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2015年3月29日日曜日

ノートパソコン「Endeavor NY2400S」の感想


 先日、プリンタでお馴染みのエプソンからノートPCの「Endeavor NY2400S」を購入しました。一通り操作を試してみたので、今日はこのパソコンに対する私の感想というかレビューを書こうと思います。
 それにしても、昨日は大塚家具を書いてその前はマッドシティを書いて今日はノートPCのレビューと、相変わらず統一感のないブログだと我ながら呆れてきます。

Endeavor NY2400S(エプソン公式販売サイト)

 このパソコンは上記のエプソンによる公式販売サイトを通じて購入しました。CPUやメモリといったスペックはこの記事では省略するので、これらのスペック情報を見たい方は上記サイトを訪れてください。
 まずなんでこのパソコンを購入しようとしたのかというと、それまで中国の職場でASUSのノートPCを使っていましたがこれだとOSは海賊版だしシステム言語は中国語のため、一応表示言語は日本語に変えられるものの一部の言語は中国語で表示され続けるのもあり、そして何よりOfficeのソフトが中国語版、しかも2003年度版とやけに古い仕様だったのでこの際日本で新しいのを買ってしまおうと思い立ったわけです。

 購入するに当たって重視したのは画面サイズと価格でした。仕事で使用するノートPCのため出張時に持ち運ぶことも多く、サイズと重量的には14インチが案外ちょうどいいと考えていました。現在主流の15.6インチは人の頭を殴ったりするのにはちょうどいい重さと大きさですがこれだとビジネスバッグに入れると結構嵩張り、重量もそれなりにあるので私個人的には14インチが仕事用として理想的だと考えています。
 ただこの14インチ、一時期はたくさん販売されていたもののこのところは各社ともラインナップに入れるサイズから外す傾向にあり、意外とこのサイズでノートPCを売るメーカーは少なかったりします。その中でエプソンがちょうど廉価モデルで用意してくれており、価格も私の購入時は46,000円とBTOパソコンらしく手ごろだったので、ほとんど一択のような感じでこのパソコンを選びました。
 なお、私はこれ以前にも2012年にエプソンでネットブックのノートPCを購入しています。その時の製品も納得のいく仕上がりだったことからエプソンへの信頼感も今回の購入の要因です。

 それでは早速レビューを始めます。画面サイズに関しては先ほども述べた通りに14インチで、可もなく不可もないサイズです。ではハード性能に関してはどうかですが。CPU、メモリともに現在における個人用ノートPCとしては一般的な性能を満たしており、少なくともオフィスワークで使うに当たっては全く問題ない水準にあると言えます。
 むしろ、1990年代であればハードの性能によってパソコンの動作速度は大きく変わりましたが、現在は各部品の技術革新も進んでよっぽど低い性能でない限りは動作速度にほとんど差がないのではないかと思います。IT関連技術者であれば話は別でしょうが普通にネット見て、文章書いて、エクセル使ってというレベルであれば大差はないでしょう。

 次にデザイン面についてですが、こちらに関しては文句なしに太鼓判を押します。製品写真からは判別できませんが実際の製品表面にはに薄く「擦り」が効かせられており、特にキーボード脇の部分ではうっすらと紋様めいた模様が浮かんでいます。またタッチバッド表面も幾重もの輪が重なっている模様が入れられており、パソコンは普段からよう使うものだけにこうした意匠があるのは私個人としては非常にうれしい仕様です。
 ただ一つだけ欠点もあり、それはズバリ言うと色です。BTOパソコンでなおかつ価格を抑えた製品なのですからしょうがないとは思うもののボディ色が黒一色しか選択できないというのは少し残念なところで、せめてもう一色くらいほかに選べたらなと思えてきます。なお私がノートPCの色で好むのは白か赤で、何気に黒が一番嫌いです。何故嫌いかというとほかの人も黒いのばっかで同じ黒だと個性が出ない気がして、この際黒でなければ青でも茶でもピンクでもいいのが本音です。

 話は変わり今度は外部接続の配置に関してですが、これははっきり言いますが非常に問題があり、低い水準にあるとしか言いようがありません。まずUSB端子はUSB2.0の端子が1個、USB3.0の端子が2個ついていますが、これらがすべて本体左右の手前部分にあるのはどうにかならなかったのかと不満を覚えます。左手前はまだ理解できますが右手前部分だとUSBメモリなんかを指し込むと本体から端子が飛び出すので、右手でマウスを動かしてたりすると手がぶつかりやしないかとどうしても気になってしまいます。私が自宅で使っているNECのLaVieなんかは左手前こそ同じ配置であるものの右側面のUSB端子は手前ではなく奥にあり、そのかわりCDの挿入箇所が手前に来るなどエプソンとは対照的です。
 ただこのUSB端子ならば左手前部分の端子だけを使うことによってまだ我慢できますが、本当にどうにもならないのはキーボードの配置です。まず下記の画像をご覧ください。


 注目してもらいたいのは右端近くにある「Enter」キーです。写真からだとわかり辛いかもしれませんが、実物で見るとこれが非常に小さく、何で一番打鍵回数の多いこのEnterキーをわざわざ小さいサイズにしたのか不思議でしょうがありません。しかもその左手前にある鍵括弧の『「』と『」』キーも、何故かこれだけほかのキーに比べ2/3程度の大きさにされており、ブラインドタッチで叩いていると通常のキーボードと感触が違ってすごい迷うし実際にミスタイプすることが多いです。真面目な話、文字入力で変換後に確定しようとEnterキーを押そうとしたらその右隣の「PgUp」、「PgDn」を押してしまうミスタイプなんて、このノートPCに触れて初めてやらかしました。
 このキー配置の仕方は本当に不思議で、ボディを見る限りだとキーボードの両側面はまだ幅があるように思えるし、キーボード幅が変えられないにしても左端の「Tab」キーと「Caps Lock」のキーの方が打鍵回数は少ないのだからこっちを逆に小さくすればいいのではないかと思えて仕方ありません。私のようにやたらキーボードを叩く回数の多い人間からしたらこのキー配置は閉口するよりほかなく、無線接続キーボードでも使おうかなと検討してます。

