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2009年11月3日火曜日

北京留学記~その二十、連美香

 他のクラスメートの名前はカタカナ下記でしたが、今日紹介する彼女については漢字名も詳しく覚えていたのでこの表記で通します。さてこのところこの体験記で続いているクラスメート紹介もとうとう最終回ですが、オオトリを締めるは祖父が中国人クウォーターであるタイ人の連美香です。彼女は三人姉妹の真ん中っ子で、留学には姉妹三人で来ており、時たま授業をサボる事はあっても比較的出席率の高い真面目な学生でした。

 留学中の授業は日本の大学同様に基本的に席順は決まってはいないものの授業開始から大体数週間もすればみんな同じ位置に座りだすのですが、私の席の隣に陣取るようになったのがこの連美香でした。それこそ最初はやけに服装が派手なスペイン人の姉さんが隣でしたが二週間目くらいから彼女が隣に来てその後卒業までずっと隣同士でした。とはいえ隣同士になったから妙なロマンスとかが始まるわけでもなく、他のクラスメートと比べて休み時間に雑談を交わすことが多かった程度でした。ただそうした時間が多かったおかげとも言うべきか、彼女からはタイの国の状況から風習まで結構詳しい話を聞く事が出来ました。

 ただそれほど私と会話する事の多かった連美香でしたが、実を言うと当初私は彼女に対してあらぬ疑いを持っていました。その疑いというのも、彼女の出身国がタイということもあって見かけは明らかに女性ですがもしやニューハーフではないかという疑いでした。普通ならそれとなく聞くべきなのでしょうが私はこういうところは妙にストレートに聞くことがあり、ある程度仲良くなった時点で直接、「タイにはニューハーフが多いけど、まさか君は違うよね?」と言い出す始末でした。もちろん、笑いなら彼女は否定してくれましたが。

 その時の会話の延長線でそのまま、日本人はタイにニューハーフが多いというイメージを持っていることについて詳しく聞いてみましたが、タイ人もそのようなイメージについては自分達でも認識しているようで、
「確かに、私達の国はニューハーフが多いけど、それはあまり私達が性別にこだわらないからだと思う」
 と、至極適切な返答をしてくれました。ただ性別にこだわらないというのはそのようなニューハーフかどうかというラインだけで、女性の社会的な地位については日本と同じく、いやそれ以上にジェンダーフリーは進んでおらず、何でも彼女が通った近所の進学高校では生徒のほとんどが男子で肩身の狭い思いをしたそうです。というのもタイの女子はほとんどが日本の昔の女子高のようなところに進学するようで、彼女の両親は教育環境を考えて近くで唯一共学で入れそうな進学校がそこに進学したそうです。

 その話を聞いた後、今度は逆にタイ人は日本人に対してどんなイメージをもっているかと聞いてみたら、なかなか外では聞けない面白い返答をしてくれました。やはりタイでも日本人と言うとビジネスマンを想像するらしく、技術があって商売のうまい民族といったイメージだそうです。だがあくまでそれは今の話であって、昔はどうもタイ語で「小さい人」と揶揄していたそうです。
 この言葉の意味は素直に侮蔑を込められており、二次大戦の最中にタイに進軍した日本人を心苦く考え、同じ侵略者でも欧米人より小さい奴、という意味合いで使っていたそうです。どことなく中国語における日本人への侮蔑語の、「小日本」に近いような気がします。

 またこの時とは別の時にちょうどタイの当時の首相であるタクシン元首相が、タイの国王に辞職を勧められた際には国の制度について聞いてみました。
 基本は日本と同じ議院内閣制で、最も権力があるのはやはり首相だそうです。そして前から気にかかっていた、タイにおける国民の国王への意識はどうかと聞いてみたところ、やはりと言うべきか絶大な信頼を語って見せました。

 タイでは国民すべてが国王を信頼しており、王制についても断然存続すべきだと皆考えていると答えていました。なおこの時に私は日本の天皇制について彼女に教えましたが、存続するべきだという意見は強いが、日本の天皇はタイの国王のように政治には一切介入する事を禁じられていると教えたら驚いて聞いていました。

