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2024年12月30日月曜日

ドニー・イェンってパネェ(´・ω・)


 このところ中国では「誤判」とか「誤殺」とか「誤」の付く映画が多い友人に言ったら、「誤判(The Prosecutor)」は見たけど面白かったと言われたので、昨日自分もこの映画を見に行きました。タイトルからして冤罪をテーマにした社会は作品なのだろうと何の前情報もなく見に行ったら、冤罪が話の主軸であることは間違いではなかったものの、裁判所の中でよりも、裁判所の外で悪人を殴り倒すシーンの方が多いまごうことなき香港カンフー映画でした

 もう少し具体的に話すと、警察官から検事に転身したドニー・イェンが弁護士に嵌められて本来は無実であるにもかかわらず犯罪組織のスケープゴートで懲役食らった少年を助けるため、麻薬組織相手に証拠や証人を集める傍ら、それを妨害しようとする麻薬組織の手先らと何度も殴り合う映画でした。どれくらい殴り倒すのかというと、ナイトクラブで乱闘している最中に警察に応援を求めた同僚の検事が電話で、「あいつは今一人で100人くらいと戦っている。嘘じゃない!」としゃべりますが、マジで嘘じゃないです。

 それで主演の甄子丹ことドニー・イェンですが、彼を映画で見るのはこれが初めてでしたが、これほどすごいカンフースターがいたのかと見ていて驚きました。すでに60歳を超える年齢ながら動きがともかく早く、撮り回しの長いシーンでも連続した複雑な動きをきれいにこなしており、映画の中とはいえ「なんでこんな強い奴が検事やってんだよ」と突っ込みたくなるほどでした。
 中国人の同僚によると、ドニーは「そんなかっこよくない」との評価ですがこれには私も同感で、見た目は本当に普通のおじさん、なんていうかコンサル会社とかの中間管理職っぽい感じです。逆にそういう普通さを出しつつあれほど激しいアクションこなすから、余計見栄えが良くなっている様にすら思います。

 そんなドニーに限らずほかの俳優やエキストラの動きも非常に早い上に殴打するところなんか重く感じられ、香港映画を見るのも本当に久々ですが、かつてのカンフーアクションは今も色あせていないと非常に感動しました。っていうかこの映画の中だと香港が足立区並の治安の悪さで街歩きするのが怖くなる(;´・ω・)
 ちなみに冒頭は麻薬組織の拠点を警察隊が制圧するところから始まりますが、そのあまりの動きの速さと銃と盾を使ったアクションに、日本の警察ドラマとかの動きが幼稚園のお遊戯にしか見えなくなりました。

 その香港に私はかつて三ヶ月ほど滞在したことがあるため、映画を見ていてもどこかで見たような路地があるかと思えば、セリフの中で「ワンコックからチムシャアツゥイまで犯人を走って追いかけた」という言葉に「あんな距離をマジで?」などとそこそこわかったりして楽しめました。

 自分はまだ見てないけど、今回のこの映画で興味持ったのでドニー主演のイップマンシリーズも今度見てみようかなと思っています。香港映画は中国返還以降は盛り下がっていると聞いていましたが、決してそんなことはないと今回わかりました。

2024年12月29日日曜日

相次ぐ航空事故を見て

 すでに各所で報じられていますが、韓国で大型旅客が着陸に失敗して爆発炎上する事故が起きたそうです。確認されている生存者2名を除いてその他の乗客乗員の生存は絶望的とされ、当人や遺族の気持ちを考えると胸が痛むばかりです。

 折も折というかつい先日にはアゼルバイジャン国籍の機体がロシアのチェチェン共和国領内で攻撃を受け、撃墜される事故が起きています。まだ確定というわけではないもののロシア側はすでに何度も供述を翻しており、また比較的残した機体状態から言っても攻撃を受けたことは間違いなく、証拠隠滅を図るため敢えて近くの空港への着陸を拒否してカスピ海方面へ誘導したのも事実でしょう。
 こんな国がこの世にあっていいのかと言えば、無い方が絶対マシでしょう。

