前回の記事にて私は現在の日系人の移民(=出稼ぎ)受け入れには大きな問題があるとして、すぐにでも現法体制を改正するべきだと主張しましたが、その最大の要因ともいえるのが今回の主題となる「犯罪人引渡し条約」です。
・犯罪人引渡し条約
この条約は読んで字の如く、それぞれの国同士で国外逃亡犯を捕縛して引き渡すという条約のことです。何故この犯罪引渡し条約が問題なのかというと、現在の日本の外国人登録者数で第三位の人口を誇るまでに至ったブラジルとの間に日本はこの条約を結んでおらず、目下の所、日系ブラジル人が日本で犯罪を犯したとしても日本の警察に捕まる前にブラジル本国に帰国したら刑罰を課せない状態にあります。
・ブラジル人「以前から盗み」…名古屋ひき逃げ(読売新聞)
上記のニュースは先月に三人もの人間が亡くなった名古屋市で起きたひき逃げ事件のニュースですが、リンク先に書かれているようにこの事件の犯人は出稼ぎに来ていた日系ブラジル人でした。彼らはこの事件が起こる以前から常習的にカーナビなどを窃盗しており今回ひき逃げ事件を起こしたことでようやく捕まったわけですが、仮に警察に捕まる前に本国に高飛びされていればカーナビの窃盗容疑はもとより、ひき逃げの容疑についても追求できなかったでしょう。
実際にそのように高飛びされたという例はこれまでにも報告されており、日系ブラジル人によるとされるひき逃げによって実際に人が亡くなっているものの、その容疑者がすでにブラジルに帰国しているために罪に問えないという、亡くなった方の親類によるドキュメンタリー番組を私も見たことがあります。
そもそもこの犯罪人引渡し条約、今回調べてみて私も驚愕したのですがなんと日本は世界的にもこの条約を交わしている国数が非常に少ない国で、現在韓国とアメリカのたったの二ヶ国とだけしか結んでおりません。参考までに他国の条約締結国数をここで紹介すると、
・フランス:96ヶ国
・イギリス:115ヶ国
・アメリカ:69ヶ国
・韓国:25ヶ国
日本が条約を結んでいるアメリカと韓国はいろんな国と結んでいるのに、日本だけがここまで極端に少ないというのは素人が見たって明らかに異常でしょう。逆を言えば日本人は海外で犯罪を犯したとしても日本に逃げ帰れさえすれば罪に問われないということになり、そういった事情があるからこそ国連から東南アジアにおける日本人による(主に暴力団)人身売買に対して取締りがなされていないと注意されているのかもしれません。
私は移民を受け入れるに当たって、引き受け元の国とこの犯罪人引渡し条約を結んでいるということが最低条件として必要だと考えております。大半の移民がそうでないにしろ、やはり一人や二人は犯罪を犯す可能性のある人間も混ざって入ってくるのを防ぐことは出来ず、仮にそうした人間が国内で犯罪を犯して本国に逃げ帰ったとしても刑罰を課せる体制でなければ日本人との間に不要な不信感を作りかねません。
ただこの犯罪人引渡し条約を結ぶにあたり一つだけ厄介な国があり、それはどこかというと何を隠そう中国です。現在の日本における外国人登録者人口で中国人は韓国、北朝鮮人を追い抜き一位にもなりましたが、移民を受け入れるに当たって犯罪人引渡し条約が最低限必要だと説いておきながら、自他共に新中派と認める私でも中国とはこの条約を結ぶべきではないと考えております。
というのも現中国共産党政府は外交において日本だろうとアメリカだろうとどこにでも強気に自国のルールを迫る性格があり、仮にこの犯罪人引渡し条約を結ぼうものなら、本来この条約では政治犯は例外として引渡し対象とされないのですが、恐らく中国は中国にとって煙たい要人が来日するたびにこの条約を盾に引渡しを要求してくる可能性が高いでしょう。それこそ今日オバマ大統領と会談したダライラマ十四世氏などはその筆頭で、下手すれば台湾元総統の李登輝氏にすら引渡しを要求するかもしれません。
また中国は日本以上に刑罰に厳しい国で、麻薬の所持だけでも死刑で執行も判決が下りてすぐに為されるため、この点についても注意、検討する必要があります。
ただ日中に跨る窃盗団などの摘発協力であれば中国政府、警察としても願ってもない話でしょうし、これはこの連載の後の方で解説しますが中国には日本が移民として受け入れるのに魅力的な人材が数多くいるため、麻薬、窃盗、殺人といった犯罪に限って日中警察で捜査協力、情報の共有化を進めた上で移民の一部受け入れを実施するべきだと私は考えております。
最後にこの犯罪人引渡し条約についてですが、仮に日本が締結を求めても相手国がそれを受け入れないのではないかという懸念があります。まず欧米諸国からしたら死刑制度のある日本は敬遠されるでしょうし、また日本の警察や検察は足利事件の菅谷さんの例で明らかになったように強引な取調べをする傾向があり、その上代用刑事施設、通称「代用監獄」の存在など本当に法治国家かと疑うような制度や施設が盛りだくさんです。仮にこのような国から引渡し条約を結んでくれと言われても、私だったら遠慮してしまいます。
よく中国の裁判や取調べには問題が多いと日本のメディアは報じていますが、確かに中国の制度よりは幾分マシなものの、日本の司法制度もいろいろと問題が多いということを認識しておくべきかと思います。
おまけ
この前上海に行った時に友人に、中国には暴走族はいないのかと尋ねた所、
「いないよ。そんなことしたらみんな警察に殺されるもん」
といわれて、改めて中国警察の強さを認識させられました。実際に旅行するに当たって、中国は非常に治安がいいところです。
ここは日々のニュースや事件に対して、解説なり私の意見を紹介するブログです。主に扱うのは政治ニュースや社会問題などで、私の意見に対して思うことがあれば、コメント欄にそれを残していただければ幸いです。
2010年2月18日木曜日
2010年2月17日水曜日
移民議論の道標~その四、日系人移民について
この連載の二回目、「日本の現状」で移民にまつわる現在の日本の様々なデータを紹介しましたが、その中の特筆すべき存在として私はブラジル人の増加を挙げていました。このブラジル人、というより正しくは日系ブラジル人たちですが、彼らは経済界からの強い要望によって1990年に改正された入国管理法によって従来と比べ就労ビザが取得しやすくなったことから年々増加し、現在の日本において外国人人口の第三位につけるまで来ております。
そもそも何故日系人が就労ビザが取りやすくなるよう入管法が改正されたかですが、当時の時代背景と前回「国籍の決定条件」の記事にて解説した血統主義と出生地主義の概念が深く影響しております。
1990年当時の日本は言わずもがなのバブル景気真っ只中ということから経済も絶好調の頃で、企業はどこも人手不足で年々人件費も高騰を続けておりました。そのため経済界は政府に対して人件費が安価な外国人労働者の受け入れを当時に強く迫っていたのですが、政府としては不用意に移民を受け入れを始めて一挙に大量の外国人労働者が流入する警戒感を持っており、妥協策として日本人の子孫である日系人に限って就労ビザの発行を認めることにしたのです。