 最後に、アジア人は欧米人と比べてどこでも実年齢より低く見られる事が多いといわれていますが、私もこの例に漏れず連美香が女性の中で体格も小さい方だったこともあってずっと年下かと思っていましたが、卒業する間際で自分より年上だとわかってびっくりさせられました。その驚いた事を正直に話したら、向こうは向こうで私の事を高校生くらいだと思っていたそうです。知らぬは自分ばかりとはいうものです。

2009年11月2日月曜日

想定外のスーパー、AZ

 先週に放映された「ヒミツのケンミンショー」の地域特集にて鹿児島県が特集されていましたが、その中で紹介されたある商店に番組が出てくるや私と私のお袋は揃って、「あ、やっぱこれか」と思わず一緒ににやけてしまいました。そのスーパーというのも、鹿児島県阿久根市にあるAZです。

A-Zスーパーセンター(ウィキペディア)

 正式な表記は「A-Z」ですが、めんどいのでこのままAZで通します。ちょっとこの記事では題をどうするかに悩み最初は、「阿久根を支えるAZ」にしようかと思いましたが、なんか本来の記事の趣旨と変わってくるので数年前の流行語の「想定外」とつけることにしました。
 では一体このAZは何が想定外なのかというと、あり大抵に言えばそれまでのスーパー経営の概念で正攻法といわれる手法をことごとくひっくり返して成功している点です。

 ではそんな常識を破るAZの経営方法というのはどんなものかというと、グダグダ長文で書くのもなんですので箇条書きにしてまとめて紹介しましょう。

1、店舗面積が広いめちゃくちゃ広い
2、取扱商品点数が非常に多い(30万点以上)
3、食料品や日用品だけでなく、自動車やガソリンの販売、車検も行う
4、電話で呼べば、片道100円でバス送迎に家まで往復する
5、これでいて24時間営業


 一つ一つもう少し詳しく説明すると、まず1番目ですがリンク先のウィキペディアにある写真を見れば分かるとおりにまるでアメリカのショッピングセンターかと思うくらいだだっ広い店舗です。しかしアメリカやその他の日本のショッピングセンター、モールと違う点として、このAZには二階がないというのが大きな特徴です。何故二階がないのかというと主要客である過疎化の進む阿久根の老人らにとって階を跨ぐ移動は大きな苦痛であるとして平屋建てを貫いているそうです。

 次に2番目ですが、これはそれこそ客の要望があれば何でもかんでも商品を揃えるとしており、醤油一つとってもありえないほどの種類分が用意されているそうです。なお鹿児島及び九州の醤油は他の地方と比べて非常に甘い味をしているので、多分私なんかも阿久根に住んだら重宝しそうです。
 そんなAZの豊富な品揃えを語る上で外せないのが3番目の特徴で、なんと自動車本体までもそれこそディーラー店のように店舗に並べ、しかも各種保険、取得手続きまで購入と同時に行えるようになっているので買ったその日にそのままその車に乗って家に帰れるそうです。

 ここまでだけでも相当異常な経営方法ですが私が最も評価してなおかつ最も独特だと思える特徴なのが、続く4番目の電話一本片道百円でドアツードアで客を運ぶ移動サービスです。これなんか九州や四国といった地方に住んだ経験のある方なら分かるかと思いますが、このような地方では本当に泣けるくらいに道がありません。また道があったとしてもひどい悪路で、しかも各都市ごとの距離も半端でないために車を持たない人間はおいそれと気軽に出かける事が出来ず、それが体力のない老人ともなると尚更です。
 AZの社長の牧尾氏はこのような鹿児島県阿久根市の環境からこのサービスを考案したらしいのですが周囲はそんなサービスが成り立つわけないと予想していたものの、そんな予想を見事に裏切り、このサービスによって遠出の買い物に満足にいくことのできない老人らを顧客層としてしっかりと引き入れることに成功したそうです。

 そして最後5番目の24時間営業ですが、これも大都市であるならばともかく、何度も言いますが鹿児島の過疎化の進む阿久根市ではランニングコストだけが無駄にかかるのではと言われていたのですがウィキペディアの記事を引用すると、「夜9時から翌朝7時までの売上げが、全売上げの3割を占めるという。」とのことで、なんでもコンビニのないこの地域で夜間に緊急に買い物が必要になった時に頼りにされているそうです。