 以上がこのノートPCに対する主だった評価ですが、総合して評価を下すならばコストパフォーマンスには非常に優れたパソコンだと言って間違いありません。キーボードの配置だけは本当にひどいものですがそれ以外であれば同クラスの他社製ノートPCに大きく劣ることはなく、それでいてこの値段であれば個人のネット観賞用、オフィスワーク用であれば十分実用に耐えうるでしょう。

 あと隠れた長所として、パソコンの初期設定が他社製と比べて格段に優れています。エプソンのパソコンはすべてネットを通して注文を受けてから組み立てられて出荷されるBTO(Build to order)パソコンなのですが、製品が家に届いた段階でOSなどはすぐ使用できる状態にされており、そして何より余計なアプリケーションソフトが一切入れられていません
 この辺り、NECや東芝、あと富士通辺りのパソコンに顕著なのですが、新品を買うとまず使うことがないであろう余計な補助ツールやセキュリティー、写真編集ソフトなどがやたらめったらインストールされており、開梱後はこれらのソフトを全部アンインストールするところから始めなければなりません。しかしエプソンのパソコンに関してはユーザー登録を促すアプリを除いて余計なソフトは一切なく、文字通り受け取り後にすぐ使用できるので地味に使い勝手がいいです。

 そういうわけでこのパソコンの各ポイントをA~Eの5段階評価でまとめると以下のようになります。

PC性能:C 可もなく不可もなく使用に当たって全く問題ないレベル
デザイン:B シンプルながら意匠が行き届いている。ボディ色さえ選択できれば文句なし
外部接続:D 壊滅的とまではいかないがあのキー配置だけは理解し難い
初期設定:A これ以上の水準は多分ないであろう
コストパフォーマンス:B この性能でこの価格なら十分お得

ただ単純に価格だけを追い求めるのであればLenovoやASUS、、Acerといった中華系メーカー、そして米国のDELLの方が安くてPC性能も高いラインナップを揃えているので、コストパフォーマンスではエプソンがナンバー1ってわけにはなりません。それでもこのエプソンのパソコンを私が選んだ理由を挙げるとまずはデザイン性、そしてこれは変な話ですがレアリティです。エプソンのパソコンは先ほどにも書いたようにBTOなので出回っている数が少なく、持ってるだけで一つの個性つを発揮できるくらいです。実際に中国に持って帰ってきて事務所の複合機の設定を業者の人間呼んでやらせたところ、「何このブランド?見たことない」って驚いてくれました。

 最後にこのノートPCの価格について、通常価格は46000円(税抜き)ですがちょうど今セールをやっていて3000円がここから差っ引かれます。なおこのセールはちょうど私が購入した直後に始まったもんだから、「デスクリムゾン」に出てくる伝説の傭兵「コンバット越前」のように「やりやがったな!」などと口走ってました。

大塚家具の一連の騒動について

 やっとというべきか、先月頃から各種の報道を騒がせ世間の関心を一手にかっさらっていた大塚家具の親子対決が昨日、ようやく決着がつきました。

 もはや説明する必要はないでしょうが後年を見越して簡単に説明しておくと、家具販売大手の大塚家具で、創業者でもあり会長である大塚勝久氏とその娘で現社長の大塚久美子氏が社長職を巡り昨日の株主総会で激しく争い合いました。結果は株主から多くの支持を得た久美子氏の勝利となり、敗北した勝久氏はそのまま期間満了ということから取締役が解任され、事実上経営から追い出されることとなりました。
 両者の対決はそこそこ年季が入っているというか結構まだるっこしい所があるので、年表にして簡単にまとめてみましょう

<2007年5月>
 勝久氏が行った自社株のインサイダー取引に対し金融庁から追徴課税を受ける。
<2009年3月>
 インサイダー問題の引責として勝久氏が社長職から退き、久美子氏が社長に就任する。
<2014年7月>
 て勝久氏の提案から久美子氏が社長職から解任され、勝久氏が社長に再就任する。
<2015年1月>
 4期ぶりの営業赤字となったことから取締役会で、4対3の僅差ながら勝久氏の社長職解任が決議され、久美子氏が社長に再就任する。取締役会の翌日、勝久氏は3月の株主総会で久美子氏の解任動議提案を出す方針を明らかにし、久美子氏側も勝久氏を含まない新役員の任命提案を出し、株主委任状の争奪戦が勃発する。

 以上が両者の争いの大雑把な流れです。最終的には先ほど述べた通り株主からの支持数で勝った久美子氏の提案が株主総会で通り、この壮大な親子喧嘩は娘の勝利で終わったと言えます。
 両者のケンカの種ともいうべき経営方針の違いとは、細かく説明するのは野暮なので簡単に言えば、父親が従来の営業方法を重視したのに対して娘なよりカジュアルに変革しようとするなどいわば保守VS変革と呼べるような違いからの対立だったと言われています。

 このニュースに対する私の意見を述べると、まず一言で言うと見ていてすっごく面白かったです。仮に自分が大塚家具の社員だったらこんな風には言えませんが、縁もゆかりもない傍観者の立場からするとこの因縁深くリアルタイムで物事が動いた両者の争いはエンターテイメントとしてこの上なく、当事者たちには本当に申し訳ないのですが堪能させていただきました。
 中にはそんな言い方は不謹慎だなんていう人もおられるかも知れませんが、死者を冒涜したり他人の人生をふいにさせるなど度を越したものでなければ楽しいと思えるニュースは素直に楽しんだ方がいいと個人的に考えています。

 ただ一連の騒動に対する事前報道からすると、今回の結果はやや意外さを覚える結果でした。というのも株主総会前の報道を見ているとほぼすべてのメディアで、「父親が有利」という下馬評が出ており、蓋を開けてみたら娘の久美子氏が勝ったもんだから、「あれ、予想報道と全然違うじゃん」なんて拍子抜けました。票読みが難しい案件であったことは確かですが、それならそれで「どっちに転ぶかわからない」という報道をすべきだったのではないか、一体日系メディアは何を根拠に父親有利説を出したのかとすこし憤りを感じます。もっとも、反省もしないでしょうし検証もしないでしょうが。