何故日系人に限って政府は受け入れを始めたのかというと、私の見方だとまず第一に総受け入れ人数の規制があった上で、日系人であれば日本の文化や生活に慣れやすいだろうという目算があったのだと思います。もっともこれはあちこちの社会学の論文にて報告されていますが、両親がその国の出身者である移民二世であっても成人後に来日するのであれば適応するのは非常に難しいそうです。逆に成人前の14、5歳までに来れば適応する可能性は高いそうですが。
この日系人に限るという条件は言うまでもなく血統主義に基づく政策ですが、こういった手法は何も日本に限らず遠くドイツでも同じようなことをしていると以前に聞いた事があります。ちょっと耳に挟んだ程度ですが、ドイツでも近年に移民の一部受け入れを始めた際、その条件としてかつて多くのドイツ人が移民として渡ったどっかの国の一部地域出身者に限って受け入れたそうで、日本と同じく血統主義に基づいているそうです。
話は戻って日本の日系人移民の話ですが、この受け入れを始めたことから戦前戦後にかけてたくさんの日本人が移民したブラジルやペルーの日系二世、三世らが日本に移民、国籍が得られず就労ビザだけなので正確には出稼ぎにやってくるようになり、受け入れ開始から二十年経った今に至ると群馬県や静岡県、愛知県の一部地域で大きなコミュニティを構えるほど一般化して行きました。
何気にこの辺が非常に重要なのですが、確かに日本全国の人口で比べると中国人、韓国人より日系ブラジル人の人口は一段低くなりますが、日系ブラジル人は自動車や繊維産業の工場がある地域に固まって居住する傾向があるため、地域ごとの人口割合で見ると前回に紹介した図録にあるように多くの都市で他の外国人を抑えてトップに立っているだけでなく、中には全住人の10%以上を占めている都市もあります。そのため現在民主党が国会に提出しようとしている外国人の地方参政権付与案に含まれているかまではわかりませんが(多分含まれない)、仮に日系ブラジル人にも付与されるとしたら一番力を持つ集団となる可能性が高いです。それがいいかどうかはまだわかりませんが、すでに大きなコミュニティを抱える集団ということもあってまるきりのけ者にするのはするで問題があり、地方参政権議論で彼らを無視するべきではないというのが私のかねてからの持論です。
さてそんな日系人移民ですが、いきなりですが私は早期に現在彼らを受け入れている制度を改正する必要があるかと思います。それは何故かというと彼らを受け入れるに当たってあまりにも現在の制度には穴が多く、そうした問題点を改善していった上で受け入れを行わねばやってくる日系人、そして日本人にとってもよくないからだと思うからです。
これは日系人に限らず他の外国人にも当てはまりますが、特にそれを強く感じるのは犯罪についてです。そういうわけで次回は、恐らくこの連載でも一、二を争う鬼門になるであろう外国人犯罪についていろいろ書いていこうと思います。
そもそも何故日系人が就労ビザが取りやすくなるよう入管法が改正されたかですが、当時の時代背景と前回「国籍の決定条件」の記事にて解説した血統主義と出生地主義の概念が深く影響しております。
1990年当時の日本は言わずもがなのバブル景気真っ只中ということから経済も絶好調の頃で、企業はどこも人手不足で年々人件費も高騰を続けておりました。そのため経済界は政府に対して人件費が安価な外国人労働者の受け入れを当時に強く迫っていたのですが、政府としては不用意に移民を受け入れを始めて一挙に大量の外国人労働者が流入する警戒感を持っており、妥協策として日本人の子孫である日系人に限って就労ビザの発行を認めることにしたのです。
何故日系人に限って政府は受け入れを始めたのかというと、私の見方だとまず第一に総受け入れ人数の規制があった上で、日系人であれば日本の文化や生活に慣れやすいだろうという目算があったのだと思います。もっともこれはあちこちの社会学の論文にて報告されていますが、両親がその国の出身者である移民二世であっても成人後に来日するのであれば適応するのは非常に難しいそうです。逆に成人前の14、5歳までに来れば適応する可能性は高いそうですが。
この日系人に限るという条件は言うまでもなく血統主義に基づく政策ですが、こういった手法は何も日本に限らず遠くドイツでも同じようなことをしていると以前に聞いた事があります。ちょっと耳に挟んだ程度ですが、ドイツでも近年に移民の一部受け入れを始めた際、その条件としてかつて多くのドイツ人が移民として渡ったどっかの国の一部地域出身者に限って受け入れたそうで、日本と同じく血統主義に基づいているそうです。
話は戻って日本の日系人移民の話ですが、この受け入れを始めたことから戦前戦後にかけてたくさんの日本人が移民したブラジルやペルーの日系二世、三世らが日本に移民、国籍が得られず就労ビザだけなので正確には出稼ぎにやってくるようになり、受け入れ開始から二十年経った今に至ると群馬県や静岡県、愛知県の一部地域で大きなコミュニティを構えるほど一般化して行きました。
何気にこの辺が非常に重要なのですが、確かに日本全国の人口で比べると中国人、韓国人より日系ブラジル人の人口は一段低くなりますが、日系ブラジル人は自動車や繊維産業の工場がある地域に固まって居住する傾向があるため、地域ごとの人口割合で見ると前回に紹介した図録にあるように多くの都市で他の外国人を抑えてトップに立っているだけでなく、中には全住人の10%以上を占めている都市もあります。そのため現在民主党が国会に提出しようとしている外国人の地方参政権付与案に含まれているかまではわかりませんが(多分含まれない)、仮に日系ブラジル人にも付与されるとしたら一番力を持つ集団となる可能性が高いです。それがいいかどうかはまだわかりませんが、すでに大きなコミュニティを抱える集団ということもあってまるきりのけ者にするのはするで問題があり、地方参政権議論で彼らを無視するべきではないというのが私のかねてからの持論です。
さてそんな日系人移民ですが、いきなりですが私は早期に現在彼らを受け入れている制度を改正する必要があるかと思います。それは何故かというと彼らを受け入れるに当たってあまりにも現在の制度には穴が多く、そうした問題点を改善していった上で受け入れを行わねばやってくる日系人、そして日本人にとってもよくないからだと思うからです。
これは日系人に限らず他の外国人にも当てはまりますが、特にそれを強く感じるのは犯罪についてです。そういうわけで次回は、恐らくこの連載でも一、二を争う鬼門になるであろう外国人犯罪についていろいろ書いていこうと思います。