 このようにことごとくスーパー経営の常道を突き破ってAZは成功し、当初は阿久根市の本店のみだった店舗もこの不況下ながら現在三店舗になり、今後もさらに増やす計画だそうです。こうしたことからこのAZはなにもケンミンショーにて特集される前から主に日経がバックにいるテレビ東京の番組でも何度か取り上げられており、もしかしたらそうした番組をすでに見ていてこのAZの事を知っている方もおられるかもしれません。

 ただそうした番組で取り上げられていないちょっとレアなAZの情報をここで出すと、社長の牧尾氏がAZを始めるにあたって参考にしたのは千葉県にある「ケーヨーホームセンター」というディスカウントショップらしいそうで、牧尾氏が若い頃に千葉県にいた際にここで働いた経験から豊富な品揃えと共に客層を考えた経営をするべきと考え、成功した今でも若手社員の教育研修のためにケーヨーホームセンターに派遣するそうです。
 何故こんなことを私が知っているかですが、実はAZの本店がある阿久根市というのはうちのお袋の実家で、私は阿久根市の隣の出水市の生まれですが子供の頃は私もこの阿久根の祖父や叔母のところへ何度も遊びに行っていました。それでこれなんか地方の人には分かってもらえると思いますが、田舎というのは本当に狭いもので、AZ社長の牧尾氏というのはうちのお袋の同級生の兄弟で、近年ここが成功してからというものお袋の親戚が集まろうものなら、

「マキオのところは羽振りがいいわよね」
「パン屋やっとった○○いるでしょ。今そいつも自分の店畳んでAZで働いてるわよ」

 などと、非常に緻密なレベルでの情報交換が行われています。それこそ石を投げれば関係者にあたるくらいの狭さで、同級生なり友達なり兄弟なりで人間関係が全部つながってくるというから驚きです。

 とはいえ人口が減少していく鹿児島の片田舎において、地元資本のスーパーがここまで急成長に成功したというのは刮目に値します。私も機会があればここに参与観察でもして見たいものですが、お袋に話し通して一ヶ月でも働いてみようかな。

  おまけ
 ウィキペディアの記事にも書かれていますが、AZの開店初日に大きな地震が鹿児島を襲い、店に来ていた客がみんなレジを通さずに商品持って逃げて行ったそうでいきなり約五百万円の損失を出したそうです。それでもその後持ち直したのだからなお凄い。

2009年10月31日土曜日

資本主義はプロテスタントから始まったのか?

 現在の世界で主要な思想となっているのは言うまでもなく貨幣が中心となって世の中が形作られる資本主義ですが、この資本主義がいつどこで発生し、成立したかについて私の専門の社会学では十六世紀のヨーロッパ、それもキリスト教のプロテスタント集団からとされております。しかし私はこの説を信じるどころかむしろ間違っているとすら考えており、その理由について以下に解説します。

 この資本主義がプロテスタントから始まったという説は社会学を学ぶ者にとってそれこそ最初のいろはみたいなもので、はっきり言ってこの説を知らなければもぐりと言っても差し支えないほどの有名な学説です。それほどまでに有名なこの説を唱えたのは誰かというと政治学者、社会学者として有名なドイツのマックス・ヴェーバーで、彼はその著書の「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」(通称「プロ倫」)においてキリスト教のカトリック派に対して異議を唱えることで発生したプロテスタント派、それも一番初めのルター派ではなくフランスのジャン・カルヴァンに始まるカルヴァン派から資本主義の価値概念、精神が生まれたと主張しています。

 ではどうして資本主義がカルヴァン派から生まれたのかというと、ヴェーバーはカルヴァン派の持つ予定説が決定的な要因となったと主張しています。このカルヴァン派の予定説というのは人間は現世に生まれた時点で死後に神によって救済されるか否かがすでに決まっており、現世でどのような行動を取ってもその予定に変わりがないという説です。
 元々のカトリックや同じプロテスタントのルター派において死後に救済されるかどうかは程度の差こそあれ、現世で善行を積むかどうかによって決まるとされていました。逆を言えばこの世で悪い事をすると死後に裁きを受けるとされ、生前は神の教えどおりに善いことをしながら生活していくべきだと主張されていました。しかしカルヴァン派は救われる人間は生まれた時点でその後善行を積むように行動するようになっており、逆に裁かれる人間は悪い事をしでかすようにすでに運命付けられていると主張したのです。

