今の中国には少なくありません。こうした企業をどう処理するかに当たっては、これまた日本の例にとるならば産業再生機構の
ような不良債権企業を抱え込む組織を作るのが一番な気がします。日本の産業再生機構も、潰そうにも潰すと国が傾くくらいの借金を抱えたダイエーを処理するために作られたんだし。

 このように考えると、本当に日本の後を今中国が追っているように見えてなりません。あんまり日本の過去になぞらえてみるのも視野を狭くするのでよくないと思いつつも、現状の中国においては日本の過去の対応が一番参考になるように思え、この際だから中国は竹中平蔵氏を招聘したらどうかなとすら最近思うようになっています。なんか彼だと中国とは意外と相性よさそうに見えるし。

 にしてもこれからウイグル人を見ると親父を嫌でも連想しちまうんだろうな(´・ω・)