2010年2月16日火曜日
鳩山、小沢資金疑惑の残したもの
ちょっと息抜きとばかりに政治系の短い記事を一本書いておきます。
さて民主党は去年から続く鳩山首相の故人献金疑惑(脱税)、小沢幹事長の裏金疑惑と、事実上の民主党2トップの金にまつわる疑惑の紛糾から今年は始まりましたが、各世論調査からも明らかな通りに国民が彼らの疑惑に対する説明に納得していないもののこれらの問題は段々とうやむやになってきて、小沢氏の問題については検察も起訴を見送るなど投げ出す結果となりました。
彼らの疑惑について各メディアは検察発表を鵜呑みにして余計なものも含めて逐一報道しておりましたが、この問題、というよりこの問題の結末についてきちんと掘り下げたメディアはほとんどいなかった気がします。
あまり長々前置きするものでもないのでもう結論を書くと、今回のこの鳩山、小沢両氏の政治団体における資金疑惑が残した負の遺産とも言うべきものは、問題が発覚したとしても秘書の行ったこととすれば政治家本人は責任を免れるということにあるのではないかと私は思います。
両氏とも報道や捜査によって明らかとなった疑惑に対し、チンパンジー(何故か福田元首相の顔がよぎった)が見たって筋の通っていない説明をした上で、「秘書が勝手にやったことだ」とまとめており、しかもそのわけのわからない説明によって実際にこれらの疑惑はうやむやになりつつあります。
言ってしまえば仮に政治家本人が脱税なり裏金収賄なりを率先して行っていたとしても、これからはそれらの問題が発覚しても秘書のせいにすればどうとでも言い逃れが出来るということを今回証明してしまったようなものです。もし今回のようなことがまかり通るのであれば、かねてからザル法と言われてきた政治資金規正法はザル法を通り越して有名無実と化しかねません。
私も以前はあまりに細かすぎてもと思ってそれほど賛成ではなかったのですが、やはりかつて鳩山首相が国会にて主張していたように、「秘書の責任は政治家本人の責任だ」とばかりに、今後は秘書が勝手にやっていたとしても政治家本人にも無条件で監督責任が課されるように政治資金規正法を改正する必要があるかと思います。
さて民主党は去年から続く鳩山首相の故人献金疑惑(脱税)、小沢幹事長の裏金疑惑と、事実上の民主党2トップの金にまつわる疑惑の紛糾から今年は始まりましたが、各世論調査からも明らかな通りに国民が彼らの疑惑に対する説明に納得していないもののこれらの問題は段々とうやむやになってきて、小沢氏の問題については検察も起訴を見送るなど投げ出す結果となりました。
彼らの疑惑について各メディアは検察発表を鵜呑みにして余計なものも含めて逐一報道しておりましたが、この問題、というよりこの問題の結末についてきちんと掘り下げたメディアはほとんどいなかった気がします。
あまり長々前置きするものでもないのでもう結論を書くと、今回のこの鳩山、小沢両氏の政治団体における資金疑惑が残した負の遺産とも言うべきものは、問題が発覚したとしても秘書の行ったこととすれば政治家本人は責任を免れるということにあるのではないかと私は思います。
両氏とも報道や捜査によって明らかとなった疑惑に対し、チンパンジー(何故か福田元首相の顔がよぎった)が見たって筋の通っていない説明をした上で、「秘書が勝手にやったことだ」とまとめており、しかもそのわけのわからない説明によって実際にこれらの疑惑はうやむやになりつつあります。
言ってしまえば仮に政治家本人が脱税なり裏金収賄なりを率先して行っていたとしても、これからはそれらの問題が発覚しても秘書のせいにすればどうとでも言い逃れが出来るということを今回証明してしまったようなものです。もし今回のようなことがまかり通るのであれば、かねてからザル法と言われてきた政治資金規正法はザル法を通り越して有名無実と化しかねません。
私も以前はあまりに細かすぎてもと思ってそれほど賛成ではなかったのですが、やはりかつて鳩山首相が国会にて主張していたように、「秘書の責任は政治家本人の責任だ」とばかりに、今後は秘書が勝手にやっていたとしても政治家本人にも無条件で監督責任が課されるように政治資金規正法を改正する必要があるかと思います。
2010年2月15日月曜日
移民議論の道標~その三、国籍の決定条件
なかなか前置きから抜け出せずにいますが、このあたりは移民を考える上で決して外してはならない非常に重要なところなので前もって解説をしておきます。
さて一口に「移民」という言葉の定義を出すとしたら単純に、「国籍の違う人間が外国で定住する、もしくは働く」といったところでしょう。この定義の中に出てくる「国籍」という条件が移民を考える上で非常に大きな要素になることは疑いもないのですが、この国籍がどのように決まるか、またそれがどのように世界で扱われているかという点について意外と知らない人が多いのではないかと思います。
まず日本人が見落としやすい事実として、グローバル化の中で海外ではすでに二重国籍がそれほど珍しくなくなってきております。二重国籍とはその言葉の通りに異なる複数の国の国籍を同時に持つということで、これを認めている代表的な国は言わずと知れたアメリカです。
現在の日本では両親が日本人であるもののアメリカで生まれた人間については日米の二重国籍を認めていますが、成人後には日本、もしくはアメリカのどちらかを自分の国籍として選ばせており、基本的には日本単独の戸籍は日本人にしか認めておりません。
ここで早速出てきましたが国籍は出生時に決まるのですが決め方には主に二種類あり、それぞれを「血統主義」、「出生地主義」と呼んでおります。
前者の血統主義は両親、もしくは父親か母親のどちらかがその該当する国の国籍を有している場合、その子供にも国籍が認められるという考え方で、現在の日本の制度はこの血統主義に基づいております。それに対して後者の出生地主義は両親がどこぞの誰であれ、その国の領土で生まれた子はその国の国籍が認められるという考え方で、これなんかは先ほどの例に出てきたアメリカやブラジルといった国々です。
そのため一時期流行っていて多分今でも続いているでしょうが、日本人の両親がハワイで子供を出産すると先ほどの二重国籍扱いとなり、将来的に日本国籍を維持するのであればアメリカ国籍を放棄しなければならないのですが、それまでであれば両国の国民が持つ権利を自由に行使できる立場になるのです。まぁうまい話には必ず落とし穴があるのが決まりで、権利を得られる代わりに義務も課されることとなるのでアメリカで徴兵が行われたら従わなくちゃいけなくなるというわけですが。
この国籍の決定条件がどのように移民に影響を与えるのかですが、仮に出生地主義を採用している国で移民が行われた場合、その国に乗り込んできた移民一世は外国籍のままですが日本で働きながら子供(移民二世)を生むとその子供は移民先の国籍が得られることとなります。またこの場合、子供がその国の国籍が得られるのに親が外国籍のままというのはあんまりだということで、子供を生んだ場合は親にも国籍が認められる国もあります。
