日本ではこのところ佐世保の事件やら台風やらであんまり大きく取り上げられてないように見受けられるのですが、イラクから撤退をし始めている米軍がこのほど、イラク北部でイスラム過激派「イスラム国(ISIS)」に対する空爆を実施しました。この件について友人からリクエストを受けたので取り上げますが、当初はあんまり興味なかったものの、改めて構造を見比べるとなかなか面白い状態かもと注目し始めています。
・オバマ大統領 "イラク空爆"の成果を強調(ANN)
今回の空爆に至る背景を簡単に説明すると、イラク戦争でのフセイン政権打倒後、米軍はイラクに長らく駐留して治安維持などの活動に努めてきました。しかしイラクの治安情勢はお世辞にも改善してきたわけでもないのに、アフガニスタンとともに駐留兵力の削減を公約に掲げて当選したオバマ大統領はアフガニスタンに続きイラクでも撤退に取り掛かり始めました。その結果というか、イラクでは北部を中心にアルカイダを始めとするイスラム過激派勢力が再び勢力を強めだし、またイラクの政権も選挙でごたごたが起こるなど見ていてあまりいい感じしない状態が続いていました。
そんな中、にわかに名前が通るようになったのが先程挙げたISISこと「イスラム国」という勢力です。この勢力はアルカイダ同様にイスラム原理主義を掲げる集団なのですが、その特徴としてはとにもかくにも手段が残忍で、アルカイダからもその残忍さから距離を置かれているとも聞きます。実際に先程中国での空爆に対する報道について調べていると、ISISによるイラク人の殺害前、後の写真が引っかかり、殺害された死体というのも釘で打ち殺されているという痛々しいものでした。
今回、米軍はこのISISに対して証す民族保護を理由に空爆を実施したとのことで、今後もしばらく同じような空爆が実行されるものだと思います。この米軍による空爆に対して私は、かねてからISISの過激な行動を聞いているだけに今回は支持に回るというのが本音ですが、その一方で下記の記事を見てちょっと考えるところもあります。
・イラク空爆めぐり協議=互いに「理解」求め合う—米ロ外相(時事通信)
この記事ではイラクへの空爆について米露の外相が競技を行ったと報じてあるのですが、ちょうど米露は今、クリミア半島を含むウクライナ東部の問題でごたごたしており、特にマレーシア航空の墜落に対して経済制裁の応酬を繰り広げているだけになかなか微妙な駆け引きに見えてきます。さらにこの競技について時事通信は、
「シリアでは、イスラム国は反アサド派として内戦に加わっているが、米国もその反アサド派を支えている矛盾をラブロフ外相は会談でけん制した可能性がある。 」
ここで書かれている通り、長い内戦が長く続くシリアでもISISは活動しており、しかも米国が支援する反アサド派(=反政権側)に与していると見られています。対するロシアはアサド派(=政権側)を支援しており、米国によるアサド派への空爆の提案を事実上、ロシアがとん挫させています。
シリアの現状までここで詳しく解説するとさすがにややこしくなるので避けますが、この時事通信の記事でちょろっと触れているようにISISに対してシリアでは事実上支援している癖にイラクでは空爆するという、一見すると矛盾した行動を米国は取っているように見えます。真剣に中東情勢について調べているわけではないのでもしかしたら私が間違えているのかもしれませんが、ちょっとこの米国の方針のブレは看過できないかも、対テロリストという原則を無視して各地の情勢を引っ掻き回しているだけではないのかという懸念も覚えます。
とはいえ、イラクとアフガニスタンに対して深く関与しているのは目下、米国のみで、実際に治安はかなり悪化しているのでこの地で何かしらの行動は必要です。各報道では今回の米軍の空爆に対し、他国と一切競技せずに独断で実施したことについて問題ある行動なのではと提起していますが、ほかの国はイラクとアフガニスタンにそれほどコミットしていない、それどころか関わりたくないような態度を取っていることを考慮すると私としては米国が単独で動いたことにそれほど疑問は覚えません。なお現在までに、欧州諸国は今回の米国の行動を支持というか追認、中国は支持も肯定も言わずスルー、日本はもちろん「理解している」です。あとこれは中国での報道ですが、英国が将来的に米軍と共に空爆に加わるかという点について、英国はなるべく関わりたくないようだと書いてありますがそりゃそうだよなって気がします。
金曜日の日経平均の株価暴落はこの空爆が原因とされていますが、果たして今後どうなるのか。私の予想としては結構長く続き、また米軍のイラク駐留兵力も増強されることもあり得るのではないかという気がします。もっともその時期はオバマ政権中か次の政権か、意外と次の大統領選挙の主要なトピックになるかもしれません。