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2013年7月19日金曜日

追い出し部屋議論

 「パソナルーム」と聞いて何のことだがわかる人はこの先は読まなくても私の考えを理解してくれているものだと思います。リンク先のページに詳しいですがこれはゲーム大手のセガが90年代にやっていた、今風に言えば追い出し部屋という奴です。特定の職員に対し私物の持ち込みを一切禁止し、窓のない「パソナルーム」という部屋に就業時間中、ずっと仕事をさせずに監禁することで自己都合退職をするようにセガは促したのですが、この時に監禁させられた職員が裁判所に不当な処置だと訴えたことによって明るみに出ました。裁判ではもちろんセガが敗訴したのですが、呆れるのは判決で違法行為と断じられたにもかかわらず後でまた同じことをやっていたということです。たまにネットとか見ていると、「セガは商売が下手だがいいゲーム会社だ」という人をいますが、作るゲームの善し悪しはともかくとして、性根の腐った会社だと思うので私は嫌いです。サターン派ではあったけど。

 ただ時代は変わるものでこの時のパソナルームは先ほど、今風に言えば追い出し部屋と書きましたが、このように名前を変えてほかの企業でも横行するようになってきました。代表格はシャープやパナに隠れて業績が悪い状態が続いているNECで、追い出し部屋を使ったリストラがよくメディアによって批判されます。ただこれらの批判を見ていて私はよく、「会社からいらない、使えないとはっきり言われているのに社員も社員でどうしてそんな会社に残ろうとするのか」、という疑問を持ちます。そりゃ家族抱えて生活もかかってるんだし辞めるに辞められないという状況はわかりますが、それにしたってそんな会社、こっちから願い下げだと言いたいし、斜陽の会社なんだから残ったところで倒産したら元も子もないのではなどと考えてしまいます。

 同時に会社に対しても、どうしてバシッと辞めさせずにこうした陰湿な手法を取ろうとするのか疑問です。あれこれ批判はありますが経営状況が悪化しているというのなら会社都合で退職させることも不可能じゃないのだし、退職金を多少上積みして面倒な議論なんかせずに戦力外通告を出せばそれまでです。そういう事をせずにこういう事を思いついて実行する当たり、つくづく性根が腐った連中だという気がします。

 あとこの手の議論でよく疑問に感じるのは、「会社側がクビを切りたくても日本の労働法だと自由に解雇が出来ない」という意見が出るのですが、果たして本当なのかといつも思います。というのも例のゴーンさんなんかかなりクビ切ってたし、利益を確実に生んでいない社員であれば別に問題はないんじゃないかとほんとよく思います。というより、会社がクビ切って批判される方が追い出し部屋で批判されるよりはずっとマシな気がしてなりません。

 とまぁそんなこったで、日本人って本当に言葉遊びと無駄なことが好きなんだねと皮肉っぽく感じます。日本に帰国してから何度も思いますが、表面的な議論ばかりで誰も核心的な議論をしないというのは見ていてイライラします。切り出したら切りだしたで怒り出すしもぅ。

2013年7月17日水曜日

スノーデン氏の暴露時期と背後関係について

 アメリカ国家安全保障局(NSA)の元局員であるエドワード・スノーデン氏が先日、NSAが国内のアメリカ人をも対象に無制限に盗聴などデータ監視を行っていると暴露したことは皆さんの記憶にも新しいかと思います。そこそこ日が経って置きながらなんで今日取り上げようと思ったのかというと、自分の考えていることをほかの人があんまり言わないので後年の自分に対して記録を残す意味合いで書いてこうと思ったからです。

 私がこの事件でまず最初に注目したのは他でもなく、スノーデン氏の暴露時期です。具体的な日時までは書きませんでしたが彼が香港でメディアに一連の事実を明かしたその日はちょうど、ワシントンで米中首脳会談が行われている日でした。この米中首脳会談でアメリカのオバマ大統領は中国の習近平酒席に対し中国が行っているサイバー攻撃を控えるよう釘をさすつもりであることが前日に報じられていましたが、スノーデン氏の暴露によってアメリカ政府も似たようなことをやっていることがわかり、とうとう強気な姿勢は示せずに「懸念している」などと日本みたいな曖昧な言い方でしか伝えることが出来ませんでした。
 私が何を言いたのかわかるかと思いますが、偶然にしてはあまりにもタイミングが良すぎるということで、つまり米中首脳会談の日程に合わせてスノーデン氏は暴露を行ったのではないかということです。政治の世界に偶然はないというのは、チャーチルの言葉ですし。