 その上で今回の結果に対する感想を述べると、久美子氏が勝利して良かったのではないかと私個人としては考えています。やはりどう考えてみてもインサイダーやらかしたり、業績をまた悪化させたりと勝久氏の経営能力や人物は如何なものかと思え、久美子氏のカジュアル路線が今後成功するかどうかはまだわかりませんが、少なくとも勝久氏の保守路線はどのみち駄目だろうという気がしてなりません。その上で、久美子氏のやり方が成功すればそれはそれでいいでしょうが、失敗すれば恐らく勝久氏が再就任していたよりも早く潰れるだろうし、業界全体の発展にとってもその結果はいい効果を生むはずだと見ています。

 こうした意見は今回見ていてほかに誰も言っていなかったのですが、良くなる会社はどんどん良くなって売上げや利益を増やすだけ増やした方がいいと思いますが、逆に駄目な会社はどんどん駄目になってなるべく早く潰れてくれた方がいいと私は考えています。何故なら経営方法が悪い会社が潰れればその分の売上げが経営のいい会社に流れ、経済合理性ともいうべきか業界や社会全体に取っていいサイクルが加速するからです。逆に経営の悪いゾンビみたいな会社がしぶとく生き残れば業界の足を引っ張ることとなり、実質それが失われた十年を生む要因になりました。

 そういう意味で今回久美子氏が勝利したことによって、大塚家具はまた久美子氏流のカジュアル路線への変革に突き進むでしょう。変革には投資も必要で、失敗した場合は何もしなかった場合よりも間違いなく寿命を縮めます。成功すればもちろんいうことなしですし失敗すれば早く潰れる可能性が高まるのだから、やや皮肉っぽい言い方ですが私は今回久美子氏が勝って家具販売業界全体にとっては間違いなくプラスだろうなという風に今回の結果を見ています。もちろん、誰が言い出したか知りませんが「家具屋姫」こと久美子氏には無事変革を成し遂げ、立派に成功してもらいたいとは祈ってはいますが。

 最後にこれは私ではなく友人の意見ですが、今回の騒動を見ていて大塚家具は詰めが甘いという指摘が来ています。今回の騒動中、勝久氏も久美子氏も揃って何度も会見を開きメディアを通して自身の正当性を訴えてきましたが、そのどれもがオフィスとか普通の会見場だったそうです。その友人曰く、「折角家具のショールームを持っているのだからそこで会見し、自社の商品を映像に流して大きく宣伝するべきだった」と述べ、ややみっともない内輪もめとはいえそれすらもビジネスチャンスにつなげる努力が足りないと話していました。
 その上で友人はソフトバンクの孫正義社長が一時期流行った「アイスバケツチャレンジ」を行った際、きっちり自社の「SOFT BANK」という会社ロゴの前でやってみせてその画像をツイッターで流すという抜け目のなさを見せたことと比較し、経営者としての格の違いが出ていると断じています。私もこの友人の意見に至極同感なのですが、孫社長のアイスバケツチャレンジの写真を見て最初に思ったのは、「やっぱこの人が水被ると頭の方が余計みすぼらしくなるな……」ってことで、会社ロゴよりも孫社長の頭の方に目が行ってました。

2015年3月27日金曜日

千葉のマッドシティ~縁のある有名人

 また本題と関係ありませんが昨日勤務先の工場に警官二人が来て、何でも先日に工場近くの川で死体が見つかったので何か心当たりはないかと尋ねて情報提供を呼びかけるチラシを置いて行きました。チラシによると死体は壮年男性で身長は162センチ。赤いジャンパーを着ていてその写真もついていましたが、有力情報提供者には1万元(約20万円)を出すと書かれてあったので殺害されたような跡でもあったのかもしれません。ちなみに同僚たちは、「うわー死体だって。どうしよー」などと女子高生みたいにちょっと盛り上がってました。

 そういうわけでまたマッドシティ。毎回、地元の人間以外を置き去りにしたネタばかりを展開しているので今日はもうちょっととっつきやすく松戸市に縁のある有名人をいくつか紹介しようと思います。

松戸市出身もしくはゆかりの有名人(Wikipedia)

 正直な所、私の記事読むくらいなら上のウィキペディアの記事読んだ方が早いだろうし詳しいでしょうが、ひとまず松戸市に縁があって私もそこそこ知っている人を幾人かピックアップして紹介します。

 まずスポーツ選手の枠で語れば、阪神タイガースの現監督である和田豊氏の名前が私の中で真っ先に挙がってきます。和田氏は松戸市出身ですが高校は別の市の高校に通っており、その高校では「ガンダムF91」の主役であるシーブックの声優をしていた辻谷耕史氏と、「少年アシベ」にでてくるアザラシのゴマちゃんの声をしていたこおろぎさとみ氏と同級生だったようです。ちなみにこおろぎ氏はゴマちゃんの収録中、喉から血を出したと聞いております。
 同じ野球枠だとかつての西武のエースで現在は千葉ロッテに在籍する涌井秀章選手も地味に松戸市出身です。また松戸市出身ではないものの、新松戸にあったスケートリンクにはこの前引退したフィギュアスケートの男子選手の町田樹氏が幼少の頃に通っていました。

 次に芸能人枠だと私が反応できる名前は安倍サダヲ氏、高木美保氏、あとラッシャー板前氏がウィキペディアのリストから上がってきます。なんでこの三人なんだろうという気もしますが、この三人以外だといまいちピンと来ないのが本音です。あと押切もえ氏も一応反応できるが、彼女は今どこで何やってるんだろう?
 文化人の枠だともう少し反応できる人が増え、「どうぶつ奇想天外」などで活躍された千石先生こと千石正一、女性宇宙飛行士の山崎直子氏など著名な人物も名を連ねています。特に山崎氏に関しては松戸市も地元の英雄のような扱いをしていて、松戸駅内の通路には常に山崎氏が写ったポスターが貼られてあるくらいです。

