先日就任式を終えた米国のトランプ大統領についてこのところ様々な報道が飛び交っています。Yahooニュースなどをみるとトランプという名がついた記事見出しが五月雨の如く表示されており、彼の名を見ないで済む日は今後しばらくはないでしょう。
そんなトランプ関連の報道を見て私が感じることをありのままに述べると、「あいつは今どうしてるんだろうか?」ということでした。
・トランプマン(Wikipedia)
覚えている人も多分多いのではないかと思いますが、テレビ番組「なるほどザ・ワールド」に90年代レギュラー出演していたマジシャンです。今時分、デーモン閣下と鉄拳くらいしかやってないような顔面白塗りに妙な眼鏡をつけ、その芸名の通りにトランプを使った手品を番組後半のクイズコーナーで毎週披露していました。
未だに彼の事を思い出すのはやはりその印象が強かったせいだと思いますが、見かけ以上に番組中では一切何も話さず、黙々と手品を見せるその仕事人っぷりが非常に見栄えがよかったと記憶しています。実際には隠し芸番組などの指導役となる際には少し喋っていたそうなのですが、寡黙なマジシャンというのはそれだけでも存在感が際立ちます。
っていうか全くトランプ大統領と関係ないじゃんとか言われそうですが、こうも毎日トランプトランプという文字を見せられて私の中で浮かんできたのはこのトランプマン以外いませんでした。
・謎のマジシャン・トランプマンが“日米トランプ”会談を熱望(スポーツ報知)
などと思っていたらスポーツ報知がまさに私の思いを代弁してくれるかのようにトランプマン本人に米大統領選の直後にインタビューをしてくれていました。またトランプ大統領へのコメントも地味に知性を感じさせる落ち着いたもので、「ああ、これやっぱりトランプマンだよ」と変に懐かしさがこみ上げてきました。
もし仮にトランプ大統領が日本に来ることあれば、是非ともこのトランプマンにお迎えさせてもらいたいものです。それにしてもこのネタで記事一本本気で書く当たり自分も色々とおかしいなという気がします。
ここは日々のニュースや事件に対して、解説なり私の意見を紹介するブログです。主に扱うのは政治ニュースや社会問題などで、私の意見に対して思うことがあれば、コメント欄にそれを残していただければ幸いです。
2017年1月23日月曜日
人材派遣業界のマージン率とそのデータ 2017年版
※最新のデータについてはこちらを参照ください。
なんかもう前置きの説明をするのも色々と面倒くさく感じてきたので簡単に行くと、今年も例年通りに派遣業界のマージン率を調べ終えました。そもそも派遣のマージン率とは何ぞやという方はまず下のコラムを見ていただければ私の代わりに説明してくれています。
・第5回 派遣会社のマージン率等の公開(日本経営合理化協会)
・派遣のマージン率について少し掘り下げてご説明します。(『ピンハネ屋』と呼ばれて)
今回で派遣会社に公開が義務付けられているマージン率の調査は予備調査を含めると四回目に当たり、特に誰かから報酬をもらうわけでもなく義務的に四年間もやり続けていて気分はもう一人NPOです。昨年1月は転職、引越し、ネットトラブルなどあらゆる困難にぶつかりながら月末ギリギリに記事をアップするなど障害が多かったもののもテンションが高かったことから一気に走り通せましたが、今年はなんかのんびり構えてしまってふんだんに昼寝しつつ調査して、トラブルなんかないのに集計調査に二週間もかけてしまいました。まぁ手間取った分、調査サンプル数はかなり膨大に増えてるんですが。
そういう御託はおいといて、いよいよ今年の調査結果の発表です。驚きの結果は以下の通りです。
※括弧内の数字はすべて昨年の調査データ
調査概要
・調査期間:2017年1月3日~1月17日
・調査対象企業:一般社団法人日本人材派遣協会(JASSA)の登録企業ほか大手数社
・調査サンプル企業数:643社(579社)
・リストアップ事業所数:1,793拠点(1,082拠点)
・調査方法:インターネットを使い該当情報の有無を各社ホームページ上で確認。
調査結果
・マージン率の公開率:24.6%(18.0%)
・最大値:株式会社ニチイ学館 平塚支店、63.5%