 仮にそうだとしたらスノーデン氏と中国政府は何らかの接触をそれまでに持っていたと考えられるのですが、スノーデン氏の暴露した場所が香港だったことを考えるとますます信憑性が強まります。となると両者は一体どういうつながり、さらに深く踏み込むとどんな取引でもって結びついたのかですが、真っ先に考えられるのはスノーデン氏への亡命先の提供です。
 結局、スノーデン氏は暴露を行った後に中国を離れ現在も滞在するロシアへと向かいましたが、そのまま中国本土か香港への亡命を認めるような取引があったのかも、そしてそれを中国政府に反故にされたからロシアに行ったのでは、という風に最初私は考えていました。現在においては中国というより、亡命を認めてくれそうな第三国への渡航の安全を保障する程度の内容だったのかもしれないと考えています。

 仮定の上での考察となりますが仮にこうだとすると、中国は一体どうしてスノーデン氏と接触できたのかが気になる所です。早くからNSAのやっていることに気が付いて内部告発者を探してでもいたのかと疑いたくなるくらいで、望むらくはスノーデン氏から話を持ちかけたという事実であってもらいたいものです。

 最後にもう一点かくと、現代兵器は電子装備があって当たり前ともいえ、仮に大国同士の戦争が起こる場合はまず真っ先に相手の通信網遮断、具体的には衛星機能の停止か破壊が実行されることでしょう。こう考えると相手の通信網を抑えることは昔で言えば兵糧の輸送路を抑えるようなもので、この方面にどれだけ特化するかが勝敗を分けるかもと考えるとサイバー部隊というのは想像以上に重要な役割を演じるかもしれません。

2013年7月16日火曜日

中国の2013年第2四半期GDP成長率について

中国GDP成長率が失速 4~6月期、7.5%(朝日新聞)

 このブログ政治と歴史と中国成り立っているのでたまには表に出ている中国経済ネタでもやってみようと思いますもっともこの手のネタはある意味前職における本業でもあったのですが

 既に各所で報じられておりますが中国の今年四半期GDP成長率は前年同期比0.1ポイント前期比では0.2ポイント減の7.5でした。上半期(1~6月)は昨年同期比0.2ポイント減の7.6%で、数字が微小とはいえ第1四半期(1~3月)に続き下落傾向にあることは間違いないです。

 この統計結果について先に私の方から意見を書いていくと、中国政府としても恐らく予想外に低い結果が出てしまったような気がします。というのも今年は習近平が総書記に就任してから第一年目となる年で、出だしくらいは景気のいいスタートを切る最低でも前年を上回る水準、具体的には8.0%以上の成長率を狙ってくるだろうという見方が出ていたのですが、一年の半分が終わった現段階では7.6%と、8.0%にはまだあと0.4ポイント足りません。残り下半期で挽回するにはやや難しい状況だと言わざるを得ません。

 では何故、想定以上に低い結果となってしまったのか?先程のNHKのニュースにキヤノングローバル戦略研究所のアナリストが出てきてコメントしていたのですがその内容を引用すると、何よりも輸出の落ち込みが大きいというのが大きな原因と目されております。

 中国の今年6月の貿易額は前年同期比で2.0%減少、このうち輸出額単独では3.1%の減少で、春節という特別期間を除くと実にリーマンショック以来3年7か月ぶりにマイナス成長を記録しました。一体どうして輸出がこれほど急減したのかというと日本や欧州といった国・地域の景気が悪く輸出で苦戦していることや、人民元の価値が上がってレート面での輸出競争力が落ち込んできているということもありますが、それ以上に大きいのはつい最近になって明らかとなった、貿易額の水増し問題発覚でしょう。
 これは主に香港との間で投機資金を国内に持ち込むため架空の貿易取引が横行していたのを当局が取り締まりに動いたというものですが、この実体のない架空取引額が意外と侮れない金額となっていたため、貿易額全体も大きく落ち込むこととなったわけです。もっとも、これで輸出額が減少に転じていながらも未だに中国は貿易黒字を保ってはいますが。