 そんな有名どころの下、既にウィキペディアのリンク先を見た方ならもう察しが付くでしょうが、先の二人を軽く凌ぐような超大物の名前がさりげなく書かれています。そう、小保方晴子氏です。去年の騒動の際には彼女が松戸出身であることがネットの掲示板に書かれるたびに、「またマッドシティ出身かよ」などと書かれることもあり、「またってなんだよ……」なんて妙な感想を覚えました。
 それにしても去年の今頃はSTAP細胞でちょうど大騒ぎし始めた頃でしたが、今年も既にみつきも過ぎているにもかかわらず、佐村河内、野々村前議員といった世間の関心を一挙にさらうような人物が一人も出てきていません。当時からも実感していましたが去年はなんかこう、十年や二十年に一度歩かないかってくらいの人材の当たり年だったんだなぁとしみじみ思います。

2015年3月26日木曜日

文章は口ほどに物を言う

 この頃、初赴任地が金沢だったので飲めないのにヤケ酒するほど落ち込んだことのあるうちの親父から送られてくるメールに、「ブログの文章が荒れているが何か嫌なことでもあったの?」とか、「最近ブログが落ち着いてて調子良さそうだね」などという文言が書かれてあり、どうやらこのブログの文章から勝手に私のメンタルチェックを行っているもようです。文章からメンタルチェックをするというと多分大半の人が「なんやねんそれ」とか思うかもしれませんが、私個人としてはあながち親父のこの行動を的外れなものだとは考えておらず、私自身もよく他人の文章を読んで書き手の性格、知識、当時の心境などを分析してます。そんな私に言わせれば文章というのは書き手の人間性を強く出すもので、時と場合によっては書き手の意図しない部分まで見せることもあると考えております。

 実際にこのブログを定期的に読んでいる方ならわかるでしょうが、私の文章は書いた当時の気分を割とストレートに出しているので、記事ごとにどんな気分で書かれたのかがわかりやすいと思います。しょうもない内容を嬉々として書いていることもあれば明らかにやる気がなく何か義務的に書いている感じもする文章もあり、叩き甲斐のある相手を見つけて多少の正義感と共にニヤニヤした感情剥き出しで書いてある文章なんかは、「ああ、あるある」って具合で思い当たることも多いことでしょう。また私に限らずとも他の人でも、ブログの文章にプライベートで切羽詰っていそうな印象を覚えることもあれば、本気で悩んでそうだったり、逆にうれしくてしょうがなそうだったりと、表現力の差はありますが多かれ少なかれ書かれた当時の心境が出てきてしまっています。

 しかし、文章から読み取れるのは何も書かれた当時の心境だけでなく、読み方によってはそれ以外のパーソナリティも一瞬で喝破することができると断言します。その一例と言ってはなんですが先日、友人が「こんなメールが来たんだけど」と一通のメールを見せてくれました。そのメールの内容は友人がやっているサイドビジネスに関する問い合わせで、何かコラボできないかと提案した上で今度お会いしたいと書かれていたのですがこのメール文を一読して言った私の返答はなんだったのかというと、

「メール文を読む限りこの人はそんなに頭が良くないから、提携する、しないという議論以前にビジネスパートナーとして頼りにならないだろう。会うのは勝手だがあんまり期待しない方がいいかもしれない」

 という、我ながら身も蓋もない返答の仕方をしました。恐らく友人は向こうの提案内容について私に意見を求めたのでしょうがこんな返事が返ってきて、「え、なんなんそれ(;゚Д゚)」という具合でやや唖然とした顔を浮かべていました。それからしばらくしてこの友人が実際にメールの送信主に会ってきたので印象を尋ねると、「花園君の言う通り、確かに馬鹿そうだった(;´Д`)」、などと言うもんだから、「だろぉ(・∀・)ニヤニヤ」と言って私もどや顔を浮かべてました。
 この時の種明かしをすると、その問題のメール文ではまず接続詞の使い方が未熟で文章のつながりが悪かったことと、ビジネスプランの説明の際に余計な修飾語を頻繁に使ってくどく長くわかり辛い文章に仕立ててビジネス文書としては核心が掴み辛くふわふわした文章だったので、恐らく書き手は事務的な見かけにこだわるあまりに本題を上手く伝えきれないタイプの人間で対面で説明聞いてもなんかピンと来ない説明のされ方をするだろうと判断しました。友人にこの分析を話したら、「大体そんな感じ」と言われてここでもまたガッツポーズしました。

 文章だけでそこまで分かることが出来るのかと思われるかもしれませんが、案外わかるというか私の実感では分析の的中率はそこそこ高いような気がします。もちろん万能というわけでなく外れることもありますが、やはり文章がわかりやすくまとまっている人は話を聞いていても賢そうだなぁと思えますし、逆に単文を何度も区切ってほとんど複文を使わずに文章をまとめる人は話しを聞いててて失礼ながら、「一体何を言いたいんだこの人?」って言いたくなる人が多いです。
 このほか内容の少なさの割に文字数が多い人は体面を気にしやすかったり、カタカナ語を多用する人はボキャブラリーが少なかったり、私に言わせれば文章というのは相手の人格分析をするに当たって宝の山みたいなもんです。あとこれは偏見かもしれませんが、無駄に難解な言葉を使用しようとする人は左翼的な平等思想の持ち主が多いような気もします。

 こうした文章に滲み出る人格というのは、意識して集中すれば覆い隠すことは不可能ではありません。しかしいちいち書く文章にそこまで気を使う人はまずおらず、大抵は馬脚が出るというか少なからず性質が出てくるでしょう。私などはそういう文章に出てくる性質こそがその人が持つ個性だし隠すべきじゃないと思うのでむしろ露骨に出すようにして書いていたら、「ブログが無駄に攻撃的過ぎる」と注意されるようになったわけですが、逆を言えばきちんと自分の個性をうまく表現できている証拠かなと前向きに見ています。

