このところは朝日新聞でも毎日一面を飾っておりますが、JALこと日本航空の再建議論について私の考えを紹介します。
すでに各所で報じられているように日本航空は数年前に機体トラブルを連続して発生させたことから利用客離れを起こし、またかねてより全日空とのサービス競争でも大きく水を開けられていたことから売上げが大きく減少しており、各業界関係者から全国のサラリーマンにまで早晩破綻するであろうという見方が広がっていました。
しかしそれに対して前政権与党である自民党はこれという対策を余りしてきませんでした。仮に日本航空が破綻した場合は日本の国内航空会社は全日空のほぼ寡占状態となるため、各評論家は現在の日本航空は経営上大きな問題を抱えてはいるものの絶対に潰さずに再建させなければという意見で一致していたにもかかわらず、自民党はお世辞にもこの問題の解決に積極的であったとはとても言えませんでした。そういう意味で政権交代によって民主党政権が誕生するやすぐにこの問題に手をつけてここまで議論を進めたというのは、まだ民主党と前原国土交通大臣を評価してもいいと思います。
それでその再建案の中身ですが、どうやらかつてその負債額の大きさから潰すに潰す事の出来なかったダイエーを無理やり立ち直らせるために作られた産業再生機構入りすることがほぼ決まったようです。現在の日航にどのような経営的な問題がありこれからどのように再建していけばいいのかは私自身が航空行政に詳しくないのもあり正直な所あまりわからないのですが、目下の所大きく報道でクローズアップされているのは、日航の退職者に対する高額な企業年金です。
かねてより日航は退職者に対する企業年金の額が同業他社と比べても非常に高額で、それが経営を強く圧迫させていると言われ続けておりました。その企業年金額が本日のフジテレビの朝のニュースにて具体的に比較されていたのですが、その報道によると全日空が平均月額9万円に対して日航は平均月額25万円でなんと16万円も差があるそうで、私の予想をはるかに超えた額でした。そりゃ経営もおかしくなるだろうよ。
仮に日航が公的基金投入の上に産業再生機構入りしてもこの企業年金が維持されるのであれば、文字通り国民の税金がこの高額な企業年金に使われる事となります。さすがにそれはまずいだろうということでこれから煮詰められる再建案の中身にこの企業年金の減額案を盛り込もうと言われているのですが、いくつかの報道を見ていると実際に減額するとなると難しいのではという意見が各コメンテーターから聞かれます。
何故難しいのかというとその企業年金は日航のOBが在職中に働いて稼いだ賃金の一部で、それを国の都合で減額するのは憲法に記載された財産権の侵害に当たるからだ、という風に意見がありました。
しかし結論を言うと私は余計な議論なぞ必要なくとっとと減額してしかるべきだと思います。さすがに全額廃止までいくとやりすぎだと思いますが、現在の額はあまりにも高額過ぎており、仮に日航が倒産してしまえばそれら企業年金は全額吹っ飛ぶ事を考えると税金を使って維持するべきだとは思えません。もしこの減額を日航退職者が受け入れられないのであれば、多少過激すぎるかもしれませんがこの際日本航空は倒産させた方がまだマシかとすら私は思います。
それこそ全日空と同じ水準の9万円にまで引き下げる事で退職者一人当たり16万円もの額が浮き、退職者5人で計80万円、これだけあれば月額20万円で新たに4人の従業員を雇える事を考えるとただでさえ職のない現代の若者が如何に追い詰められているのかが見えてきます。
現在民主党や前原大臣はやはり先ほどの財産権の問題からこの企業年金の減額を行うために新たな法整備が必要だと主張していますが、この意見についてはやや疑問に感じる点があります。というのも過去に松下(現パナソニック)にて幸之助精神の破壊者と呼ばれた中村邦夫社長(現会長)時代にこの企業年金の減額を実行しているからです。この中村社長の決断に対して年金を受け取る側の松下のOBも黙っておらず訴訟まで起こしましたが、裁判所は当時瀕死だった松下においてこの経営判断は不当なものではないとして退けました。
先にも述べましたが、現時点で日航は本来なら倒産しているはずの会社です。それほど危機的な経営状況にも関わらずあまりにも高額すぎる企業年金を維持するというのは明らかに道理が外れているのではということが、現時点における私の見方です。
補足
一つ書きそびれていたことで、今回私が槍玉に挙げた企業年金は各企業が独自に設けている年金で、中小企業の社員にはほぼ全く用意されておりません。そういったことも考慮して私は減額するべきと主張するわけです。
2 件のコメント:
花園さんこんにちは
そうですね、OBを含め日航関係者は本来は倒産しているという事実を認識していただかねばなりませんね。
私も倒産を経験していますが、それはそれは悲惨な物ですよ。
会社の存続問題は確かに経営陣の責任は多大であるのですが、従業員にも責任が無い訳では無いのではと私は考えます。
これはどの会社でも言えますが優秀な人材の育成と重用を怠ったのが原因だはないでしょうかね。
適材適所と言う良い言葉がありますけど、これが真に行われていればこのような事態は起こり得なかったのではと考えます。
ですがそれは理想論で実際には難しいのですね。
namisenさん、貴重なご意見ありがとうございます。
倒産を経験されているとは、すごい経験ですね。私はさすがにそういった経験はありませんが、体験者らからの話を伝え聞く限りだとその惨めさには本当に堪えないそうですね。
namisenさんもおっしゃられるように、それだけに惨めな破綻を引き起こしたのは経営陣で、それによって一般従業員の方の人生が狂わされると考えると非常に複雑な気持ちになります。今日のニュースによると、冬のボーナスも全額カットとなるそうで、住宅ローンを組んでいる方となると大変でしょう。
まだまだ日航には構造的な問題が数多いといわれていますので、今後もこの問題を追っていきたいと思います。
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