 そのためカルヴァン派は自分たちが本当に救われる側の人間であるのであればきっと生前は豊かに暮らして円満に死んでいくはずだと考え、自分たちが救われる対象であることを自分で証明するかのようにして利殖や商売上の成功を追い求めるようになり、そのような思想が多数派を占めて一般化するようにして資本主義が成立したと、大まかに言ってヴェーバーは主張しました。

 こうしてみると確かに筋が通っているように見えるのですが、私がこのヴェーバーの説に疑問を持つのは本当にカルヴァン派から資本主義が生まれて世界に広がっていったのかという点です。具体的に言うと、カルヴァン派の誕生以前に資本主義はなかったのかということです。ここまで言えばもうわかるでしょうが、私はカルヴァン派が生まれた十六世紀以前にもすでに資本主義的性格を持った国家、集団があったと考えております。

 このヴェーバーの主張への反論は何も私だけでなく私の社会学の恩師も主張していたのですが、そもそもの話ヴェーバーの主張には「西欧から資本主義が始まった」という前提で成り立っています。確かに西欧の範囲内で見るのならばこのヴェーバーの説は正しいと私も考えるのですが視野を西欧から世界全体に広げてみると、それこそ東洋にある中国は一体どんなものかという話になってきます。

 というのも中国で十世紀に成立した宋においては貨幣経済が目覚しく発達しており、なんと当時の西欧が封建制による物納が主体の経済であったのに対し、宋ではすでに徴税方法が物納ではなく金納となっておりました。それこどころか傾き始めた国家の再建を行うにあたり王安石らが活躍した新法旧法論争において、大商人の独占を排すために小商人への低利での貸付を国家が行っていたなど、きわめて発達した流通経済体制をすでに敷いております。これが資本主義でなければ、一体なんなのかというほどです。
 ちなみに西欧で本格的に流通経済が成立しだしたのはナポレオン戦争以後だと言われております。また日本では江戸時代まで税金は物納で、明治になってようやく金納へと切り替えられました。

 また中国に限らず同じヨーロッパ圏内においても、十一世紀に起こった十字軍の遠征においてイタリアの都市国家に代表される地中海商人らが大きなスポンサーとなっていた事実も見落とせません。第四回十字軍に至っては彼ら商人の意向で本来身内であるはずのビザンツ帝国が攻撃されているんだし。
 その地中海商人、いやそれ以前からのヨーロッパにおける商人に着目するのならいわゆるユダヤの商人も忘れてはなりません。ユダヤ人は相当大昔から金融業を行っており、資本主義の歴史を語るのならばユダヤ人抜きには本来語れないのではないかと前々から私は考えております。

 このようにイタリアより西のヨーロッパ圏内に限るのならばヴェーバーの説に賛同するも、カルヴァン派から資本主義の概念がすべて生まれたという説に対しては私は真っ向から疑義を呈します。このヴェーバーの説は最近だと高校の世界史の教科書にも載せられているほどなのですが、社会学者も多分薄々間違いだって言うのは分かっているのだから、ヴェーバーには悪いけどこうした誤解をこれ以上広げないように活動するべきなのではないかと私は思います。

2009年10月30日金曜日

JAL再建案と企業年金の対処について

 このところは朝日新聞でも毎日一面を飾っておりますが、JALこと日本航空の再建議論について私の考えを紹介します。

 すでに各所で報じられているように日本航空は数年前に機体トラブルを連続して発生させたことから利用客離れを起こし、またかねてより全日空とのサービス競争でも大きく水を開けられていたことから売上げが大きく減少しており、各業界関係者から全国のサラリーマンにまで早晩破綻するであろうという見方が広がっていました。
 しかしそれに対して前政権与党である自民党はこれという対策を余りしてきませんでした。仮に日本航空が破綻した場合は日本の国内航空会社は全日空のほぼ寡占状態となるため、各評論家は現在の日本航空は経営上大きな問題を抱えてはいるものの絶対に潰さずに再建させなければという意見で一致していたにもかかわらず、自民党はお世辞にもこの問題の解決に積極的であったとはとても言えませんでした。そういう意味で政権交代によって民主党政権が誕生するやすぐにこの問題に手をつけてここまで議論を進めたというのは、まだ民主党と前原国土交通大臣を評価してもいいと思います。