 ただこちらのアゼルバイジャンの事故に関しては、非常に困難な状況の中、カザフスタンまで飛んだ上に一定の生存者を出すにまで至った殉職されたパイロットには強い敬意を覚えます。あれだけの妨害を受けながら空港近くまで飛び続け、このパイロットがいたからこそ助かった人も多く、その技術と苦境に対する精神力には頭が下がります。

 以上、年末にもかかわらず二件の痛ましい航空事故を目の当たりにすることとなりますが、これらの事故を見るにつけかえすがえす、今年年初に起きた羽田空港の衝突事故における乗客乗員の脱出劇にのすごさを改めて感じ入ります。状況は違うとはいえ大量の死者が出てもおかしくない中、衝突した海上保安庁の機体からは死者が出たもののの、JAL機からは全員脱出に成功し、またその際に通信途絶がありながらクルーは迅速に行動し、機長も最後に脱出するという強い責任感を見せていました。
 私が言うまでもなく本当にこの事故は奇跡的ともいい事後対応ぶりで、事故後は私の周りの中国人らもこれからはJALに乗ると称賛が相次いでいました。実際、それだけのプロフェッショナルらしさが見られた事故でした。

 末筆となりますが、今回冒頭の二件の事故で亡くなられた乗員乗客には、私個人が言ったところでなんだという気持ちもいますが、深くご冥福をお祈りします。 

2024年12月28日土曜日

中国式DIY術

 今蒸かしたあんまん食べてますが、この時期はよく乾燥に注意、加湿器を活用などと言いますが、あんまん蒸かせば自然と湿度上がるので加湿器買うくらいならあんまん買うべきだと密かに思っています。
 そんなあんまん食べながら、いま火のついたキャンドルをテーブルの上において眺めています。なんでそんな一人で無駄にロマンチックなことをしているのかというと、単純にキャンドルが余ったからです。ではキャンドル、っていうかろうそくを何に使ったのかというと、床板の穴埋めだったりします。

 日本の家屋ではまずないと思いますが、中国の家屋ではピース状にはめられた床板のパネル同士に隙間があるのはごく自然なことです。どれもこれも隙間があるってわけじゃないですが、大体窓際とか壁際になるとはめてきた床板の寸法が微妙に合わなくなって、ちょっと隙間あるけどまあいいか的にそのまま内装工事を終えられているのだと思います。これまで私が住んできた中国の部屋では、隙間なく埋められたフローリングなんて見たことないです。

 そんな隙間に何故ろうそくということになりますが、単純に蝋を溶かして隙間を埋めるのに使うからです。本音で言えばシーリング材なり使って埋めたいところですがさすがに賃貸の部屋でそこまでやると色々面倒です。なので隙間を長期的に埋められ、且つ退去時にすぐ元通りにできる方法はないかと数年前に思案した結果、「せや、ろうそくで埋めりゃええやん!(σ・∀・)σゲッツ!!」という結論に至り、ダイソーでろうそく買ってきてマジで埋めました。
 この時のろうそく効果は結構素晴らしく、その後長期にわたり無駄な隙間に物を落として挟むことはありませんでした。自分の生活の中ではプラモ部品を隙間に落とすことが多かっただけに、これが亡くなっただけでも大助かりでした。あと地味に虫も隙間から発生することあったな。

 そんなろうそく穴埋めも何年も経ち、一部個所が劣化してはがれたりとか、まだ埋めきってない箇所を発見したこともあり、先月に数年ぶりにまたダイソーからろうそく買ってきて、火をつけてぽたぽたと蝋を落として穴埋め作業をやってました。数年ぶりとはいえ二度目の作業とあってかなり手順よく、前回以上にカチッとした固め具合でまた隙間を埋めてやりました。
 でもって埋めた後、数年前に購入したろうそくが家の棚の奥にまだ眠っていたことに気が付きました。