(旭化成アミダス株式会社 IT事業グループ、51.0%)
・最低値:株式会社日本プレースメントセンター、16.1%
(株式会社インテリジェンス 中国支社、12.0%)
・前期比変動幅平均:+0.9ポイント(+0.7ポイント)
※前期比変動幅とは、昨年もデータを公開していた事業所の今年と昨年のマージン率差平均。
≪労働者派遣に関する料金の平均額(8時間)≫
・平均値:15,049円(16,509円)
・最大値:株式会社メディカルリソース 名古屋支店、46,797円
(株式会社メディカルリソース 名古屋支店、45,108円)
・最低値:株式会社フルキャスト 三宮営業課、9,362円
(株式会社シグマスタッフ 大宮支店、7,847円)
≪「派遣労働者の賃金の平均額(8時間)≫
・平均値:10,449円(11,457円)
・最大値:株式会社メディカルリソース 名古屋支店、30,389円
(株式会社メディカルリソース 名古屋支店、28,376円)
・最低値:株式会社テクノ・サービス 秋田、6,463円
(株式会社プレステージ・ヒューマンソリューション 山形事業所、6,400円)
データ注意事項
1、マージン率で少数点第二位以下の数値は四捨五入で処理。
2、マージン率が「0%」以下の事業所は統計目的上、各種計算では除外対象。
3、マージン率数値は各社が発表している直近年度のデータを引用。
4、2015年12月末より前のデータしか公開していない企業は原則、「×」評価。
5、公開データの対象期間が明らかでない会社は原則、「×」評価。
6、本社で派遣事業を行っていない企業は便宜上、適当と思われる事業所を「本社」として扱う。
・調査データPDFのダウンロード
(データの公開は終了しました。必要な方はご連絡ください)
解説
≪マージン率の公開率について≫
昨年、一昨年と20%を下回っていたマージン率の公開率ですが、今年は一挙に24.6%と前年比6.6ポイントの急上昇を遂げ、5社中1社から4社中1社の公開割合に達しました。もっとも公開が法律で義務付けられていることを考えると、それでも低い数字に見えますが。
一体何故昨年にこれだけ公開する会社が増えたのかというとからくりがあり、昨年9月に厚生労働省が以下のガイドラインを新たに公布したからです。
・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省)
平成24年改正労働者派遣法の中でもマージン率などの情報は公開が義務付けられていましたが、同法では公開方法について「ネットなどを活用して」と書かれてあり、この「など」という文言を盾にとってホームページなどでは公開せず事業所に来ればデータを見せることで義務を満たす事になると主張する派遣企業が後を絶ちませんでした。誰でも見られるというレベルの公開という観点から常々私は原則ホームページでの開示を訴え続け本調査も行い続けたのですが、そうした私の声が届いたのかどうかはわかりませんが、上記の新ガイドラインでは、
「特に、マージン率の情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること。」
と、明記されたことにより、ネットでマージン率を公開しなければ完全な法律義務違反になることが確定したため、大手を中心に今年から一気に公開へ転じる派遣企業が続きました。実際に私が直接取材した所、リクルートスタッフィング、スタッフサービスは公開に転じた理由についてまさに上記ガイドラインの存在を指摘していました。
なおこのガイドラインの存在ですが、昨年にデータを公開したばかりのリクルートスタッフィングへ取材した際に初めてその存在を私は知りました。自分は派遣業界と何の関わりもないだけにこの時の情報は非常に得難く、またこのガイドラインの存在を知ったことにより今年の調査・取材方針を定める上で大きな支援となっただけに、勝手ながら今年度調査のMVPこと最も貢献してくれた会社にはリクルートスタッフィングさんを挙げさせていただきます。マジで取材ご協力ありがとうございました。
≪平均マージン率について≫