 こっからは中国広播網の記事に出てくるアナリストの引用ですが、工業生産増加額や小売消費高、不動産開発投資額などその他の統計指標はすべてプラスになっている一方、輸出額のみ下落となっているため、間違いなくGDP成長率のブレーキ要因は輸出の落ち込みにあると指摘しています。また現在は景気調整期と捉えるためなら成長率が下落するのはある意味で自然であるものの、去年からずっと停滞傾向が続いているために調整期にしては長すぎるとも述べています。
 ただこのアナリストによると今回の下落幅はそれほど大きくなく、第3、第4四半期も劇的に下がることはあまり考えられない一方、逆に劇的に持ち直すということも可能性が低く、今年通年は大きな変動はなく平穏な数値を保つと分析しています。でもって政府の今年の通年目標値である7.5%成長自体は達成することは難しくないと言っています。

 私としても上記のアナリスト達の意見と同意見で、今後も下落が続くかもしれないもののそのペースはゆったりで、例の崩壊論者みたいに急にバブル崩壊なんてことはまずないと断言できます。ただ中国が新たな経済成長エンジンがそれほど上手くいっていない、具体的には国内における個人消費の拡大が想定以上にうまくいっていないというのは間違いなく、この辺をどう処理するかが今後の中国政府の実力を諮る上で重要なポイントとなりそうです。

2013年7月14日日曜日

暗殺者列伝~シャルロット・コルデー

 最近歴史物をすっかり書いていないので、知っている人があまり多くないであろうネタを探していたらなんかここに行きつきました。韓国の近現代史に構ってこちらの暗殺者列伝と平成史考察の連載はこのところ疎かではありますが、一応まだやる気は残ってます。

シャルロット・コルデー(Wikipedia)

 この暗殺者列伝は「暗殺」ではなく「暗殺者」にスポットを当ててみたいと思って始めた連載ですが、今日ここで取り上げるシャルロット・コルデーなんかはまさにそういう対象としてはうってつけの人物です。この人はフランス革命期のフランス人で、ロべス・ピエールを筆頭とするジャコバン派がギロチンによる恐怖政治を敷いていた時、ジャコバン派リーダーの一人だったジャン=ポール・マラーを暗殺した女性です。しかも風呂場で。

 まず当時の状況について簡単に説明すると、「ベルサイユのばら」で書かれてある通りにフランス革命でそれまでフランスを支配していたブルボン朝が崩壊し、民主主義による政府がフランスにできます。この新政府は当初、ルイ16世を始めとしたブルボン王家を存続させる方針だったものの国王一家が嫁のマリー・アントワネットの祖国であるオーストリアに逃げようとしたヴァレンヌ逃亡事件を受けて完全な王制の廃止、そして元国王ルイ16世の処刑を断行するに至るのですが、この一連の決定を主導したのはジャコバン派と呼ばれる政治グループでした。

 ジャコバン派は当初、幅広い思想の議員を集めた政党だったものの徐々に穏健派が抜けて行ったことから過激な政党となり、反対派や障害になると目した議員を次々とギロチンにかけることで国内政治を支配する、恐怖政治を敷いていきます。当初でこそギロチンの対象は旧王党派が多かったことから民衆もそれを支持したものの、革命戦争がひと段落した当たりから穏健派議員、そして一般民衆に対してもギロチンをかけ弾圧するようになり、徐々に反感が持たれるようになります。

 そんなジャコバン派で最大の権力者は上記のロべス・ピエールで、その次の次くらいに力を持っていたのが暗殺の被害者であるマラーという人です。この人は元々は医者でフランス革命後は過激な政府批判を行って議員となり、権力を握ってからは割といろんな人をギロチンにかける決定をしたと言われております。彼がギロチンにかけた人物の中でも有名なのは「質量保存の法則」や酸素を始めとする元素の研究を行ったあのアントワーヌ・ラヴォアジエも含まれており、なんでもマラーが提出した論文をラヴォアジエが承認しなかったことに対する逆恨みだったという説も出ています。
 余談が続きますがギロチンにかけられる際にラヴォアジエは弟子に対し、「ギロチンにかけられた後、意識の続く限り瞬きをするから見ていてくれ!( ゚Д゚)タノムッ」と言って、実際に首が飛んだ後も瞬きをしていたというエピソードがあります。真実性は怪しいと言われていますが。