 そんなわけで今回買ったけど使い切らなかったろうそくがマジ余っており、そのまま捨てるともったいない神様に怒られそうなので、無駄にムーディな雰囲気づくりとばかりに今燃やしています。こういう火はほんのちょっとしたことで延焼したりすることもあるのでむしろ使いたくないですが、まぁしっかりちゅいしながらやればいいだろう的に使っています。

 以上の床板の隙間埋めですが、私以外にも悩んでいる人が多いのかECサイトのタオパオを見ると「簡単一瞬で穴埋め!」みたいなキャッチコピーとともにシーリング材がたくさん売られています。私自身もろうそくが一番手軽でいいけどほかになにかいい感じのシーリング材ないかなと探していたところ、日本語で「すきま接着剤」と書かれた商品が何故か中国で売られていることに気が付きました。でもって、トイレや台所の隙間に使えると書かれており、マジでこの方面でも対策が必要と前から考えていたので先日購入してみました。

 届いた商品を見ると、「委託企業:日本羽田株式会社」と書かれており、恐らく日系企業が中国メーカーにOEMで生産させ、中国国内でも流通させている商品なのだと思います。それでこの商品でどこの隙間を埋めたかったのかというと、トイレと床の間の隙間です。

 これもこのブログで過去に何度も書いていますが、中国ではトイレの接地面から水が漏れるのは日常茶飯事です。また普段はもれなくても、大雨とかで配管内の流水量が増えると漏れたりするケースもあり、今の自分の部屋もそうでした。
 無論、これまで何も対策してこなかったわけじゃなく、接着面が分厚く残る接着剤を使っては何度も埋めてきました。しかし接着剤では劣化が早く、漏水を止めたかと思いきや数年たつとはがれてまた漏水起こしたりするし、また見た目的にも接着剤だとやや良くありませんでした。

 そこで前からこの手のシーリング材をマジで熱望しており、床板と違ってトイレだったら大家に対してむしろ施工してやって感謝しろとはっきり言えるので、こっちの方では何も迷わず今回このシーリング材を使ってみました。そもそも頻繁ではないので漏水をこれで防げるようになったかはまだ経過観察が必要ですが、見た目的には白くてカピカピした接着剤と比べれば純白、というか象牙色したシーリング材は悪くなく、またプラモで鍛えた手先を活用して付属のへら使って割ときれいに設置面に沿って塗れたのでかなり満足しています。少なくとも、以前の接着剤の時のように深淵を覗くかのような黒い穴は全く見られないほど埋めることができ、漏水対策としてもかなり期待できます。

 こんな感じで、恐らく中国に来なければまず体験することのなかったDIY工事を自分は中国来てたくさんやる羽目となっています。前には壁紙も貼ったし。
 こうしたDIYをやってて思うこととしては、内装屋さんは本当に偉大だなぁという敬意です。やってみなければどれだけこれらの作業が難しいかはまず知ることなかったでしょうし、日本国内であれだけきれいな内装を当たり前のようにこなす職人にはリスペクトしかありません。ってかあんだけきれいにやれるんならプラモとか作らせたらどんな感じなんだろうか。

 ちなみに今日はF-22ラプターのプラモを作っていたほか、裾がほつれかけていた布団カバーに補強とばかりに縫い直したりしていました。なんか指先使うことの多い一日だったな(´・ω・)

2024年12月27日金曜日

自動車業界の巨星こと鈴木修の逝去

 リンクは貼りませんが各種報道でも大きく扱われているように、自動車大手スズキの元会長で相談役であった鈴木修が亡くなられたそうです。彼についてはこれまでもこのブログで何度も取り上げてきましたが、経営において重要な場面において悉く成功に至る決断を下しており、あまり認知されていませんが日本自動車市場においてトヨタに次ぐ第2位のシェアを持つに至るまでスズキを大きくさせた立役者です。文字通り日本自動車業界の最長老とも言うべき人間で、また一つの時代が終わったことを強く感じさせられます。

