ただそうした悪役以上にこの巻で驚いたというか着目したというか、一番記憶に残ったのは、見出しに掲げた管理費搾取マンションというものでした。元々この漫画、不動産仲介費は特別な約定がない限りは本来借主と貸主で折半しなければならないなど、一般人の知らない不動産業界の呆れた実態を紹介していていつも驚かされるのですが、この管理費搾取マンションというのは完全に初耳であるとともに、その行為の実態を見て正直寒気を覚えました。
まず管理費というのは、言わずもがなの家主がマンションなどの団地自治体に毎月支払和なければならない料金のことです。これら管理費は団地の清掃や維持などの管理のほか、修繕などに用いられ、管理費があまりに安いマンションとかだとこの方面がおざなりになることもあるだけに、安けりゃいいものじゃありません。かといって、高いとそれだけ分譲家主の負担が重くなり、必要十分な金額が求められる性質の料金と言っていいでしょう。
それで例の管理費搾取マンションについてですが、作中で主人公はあるマンション一室の売却仲介を請け負うのですが、いざ売ろうと顧客を探すも、周辺相場と比べて割高な管理費がネックとなってなかなか購入を検討する買い手が見つかりません。そもそもそのマンションの管理費は毎年1万円近く引き上げられており、一体何故これほど割高なのにさらに引き上げられているのか調べてみたところ、恐ろしい事実を主人公(永瀬財地)は発見します。
というのも、そのマンションでは全戸数のうち約半数をある法人が賃貸用として保有していました。そして毎年の管理料の引き上げもこの法人が提案して決議を取っており、他の家主から引き下げ提案が出ても、投票数の過半数を握っているこの法人が毎年否決していました。
何故この法人が自らも支払うこととなる管理料を毎年引き上げているのかというと、管理料の支払先となる管理会社と癒着しているからです。管理会社に管理委託料を支払いつつ、その一部をキックバックでもらうというよくある構図です。作中でも指摘されていますがこの管理会社への委託料というのはなかなか表に出づらいお金で、こうしたキックバックとか、横流しというのは実際多いそうです。
話を戻すとこの癒着の事実に主人公は気が付き、このマンションは大きな問題を抱えているとわかったものの、同時にこのマンションから住人はもはや逃げられないという事実にも気が付きます。というのも冒頭で述べたように、既にそのマンションの管理費は周辺と比べ割高であることがネックとなって買い手がつかず、どうしても売ろうというのなら現在価値から大幅な値引きなしでは実現しない状態となっていたからです。
こうした状況について主人公はこのマンション住人について、「高い管理費から逃れようと思っても売ることもできず、逃れられないまま搾取され続けるしかない」と評していますが、まさにその通りともいうべき状況でしょう。
最終的には漫画らしいご都合展開からちょうどいいお助けキャラが登場することで、このマンションは管理費が引き下げられることとなり、主人公も無事にマンションを売り切ることが出来ました。ただ原作者の夏原武氏はこの搾取マンションの話について、「ほぼ実例に則している」と述べ、以前の様に雑誌で書いていたらルポを組んでいたとあとがきで述べています。実際それだけのインパクトがあるネタで、真面目にこの話を見て私も「マンション買うのこえー」とか本気で思いました。っていうかマジで購入検討するとしたら、自治会構成はよく見とかないとヤバイと感じます。
というわけでややオチに困る紹介でしたが、世の中悪いこと考える奴はいるもんだとつくづく思います。知識で対抗しようにも、なかなか手ごわい相手もいるものです。
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