次はマージン率そのものについてですが、見ての通り単純に上昇したと考えてもらえばよく、業界の平均はこれまでの20%台後半から30%になったと言っていいでしょう。全体平均、前期比変動率ともに約1ポイント上昇しており、どの派遣業種に限らずとも上がったと見るべき数字です。
マージン率が上昇した背景としては、基本的に派遣のマージン率は派遣料金、派遣労働者賃金に比例して上がる傾向となっているため、昨今言われるように人手不足などから全体の賃金が上昇傾向にあることから上がったのではないかと思われます。もっともそう言いつつ、自分で統計取ったデータを見ると派遣料金、賃金ともに平均は昨年より下がっちゃってて矛盾しているのですが、この背景については後述します。
また個別のマージン率について少し触れておくと、これまでにもくどいように述べていますが「マージン率が高い、即悪徳業者」という図式は成り立ちません。派遣料金の高い派遣、特にエンジニア派遣では研修費など派遣労働者のために派遣会社が支払いながらマージン率に含まれる費用が大きくなる傾向があり、派遣労働者に対し手厚い措置を行えば行うほどマージン率が高くなるということがあります。重要なのはマージン率そのものを見るのではなくその内訳、特に派遣料金とマージン率をしっかり比較することで、具体的に言えば派遣料金が低いにも関わらずマージン率が高い所には要注意といった結論となります。もっとも、公開していない派遣企業に至っては論外ですが。
≪労働者派遣に関する料金、派遣労働者の賃金≫
昨年からデータを取り始めた両項目ですが、どちらも昨年に引き続き「株式会社メディカルリソース 名古屋支店」が二年連続トップという偉業を達成しました。ここはあとで詳しく述べますがマージン率0.1%当たりの派遣料金で割り出す「マージンポイント」でも平均を遥かに上回り堂々のトップとなり、こと派遣労働者の手取り給与に限ってみればもっとも効率のいい事業所とみていいでしょう。
一方、賃金で最低となった「株式会社テクノ・サービス 秋田」は6,463円でしたが、最低賃金とか大丈夫なのかとちょっと見てて心配になってくる数字です。っていうか派遣されてこの賃金だったら、直接雇用のアルバイトとかの方がいいような……。
≪大手派遣会社の公開状況≫
毎度の調査でお馴染みの派遣大手の公開状況ですが、改めて昨年の記事を読み返すと自分の知っている大手だけを並べてて、ランスタッドとかを入れてなかったなという事実に気が付きました。その辺を含め、注目の大手企業のホームページ上におけるマージン率などの公開状況は以下の通りです。
<昨年からずっと公開し続けている>
・テンプホールディングス系列(テンプスタッフ、インテリジェンス)
・アデコ
<今年から公開>
・パソナ
・フルキャスト
・スタッフサービス
・ニチイ学館
・マンパワーグループ
・ランスタッド
・リクルートスタッフィング
<マージン率のみを公開(派遣料金・賃金は非公開)>
<未だ非公開>
・マイナビ
・ライクスタッフィング(旧ジェイコム)
・ザ・アール
調査開始当初から一貫して情報を公開しつづけているテンプホールディングス系列については言うに及ばず、他の所に先駆け去年から公開していたアデコは情報公開に熱心な会社だと私からも太鼓判を押します。
一方、今年から公開に転じた大手各社は上記の通り9社です。公開に転じたうち、マンパワーグループとメイテックはデータを昨年調査時にデータを請求したらホームページ上で開示こそしてなかったもののすんなり情報をくれたので、連絡しなかったアルプス技研を除き他の請求したにもかかわらず返信すらよこさなかった面々と比べれば私の中のこの二社への評価は高いです。なおリクルートスタッフィング、スタッフサービスについては今年の取材時に昨年請求した際には返信がなかったことを伝えたところ、「送受信時のエラーが疑われる」、「前任担当者が既にいないため」と理由をつけた上で素直に申し訳なかったと詫びられたので、私の中では既に水に流れています。
<ザ・アールについて>
実は処遇について悩んだ大手はこのザ・アールでした。ここは昨年にデータを請求した際に即日でデータをすぐ送ってくれた会社だったので、恐らく今年も請求したらすぐ送ってくれたと思います。しかし前述の通り既にガイドラインでネットでの常時公開が原則となっている今、ザ・アールの公開状況は規定に反している状況であるため、昨年取材に協力してくれた手前いくらか心苦しいものの今年は敢えて公開請求を行わずに「非公開」として扱いました。