 鈴木修の好決断を挙げれば切りがないですが、まず第一にあげられるのは現在も納車2年待ちはざらと言われるジムニーの買取でしょう。知ってる人には早いですがジムニーの設計ははスズキではなくホープ自動車で、この会社が自動車事業を撤退する際にジムニーの権利売却を図ったところ、車内全員が大反対する中で鈴木修が「婿養子の分際で」などと言われながら買取を決断したと言われます。それが半世紀近くも世界中で売れ続けるベストセラー車となりスズキの顔となるのだからまたすごいものです。

 また会社経営においてはやはりVWとの提携解消でしょう。対等な提携という約束だったのにスズキに対する支配を強めようとし、挙句には自慢のクリーンディーゼルエンジン技術も一切共有しようとしない態度を見て、会社規模では大きく劣るにもかかわらず提携解消を申し出たところ、VWのディーゼル不正が明るみとなり、提携解消手続きが遅れれば巻き添えで株価下落に遭うところでした。
 多くの人が指摘している通り、鈴木修はVWにディーゼルエンジン技術はないと見抜いてこの提携解消に動いたとされています。その眼力もさることながらこれだけ自動車技術に精通した経営者はこれまでいなかったともいわれます。

 そんな鈴木修の一般的ではないエピソードとして過去にこのブログでも書きましたが、静岡県内の自動車サプライヤーに勤める知り合いがある年の年初の挨拶にスズキへ伺い、その時に初めて鈴木修とあったそうです。その翌年も機会があったところから訪問したところ、顔を合わすなり知り合いの名前をいい当てたそうで、たった一回の顔合わせで相手の顔と名前を完璧に覚える人物だったそうです。
 実際この知り合いも、今まで見てきた経営者の中で図抜けた存在だったと恐懼していました。

 そんなカリスマが亡くなったことでこれからのスズキはどうなるのか、と言いたいところですが、恐らく今後もスズキが大きく揺らぐことはないでしょう。というのも事業継承はすでに果たされており、またこれからの時代にスズキが一人でやっていくことは難しいと考えていたのか、すでにトヨタとの提携を深めその経営においてトヨタの支えをしっかり備えさせています。
 トヨタ側も元から創業家同士で仲が良かったこともあり、スズキに対する信頼は人一倍強いように見え、急に身代が傾くことはまずもってないでしょう。


 最後に上の記事において

「また、アルトの名前の由来は、イタリア語の『秀でた』という意味だった。これを鈴木氏は発表会見で『あるときはレジャーに、あるときは通勤に、またあるときは買い物に使える、〝あると〟便利なくるま』とアドリブで説明。一連の鈴木氏のひらめきがアルトのヒットにつながったとみる向きもある。」

 という話が載せられていますがこれを見て、初代スイフトのテレビCMのキャッチコピーの「泣く子も黙る79万円」は、もしかしてこの人が考えたんじゃないのかという疑いがもたげてきました。だとしたら相当な親父ギャグ使いだったことになるな(;´・ω・)

2024年12月26日木曜日

米国人のルーツに対する自己認識


 無駄に震電Ⅱの画像を撮りためてます。っていうかこれの元パイロットの声がなんか違うように感じてたら、やっぱり声優が蘭姉ちゃんから変わってたし。

 話は本題ですが先々週あたりに、近くの映画館では上映していなかったので遠くまで(チャリで20分)言って映画の「グラディエーターⅡ」を見に行きました。前作の1も当然見ていましたが、1で主役のラッセル・クロウを食うほどの怪演を見せたホアキン・フェニックスなしで成立するのかと思いきやこの2作目も素晴らしい出来で、各俳優陣の演技も申し分ありませんでした。
 個人的には顔の濃い銭湯設計士が出てこないかなと期待しましたが、さすがに出てきませんでした。まぁ阿部寛氏なら普通にグラディエーターに混ざっていても誰も気にしなかったでしょうが。