 話は戻ってそんな逆恨みするマラーですが、晩年は生来の皮膚病から表立った政治活動を控えて自宅内で治療のために入浴する日々が続いておりました。そんなお風呂大臣のマラーに対して面会を申し出たのが本題の、当時25歳のシャルロット・コルデーで、そのまま風呂に入ったまま面会に応じたマラーに対し包丁で心臓を一刺して見事に暗殺を決めてみせます。
 この暗殺の情景は、白馬に乗ってアルプス越えするナポレオンの絵を書いたことで有名なダヴィッドが書いてあり、この絵は見たことがある人も多いのではないかという気がします。っていうかこの人、「ソクラテスの死」も描いていたんだな。

 暗殺者のシャルロット・コルデーについて出身から書いていくと、彼女は貧乏貴族の家の生まれで小さい頃に修道院に入って生活していました。ただ革命後はその修道院も革命政府によって閉鎖されてしまったことから叔母の家に身を寄せ、徐々にジャコバン派との政争に敗北したジロンド派への支持に傾倒していったそうです。
 逮捕後、彼女は一貫して暗殺は自身の観念から独断で実行したものだと述べ、黒幕の存在などをすべて否定しております。暗殺直前のマラー自身が既に重病であったことから暗殺を教唆する政治家がいたとは思われず、現代においても彼女の単独犯説と見る声が多いです。

 ただそうした事件の背後関係などよりも当時注目を集めたのは、ほかならぬ彼女の美貌でした。当時の記録によると相当な美人だったようで、しかも暗殺をしたのが性格にやや問題があると見られていたマラーだったこともあり、現代風に言えば獄中アイドルのような人気が出たと言われております。Wikipediaにも、「暗殺の天使と呼ばれた」とまで書いてあるし。
 とはいえ、暗殺した相手は時の政治を握るジャコバン派の大物。問答無用で死刑判決を受けてルイ16世をもギロチンにかけた執行人のシャルル=アンリ・サンソンが同じく執行人を務めたのですが、彼もシャルロットの美貌について「毅然とした美しさがあった」などと言及を残しております。
 なおこの死刑執行の際、ちょっとした事件があったのですがその個所はそのままWikipediaの記述を引用します。

ギロチンによってシャルロットの首が切断されると、サンソンの弟子の一人が彼女の首を掲げ、さらにその頬を平手打ちするという暴挙に出た。見物人たちはこの行為に憤慨し、シャルロットの頬が赤く染まり怒りの眼差しを向けるのを見たと証言する者もいた。サンソンはこの弟子を即座に解雇した。

 私がシャルロットのことを知ったのは現在も連載中の漫画「ナポレオン -獅子の時代-」からなのですが、この漫画ではこの平手打ちを受ける場面も詳しく描写されており、「ただのナポレオン漫画とは違う!」と思わせられたワンシーンでした。ちなみにこの漫画、前半では主人公のナポレオンよりもジャコバン派のロベスピエールを中心に描いており、サングラスをかけたロベスピエールが正面を見据えて「死刑」と一言述べるシーンがありますが、なかなかに圧巻な情景であります。

 前にも一回書いておりますが、この漫画では最後に逆に死刑を受ける羽目となったロベスピエールに対して上述のサンソンが、「私はルイ16世を手にかけた時ほどあなたに憐憫を覚えません」と言ったのに対しロベスピエールが、

「ああサンソンよ、私が夢見た世界というのは私と君とルイが同じテーブルを囲んで談笑する世界だったのに」

 と口には出さず(顎を撃ち抜かれてもう発声できなかった)、一人思い浮かべる場面がありますが、見事なワンシーンと言わざるを得ません。ここまで書いておきながらですが、ちょこっと書いて終えるつもりだったのにやけに細かい知識で満載の記事になってしまいました。自分らしいっちゃらしいけど。


  追記
 誇張ではなく、書き終わった後で初めて気が付きましたが、ちょうど今日(7/14)はフランス革命記念日でした。フランスの魂が俺に今日、この記事を書けと呼んでいたのだろうか……。