<マイナビ、ライクスタッフィングについて>
残りの非公開二社についてですが、どちらにもその公開姿勢を問うため電話取材を敢行しました。その結果、マイナビについてはいくらかのやり取りを経てマージン率などのデータを送ってきたため、今年度の調査データにはそのデータを加えてあります。一方、ライクスタッフィングについてはデータすら得られなかったという結果となりました。両社への取材過程、その回答内容については別記事で取り上げます。
<独自姿勢を見せたメイテック、アルプス技研>
今回の調査中、ホームページ上でデータを公開した大手企業の中で異彩を放っていたのはエンジニア派遣の両雄ことメイテックとアルプス技研でした。具体的に述べると、マージン率だけしか公開せず派遣人数や拠点、派遣料金や賃金を公開していません。
どちらもエンジニア派遣大手でありまた公開方法が似通っていたこと、またメイテックさんについては昨年の調査時において非常に協力的且つ情報公開についても隠そうという素振りが見られなかったことから、「何か理由があるだろう」と踏んで、今年もメイテックさんに取材を行いました。
今年、マージン率のみという公開方法を取った理由についてメイテックさんに聞いてみたところ、まずホームページ上で公開に転じたのはやはり例のガイドラインによるものとした上で、当該ガイドラインでネット上での公開が義務付けられている情報にはマージン率だけしか書かれていないため、このような公開方法を取ったという回答を受けました。その上でメイテックさんは、派遣労働者の方々には全情報を常々公開しており、また請求があれば誰にでもすぐデータを公開すると述べ、実際にサンプルとして直近の秋葉原事業所のデータを何も言わずに送って来てくれました。折角だから下記に記載しておきます
「メイテック秋葉原オフィス」
・派遣労働者の人数(一日平均):622人
・派遣先の実数:209件
・派遣料金の平均額(8時間):42,515円
・派遣労働者の賃金の平均額(8時間当たり):25,057円
・マージン率:41.1%
確かにメイテックさんの言う通り、ガイドラインにはネット上の公開が原則としている情報にはマージン率しかありません。その上でメイテックさんは情報公開には熱心であり、断言しますがメディア対応も明らかに他と比べて手厚く、今年のメールのやり取りでも冒頭から、「昨年はお世話になりました」と、昨年しつこく聞きまわったせいもあるでしょうが向こうの広報は私の事を覚えていてくれました。
そうした背景を考えると、今回メイテックさんがこうした対応を取ったことについて私も理解できます。ただリサーチャーの立場として、また派遣大手として範を示すべき企業であることを踏まえ、可能ならば派遣料金などすべてを公開してほしいという要望は伝えました。
<NEOAの見解>
・労働者派遣法におけるマージン率についてのNEOAの考え方(一般社団法人日本エンジニアリングアウトソーシング境界、NEOA)
メイテックさんとアルプス技研のマージン率のデータ公開シートにはどちらも、「※当社が加盟する業界団体における、マージン率の考え方について」という文言と共に上記NEOAのリンクが添付されていました。メイテックさんは取材時にはっきりとは明言しなかったものの、あくまで私の推測で述べれば当該シートに書かれてある以下の文言が今回の公開方法に影響したのではないかと見ています。
「NEOAでは、派遣法上で定められたマージン率という数値には、上記の福利厚生やキャリアアップ支援等の費用が含まれている為、当該マージン率が派遣労働者の処遇を的確に表現しているものではないと考えます。」
既に先にも述べていますが、マージン率には研修費や有給費用、あと会社によっては交通費など派遣労働者のために派遣会社が支払う費用も含まれています。よくマージン率はその数字そのものが派遣会社の取り分だと勘違いされがちですが、実際にはそこからさまざまな経費が差し引かれる上、上記の様に派遣労働者の福利厚生を手厚くすると同時に上昇してしまいます。