 それで1作目のグラディエーターですがこちらも大ヒットを記録して、その後「300」をはじめとして「ソードサンダル」と呼ばれるローマ物ハリウッド映画のブームを引き起こしています。このブームについて知った際に私は、そもそも縁もゆかりもないローマの歴史作品に米国人は共感するのだろうかという疑問をやや抱きました。
 それこそ日本人にたとえるなら、その文化のルーツともいうべき中国の古代史作品で盛り上がっているように見え、確かに日本人も「キングダム」がヒットしていますが、米国人的には入植期の欧州よりも、なんか古代ローマの方が自分たちのルーツとしてより共感を持っているようにも感じました。

 実際のところどうなのかはさすがにわかりかねますが、そもそも米国が国としての歴史が短く、また移民国家ということもあって国民のアイデンティティを形成するルーツをあまり持たないことは間違いありません。

 同じく映画の話で言うと、以前だヒットした「ブラックパンサー」では米国生まれ米国育ちだけど、祖先はアフリカ大陸から連れて来られた奴隷である黒人層の間で、祖国を持たないアフリカ系米国人というキャラクターに強い共感が得られ、ヒットにつながったという話を聞きます。
 この話からすると、黒人層に限らず白人層も一応は英国系、フランス系、イタリア系、アイルランド系と自認する層が米国にはいると聞きますが、それでもその自分のルーツに対する意識は我々日本人と比べると希薄であるような気がします。

 そんな自分ら日本人を比較にすると、日本人のルーツに対する意識は恐らく世界的にも非常に強固な部類に入ると思えます。というのも、人種、国土、歴史、文化のすべてが結びついており、自分が日本人であるということに疑いを持つ日本人は日本国内においてほぼいません。
 祖先にはニンジャやサムライがいるし、すしやうどんという独自の食文化もあれば人種的にも単一性が非常に高く保たれています。

 もっとも日本国内においては在日韓国人やアイヌ系民族の方もおり、必ずしも完全統一されているわけではありません。でもって特に在日韓国人の方においては、やはり自分のルーツについて悩むことが多いと聞きます。

 話を米国に戻すと、まずアイデンティティの形成においてはその民族や文化に対するルーツの意識が非常に重要であることは言うまでもありません。その上で米国人は私の目から見るとそのルーツ意識が弱く、かえって比較的近い時代の近代ヨーロッパ以上に、遠い昔のローマの方がよりルーツを持っているように見えます。
 何故かというと古代ローマの文化はヨーロッパ世界の根底を形成したものであり、ヨーロッパにおける万人にほぼ適用できるほど汎用性が高いからです。また時代が遠い昔なので、実際の人種とか血統についてとやかく考えずに済むというのもある気がします。
 まぁイタリア系米国人なら、ある意味自分のルーツだと主張することに強い正当性を備えていますが。

 以上はあくまで自分の勝手な憶測に基づく見解ですが、ルーツをベースとしたアイデンティティは日本人と比べた場合、米国人はやはり弱いというのはかなり自信があります。その上で今回こうして考えてみて、アイデンティティをルーツで補強しきれないから日本と比べて米国は宗教が強くなるのかなとも思いました。
 逆を言えば、日本人はルーツ意識がかなり強いから、宗教によってアイデンティティを補強する必要がないからこそ、そこまで宗教に関心を持ったり、活動する人も少ないのではないかという仮説ももたげてきました。この辺は日本人以上にルーツ意識が強い、中国人にも当てはまってきます。この辺、掘り下げればもっと色々思いつくことも出てくる気がしますが、先行研究とか呼んだ方が早いかもしれません。

2024年12月25日水曜日

書評:対馬の海に沈む

対馬の海に沈む(集英社新書)

 以前からネットで書評を読んで気になっていましたが、今週買って一気に読み終えました。「あーあ、退屈」なんて一昔前のケータイ小説の冒頭みたいなセリフを口にする人がいたら、絶対買うことをおすすめします。それくらいヤバいくらい面白い本でした。

 簡単に概要を述べると、この本はノンフィクションである対馬の事件を追ったものです。その事件とは、JAの保険ことJA共済の契約件数でほぼ毎年全国ナンバーワンの実績を持つ職員が突如自殺したのですが、その死の直前から彼には不正の疑いがもたれており、死後の調査でなんと22億円もの横領が発覚しました。この職員の不正の手口もさることながら、何故彼は不正に手を染め、また長年にわたり発覚しなかったのかを作者の窪田新之助氏が追った内容となっています。