しかしこれが血統主義である場合、たとえどれだけ長い期間移民先の国で働いたとしても移民一世はおろか、移民先の国で生まれ育って両親の母国に一度も行ったことがない移民二世も国籍が得られるわけでなく、母国が出生地主義を採用している場合には下手すりゃ無国籍扱いになってしまう可能性すらあります。
そのため現在の日本なんかが典型的ですが、血統主義国では移民というよりも出稼ぎの受け入れという形で外国人労働者を雇い入れることが多くなります。もちろんどの方式を採用するかはそれぞれの国の自由ですが、フランスのように条件付で出生地主義を採用している国と比べると現状の日本は少子化に対応した移民政策ではないということがわかってきます。
こういったところが移民議論の大きなキーポイントとなるのですが、単純に短期の出稼ぎ外国人を大量に受け入れるか、少子化の是正も踏まえてそのまま日本に根付いてくれるような外国人を受け入れるのか、その目的によってこの国籍条件は再考する必要が出てきます。
ただ面白いことに、日本とドイツは血統主義を採用しつつ移民を受け入れるという政策を続けております。ここまで言えばわかるかと思いますが日本の場合それは日系ブラジル人移民のことで、明日にはこの件についてあれこれ解説します。
さて一口に「移民」という言葉の定義を出すとしたら単純に、「国籍の違う人間が外国で定住する、もしくは働く」といったところでしょう。この定義の中に出てくる「国籍」という条件が移民を考える上で非常に大きな要素になることは疑いもないのですが、この国籍がどのように決まるか、またそれがどのように世界で扱われているかという点について意外と知らない人が多いのではないかと思います。
まず日本人が見落としやすい事実として、グローバル化の中で海外ではすでに二重国籍がそれほど珍しくなくなってきております。二重国籍とはその言葉の通りに異なる複数の国の国籍を同時に持つということで、これを認めている代表的な国は言わずと知れたアメリカです。
現在の日本では両親が日本人であるもののアメリカで生まれた人間については日米の二重国籍を認めていますが、成人後には日本、もしくはアメリカのどちらかを自分の国籍として選ばせており、基本的には日本単独の戸籍は日本人にしか認めておりません。
ここで早速出てきましたが国籍は出生時に決まるのですが決め方には主に二種類あり、それぞれを「血統主義」、「出生地主義」と呼んでおります。
前者の血統主義は両親、もしくは父親か母親のどちらかがその該当する国の国籍を有している場合、その子供にも国籍が認められるという考え方で、現在の日本の制度はこの血統主義に基づいております。それに対して後者の出生地主義は両親がどこぞの誰であれ、その国の領土で生まれた子はその国の国籍が認められるという考え方で、これなんかは先ほどの例に出てきたアメリカやブラジルといった国々です。
そのため一時期流行っていて多分今でも続いているでしょうが、日本人の両親がハワイで子供を出産すると先ほどの二重国籍扱いとなり、将来的に日本国籍を維持するのであればアメリカ国籍を放棄しなければならないのですが、それまでであれば両国の国民が持つ権利を自由に行使できる立場になるのです。まぁうまい話には必ず落とし穴があるのが決まりで、権利を得られる代わりに義務も課されることとなるのでアメリカで徴兵が行われたら従わなくちゃいけなくなるというわけですが。
この国籍の決定条件がどのように移民に影響を与えるのかですが、仮に出生地主義を採用している国で移民が行われた場合、その国に乗り込んできた移民一世は外国籍のままですが日本で働きながら子供(移民二世)を生むとその子供は移民先の国籍が得られることとなります。またこの場合、子供がその国の国籍が得られるのに親が外国籍のままというのはあんまりだということで、子供を生んだ場合は親にも国籍が認められる国もあります。
しかしこれが血統主義である場合、たとえどれだけ長い期間移民先の国で働いたとしても移民一世はおろか、移民先の国で生まれ育って両親の母国に一度も行ったことがない移民二世も国籍が得られるわけでなく、母国が出生地主義を採用している場合には下手すりゃ無国籍扱いになってしまう可能性すらあります。
そのため現在の日本なんかが典型的ですが、血統主義国では移民というよりも出稼ぎの受け入れという形で外国人労働者を雇い入れることが多くなります。もちろんどの方式を採用するかはそれぞれの国の自由ですが、フランスのように条件付で出生地主義を採用している国と比べると現状の日本は少子化に対応した移民政策ではないということがわかってきます。
こういったところが移民議論の大きなキーポイントとなるのですが、単純に短期の出稼ぎ外国人を大量に受け入れるか、少子化の是正も踏まえてそのまま日本に根付いてくれるような外国人を受け入れるのか、その目的によってこの国籍条件は再考する必要が出てきます。
ただ面白いことに、日本とドイツは血統主義を採用しつつ移民を受け入れるという政策を続けております。ここまで言えばわかるかと思いますが日本の場合それは日系ブラジル人移民のことで、明日にはこの件についてあれこれ解説します。
2010年2月14日日曜日
移民議論の道標~その二、日本の現状
昨日はなにかに疲れていたのか文字通り半日も寝ていてブログもサボってしまいました。確かに金曜日は夜更かしして「囚人へのペルエムフル」を夜中の三時までやってましたけど、昼食、夕食後にそれぞれ二時間近く寝ているのに夜十時に布団に入るなんて自分で「小学生かよ……」と突っ込むほど終始眠かったです。
それはさておき早速始めたこの移民についての連載ですが、まずは手始めに現在の日本における外国人を取り巻く現状について各データをおさらいしておこうと思います。最近こういう愚痴が増えてきましたが、こういうデータを取り扱う面倒な記事は週末や休日など時間のある日しか出来ないので、出来る限り二度調べせずにすむ位に片付けておきたいです。
そんな紹介するデータの一発目はなんといっても国籍別外国人登録者数のデータで、早速リンクを貼ることにします。
・国籍(出身地)別外国人登録者数の推移(法務省)
できれば上記サイトで貼られている図表を直接貼り付けられればいいのですが、PDFファイルのためうまくいかないので国籍別外国人登録者数の多い上位三ヶ国のデータのみ抜粋します。
国籍別外国人登録者数の増減
1998年 → 2008年
総数 :1,512,116(100.0%)→2,217,426(100.0%)
中国 :272,230(18.0%)→655,377(29.6%)
韓国・朝鮮:638,828(42.2%)→589,239(26.6%)