こうした観点から上記の意見は私も同感であり、またリツアンSTCの野中社長などもマージン率ではなく派遣労働者への還元率といった数値を公開すべきだと常々述べていますが、研修費などが特にかかり見かけ上のマージン率が高くなりがちなエンジニア派遣大手という立場から、今回メイテックとアルプス技研はマージン率以外のデータをホームページ上で公開しなかったのではと考えられます。
<ニチイ学館のマージン率について>
ようやく最後の特記項目ですが、まずは今年と昨年における派遣料金とマージン率の相関に関する全データ散布図をご覧ください。なおこの散布図の案は昨年データを見た方からメールで送って知らせてもらったものであり、当時送ってくれた方にはマジ感謝です。
・2016年データ散布図
・2017年データ散布図
2016年データは見ての通り派遣料金とマージン率が正比例するかのように近似線が綺麗に右斜め上を向いています。一方、2017年データだと一応右斜め上は向いているものの、その傾きが極端に平べったくなってしまいました。
一体何故ホワイという状況ですが、犯人というか原因は何かというと昨年に比べ、派遣料金が低いにもかかわらずマージン率が極端に高いデータが大量に追加されデータが歪んだからです。そのデータを歪ませた犯人というのも、はっきり名指ししますが今年からデータ公開に転じた介護系派遣大手のニチイ学館です。
あくまで私個人の意見ですが、マージン率が40%を超える様な事業所の平均派遣料金は普通2万円や3万円は超すのが自然だと思います。しかしというかなんというかニチイ学館はさにあらず、正直に述べますが最初データを見た時に、「えっ、マジこれ?」って感じで絶句しました。
リンクを貼った私のデータでもいいですし直接ニチイ学館のホームページを見てもらってもいいですが、端的に言ってどの拠点もマージン率が極端に高いにも関わらず派遣料金・賃金が極端に低いです。平塚支店に至っては今年のマージン率調査において最大値となる脅威の63.5%を記録し、調査しておきながらなんですがよくこの数値を隠さず公開したなという気すらします。
そこで今回、一体これらニチイ学館の拠点はどれだけ歪なデータなのか証明してみようと、あらたに「マージンポイント」というデータを作成してみました。これはマージン率0.1%に対し派遣料金がいくらなのかを示そうとしたデータで、計算式は以下の通りとなります。
・マージンポイント=派遣料金÷(マージン率×1000)
派遣料金とマージン率が比例するという前提であれば、マージン率が上がると共にマージン率も上昇し、上記の数式である程度は「このマージン率に対する適切な派遣料金」らしい数値が出せるのかなと思って作りました。ただ細かい点などは一切考慮しないデータのため、あくまで参考程度にお考えください。
計算した結果、このマージンポイントの平均値は51.2ポイントでした。ちょうど平均に一致した拠点の派遣料金とマージン率は以下の通りです。
・株式会社KOSMO:14,088円、27.5%
・ヤマトWebソリューションズ株式会社 大阪オフィス:13,117円、25.6%
料金、マージン率は両拠点で異なるものの、マージン率に対する水準という意味で両データは一致するというわけです。なおこのマージンポイントの最大値は133.3で、派遣料金・賃金で二年連続して最大となった「株式会社メディカルリソース 名古屋支店」でした。
一方、最低値というかワーストランキングはほぼニチイ学館の拠点で占められており、以下にワーストトップテンとそのデータを掲載します。
マージンポイントはあくまで参考値ですが、どうしてこのような派遣料金とマージン率になるのかニチイ学館は説明しなければならないデータではないかと思われます。一社だけあげつらうのも悪いと思うのでもう一社挙げておくと、スタッフサービス系列の株式会社テクノ・サービスもマージンポイントが極端に低い拠点ばかりです。