2013年7月13日土曜日

敵失を待つことの不毛さ

 先日にこのブログで政治解説をした際、野党は今国会で与党である自民・公明党の敵失を待つ戦略、具体的には失言が出るのを待ち構えて自分たちでは政策代案など何も出さずに、国会でもあまり議論しないという戦略を採ったのではと私は書きました。該当記事でも書いてある通りに近年は政治家の失言が大きく取り沙汰されるだけに、ただ単に議席を取るという戦略上では決して大きく外れたものではなかったものの、今度の安倍政権は驚くほど失言事件が起こらず、結果的には選挙争点が何も作れず失敗してしまったように見えるとまとめました。

 この「敵失を待つ戦略」ですが、この言葉の元は野球におけるエラーです。なので野球にたとえるなら「相手の守備にエラーがでることを期待する」といったところですが、こんな戦略持った野球チームなんてまず勝てるわけがないでしょう。これまた元の政治記事でも書いていますが相手のミスに期待するなんて勝負を捨てたも同然で、今度の参院選でも野党は現時点で敗色濃厚ですが負けるべくして負けたと言わざるを得ません。
 と、こんな風に書くとこの戦略がどれだけ価値がなく不毛かということがなんとなく見て取れると思うのですが、改めて考え直してみると他のある分野にも適用できるのではないかという気がしてきました。もったいぶらずに言うと、日本人が持つ他国との経済競争における価値観です。

 実はこのブログでここ数ヶ月の間、「中国経済崩壊」というキーワード検索で訪問する人が非常に多いです。行き当たるページは「世界終末論と中国経済崩壊論」の記事で、、むしろこの記事では中国経済崩壊論の書籍は過去何冊も出版されているが今まで当たった試しがないと批判している記事ということもあり、こんな検索ワードで来られても当惑するというかむしろ来るなと言いたくなってきます。
 ただこの「中国経済崩壊」というキーワードでGoogleなどを検索すると、中国経済の危険性を訴えるページが本当にたくさんヒットします。またそういった個人のホームページだけでなく大手メディアの報道でも、中国経済が好調という話より中国経済が危険という話の方がニュースとして大きく取り扱われる傾向にあることも事実です。

 この時点で筆を終えてもいいのですが、稀勢の里が三敗目を喫して横綱昇進が絶望となった記念(別に彼が嫌いというわけではないが)に詳しく書くと、日本と中国で経済を比較し合い将来性を検討する場合、日本人はほぼ確実と言っていいほどに中国経済のリスクや問題点ばかり探してあげつらい、日本の経済を今後どのように振興して中国の企業に勝つかについては全く触れることがありません。もう少し口語に言い換えると、中国経済は今は勢いあるけどどうせもうすぐ破綻して、最終的には日本が勝つよという風な議論しか出てこず、前を走ろうとする中国に対してどうやってそれより前を走るか、そのような具体的提案は何も出てこないと言ったところです。
 これは何も中国に限らず韓国に対しても全く同じですが、中国や韓国に対して日本は今後どの分野で勝負し、戦っていくかではなく、中国や韓国が駄目になるのを待つという話しか経済比較では見受けられません。まともな経済誌ならまだこの辺の議論はあるのですが、やはり大多数の議論や主張としては私が不毛と批判する「敵失を待つ」ような、言ってて恥ずかしくないのかという意見しか出てきません。

 言うまでもないことですが中国は今でも国全体を挙げて現状以上に経済を発展させようとしており、その競争力は数年前と比べると確実に増しております。そんな中国の経済というか企業が数年後、今より競争力を落とすかと言ったらそれはあまり考え辛く、むしろ増すものだと考える方が普通な思考な気がします。そんな力を増す中国企業に対し日本企業はどうするべきかというと、さらにその先を行く方法を考える、つまり相手のミスを期待せずに如何に自分の力を伸ばすべきかということを考えるべきです。
 私は自己評価については過小でも過大であってもよくないと考えます。しかし競争相手に対する評価では、的確な評価が理想であることはもちろんですが、過小に評価して侮るくらいなら過大に評価して警戒する方がずっとマシです。然るに今の日本人の他国の経済に対する価値観においては過小評価が圧倒的と言わざるを得ず、その不毛な戦略と相まって将来的に負けるべくして負ける事態に陥るかもしれません。

 くれぐれも言いますが経済というのは競争です。競争において相手が途中で転ぶことを期待するようなアスリートが強いわけがありません。相手を研究することは大事ではありますが自らを鍛えようとすることはもっと大事で、陰湿な性格にはなるなよと言いたいのが今日の私の意見です。