ブラジル :222,217(14.7%)→312,582(14.1%)
注:括弧の中は全外国人登録者数の中での割合
ここで取り上げている「外国人登録者」の定義というのは、日本に90日以上滞在する外国人には居住している自治体に在留を届け出る必要があり、その届出されている登録でもって測った外国人の人数のことを指しております。
それでこのデータについてですが、見てもらえばわかるとおりにこの十年で日本に居留する外国人の数は実数にして約70万人、率にして約147%の増加をしております。そしてその内訳を見ると、これは調べた私も結構驚いたのですが、かつては全外国人登録者数の半数近くを占めていた韓国や朝鮮国籍者人口が減っているばかりか割合でも大きく減少を見せ、その代わりに増加した中国国籍者は2倍以上の増加を見せております。また同様に三位のブラジル国籍、というよりは日系ブラジル人人口も約1.5倍の大きな伸び率を見せており、こちらも今後の移民議論において見逃せない数字となっております。
先に簡単に分析しておくと、外国人登録者数は2009年のデータでは中国人を除けばどこも減少している可能性が高いと私は見ております。というのもこの手のデータは景気の影響に左右されやすく、特に韓国やブラジル国籍者はリーマンショック以降に本国に帰った人間が多いと聞いており、韓国に至ってはこの世界的不況が彼らにとって追い風となっている所もあるのでその幅も大きい気がします。
ではそんな外国人登録者の在留目的はというと、あんまりあてにならないですが一応法務省から下記のようなデータがあるので紹介しておきます。
・在留資格別外国人登録者数の推移(法務省)
あまりデータのいじくりようのないデータですが、このデータの中の永住者の内訳が「一般永住者」、「特別永住者」の二種に分かれております。この特別永住者というのは戦前に韓国と北朝鮮から日本から渡ってきた人達やその子孫に与えられる資格該当者のことで、他の外国人と比べて日本の出入国や居住条件などが大幅に認められています。現国会で議論されいている外国人参政権付与において重要な位置づけにある集団ですので、これはまた後ほど解説します。
そしてこの議論において左右両方から一番批判が来そうな外国人犯罪のデータですが、ちょっと古いデータですがそこそこまとめているサイトがあるので一応紹介しておきます。
・奈良大学社会学部2001年度「社会学特殊講義」(関西大学社会学部助教授 間淵領吾)
結論から言いますが、この外国人犯罪において正確なデータを求めることは限りなく難しいと言わざるを得ません。
というのも上記リンク先のデータにも当てはまりますが、基本的に犯罪率というのは、「犯罪検挙数÷該当集団母数」の割合で、10万人当たり何人が犯罪を犯したかという数字にまとめたものです。しかし日本人だけならともかく外国人の場合だと何を以って母数を求めるかによって大きく変動してしまいます。
いくつか例を出すと、例えば在留90日以下の短期滞在者と長期滞在者とで分けると圧倒的に短期滞在者の中で犯罪率が高くなる傾向があり、この両者を一緒くたにすると長期滞在者が実態にそぐわず犯罪を犯しやすいと見られるデータになってしまいます。そしてあまり話題にする人がいないものの前から疑問に感じていたのですが、この手のデータで密入国者の犯罪がどのように処理しているのかが全く見えてきません。
密入国それ自体が違法なのですから日本でやることも当然犯罪に関わることが多い密入国者ですが、仮に彼らが犯罪を犯した場合はその犯罪は外国人犯罪件数に数えられるのか、またその場合かれら密入国者は犯罪率を出す際の分母に加えられるのかが出回っているデータにはどれも明示されておりません。
もしこれら密入国してきた犯罪者がきちんと統計処理されていないのであれば、正式な手続きを経て日本に入国している外国人登録者たちは他人の犯罪も自分達の犯罪として計算されているということになり、実態にそぐわないデータとなっている可能性が非常に高いです。
この辺が前から疑問なのですが、ちゃんと外国人犯罪率データはその辺も考慮して外国人登録者の犯罪だけを分子として計算しているのかが全く見えてこず、そういった事情もあるのであまり世の中に出回っているこういうデータを私は信用しておりません。
ただ外国人犯罪の件数増加や犯罪率の高さについては刑務所の定員問題などを聞く限り確かに事実で、「外国人には犯罪を起こす人間が多い」ということは私も認めております。しかしどれほど多いのか、またどのような人種、国籍、滞在型に多いのかについてはまだまだ検討する余地があるでしょう。
最後に外国人地方参政権問題に一番深く関わるであろうデータとして、各自治体別外国人登録者人口割合のデータで面白いのをひとつ紹介しておきます。
・都道府県別外国人数(社会実情データ図録)
上記のリンク先のページを見てもらえばわかりますが、外国人居住者の多い各自治体でその国籍別割合を求めた所、なんと紹介されているすべての自治体においてブラジル人がトップだったということがわかりました。
よくこの外国人地方参政権問題の話題が出るたびに、「韓国や中国に国を売り渡すのか!」という意見が飛んできますが、実態的には規模はともかくとして、地方参政権付与によって地方政治に大きく力を持つのはブラジル人ということになります。もちろん反論としてブラジル人は在日韓国人や朝鮮人のようにまとまった組織がないと言えますが、韓国籍や中国籍の人を危険視している人達はこのブラジル国籍の人のこともちゃんと眼中に入っているかといえば甚だ疑問です。そういった様々な事情を含めて、幅広くこの連載で議論していければ幸いです。
それはさておき早速始めたこの移民についての連載ですが、まずは手始めに現在の日本における外国人を取り巻く現状について各データをおさらいしておこうと思います。最近こういう愚痴が増えてきましたが、こういうデータを取り扱う面倒な記事は週末や休日など時間のある日しか出来ないので、出来る限り二度調べせずにすむ位に片付けておきたいです。
そんな紹介するデータの一発目はなんといっても国籍別外国人登録者数のデータで、早速リンクを貼ることにします。
・国籍(出身地)別外国人登録者数の推移(法務省)
できれば上記サイトで貼られている図表を直接貼り付けられればいいのですが、PDFファイルのためうまくいかないので国籍別外国人登録者数の多い上位三ヶ国のデータのみ抜粋します。
国籍別外国人登録者数の増減
1998年 → 2008年
総数 :1,512,116(100.0%)→2,217,426(100.0%)
中国 :272,230(18.0%)→655,377(29.6%)
韓国・朝鮮:638,828(42.2%)→589,239(26.6%)
ブラジル :222,217(14.7%)→312,582(14.1%)