 それでその再建案の中身ですが、どうやらかつてその負債額の大きさから潰すに潰す事の出来なかったダイエーを無理やり立ち直らせるために作られた産業再生機構入りすることがほぼ決まったようです。現在の日航にどのような経営的な問題がありこれからどのように再建していけばいいのかは私自身が航空行政に詳しくないのもあり正直な所あまりわからないのですが、目下の所大きく報道でクローズアップされているのは、日航の退職者に対する高額な企業年金です。

 かねてより日航は退職者に対する企業年金の額が同業他社と比べても非常に高額で、それが経営を強く圧迫させていると言われ続けておりました。その企業年金額が本日のフジテレビの朝のニュースにて具体的に比較されていたのですが、その報道によると全日空が平均月額9万円に対して日航は平均月額25万円でなんと16万円も差があるそうで、私の予想をはるかに超えた額でした。そりゃ経営もおかしくなるだろうよ。

 仮に日航が公的基金投入の上に産業再生機構入りしてもこの企業年金が維持されるのであれば、文字通り国民の税金がこの高額な企業年金に使われる事となります。さすがにそれはまずいだろうということでこれから煮詰められる再建案の中身にこの企業年金の減額案を盛り込もうと言われているのですが、いくつかの報道を見ていると実際に減額するとなると難しいのではという意見が各コメンテーターから聞かれます。
 何故難しいのかというとその企業年金は日航のOBが在職中に働いて稼いだ賃金の一部で、それを国の都合で減額するのは憲法に記載された財産権の侵害に当たるからだ、という風に意見がありました。

 しかし結論を言うと私は余計な議論なぞ必要なくとっとと減額してしかるべきだと思います。さすがに全額廃止までいくとやりすぎだと思いますが、現在の額はあまりにも高額過ぎており、仮に日航が倒産してしまえばそれら企業年金は全額吹っ飛ぶ事を考えると税金を使って維持するべきだとは思えません。もしこの減額を日航退職者が受け入れられないのであれば、多少過激すぎるかもしれませんがこの際日本航空は倒産させた方がまだマシかとすら私は思います。
 それこそ全日空と同じ水準の9万円にまで引き下げる事で退職者一人当たり16万円もの額が浮き、退職者5人で計80万円、これだけあれば月額20万円で新たに4人の従業員を雇える事を考えるとただでさえ職のない現代の若者が如何に追い詰められているのかが見えてきます。

 現在民主党や前原大臣はやはり先ほどの財産権の問題からこの企業年金の減額を行うために新たな法整備が必要だと主張していますが、この意見についてはやや疑問に感じる点があります。というのも過去に松下(現パナソニック)にて幸之助精神の破壊者と呼ばれた中村邦夫社長(現会長)時代にこの企業年金の減額を実行しているからです。この中村社長の決断に対して年金を受け取る側の松下のOBも黙っておらず訴訟まで起こしましたが、裁判所は当時瀕死だった松下においてこの経営判断は不当なものではないとして退けました。

 先にも述べましたが、現時点で日航は本来なら倒産しているはずの会社です。それほど危機的な経営状況にも関わらずあまりにも高額すぎる企業年金を維持するというのは明らかに道理が外れているのではということが、現時点における私の見方です。

  補足
 一つ書きそびれていたことで、今回私が槍玉に挙げた企業年金は各企業が独自に設けている年金で、中小企業の社員にはほぼ全く用意されておりません。そういったことも考慮して私は減額するべきと主張するわけです。

2009年10月28日水曜日

読者年齢層アンケートの結果

 本店の方で行っていた読者の年齢層を尋ねるアンケート期間が終わり、とうとう待ちに待った結果が出ました。早速その結果を以下に公開します。

・20歳未満 1 (2%)
・20~29歳 25 (54%)
・30~39歳 12 (26%)
・40~49歳 6 (13%)
・50~59歳 2 (4%)
・60歳以上 0 (0%)
 合計回答数:46名


 という具合で、書いてる私と同じ20代が最も多く、次いで30代が続く結果となりました。私はこのアンケートを開始した時の記事にも書いた通り比較的読者年齢層は高いだろうと思って40代が一番多いのではないかと踏んでおりましたが、その一方で回答するのは私の直接の友人ばかりではないかとも思っておりこの結果に対して「そりゃそうだろう」というような感想を持ちました。