 以上までがまた私の独創的な考え方というか暴論のあらましですが、最後にもう一つだけ文章から読み取れる性格分析方法を記しておくと、文章から相手を一番簡単に図れる指標は文字数です。
 それこそ「ソ連は何故崩壊したのか」というような壮大なテーマであれば文字数が多くなるのは仕方ないですが、「よいコミュニケーション方法とは?」などといういかにも採用試験で出てくるようなどうでもいいテーマに対する文章で大量の文字数で書いてくる人間を私は評価できません。先程にも書いた通りに内容に対して文字数が少なければ少ないほど簡潔にかつ分かりやすくまとまっていると言え、数式で書くなら、「内容/文字数」の数値が高ければ高いほど評価できます。それだけにしょうもない内容に対して長ったらしく書くのは書き手にも読み手にも無駄な行為でしかなく、先ほどの様に人をおちょくっているとしか思えないテーマであれば自分の考えを一言述べればそれでOKだし、私はそういう人間ほど評価します。
 なお先ほどのテーマに敢えて回答するなら私は、「目と目で通じ合う」とだけ書きます。こんな返答の仕方ばっかしてたから書類で落とされまくってたんだろうな俺。

2015年3月24日火曜日

ゲームレビュー:極限脱出ADV 善人シボウデス

 昨夜友人に、「体調大丈夫?」と聞かれましたが、多分友人はどっちかっていうと「ゲームし過ぎじゃね?」と聞きたかったんだと思います。まぁその後の返答には、「もうすこしでエンディングだから大丈夫だよ」と答えましたが。
 そんな友人にも心配されるほど何のゲームをやっているのかというと、この前の一時帰国時に買ったPSVitaのゲーム「極限脱出ADV 善人シボウデス」です。どうにかこうにか昨夜にエンディングを見ることが出来たので、久々にゲームレビュー記事として書こうと思います。

極限脱出ADV 善人シボウデス(Wikipedia)

 このゲームソフトはニンテンドー3DSとPSVitaの2ハードで発売され、私が遊んだのはPSVita版です。ゲームジャンルはアドベンチャーで、なんで遊んでみようと思ったのかというとなんか無性にテキスト読まされるアドベンチャーゲームをやりたくなって、他にもいろいろ買い込みながら「折角だから」と思いつつ、質のいいアドベンチャーゲームとして評価が高かったこのゲームも買ってみました。結論から述べると期待に反さず、「かまいたちの夜」を始めとする傑作サウンドノベルゲームを作ったチュンソフトなだけあって面白いゲームでした。

 先に述べておくと、このゲームは2012年の発売ですが2009年に発売された「極限脱出 9時間9人9の扉」の続編に当たり、前作の登場人物も何人かがそのまま出演しています。前作を遊んでいればシナリオの裏側というか背景も読めてプラスでしょうが、私の様に前作を遊んでいなくてもシナリオが理解できないということは全くなく、マイナスの影響はほとんどないためこのゲームから始めてもほぼ問題はないでしょう。

 ストーリーのあらすじを話すと、大学生の主人公がある日目を覚ましたらエレベーターの中に閉じ込められており、同じエレベーターの中にはヒロインに当たる女の子も閉じ込めらていて、二人とも何故ここにいるのか、誰に連れてこられたのか記憶が全くない中でひとまず脱出を試みるという出だしとなっております。
 このゲームは通常のアドベンチャーゲームのように選択肢を選んでテキストを読み進める「ノベルパート」と、上記のエレベーターのような閉じ込められた状態から室内を探り、パズルなどを解いて脱出する「脱出パート」という二種類のゲームパートに分かれて構成されています。メインはもちろん「脱出パート」ですが、ノベルパートも選択肢が豊富にあり、そのシナリオは樹形図のように細かく分岐していき、分岐後の各シナリオを読んでいくことで徐々に物語の真相がわかっていくという形式になっています。

 脱出ゲームのほか、ストーリーの中ではいわゆる「囚人のジレンマ」に題材を取ったようなゲームも展開され、信頼していた仲間に裏切られることもあれば逆にプレイヤーが裏切ることもあり、なかなかにシナリオは展開が大きいです。また複数のシナリオを跨ぐことで初めてシナリオの進行に必要なパスワードがわかるようにもなっており、ゲーム後半では文字通りに各シナリオの集大成のような展開となり、ただテキストを読んでいるだけでも結構熱くなってきます。
 ちなみにゲームの展開というかシナリオによっては一方的に裏切られて主人公が死ぬこともあれば、一緒に探索する仲間が殺されたりする展開も起こり得ます。果てには主人公以外全滅なんていう結構ショッキングな結末もあれば主人公とほか二人だけが監禁場所から脱出できたものの、ほかの人間は置き去りになるという展開もあって、全体的にはハードな結末が多いです。

 それでこっから私個人によるレビューとなりますが、まず一番言いたいことはそのテキスト量の膨大さです。私のエンディングまでのプレイ時間は約30時間ですが、これは今まで遊んだアドベンチャーゲームの中では異例なくらいに長いです。調べてみるとほかの人もクリアまで30時間程度かかったという人が多く、その誰もがテキストが膨大だったという感想を述べています。
 このテキストの膨大さはもちろん欠点ではなく、長く遊べるという意味ではむしろ長所です。しかしほかのレビュアーによっては複数のシナリオで似たような展開があったりするので、読んでて間延びするなどという評価も出ており、これには私も同感です。具体的に言えば、「そろそろあいつが病気で倒れる頃だな」とシナリオ途中で段々わかってきます。

 次に脱出パートについてですがこれは非常によく出来ており、一応難易度ハード(ハードとイージーしかない)で全問クリアしましたが、どれも時間をかければなんとか解けるものの要所要所で頭を使う必要があり、うまいこと脱出に成功したら軽くガッツポーズを取りたくなるような達成感が感じられます。ただ一部のパズルは明らかにヒントが少なすぎて余計な誤解生んだりするのもあり、特にサイコロの目を決まった位置に決まった目で置くというパズルではヒントの方角が曖昧だったため、解釈は正しかったものの配置方向が間違っていてなかなか突破できず苦労させられました。