注:括弧の中は全外国人登録者数の中での割合
ここで取り上げている「外国人登録者」の定義というのは、日本に90日以上滞在する外国人には居住している自治体に在留を届け出る必要があり、その届出されている登録でもって測った外国人の人数のことを指しております。
それでこのデータについてですが、見てもらえばわかるとおりにこの十年で日本に居留する外国人の数は実数にして約70万人、率にして約147%の増加をしております。そしてその内訳を見ると、これは調べた私も結構驚いたのですが、かつては全外国人登録者数の半数近くを占めていた韓国や朝鮮国籍者人口が減っているばかりか割合でも大きく減少を見せ、その代わりに増加した中国国籍者は2倍以上の増加を見せております。また同様に三位のブラジル国籍、というよりは日系ブラジル人人口も約1.5倍の大きな伸び率を見せており、こちらも今後の移民議論において見逃せない数字となっております。
先に簡単に分析しておくと、外国人登録者数は2009年のデータでは中国人を除けばどこも減少している可能性が高いと私は見ております。というのもこの手のデータは景気の影響に左右されやすく、特に韓国やブラジル国籍者はリーマンショック以降に本国に帰った人間が多いと聞いており、韓国に至ってはこの世界的不況が彼らにとって追い風となっている所もあるのでその幅も大きい気がします。
ではそんな外国人登録者の在留目的はというと、あんまりあてにならないですが一応法務省から下記のようなデータがあるので紹介しておきます。
・在留資格別外国人登録者数の推移(法務省)
あまりデータのいじくりようのないデータですが、このデータの中の永住者の内訳が「一般永住者」、「特別永住者」の二種に分かれております。この特別永住者というのは戦前に韓国と北朝鮮から日本から渡ってきた人達やその子孫に与えられる資格該当者のことで、他の外国人と比べて日本の出入国や居住条件などが大幅に認められています。現国会で議論されいている外国人参政権付与において重要な位置づけにある集団ですので、これはまた後ほど解説します。
そしてこの議論において左右両方から一番批判が来そうな外国人犯罪のデータですが、ちょっと古いデータですがそこそこまとめているサイトがあるので一応紹介しておきます。
・奈良大学社会学部2001年度「社会学特殊講義」(関西大学社会学部助教授 間淵領吾)
結論から言いますが、この外国人犯罪において正確なデータを求めることは限りなく難しいと言わざるを得ません。
というのも上記リンク先のデータにも当てはまりますが、基本的に犯罪率というのは、「犯罪検挙数÷該当集団母数」の割合で、10万人当たり何人が犯罪を犯したかという数字にまとめたものです。しかし日本人だけならともかく外国人の場合だと何を以って母数を求めるかによって大きく変動してしまいます。
いくつか例を出すと、例えば在留90日以下の短期滞在者と長期滞在者とで分けると圧倒的に短期滞在者の中で犯罪率が高くなる傾向があり、この両者を一緒くたにすると長期滞在者が実態にそぐわず犯罪を犯しやすいと見られるデータになってしまいます。そしてあまり話題にする人がいないものの前から疑問に感じていたのですが、この手のデータで密入国者の犯罪がどのように処理しているのかが全く見えてきません。
密入国それ自体が違法なのですから日本でやることも当然犯罪に関わることが多い密入国者ですが、仮に彼らが犯罪を犯した場合はその犯罪は外国人犯罪件数に数えられるのか、またその場合かれら密入国者は犯罪率を出す際の分母に加えられるのかが出回っているデータにはどれも明示されておりません。
もしこれら密入国してきた犯罪者がきちんと統計処理されていないのであれば、正式な手続きを経て日本に入国している外国人登録者たちは他人の犯罪も自分達の犯罪として計算されているということになり、実態にそぐわないデータとなっている可能性が非常に高いです。
この辺が前から疑問なのですが、ちゃんと外国人犯罪率データはその辺も考慮して外国人登録者の犯罪だけを分子として計算しているのかが全く見えてこず、そういった事情もあるのであまり世の中に出回っているこういうデータを私は信用しておりません。
ただ外国人犯罪の件数増加や犯罪率の高さについては刑務所の定員問題などを聞く限り確かに事実で、「外国人には犯罪を起こす人間が多い」ということは私も認めております。しかしどれほど多いのか、またどのような人種、国籍、滞在型に多いのかについてはまだまだ検討する余地があるでしょう。
最後に外国人地方参政権問題に一番深く関わるであろうデータとして、各自治体別外国人登録者人口割合のデータで面白いのをひとつ紹介しておきます。
・都道府県別外国人数(社会実情データ図録)
上記のリンク先のページを見てもらえばわかりますが、外国人居住者の多い各自治体でその国籍別割合を求めた所、なんと紹介されているすべての自治体においてブラジル人がトップだったということがわかりました。
よくこの外国人地方参政権問題の話題が出るたびに、「韓国や中国に国を売り渡すのか!」という意見が飛んできますが、実態的には規模はともかくとして、地方参政権付与によって地方政治に大きく力を持つのはブラジル人ということになります。もちろん反論としてブラジル人は在日韓国人や朝鮮人のようにまとまった組織がないと言えますが、韓国籍や中国籍の人を危険視している人達はこのブラジル国籍の人のこともちゃんと眼中に入っているかといえば甚だ疑問です。そういった様々な事情を含めて、幅広くこの連載で議論していければ幸いです。
2010年2月12日金曜日
移民議論の道標~その一、導入
前からやろうやろうとしながら先延ばしにしてきましたが、そろそろ腹をくくってこのテーマについていろいろ書こうかと思います。
さて現在、与党民主党が地方参政権を永住外国人を始めとした日本国籍外者にも付与しようという政策を掲げたことから海外から移民を本格的に受け入れる準備を始めたのではないかと、インターネット上のみならず保守系評論家からも激しく批判がなされております。民主党が本当に移民を受け入れるかどうかは別として、確かにこの地域参政権の永住外国人への付与は移民を受け入れていく上では加速させる政策にはなるでしょう。
そのような移民の受け入れについて、現状で日本人の大半は反対、少なくとも受け入れるべきだという人間はごく少数しかおりません。移民に反対する理由の多くは移民に混じって犯罪者がやってきて治安の悪化が起こるという理由や、先ほどの地域参政権の話と絡んで日本が内部から外人、それも主に中国や韓国といったアジア圏の国の人間に政治に介入されて国の内部から崩されるといった意見がよく上げられているように見られます。
ここでいきなり結論なのですが、私は現段階で地域参政権を認めることには反対ながらも、将来的に日本は規模についてはともかく移民を受け入れるべきだと考えております。