 ただこの調査を終えてちょっと失敗だったかと思う点で、もう少し年齢層を細かく分けて置けばよかったかもと現在反省しております。このブログは私自身の体験からいろいろと社会の事、政治や経済についてちょっと深く勉強したいと思うような人向けにそれぞれの分野のキーワードなり用語、時事問題の解説を主なネタとしております。そのためメインのターゲット層というのは言うまでもなく現役の大学生で、多少なりともそれぞれの分野の内容に興味を持ってくれるような記事をいつも心がけて書いております。

 ですのでこの年齢層アンケートも、同じ二十代でも前半と後半で大きく読者の立場が変わることを考えるともっと細かくして聞いとけばよかったと後悔しているわけです。まぁ若い年齢層だけでなく、30代以上の方が43%にも昇ってくれたというのは非常に励みになりましたが。

 最後に今後の記事展開として、このところは時事問題ばかり取り上げておりますが初期のようにあまり時間の経過に左右されないような内容の記事をまた増やしていかないとこの頃感じております。現在連載中の「時間の概念」なんかはそのような記事で内容にも自信のある連載ですが、まず先に「北京留学記」を終えないといけないのでまだしばらくお休みしないといけません。時間さえあればまたあれこれ自分で調べた研究記事を書くことも出来ますし、親しい友人には漏らしていますが小説も本音では連載したいです。ただ余り手を広げるのもあれなので、ひとまずの所あまり勉強しないでも書ける、一番好評な歴史記事を中心に書いていくのが無難かもしれません。

宮中ダムの生態系について

取水中止の影響?サケ・アユ遡上が3倍に(読売新聞)

 このところニュースからの引用記事が増えており本音ではそろそろ控えたいと思っていましたが、この前八ツ場ダムのことも取り上げており、関連するニュースなので今日も同じく紹介記事になりました。

 上記にリンクを貼ったニュースの内容を簡単に説明すると、なんでもJR東日本の信濃川発電所が不正取水を犯したことから処分として水利権が取り消されこれまで水を貯めていた新潟県十日町市にある宮中ダムにて水の放流を行った所、このダム上流にてアユやサケといった川魚が川に大量に戻ってきたことが報じられています。
 私は以前に書いた八ツ場ダムの問題にて、ダムを作ると治水や電力といったメリット以上にその川の生態系を大きく崩すというデメリットの可能性に触れました。今回のこの記事はまさにそうした生態系へのダムのデメリットを理解するうえで、なかなかの好材料だと言えます。

 もちろん記事中でも触れられていますが生態系は非常に複雑な連関の上に成り立っているため、単純にダムの放流が行われたから川魚が戻ってきたと現段階でつなげるには早計で、今後しばらく様子を見る必要はあるでしょう。しかし普通に考えるなら自然の中にあんなダムのような巨大な構造物が存在するのは明らかに不釣合いで、なにかしら周りに影響を与えているに違いないでしょう。

 ではどのような治水が一番望ましいのかといえば、大分以前にも一回だけ取り上げましたが中国の都江堰信玄堤がまさに白眉とも言える存在でしょう。どちらも自然にある石や砂を用いる事で数百年以上前(都江堰に至っては二千年以上前)に作られた灌漑設備ながら、今に至るまで現地での水害を防ぐのに大きな役割を果たしております。ただ両者ともオーバーテクノロジーとでも言うべきか、現代においても完全にそのメカニズムが建設方法が解明されていないとも言われております。可能であるならばこれら自然物を用いた設備の建設方法を解明し、生態系に大きな影響を与えかねないダムの代わりとして採用していくことが望ましいかと私は思います。

2009年10月27日火曜日

鳩山首相の所信表明に対する反応

 前回総選挙が終わって一ヶ月が経ち、とうとう民主党を与党に迎えての臨時国会が昨日に開会されました。開会に当たり鳩山首相が恒例の所信表明演説を行いましたが、さすがに全文をチェックする時間まではないので報道の範囲内で語ると、従来からの自分の主張である友愛政治と共に脱官僚を掲げた民主党のマニフェストに沿った内容が長時間に渡って演説されたようです。