 上記の全国ナンバーワンな保険外交員の自殺とその不正内容、特に22億円という先の三菱UFJの貸金庫事件の10億円を超える金額規模に対する関心もさることながら、この本に私が興味を持ったのが舞台が対馬だったというのも大きいです。以前のブログにも書いていますが私も以前に対馬を訪れたことがあり、その甲斐あってかこの本に出てくる「厳原(いづはら)」などの地名も一発で読めたりして、いくらか土地勘があって余計に楽しめました。

 なお本にも書かれてましたが、作者の窪田氏が初めて対馬に降り立って取材をしたのは2022年の11月だったそうで、まさにこの月に自分も対馬を訪れていただけに、その偶然には驚きました。もしかしたら対馬ですれ違っていたかもしれず、勝手ながら「けものフレンズ」ならぬ「つしまフレンズ」に窪田氏を心の中で認定しています(´・ω・)

 話を戻しますが、この本を読む前に私はいくつかの疑問を持っていました。箇条書きにすると以下の通りです。

・何故自殺した職員は人口の限られた対馬で契約件数全国トップになれたのか
・何故被害規模が22億円になるまで不正は発覚しなかったのか
・何故長年発覚しなかった不正が自殺直前に表沙汰となったのか
・JAの内部統制体制はどうなっているのか

 以上の疑問について、この本ではすべて辻褄の合う解答を導き出しています。それもこれも窪田氏の非常に熱心な取材の賜物と言ってよく、関係者、それこそ職員の親族から彼の共犯者、そして彼をかつて内部後発した者に至るまで、ありとあらゆる関係者とコンタクトを取って貴重な証言を得ています。
 特に共犯者と疑われる人物に対しては、それとなく職員についての話を聞きながら、「でも、不正のおこぼれに預かっていたんじゃないですか?」的に核心に迫る踏み込んだ質問を投げかける場面などは、下手な推理小説よりもずっとドキドキするシーンでした。なお大抵の取材相手はこの踏み込んだ質問をするや態度を翻し、時には怒って追い返すこともあったそうですが、焦りからか咄嗟に聞いてもいない不正の手口を口にした点などを、く窪田氏は抜け目な掴んでいたりします。

 またそうした関係者の反応もさることながら、事件の全体像もすごいというか、その醜悪ぶりには目を見張るものがあります。元々、JAという組織自体がかなり問題を抱えた組織であると私も耳にしていましたが、その金融事業のノルマといい、この事件に対し実質的に隠蔽工作を図っていた点などを見て、とっとと金融事業を取り潰した方がいいのではないかと思うようになってきました。
 ただそれ以上に、作者も「途中で何度も嘔吐感を覚えた」と言わしめる、自殺した職員の周辺関係者の態度には自分も強い嫌悪感を覚えました。ネタバレになるのであまり言えませんが、職員とグルになって相当甘い汁を吸ったにもかかわらず、自殺後は何食わぬ顔で無関係を装い、あらゆる処分から免れている人間がJA内外で相当多数存在することが示唆されています。

 特にこの本の最後の場面で、かつて職員を内部告発したものの返り討ちに遭い、閑職にも飛ばされた人物こそが、職員の死後にその家族らを案じて最も親身に接していたという事実はいろんな感情がこみ上げてきます。

 これまでもノンフィクション本は色々読んでいますが、それらの中でもこの「対馬の海に沈む」はぶっちぎりに面白く、今年読んだ本の中では間違いなく最高の一冊でした。多少ほめ過ぎという気もしますがそれだけほぼ完ぺきな取材に裏打ちされた内容であり、興味がある方はガチでお勧めします。
 なおこの記事を書く直前に自分のメールアドレスに送られて来たスパムメールが、「JAネットバック」を騙るメールだったのがなかなかに因果なものでした。