一体何故私がこの様な意見を持っているのかについてのみ説明を行ってもいいのですが、それ以前に私は、決してこの方面の専門家でないながらも現在の日本におけるこの移民を巡る議論はどこか焦点がずれているのではないかと前から感じていました。
いくつか具体例を挙げると、まず移民受け入れ反対論のほぼ八割は治安の悪化だとして中国人、韓国人犯罪者の問題を取り上げる人間が多いのですが、事実上の移民である日系ブラジル人労働者がこの手の議論ではあまり俎上に上がってきておりません。決して日系ブラジル人が悪いと言うつもりはないのですが、国籍別外国人居住人口では大きな増加率を続けている国であり、ちょうど先月にも大きくニュースになりましたが死亡ひき逃げを始めとした大きな刑事事件もこのところ頻発に起きております。
・3人死亡ひき逃げ、容疑者送検 運転のブラジル人(47ニュース)
こっちは言い方は悪いですが、中国人や韓国人犯罪者による治安悪化を理由として移民に反対している日本人の多くは、移民がいいか悪いかというよりもナショナリズム的な意識から反対しているのではないかという気がします。確かに外国人居住者の犯罪率は通常の日本人より遥かに高く憂慮すべき問題ではありますが、私は移民議論で本当に重要となるのは、どうやって優秀で善良な外国人労働者を受け入れていくかという点にあると考えており、犯罪率が高いからといって脊椎反射的にすぐ移民に反対だというのは気が早過ぎるでしょう。
またこの手の議論でよく、「フランスは移民を受け入れて見事に失敗したじゃないか」という意見が目に入るのですが、前からこの意見に対して、「移民を受け入れている国は他にもあるのに、どうしてフランスばかりが取り上げられるんだ?」ときな臭く感じており、一体どのような点で失敗したのかという個別具体的な意見となるとなかなか見当たらずずっとこの意見を疑問視しておりました。逆にリンク相手の「フランスの日々」のSophieさんをはじめとしてむしろ現地に在住している人ほど移民に対して肯定的な意見をしており、仮にフランスが失敗したというのならばそれを反省材料にしてより優れた政策に変える努力があってもいいのだし。
少なくともフランスは、移民を受け入れてサッカーではジダンを手に入れたわけだけど。
実際に移民を受け入れている国はフランスに限らず先進国ではドイツやイタリア、また同じ島国のイギリスも多種多様な人種を抱えております。そして何より、最大の移民国家であるアメリカがどうしてこの手の議論で出てこないのか、この辺に私は日本の移民議論において一種作為的なものを感じます。もちろんアメリカは建国当初より移民国家で黒人問題を始めとした長い歴史を持つ、移民国家としても特別な国ではありますが、移民の受け入れにおいてどこが特別でどこが特別でないのかで議論から外したりせず、もっと遍く例を比較して議論をするべきだと私は考えております。
そしてなによりも、日本は望むと望まざるを得ずすでに一定数の移民なくして成り立たない状態にまで来ています。自動車産業や繊維産業の各企業ではすでに賃金の安い日系ブラジル人労働者なくして経営は成り立たないとまで言われており、また国家のライフラインともいえる第一次産業の農業においてすらも外国人研修制度でやってくる中国人労働者が各方面で支えており、このまま中途半端な状態で受け入れを続けるよりも、もっと本格的に議論を行ってどうせ受け入れるのであればマシな形にしていくべきではないのかというのが私の考えです。
そういうわけで浅学ではありますが、あれこれ批判が来るのは覚悟の上でこれからしばらく移民について議論すべき問題と現状について記事を書いていこうかと思います。このせいでしばらくはまた時事系ニュースが書く量が減ってしまうかもしれませんが、その辺はSOFRANがきっとカバーしてくれると勝手に信じています。
おまけ
2006年のワールドカップにてジダンが頭突き問題を起こした際、一体ジダンは何を言われてあんなに怒ったのかという議論にて、
「お前アルジェリア移民のくせに、頭の方はナイジェリアだよな」
という意見が、誠に不謹慎ながら私の中で一番面白かったです。
さて現在、与党民主党が地方参政権を永住外国人を始めとした日本国籍外者にも付与しようという政策を掲げたことから海外から移民を本格的に受け入れる準備を始めたのではないかと、インターネット上のみならず保守系評論家からも激しく批判がなされております。民主党が本当に移民を受け入れるかどうかは別として、確かにこの地域参政権の永住外国人への付与は移民を受け入れていく上では加速させる政策にはなるでしょう。
そのような移民の受け入れについて、現状で日本人の大半は反対、少なくとも受け入れるべきだという人間はごく少数しかおりません。移民に反対する理由の多くは移民に混じって犯罪者がやってきて治安の悪化が起こるという理由や、先ほどの地域参政権の話と絡んで日本が内部から外人、それも主に中国や韓国といったアジア圏の国の人間に政治に介入されて国の内部から崩されるといった意見がよく上げられているように見られます。
ここでいきなり結論なのですが、私は現段階で地域参政権を認めることには反対ながらも、将来的に日本は規模についてはともかく移民を受け入れるべきだと考えております。
一体何故私がこの様な意見を持っているのかについてのみ説明を行ってもいいのですが、それ以前に私は、決してこの方面の専門家でないながらも現在の日本におけるこの移民を巡る議論はどこか焦点がずれているのではないかと前から感じていました。
いくつか具体例を挙げると、まず移民受け入れ反対論のほぼ八割は治安の悪化だとして中国人、韓国人犯罪者の問題を取り上げる人間が多いのですが、事実上の移民である日系ブラジル人労働者がこの手の議論ではあまり俎上に上がってきておりません。決して日系ブラジル人が悪いと言うつもりはないのですが、国籍別外国人居住人口では大きな増加率を続けている国であり、ちょうど先月にも大きくニュースになりましたが死亡ひき逃げを始めとした大きな刑事事件もこのところ頻発に起きております。
・3人死亡ひき逃げ、容疑者送検 運転のブラジル人(47ニュース)
こっちは言い方は悪いですが、中国人や韓国人犯罪者による治安悪化を理由として移民に反対している日本人の多くは、移民がいいか悪いかというよりもナショナリズム的な意識から反対しているのではないかという気がします。確かに外国人居住者の犯罪率は通常の日本人より遥かに高く憂慮すべき問題ではありますが、私は移民議論で本当に重要となるのは、どうやって優秀で善良な外国人労働者を受け入れていくかという点にあると考えており、犯罪率が高いからといって脊椎反射的にすぐ移民に反対だというのは気が早過ぎるでしょう。