 私は元々この所信表明演説はあくまでパフォーマンスだと思っているのでそれほど重要視しておらず多分何もなければこんなわざわざ記事にするまでもなくスルーしていたのですが、この鳩山首相の演説に対する野党となった自民党の反応に対していくつか思うところがあったので取り上げる事にしました。

鳩山首相:所信表明 「ナチスのような印象」 自民・谷垣総裁、拍手皮肉る(毎日新聞)

 今国会における最大野党自民党の党首である谷垣氏はこの鳩山首相の演説に対し、上記リンクの記事にあるように演説の途中にて民主党の一年生議員らから拍手があった事をヒトラーの演説にヒトラーユーゲントが拍手をしているようだと評しました。
 結論から言えば私はこの谷垣氏の発言は如何なものかと思います。他愛もない同じ与党議員からの拍手をよりによってナチスと比較するなどいくらなんでも大袈裟で、あからさまに民主党を悪く言おうとするその態度にはほとほと呆れました。第一、これまでの自民党出身の首相の所信表明演説においてもこのような拍手は毎回起こっており、特に2005年の郵政選挙後に大勝した直後の小泉元首相の際には今回以上に一年生議員がよいしょをしていたと今朝のテレビ朝日のコメンテーターにも言われております。

 別に自民党の肩を持つわけではありませんが、もし本当に政権を奪還しようというつもりならこのようなくだらない発言は今後よして、批判するならするでもっと核心をえぐるような批判だけをするように心がけるべきでしょう。少なくとも今回の谷垣氏の発言はただ民主党のことを悪く言おうとする意識だけしか感じられず、皮肉な話ですがこの発言を聞いて私はこれから自民党は第二の野党民主党に成り下がるのではないかと感じました。

 大体福田政権になってからはマシになっていきましたが、それこそ小泉政権時代においては当時の民主党も与党の言う事やる事すべてをあげつらっては何かにつけて悪い例えをつけて批判しているだけで建設的な対案や意見がほとんど出されず、他の人までは分かりませんが私としては全く評価の出来ない政党でありました。もし今回の谷垣氏が行ったような批判をこれからも自民党が続けるというのであれば、自民党はその時の野党民主党と同じく今後しばらく野党に居続けることになるだろうと思います。そしたらそしたでこれからの民主党も、小泉政権以前のバラマキだけを行う自民党になってたりしたらそれはそれで困るのですが。

 また今回の所信表明演説では、同じく自民党からの激しい野次も批判的に報道されております。軽くニュースでの中継を私も眺めましたがそれこそ演説の内容が聞こえないほどの野次が自民党議員から為されており、これまたテレビ朝日のコメンテーターによると、総理経験者である大物議員が特にひどかったそうです。

小泉進次郎氏、自民党のヤジに苦言…所信表明演説(スポーツ報知)

 この野次に対して身内の自民党議員からも上記のニュースにあるように批判がされており、小泉進次郎議員が相手の言う内容をしっかり聞いて検証すべきだと苦言を呈した事が報じられております。なお小泉議員は鳩山氏の演説に対し、「言葉遣いは平易で分かりやすかったが、言葉の先にあるビジョンが分からなかった」と評し、私から見てなかなか鋭い事を述べている気がします。

 ちなみにもし私が仮に今回の鳩山氏の演説に対して批判をするのであれば、あれだけ長々語れるのであれば自身の故人献金問題についてももっとしっかり語るべきだと皮肉を言います。

社説:鳩山首相の所信表明…「友愛政治」実現の道筋を(毎日新聞)

 この点について毎日の社説もきちんと突いており、上記の社説はそこそこ現在の政治状況を見る上で参考するのにいい内容かと思われます。
 鳩山首相の故人献金問題は私の当初の予想通り、どうも鳩山家の遺産相続問題の線が段々と強まってきました。はっきり言ってこの問題は近年稀に見る大型偽装事件で西松建設の問題など比較にならないほど違法性の高い事件ではないかと私は見ており、検察としても恐らく年末までにはなにかしら動きを見せるべきでしょう。そうなると民主党は早くも「ポスト鳩山」を考えなければならないのですが、この点は現時点ではまだ未知数といったところでしょうか。なんとなく、菅氏は鳩山氏に嫌われているような感じもするし。