以上で、今年度のマージン率調査報告を終えます。公開していない大手各社、並びに書き残した点はまた別記事で取り上げます。本当は記事を分けたかったんだけど、記事分けると極端にアクセス数悪くなるので目いっぱい詰め込みましたが、書いててほんましんどかった。っていうか今年は公開する会社が大量に増えてたため調査の手間も増え、矛盾することはわかっていながら「公開してんじゃねーよくっそう(;Д;)」と言いつつ調査してました。
なんかもう前置きの説明をするのも色々と面倒くさく感じてきたので簡単に行くと、今年も例年通りに派遣業界のマージン率を調べ終えました。そもそも派遣のマージン率とは何ぞやという方はまず下のコラムを見ていただければ私の代わりに説明してくれています。
・第5回 派遣会社のマージン率等の公開(日本経営合理化協会)
・派遣のマージン率について少し掘り下げてご説明します。(『ピンハネ屋』と呼ばれて)
今回で派遣会社に公開が義務付けられているマージン率の調査は予備調査を含めると四回目に当たり、特に誰かから報酬をもらうわけでもなく義務的に四年間もやり続けていて気分はもう一人NPOです。昨年1月は転職、引越し、ネットトラブルなどあらゆる困難にぶつかりながら月末ギリギリに記事をアップするなど障害が多かったもののもテンションが高かったことから一気に走り通せましたが、今年はなんかのんびり構えてしまってふんだんに昼寝しつつ調査して、トラブルなんかないのに集計調査に二週間もかけてしまいました。まぁ手間取った分、調査サンプル数はかなり膨大に増えてるんですが。
そういう御託はおいといて、いよいよ今年の調査結果の発表です。驚きの結果は以下の通りです。
※括弧内の数字はすべて昨年の調査データ
調査概要
・調査期間:2017年1月3日~1月17日
・調査対象企業:一般社団法人日本人材派遣協会(JASSA)の登録企業ほか大手数社
・調査サンプル企業数:643社(579社)
・リストアップ事業所数:1,793拠点(1,082拠点)
・調査方法:インターネットを使い該当情報の有無を各社ホームページ上で確認。
・マージン率の公開率:24.6%(18.0%)
≪マージン率≫
・平均値:30.6%(29.3%)・最大値:株式会社ニチイ学館 平塚支店、63.5%
(旭化成アミダス株式会社 IT事業グループ、51.0%)
・最低値:株式会社日本プレースメントセンター、16.1%
(株式会社インテリジェンス 中国支社、12.0%)
・前期比変動幅平均:+0.9ポイント(+0.7ポイント)
※前期比変動幅とは、昨年もデータを公開していた事業所の今年と昨年のマージン率差平均。
≪労働者派遣に関する料金の平均額(8時間)≫
・平均値:15,049円(16,509円)
・最大値:株式会社メディカルリソース 名古屋支店、46,797円
(株式会社メディカルリソース 名古屋支店、45,108円)
・最低値:株式会社フルキャスト 三宮営業課、9,362円
(株式会社シグマスタッフ 大宮支店、7,847円)
≪「派遣労働者の賃金の平均額(8時間)≫
・平均値:10,449円(11,457円)
・最大値:株式会社メディカルリソース 名古屋支店、30,389円
(株式会社メディカルリソース 名古屋支店、28,376円)
・最低値:株式会社テクノ・サービス 秋田、6,463円
(株式会社プレステージ・ヒューマンソリューション 山形事業所、6,400円)
データ注意事項
1、マージン率で少数点第二位以下の数値は四捨五入で処理。
2、マージン率が「0%」以下の事業所は統計目的上、各種計算では除外対象。
3、マージン率数値は各社が発表している直近年度のデータを引用。
4、2015年12月末より前のデータしか公開していない企業は原則、「×」評価。
5、公開データの対象期間が明らかでない会社は原則、「×」評価。
6、本社で派遣事業を行っていない企業は便宜上、適当と思われる事業所を「本社」として扱う。
データ一覧
2017年
|
2016年
|
説明
|
||
情報公開サンプル
事業所数
|
1,260件 | 607件 | マージン率を公開している事業所数。 | |
サンプル
企業数
|
643社 | 579社 | 調査対象企業数。 |
2017年
|
2016年
|
2017年該当事業所
|
||
派遣人数
(1日平均)
|
平均
|
320人 | 262人 |
―
|