 最後にシナリオの出来ですが、このゲームのシナリオライターはゲームの設定をシナリオに組みこむのが上手いと評価されているそうで、このゲームでもそれが如何なく発揮されています。具体的に述べればプレイヤーがプレイ途中で別のシナリオに「ジャンプ」するという設定を組み込んであり、理由づけといいシナリオの立て方は確かに腕の良さを覚えます。またゲーム終盤の怒涛の展開は息もつけないとはああいうもので、各シナリオにちりばめられていた細かい要素が一気に集まってはじけるような、人によっては多少のくどさを感じられるかもしれませんが真相が超スピードで明らかになるあの展開は大したものだと目を細められました。

 しかし、というかこのゲームの最大の賛否両論点でしょうが、最終的な結末に関しては確かに人を選ぶでしょう。多少ネタバレになりますがその結末というのはどんなものなのかというと、続編を前提にした結末になっています。大まかに書くと、「全ての真相は次のステージで明らかになる!」って具合でブン投げられており、一応主人公たちが何故監禁させられ、何故命を張ったゲームをさせられていたのかなどの理由は判明するものの、そのゲームの最終目的と結末に関しては「次回を待て!」で終わってしまうので、仮に次回作がこのまま出ないなら未完成作品として終わりかねません。事実、「善人シボウデス」の発売から約三年経っていますが、続編の噂は未だとんとありません。
 特にこの続編を前提とした結末で割を食っているのはヒロインで、他のキャラクターはほぼ完全にその来歴や目的といった人物像が最終的に明らかとなるものの、このヒロインだけは結局最後までどういう人物なのか、何故連れてこられたのかが不明なまま終わるなどかなり不遇な扱いです。どうもネットで見ていると、このシナリオライターはこういう尻切れトンボ的なシナリオを書くことで有名だそうです。

 以上がゲーム内容に関する感想でこっからは適当なことを書いていきますが、このゲームでは主人公を除き8人の主要人物+AI1体が出てきますが、どれも声優陣は豪華で、特に、「クレヨンしんちゃん」の園長先生役をやっていて昨年亡くなられた納谷六朗氏の演技は思うところもあって色々と耳に染みました。

 能登麻美子氏や田村ゆかり氏、TARACO氏など出演する声優のほぼ全員が実力者で構成されているのですが、この中でもその演技ぶりに一際驚いたのはヒロインの声を当てている小見川千明氏です。私は小見川氏の出演作だと「それでも町は廻っている」のアニメを以前に見ているのですが、この作品で主人公の嵐山歩鳥を演じる小見川氏の声は一度聴いたらまず忘れられないくらい特徴的なキンキン声で、演じるキャラクターには確かにはまっているからいいけどこんな特徴際立つキンキン声ならほかのキャラクターはまず演じられないだろう、要するに「ワンオフ声優」だろうと当時思っていました。
 しかし、この「善人シボウデス」で小見川氏が演じたヒロインの「ファイ」というキャラクターはクールで冷静沈着かつ毒舌な性格で、先ほどの元気だけが取り柄な天然ボケ系の性格した嵐山歩鳥とはまさに正反対なキャラクターであったものの、かなりイメージに近い声で見事な演技ぶりを見せています。特に要所で見せる絶叫系のセリフは聴くだけに切迫感を感じさせられるような見事な声の出し方で、こんな風に演じ分けが出来る器用な声優だったのかと一気に評価を改めさせられました。小見川氏は出演作が少ないだけに、もうちょっといろんなところに声出した方がいいのではと思うくらいに。

 ちなみに、声優の演技のうまさはさっき書いたように絶叫するセリフで差が出てくるように思います。絶叫というと大声を出せばいいだけでなくその状況に合わせた切迫感、怒り、恐怖といった感情をまとめて表現しなければならず、なおかつ発音もしづらい声の出し方なのでこの辺で実力の違いが一気に出てくると勝手に考えています。
 そんな私からして今まで聞いた絶叫系のセリフが上手い声優を挙げるなら、「キルラキル」というアニメで主人公役を演じた小清水亜美氏です。このアニメ自体、いつどのシーンでも誰もが絶叫しまくるというカオスなアニメでしたが、その中でも群を抜いているというか「この人どっから声出してんの?」と聞いてて不思議になるくらいに演技が上手かったです。もはやゲームのレビューなのか、声優の批評記事なのかわからない記事になってしまったなぁ。

2015年3月23日月曜日

リー・クアンユーの逝去について

 このところ気温の寒暖差が大きいせいか、それとも昨夜夜中二時までゲームし続けたせいかまた頭痛を起こして調子が悪いので、今日はパッと書ける時事ネタにします。それにしてもあのサイコロの謎解きは酷い……。

 あちこちで報道が既に出ていますが、名実ともにシンガポール建国の父といえるリー・クアンユー元首相がこのほど逝去されました。シンガポール自体がまだ若い国ということもありますが、建国からその独自発展の礎を築いた人物なだけにまたも世界の大物が去ったかという印象を覚えます。

 私自身はリー・クアンユーについてそれほど詳しくはないのですが、前の会社の上司が彼のあるインタビューを引用して「桁違い」だと高く評価していたことをよく思い出します。そのインタビュー内容というのは米国の9.11直後、この事件について感想を求められた時に答えた以下の一言です。

「テロリストと革命家というのは成功するか否か、紙一重の差に過ぎない」

 この場合のテロリストというのは言うまでもなくオサマ・ビンラディンを差し、後者に関してはいくつか候補はいますが無難な所だとキューバのカストロ議長あたりでしょう。

 この言わんとする内容はテロリストも革命も既存政権に対して過激な反抗行動を取るという点で一致しており、その後の政権奪取に成功すればそれは革命となるが失敗すればテロリストという犯罪者に終わるという意味で、本質的に両者は同じ存在だという意味です。

 この意見に対して肯定論も否定論もいくらでもあるでしょうが、9.11の感想を求められて用意していたかどうかは置いといてパッとこの一言を言えてしまう、しかもビンラディンなどの具体名は出さずにやれるあたりは並外れていると元上司は言っていました。私自身の評価も元上司と同じで、9.11の行為そのものが善か悪かという概念で見るのではなく、国家というシステムという枠で捉えるとすればその視点はやはり国家元首を務めた人物の物だという迫力を感じます。