またこの手の議論でよく、「フランスは移民を受け入れて見事に失敗したじゃないか」という意見が目に入るのですが、前からこの意見に対して、「移民を受け入れている国は他にもあるのに、どうしてフランスばかりが取り上げられるんだ?」ときな臭く感じており、一体どのような点で失敗したのかという個別具体的な意見となるとなかなか見当たらずずっとこの意見を疑問視しておりました。逆にリンク相手の「フランスの日々」のSophieさんをはじめとしてむしろ現地に在住している人ほど移民に対して肯定的な意見をしており、仮にフランスが失敗したというのならばそれを反省材料にしてより優れた政策に変える努力があってもいいのだし。
少なくともフランスは、移民を受け入れてサッカーではジダンを手に入れたわけだけど。
実際に移民を受け入れている国はフランスに限らず先進国ではドイツやイタリア、また同じ島国のイギリスも多種多様な人種を抱えております。そして何より、最大の移民国家であるアメリカがどうしてこの手の議論で出てこないのか、この辺に私は日本の移民議論において一種作為的なものを感じます。もちろんアメリカは建国当初より移民国家で黒人問題を始めとした長い歴史を持つ、移民国家としても特別な国ではありますが、移民の受け入れにおいてどこが特別でどこが特別でないのかで議論から外したりせず、もっと遍く例を比較して議論をするべきだと私は考えております。
そしてなによりも、日本は望むと望まざるを得ずすでに一定数の移民なくして成り立たない状態にまで来ています。自動車産業や繊維産業の各企業ではすでに賃金の安い日系ブラジル人労働者なくして経営は成り立たないとまで言われており、また国家のライフラインともいえる第一次産業の農業においてすらも外国人研修制度でやってくる中国人労働者が各方面で支えており、このまま中途半端な状態で受け入れを続けるよりも、もっと本格的に議論を行ってどうせ受け入れるのであればマシな形にしていくべきではないのかというのが私の考えです。
そういうわけで浅学ではありますが、あれこれ批判が来るのは覚悟の上でこれからしばらく移民について議論すべき問題と現状について記事を書いていこうかと思います。このせいでしばらくはまた時事系ニュースが書く量が減ってしまうかもしれませんが、その辺はSOFRANがきっとカバーしてくれると勝手に信じています。
おまけ
2006年のワールドカップにてジダンが頭突き問題を起こした際、一体ジダンは何を言われてあんなに怒ったのかという議論にて、
「お前アルジェリア移民のくせに、頭の方はナイジェリアだよな」
という意見が、誠に不謹慎ながら私の中で一番面白かったです。
2010年2月11日木曜日
石田三成は本当に戦下手だったのか?
石田三成というと豊臣政権下で太閤検地を主導するなど、どうも官僚的なイメージが付きまとう戦国武将で関ヶ原の合戦での敗戦もあって軍事的才能は低かったという評価が一般的です。特にゲームの信長の野望シリーズではその傾向が顕著で、政治能力がトップクラスに高い一方で武力はほぼ最低ランクの典型的な内政型武将で、実際に私も戦下手だったから関ヶ原では島左近勝猛に全部任せていたんだろうなどと勝手に考えていました。
しかし本当に石田三成は軍事面の知識がなかったのか、そんな概念を考え直させられるあるエピソードが関ヶ原の直後にありました。
関ヶ原の合戦の後、捕縛された石田三成は処刑場となる京都に護送されたのですが、天下を握ったも同然の家康を気にして旧知の人間ですら三成に声をかけない中で、黒田長政と藤堂高虎の二人が三成に声をかけたそうです。
長政は自分の陣羽織を捕縛されている三成にかけると、「ご苦労でござった」と、武士としてねぎらいの言葉をかけ、藤堂高虎は三成に、「関ヶ原での我が軍の鉄砲隊は如何でござった?」と尋ねたそうです。この高虎の問いに対し三成は、「少し乱れがござった」と答え、その原因は何かと高虎が重ねて聞くと、「指揮官に自信がないせいかと思われる。お替えになるがよかろう」と答えました。それを聞くと高虎は、「実は拙者もそう思っておりました。ご指導、ありがとうございます」と、三成の返答に満足して見送ったそうです。
このエピソードを聞くと、三成は戦場において敵軍の様子を仔細に把握していたという様に取れます。しかも戦国時代を見事生き抜き伊勢において藤堂藩を開いた藤堂高虎と一致した意見を持ったということは、それ自体相当な観察眼と言うか見識を持っていたのではないかという気がします。
同じく関ヶ原では三成同様に豊臣政権下では官僚的な役割であった大谷吉継も大奮戦しておりますし、関ヶ原の敗戦一つで三成に軍事的才能が全くなかったと判断するべきではないかもしれません。しかも三成は徳川政権下では一貫して否定的に見られていた(徳川光圀のみ肯定的に評価した)人物で、これからはもうすこし公平な評価が特に必要な人物なのかもしれません。
参考文献
・歴史を「本当に」動かした戦国武将 松平定知 2009年 小学館新書
しかし本当に石田三成は軍事面の知識がなかったのか、そんな概念を考え直させられるあるエピソードが関ヶ原の直後にありました。
関ヶ原の合戦の後、捕縛された石田三成は処刑場となる京都に護送されたのですが、天下を握ったも同然の家康を気にして旧知の人間ですら三成に声をかけない中で、黒田長政と藤堂高虎の二人が三成に声をかけたそうです。
長政は自分の陣羽織を捕縛されている三成にかけると、「ご苦労でござった」と、武士としてねぎらいの言葉をかけ、藤堂高虎は三成に、「関ヶ原での我が軍の鉄砲隊は如何でござった?」と尋ねたそうです。この高虎の問いに対し三成は、「少し乱れがござった」と答え、その原因は何かと高虎が重ねて聞くと、「指揮官に自信がないせいかと思われる。お替えになるがよかろう」と答えました。それを聞くと高虎は、「実は拙者もそう思っておりました。ご指導、ありがとうございます」と、三成の返答に満足して見送ったそうです。
このエピソードを聞くと、三成は戦場において敵軍の様子を仔細に把握していたという様に取れます。しかも戦国時代を見事生き抜き伊勢において藤堂藩を開いた藤堂高虎と一致した意見を持ったということは、それ自体相当な観察眼と言うか見識を持っていたのではないかという気がします。
同じく関ヶ原では三成同様に豊臣政権下では官僚的な役割であった大谷吉継も大奮戦しておりますし、関ヶ原の敗戦一つで三成に軍事的才能が全くなかったと判断するべきではないかもしれません。しかも三成は徳川政権下では一貫して否定的に見られていた(徳川光圀のみ肯定的に評価した)人物で、これからはもうすこし公平な評価が特に必要な人物なのかもしれません。
参考文献
・歴史を「本当に」動かした戦国武将 松平定知 2009年 小学館新書
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