最大
|
23,870人 | 6,099人 | 株式会社リクルートスタッフィング 銀座本社 | |
派遣先数
|
平均
|
200件 | 200件 |
―
|
最大
|
10,627件 | 4,581件 | 株式会社リクルートスタッフィング 銀座本社 | |
労働者派遣に
関する料金の
平均額(8時間)
|
平均
|
15,049円 | 16,509円 |
―
|
最大
|
46,792円 | 45,108円 | 株式会社メディカルリソース 名古屋支店 | |
最低
|
9,362円 | 7,847円 | 株式会社フルキャスト 三宮営業課 | |
派遣労働者の
賃金の平均額
(8時間)
|
平均
|
10,449円 | 11,457円 |
―
|
最大
|
30,389円 | 28,376円 | 株式会社メディカルリソース 名古屋支店 | |
最低
|
6,463円 | 6,400円 | 株式会社テクノ・サービス 秋田 | |
マージン率
|
平均
|
30.6% | 29.3% |
―
|
最大
|
63.5% | 51.0% | 株式会社ニチイ学館 平塚支店 | |
最低
|
16.1% | 12.0% | 株式会社日本プレースメントセンター | |
前期比マージン増減率
|
+0.9P
|
+0.7P
|
―
|
|
情報公開率
|
24.6% | 18.0% |
―
|
・調査データPDFのダウンロード
(データの公開は終了しました。必要な方はご連絡ください)
解説
≪マージン率の公開率について≫
昨年、一昨年と20%を下回っていたマージン率の公開率ですが、今年は一挙に24.6%と前年比6.6ポイントの急上昇を遂げ、5社中1社から4社中1社の公開割合に達しました。もっとも公開が法律で義務付けられていることを考えると、それでも低い数字に見えますが。
一体何故昨年にこれだけ公開する会社が増えたのかというとからくりがあり、昨年9月に厚生労働省が以下のガイドラインを新たに公布したからです。
・派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針(厚生労働省)
平成24年改正労働者派遣法の中でもマージン率などの情報は公開が義務付けられていましたが、同法では公開方法について「ネットなどを活用して」と書かれてあり、この「など」という文言を盾にとってホームページなどでは公開せず事業所に来ればデータを見せることで義務を満たす事になると主張する派遣企業が後を絶ちませんでした。誰でも見られるというレベルの公開という観点から常々私は原則ホームページでの開示を訴え続け本調査も行い続けたのですが、そうした私の声が届いたのかどうかはわかりませんが、上記の新ガイドラインでは、
「特に、マージン率の情報提供に当たっては、常時インターネットの利用により広く関係者とりわけ派遣労働者に必要な情報を提供することを原則とすること。」
と、明記されたことにより、ネットでマージン率を公開しなければ完全な法律義務違反になることが確定したため、大手を中心に今年から一気に公開へ転じる派遣企業が続きました。実際に私が直接取材した所、リクルートスタッフィング、スタッフサービスは公開に転じた理由についてまさに上記ガイドラインの存在を指摘していました。
なおこのガイドラインの存在ですが、昨年にデータを公開したばかりのリクルートスタッフィングへ取材した際に初めてその存在を私は知りました。自分は派遣業界と何の関わりもないだけにこの時の情報は非常に得難く、またこのガイドラインの存在を知ったことにより今年の調査・取材方針を定める上で大きな支援となっただけに、勝手ながら今年度調査のMVPこと最も貢献してくれた会社にはリクルートスタッフィングさんを挙げさせていただきます。マジで取材ご協力ありがとうございました。
≪平均マージン率について≫
次はマージン率そのものについてですが、見ての通り単純に上昇したと考えてもらえばよく、業界の平均はこれまでの20%台後半から30%になったと言っていいでしょう。全体平均、前期比変動率ともに約1ポイント上昇しており、どの派遣業種に限らずとも上がったと見るべき数字です。