 現在、シンガポールは小国ながら中継貿易と金融で世界のグローバル市場で確固とした地位を築くに至っております。個人的には完全なライバルである香港に思い入れがあるためこっちに頑張ってもらいたいものですが、このようなシンガポールという国を文字通り引っ張っていったリー・クアンユーに対し改めて敬意を払うと共に哀悼の意をこの場にて表明しようと思います。

2015年3月22日日曜日

ハゲ市場~広がる世界、広がるかつら

 きっかけは友人との会話中に出てきた何気ない一言からでした。

「アートネイチャーのかつらって、どこで作られているんだろ?」

 なんでこんなことを口走ったのかというと、この情報が無ければ「あなたのかつらはどこから?」、「私は○○から」という掛け合いが成立しないのではと考えたからです。もっともその時は本気で調べるつもりもなく適当に口走ったつもりでしたが、話を聞いていた友人がちょっとマジになってIR資料とか取り寄せて調べ始め、「どうやらマレーシア辺りで作っているらしいぞ」と報告してきたので、これはニュースになると思い引き継ぐ形で私も調査を始めました。

 ただかつら市場に対しては以前から興味があったというか調べてみたら面白そうな業界だとは認識していました。何故かというと男性が金額に糸目を付けずに欲しがって購入するものときたら昔は自動車でしたが近年は消費嗜好が変わりこれからも離れつつある一方、かつらに関しては未だに消費意欲が高いと方々で言われており、自分も会社作ろうとした時にこの方面で何か入り込めないかと思案していました。
 そのかつらですが、全くこの業界に関与していないのでほとんど知識はありませんが見るからに手作業で作ってそうな代物で、労働集約型産業の産物にしか見えない代物です。となると日本国内で生産すれば人件費が高くついて商売にならないだろうから、恐らく人件費の安い海外工場で作っているのでは。ならば日本で流通しているかつらはどこで作られ、どういう流通を経て消費者の手元へ届けられるのかがどんどんと気になり、また海外市場で日本のかつらは売られているのかも同時に知りたくなって折角だから気合入れて調査しようという結論へ至りました。

 調査に当たっては日本を代表するかつらメーカー二社のアートネイチャーとアデランスを調査対象に選び、この二社の動向から世界市場を分析することにします。

<両社の会社規模>
 調べるに当たってまず、調査対象の二社の企業規模をまとめました。結果は以下の通りです。

会社名
資本金額
従業員数
アートネイチャー
36億6,328万円
2,909人
アデランス
129億4,400万円
5,305人

 業界関係者の方には大変申し訳ないのですが、今回調査するまでこの二社は同じくらいの規模ではないかと勝手に考えていました。実際にはアートネイチャーに対してアデランスは資本金額は約3倍、従業員数も約2倍と大きく上回っており、業界大手同士とはいえ規模の違いがはっきり出ています。

<両社の直近の売上げ>
 会社規模でアデランスの方が大きいということはわかったので、それでは売上げはどの程度差があるのかについても調べました。アートネイチャーの会計期間は一般的な4月開始3月末締めですがアデランスは何故か3月開始2月末締めというちょっと変わった期間設定のため厳密な意味での同時期の営業成績というわけではありませんが、直近1年間のそれぞれの売上げと純利益を下記にまとめました。

会社名
期間
売上高
純利益
利益率
アートネイチャー
2013年4月~2014年3月
400.2億円
14.0%増
31.3億円
35.5%増
7.8%
アデランス
2013年3月~2014年2月
677.6億円
32.6%増
42.8億円
29.7%増
6.3%
※パーセンテージは前期比との比較

 見ての通りに会社規模が大きい分、売上高もアデランスがアートネイチャーを上回っております。ただ売上高に対する純利益の割合に当たる利益率ではアートネイチャーが7.8%とアデランスの6.3%を1.5ポイント上回っており、単純に売上高だけでは見えない両者の質の違いも出ております。
 それにしても両社とも売上げ、純利益ともに二桁超の増収増益で、一見して「やっぱ儲かってるんだなぁ」という妙な頼もしさを覚えます。今時30%超も当たり前のように増益する業界もあるのだと惚れ惚れする成績ぶりです。

 上記データは直近会計年度1年間の営業成績で、今度は今期第1~3四半期(Q1~Q3)の営業成績を見比べてみましょう。

会社名
期間
売上高
純利益
利益率
アートネイチャー
2013年4月~2014年12月
298.9億円
3.5%増
16.2億円
32.2%減
5.4%
アデランス
2014年3月~2014年11月
560.5億円
15.9%増
41.2億円
39.2%増
7.4%
※パーセンテージは前年同期比との比較

 こちらのデータははっきりと両社に差が出ており、アートネイチャーの売上げは微増に留まり純利益は-32.2%と大幅に減少している一方、アデランスは依然と二桁超の増収増益を達成しており、利益率でもアートネイチャーを逆転しています。実はこの両社の数字にはからくりがあり、口述しますがアートネイチャーはカンボジア工場の新規投資で資金を使っており、アデランスに関してはアベノミクスの追い風というか円安の恩恵を多大に受けている節があります。
 それにしてもこういう記事を書いていると毎日財務諸表を見ていた経済記者時代を思い出すなぁ。よくこういう表も作ってたもんだから我ながら手慣れたもんだし。

<海外展開>
 いよいよ本番の話です。両者の海外展開に関しては姉妹サイトの「企業居点」の方で早速昨日、保有する海外法人をまとめてアップしたので以下をご参照ください。

アートネイチャーの海外拠点
アデランスの海外拠点(どちらも「Comlocation 企業居点」より)

 結果を述べるとアートネイチャーが海外6拠点に対しアデランスは21拠点と大きく引き離しており、またアートネイチャーはアジア地域でしか展開していないのに対してアデランスは欧州、北米でも手広く販売網を広げているため、海外展開に関しては間違いなくアデランスが大きく先を走っている状態です。この点はアートネイチャーも自覚している節があり、今季上半期決算のプレゼン資料を見ると海外展開の注力を今後の課題と目標に掲げています。
 では海外の生産工場はどこにあるのか。これについては別にまとめましたので以下をご覧ください