2024年12月24日火曜日

日本語が通じないJCB社員

 知ってる人には早いでしょうが、DMMなどアダルト商品を取り扱うオンラインショッピングサイトにおいて、VISAやMASTERといった外資系カード会社のクレジットカード決済が行えなくなりました。私は別にアダルト商品を買ってるわけではないですが、電子書籍はDMMで普段から購入しているだけに、この決済妨害によって難儀する羽目となっています。
 っていうかDMMはアダルト部門にFANZAという別のブランド作ってサイトページも分けたりしましたが、全く無意味な行為として終わってます。

 一応、直接決済するのではなくDMMポイントをクレジットカードで購入してからポイントで決済するやり方なら今でも通じて、私もこれで書籍を購入して読んでいますが、やはり以前のようにクレジットでワンクリック決済する方が手軽で楽なだけに、今後完全に決済サービスを打ち切ってくる可能性もあると思い、尚も決済サービスを提供してくれているJCBのカードを作ってこれからこっちで決済しようかなと検討していました。
 ただJCBのカードを作るにあたって問題となるのが、地味に審査です。というのも私は現在上海に居住していて、勤務先も中国企業です。規模で言えばJCBなんかとは比べ物にならないくらいでかい組織だしブランド力もJCBより上ですが、基本的にクレジットカードの審査では国外企業は一切信用できない対象として扱われ、審査ではねられるということを聞いています。今私がいる組織よりも、日本国内のブラック企業で働いている人の方がクレジットカード会社的には信用が高いそうです。

 ぶっちゃけこの辺、カード会社の信用調査は全く裏付けがないし、カード作った後にすぐ会社辞めても作られたカードはそのまま使える点とか色々おかしいという気がしてなりません。

 話を戻すと、以上のようなかなりハンディのある状況ですがネットで調べたらJCBに直接問い合わせて、海外居住でもカードが作れるという確認をした人の記事が見当たりました。ちょうど来月からまた日本に行くのでワンチャンでチャレンジにかけてみようと思い、まずJCBのサイト上でカード申請をしてみることとしました。
 結論から言えばこの方法ではやはりだめでした。入力画面で勤務先はとやかく聞かれなかったものの、連動する銀行口座の登録住所が海外住所になっているため銀行側のシステムで「未対応です」的に弾かれました。何年この口座使ってて、数百万単位の預金額入れてんだよという気がしますが。

 ならば直接ウェブサイト上からではなく別の書類提出などの手続きで、JCBカードを作ることはできないものか。この点を確かめるため問い合わせフォームに下記質問を入れてみました。

<質問>
現在海外に居住していますが日本に拠点、銀行口座などがあり、JCBカードの新規申し込みを検討していますが、オンラインでの入会申し込みだと銀行側のシステム確認において海外居住がネックとなり弾かれてしまいます。
近々日本に行く予定があるのですが、店頭などでカードの発行手続きを行うことはできないでしょうか? 

 上記の質問に返ってきた答えがこちらです。

<回答>
このたびはお問い合わせいただきありがとうございます。

JCBカードのお申し込みについてご案内します。

ご希望のカードを特定できないため、一般的なご案内となりますが、弊社ではJCBカードを申し込みできる店舗をご用意していません。ご了承ください。

 この回答見て思ったこととしては、「海外在住者だけどカード発行できるかと聞いてんのに、なんでこいつは店頭手続きができるかどうかにしか回答してないんだ?」という疑問でした。店頭手続きはあくまで手段の一つとして聞いてるのに、肝心要の質問には答えないあたり、日本語が通じていないという隔たりをはっきり感じました。

 でもって、こんな回答よこすあたりJCBはよっぽどまともな人材いないんだなと思うと同時に、以前にも最近の日本人の国語力低下を嘆く記事書きましたが、真面目に日本人の能力低下ぶりは笑えないように思え、ちょっとその将来を不安に感じてきました。

 今回の話はまだまだかけるというか決済機能問題は根が深いのでまた次回にまとめます。