2013年7月12日金曜日

韓国の近現代史~その十九、大韓航空機爆破事件

大韓航空機爆破事件(Wikipedia)

 前回取り上げたラングーン事件とは異なり、こちらは日本でも非常に有名な事件なのでほとんどの方は知っていると思います。

 簡単に私の方から事件の概要を説明するとまず事件が起きたのは1987年で、ソウル五輪の開催を控えた前年でした。事件当日、イラクのバグダッド空港を出発した大韓航空所属のボーイング707-320B型機は経由地であるアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに到着。次の経由地であるタイのバンコク空港を通り終点のソウル空港へと向かう予定だったのですが、バンコクへ向かっていたその途中、ミャンマーの海上で突如連絡を絶ち、その後の調査で空中で爆発、分解したことが後の調査で判明しました。

 事故機が連絡を絶った直後、韓国政府は直前に経由したアブダビで降りた乗客15人の中に審な男女2人がいることを突き止めます。この男女2人は日本の旅券を持ってアブダビを降りた後にバーレーンへ向かい、事件翌日には現地のホテルに滞在していました。バーレーンの日本大使館がこの2人の旅券を照会したところそれらの旅券は偽造されたものだとわかり、バーレーンを離れローマへ向かおうとしていた2人を日本の大使館員、 バーレーンの警官が出向直前で押し留めました。
 ここである意味ドラマチックな所ともいえるのですが、出国を阻止された男女2人は煙草を吸う振りをして毒薬のカプセルを含み自殺を図ったのですが、男の方はそのまま中毒死、女の方はカプセルを噛み砕く直前に現場の人間に取り押さえられたことにより自殺に失敗します。

 その後、生き残った女は韓国へと移送され、韓国側の捜査によって二人は北朝鮮の工作員、金賢姫(当時25歳)と金勝一(当時59歳)だったことがわかり、航空機が仕掛けられた爆弾によって爆破されたことがわかります。2人は親娘を装ってハンガリー、オーストリア、ユーゴスラビア、イラクの順番に渡り、途中で旅券を北朝鮮のものから偽造した日本旅券に差し替えた上で搭乗した航空機に爆弾を仕掛けたことを、生き残った金賢姫が証言しております。実際にこれらの行程は経由した国々の記録とも一致しており、北朝鮮と同じ共産圏の旧ソ連などもこの事件を北朝鮮によるテロと断定しております。

 この事件がどういう目的で起こったというか北朝鮮は何故このような航空機爆破テロを起こそうとしたのかというと、やはり翌年に控えていたソウル五輪を中止に追い込む、または他国に参加ボイコットを促すためだったと現在だと言われております。書いてる自分が言うのもなんですが、なんで航空機を爆破することがオリンピックの妨害になるんだという気がしてならないのですが、そこは北朝鮮だからとしか言いようがありません。
 ただこの点について私の勝手な推測をここで書くと、どうも北朝鮮というのは現在を含め、国際世論というか事件などの情報が相手側にどのように影響するのか、そういった感覚に対して極端に疎い気がします。いうまでもなく北朝鮮は中国を除いてほとんどの国と国際交流を行っておらず、しかも国内で厳しい情報統制を行っていることからこちらが思った通りに相手側は思考するという勘違いに似た都合のいい感覚を持ち合わせているのかもしれません。更に言えば、次代の変遷に伴う国際感覚の変化にもついていけてないというべきか。

 多分北朝鮮としては、「航空機が爆破された→韓国は危険→ソウル五輪はボイコットしよう」なんていう風にほかの国は考えると思ったんじゃないでしょうか。しかし結果は全く逆で、むしろこのような国際テロ事件を起こした北朝鮮への批判が高まっただけでなく、それまでソウル五輪への参加を保留していた旧ソ連や中国など共産圏国家がその後、続々と参加を表明するようになります。