・アートネイチャーの海外工場:フィリピン、マレーシア、カンボジア(現在建設中?)
・アデランスの海外工場:タイ、フィリピン、ラオス

 自分の予想通りというか、如何にも人件費が安そうな国にそれぞれ立地しております。被っているところはフィリピンであとは恐らく相手先を懸念してかそれぞれ異なっていますが、何気にラオスの日系現地法人はかなりレアなので見つけた時は「ワォ」とアメリカ人みたいに驚いた振りしました。
 アートネイチャーのカンボジア工場は今年に設立して恐らく今頃はまだ工場建設の最中であると思われます。Q3の決算報告書では今期の減益理由はこの工場の建設投資にあると説明しており、前年からの大幅な目減りの仕方を見ると恐らくその理由が事実で間違いないでしょう。

<海外販売>
 国内と海外の販売比率に関してはアートネイチャー側は資料で公開していないため、アデランス側の公開資料にあるデータを紹介します。
 同社の今期Q1~Q3の売上げは560.5億円(前年同期比15.9%増)に対し国内売上げは310.4億円(同5.9%増)、海外売上げは250.1億円(同31.3%増)で、国内外の販売比率は「国内:海外=55.4:44.6」となります。

 このデータは私個人としてはなかなか驚かされるデータでした。アデランスの売上げの半分近くは海外から出ており、しかも同社はヨーロッパ各地に販社を持っているだけあって同地域での売り上げをかなり大きく出しております。また北米でも2012年に米国かつらメーカー大手のヘアクラブという会社を買収して市場展開を一気に進めようという意欲も感じるなど、総じて海外展開に積極的な企業と言えそうです。
 また海外販売が大きいということは円安による為替差益も得やすいということで、実際に決算資料をみるとQ1~Q3における為替差益は32億円だと発表しており、陰に隠れてアベノミクスの恩恵を多大に受けております。

 その逆にといってはなんですが、アートネイチャーは円安が逆風となっている節があります。同社の上半期決算資料を見ると減益理由について「人件費が11.2%増加した」と書かれてあり、メイン工場が海外にあることを考えると円安による海外現地社員の給与が増大したのではないかと見られます。アデランスも海外工場で生産をしていますが、同社は生産と同時に海外での販売も行っているだけに、ここで円安による影響が両社で別れたとのではないかと思います。

<その他雑考>
 このほかネタになるデータはないかとそれぞれの決算資料を見ましたが、両社ともに決算資料で「被る方のかつら」よりも取り付けて使う「ウィッグ」の販売強化を強く打ち出しております。恐らく「被る方のかつら」は完全オーダーメイド品のため単価が高いため拡販が難しい一方、ウィッグはオシャレファッションとして認知が広がってきはじめ単価も安いことから拡販しやすいためではないかと考えられます。実際に両社の中国法人のホームページでは女性用ウィッグをメインに打ち出しており、海外市場はやっぱりこれメインで行くつもりでしょう。

 では被る方というかオーダーメードかつらはどうなんだろうと見てみたところ、なんでもアートネイチャーの消費者の男女比は6:4に対してアデランスは4:6だと発表しており、両社で男女比が対照的な感じで分かれて面白かったです。更にアートネイチャーの資料によるとオーダーメイドかつらの売上げのうち、新規とリピーターの割合は「22.6:77.4」と、圧倒的にリピーターの割合が高いことがわかり、営業社員も末永く利用してもらうようサービスの向上に努めるというような文言も書かれてありました。
 元々かつらは単価が高く、通の間では「頭にベンツを載せている」というおっさん臭い例えもされており、実際に高級車を売るような販売のされ方がされているのかもしれません。

 更にアートネイチャーではオーダーメイドかつらの作り方もホームページで紹介されており、多分そうじゃかと思っていましたがやっぱり3Dスキャナみたいな装置で頭の型枠データを取り、その後で職人が毛髪を一本一本埋め込んでいくという作り方がされているようです。埋め込む毛髪は天然素材というか多分人間から取った髪のほか、原価圧縮のため人口毛髪も使われており、この配合比をどうするかというのが技術的な分かれ目となるそうです。
 勝手な予想ですが今後技術が発達すれば恐らく、3Dスキャナで採ったデータから3Dプリンタで型枠が作られ、そのまま毛髪も自動的に生成されてドローンで購入者の所(頭の上)まで運ばれる時代が来ると思います。

 このほかほんとどうでもいいことを書くと、やっぱり会社としてはアデランスの方がしっかりしてそうという印象を覚えます。というのもアートネイチャーの決算資料は一部見辛い所があり、純利益よりも営業利益の解説に重きが置かれていて個人的に「なんやねん」とか思いました。あとアートネイチャーのホームページは英語表記切り替えボタンもないし、全体的にアデランスの方が大人な会社の印象を覚えます。

 そのアデランスですが、ホームページ上では会社の経営スローガンのつもりなのでしょうけど「クレド(信条)」というページがあり、そこに書かれている言葉には「ありがとう・・・あふれる感謝を形にしよう」という、ちょっと一読して「んん?」となる言葉が書かれてます。そもそも、クレドって何語やねん。
 こんな感じでちょっと「んん?」ってなるアデランスのホームページですが、「CSR活動」のページでは昨年12月、病院に入院していて自宅に帰れない子供たちに対してサンタやトナカイに扮した職員が病院を訪問し、プレゼントを渡すという取り組みを行ったことが報告されています。この活動はオーガニック的なアニメ風にいうなら「イエスだね!」と賞賛したくなる活動で、こちらはアデランスを心底見直しました。

  おまけ
 中学、高校時代、薄毛に悩む友人によく、キャンディーズの「春一番」の替え歌で、「もうすぐは~げますね~、ちょっとリアップしませんか♪」とみんなで歌っていました。今思うと酷なことをしたと思います。

  おまけ2
 この記事を書くため両社のホームページ何度も言ってたから、ネットのバナー広告でやたらとかつらを薦められるようになりました。別に全く必要としてないし。