 この事件についてもう少し私の方から述べると、前回のラングーン事件といい、第三国を巻き込んだなりふり構わないテロ事件に北朝鮮は1980年代から手を染めはじめます。この時期がどういう意味を持つかというと、やっぱり金正日が徐々に政権内部で実権を握ってきたころと同時期であり、これらのテロ事件や金正日が主導したという話は間違ってないように思えます。
 そしてこの事件がきっかけというか、生き残った金賢姫が田口八重子氏とみられる人物から日本語を教わったという証言を行ったことから、北朝鮮による拉致事件が大きく日の目を浴びるようになります。そういう意味では北朝鮮に対する世界の見方における、ターニングポイントとなった事件だったと言えるでしょう。

 最後にもう一点。事件当時、日本の左翼運動家の間ではこの事件を韓国による自作自演だと主張する団体などもありました。具体的には社会党なのですが、旧ソ連や昔の中国の人間以上に事実を事実だと判別できない連中というのも救いようがないものです。

2013年7月11日木曜日

中国にある「高温手当」という制度

 7月に入ってからめっきり暑くなってきたので温めていたというか単に書くのを忘れていた、中国にある「高温手当」という制度について今日はちょこっと紹介しようと思います。

 この高温手当という制度はその名の通り、高温時の屋外作業を行う労働者に対して事業者が手当を支払うことを義務付けている労働法です。具体的には気温が摂氏35度以上、もしくは相対湿度80%以上に達した際の屋外作業時に支払いが義務付けられており、手当額や支払方法は地方によって異なっております。
 たとえば上海市だと期間と金額が一律に定められており、今年だと6~9月の4ヶ月間、制度の対象となる作業者に対して通常の給与額に対して月額200元(約3200円)を上乗せするようになっております。中国語がわかって興味がある方は下記ニュースページに詳しく載っておりますのでご参考ください。

上海迎来高温日 企业高温津贴标准仍为每月200元(東方網)

 ではほかの地域はどうか。上海と接している江蘇省は上海と全く同じで6~9月の4ヶ月間に月額200元と一律に定められているようです。上海なんかよりずっと暑さの厳しい広東省では期間が6~10月と上海や江蘇省より1ヶ月多くなっておりますが、支給額は月額150元に定められております。

 この高温手当は毎年6月頃にその年の支給額など政策内容が発表され、大量のワーカーを抱える企業、特に屋外作業が多い建築分野の企業などはその内容と対策に頭を悩ませます。またこれは今回調べている最中に自分も初めて知ったのですが、「中国三大ストーブ」に数えられるほど暑い重慶市では室内温度が33度以上に達した場合、オフィスワーカーも高温手当の対象になる指針を出しております。まぁ理には叶ってるな。

 もっともこうした制度があるものの、実際には手当を払おうとしない事業者も多いそうです。そんなこと言ったら大半の企業が残業代を払おうとしない日本も一緒ですが、少なくともこの高温手当の制度に関しては中国政府の考え方に深く得心させられます。言われてみれば確かに夏場と冬場では屋外作業のキツさは段違いに異なり、特に夏場では熱中症の危険性も存在します。この高温手当の条文では事業者に対して手当の支払いを義務付けているほか、労働者に対して適度に水分を補給させること、休憩させることも義務付け、体調不良者を出さないようにしっかり注意することが記載されております。

 この時点で勘付いている人もいるかもしれませんが、率直に言って日本もこの制度を見習うべきではないかと私は思います。恐らく作業現場単位で熱中症対策などが施されているとは思いますがやはり夏場の屋外作業は危険であり、労働者に対して相応の手当を支給する制度を導入するべきなような気がします。クールビズなどと政府は言いますが、そもそも猛暑時には作業量を減らすことこそが最もエコな気もしますし。

  おまけ
 前職の職場ではちゃんと社内にクーラーがあったものの古いせいか度々故障して、真夏の物凄い暑い中で延々とノートパソコンに記事原稿を書くという、「これなんていう修行?」と言いたくなるような事態が度々起りました。またきちんと動いていてもどうも設定温度通りに室内を冷やしてくれないことも多かったことから上司がよく、「おい花園、クーラーの設定温度をもっと下げてくれ」と指示が来てました。その際に、

自分「今日も暑いっすからねぇ」
上司「そうなんだよなぁ。特にこの席だと余計暑くってさ」
自分「ああ、そこ窓際ですからね

 という風に暑さのせいでボーっとしていたせいか何も意識せずに口走ってしまい、しばらく上司から白い目で見られる羽目になりました。上司も上司で、「俺は座席でも社内でも窓際なんだよ」などとすねちゃうし……。