マージン率が上昇した背景としては、基本的に派遣のマージン率は派遣料金、派遣労働者賃金に比例して上がる傾向となっているため、昨今言われるように人手不足などから全体の賃金が上昇傾向にあることから上がったのではないかと思われます。もっともそう言いつつ、自分で統計取ったデータを見ると派遣料金、賃金ともに平均は昨年より下がっちゃってて矛盾しているのですが、この背景については後述します。
また個別のマージン率について少し触れておくと、これまでにもくどいように述べていますが「マージン率が高い、即悪徳業者」という図式は成り立ちません。派遣料金の高い派遣、特にエンジニア派遣では研修費など派遣労働者のために派遣会社が支払いながらマージン率に含まれる費用が大きくなる傾向があり、派遣労働者に対し手厚い措置を行えば行うほどマージン率が高くなるということがあります。重要なのはマージン率そのものを見るのではなくその内訳、特に派遣料金とマージン率をしっかり比較することで、具体的に言えば派遣料金が低いにも関わらずマージン率が高い所には要注意といった結論となります。もっとも、公開していない派遣企業に至っては論外ですが。
≪労働者派遣に関する料金、派遣労働者の賃金≫
昨年からデータを取り始めた両項目ですが、どちらも昨年に引き続き「株式会社メディカルリソース 名古屋支店」が二年連続トップという偉業を達成しました。ここはあとで詳しく述べますがマージン率0.1%当たりの派遣料金で割り出す「マージンポイント」でも平均を遥かに上回り堂々のトップとなり、こと派遣労働者の手取り給与に限ってみればもっとも効率のいい事業所とみていいでしょう。
一方、賃金で最低となった「株式会社テクノ・サービス 秋田」は6,463円でしたが、最低賃金とか大丈夫なのかとちょっと見てて心配になってくる数字です。っていうか派遣されてこの賃金だったら、直接雇用のアルバイトとかの方がいいような……。
≪大手派遣会社の公開状況≫
毎度の調査でお馴染みの派遣大手の公開状況ですが、改めて昨年の記事を読み返すと自分の知っている大手だけを並べてて、ランスタッドとかを入れてなかったなという事実に気が付きました。その辺を含め、注目の大手企業のホームページ上におけるマージン率などの公開状況は以下の通りです。
<昨年からずっと公開し続けている>
・テンプホールディングス系列(テンプスタッフ、インテリジェンス)
・アデコ
<今年から公開>
・パソナ
・フルキャスト
・スタッフサービス
・ニチイ学館
・マンパワーグループ
・ランスタッド
・リクルートスタッフィング
<マージン率のみを公開(派遣料金・賃金は非公開)>
・メイテック
・アルプス技研<未だ非公開>
・マイナビ
・ライクスタッフィング(旧ジェイコム)
・ザ・アール
調査開始当初から一貫して情報を公開しつづけているテンプホールディングス系列については言うに及ばず、他の所に先駆け去年から公開していたアデコは情報公開に熱心な会社だと私からも太鼓判を押します。
一方、今年から公開に転じた大手各社は上記の通り9社です。公開に転じたうち、マンパワーグループとメイテックはデータを昨年調査時にデータを請求したらホームページ上で開示こそしてなかったもののすんなり情報をくれたので、連絡しなかったアルプス技研を除き他の請求したにもかかわらず返信すらよこさなかった面々と比べれば私の中のこの二社への評価は高いです。なおリクルートスタッフィング、スタッフサービスについては今年の取材時に昨年請求した際には返信がなかったことを伝えたところ、「送受信時のエラーが疑われる」、「前任担当者が既にいないため」と理由をつけた上で素直に申し訳なかったと詫びられたので、私の中では既に水に流れています。
<ザ・アールについて>
実は処遇について悩んだ大手はこのザ・アールでした。ここは昨年にデータを請求した際に即日でデータをすぐ送ってくれた会社だったので、恐らく今年も請求したらすぐ送ってくれたと思います。しかし前述の通り既にガイドラインでネットでの常時公開が原則となっている今、ザ・アールの公開状況は規定に反している状況であるため、昨年取材に協力してくれた手前いくらか心苦しいものの今年は敢えて公開請求を行わずに「非公開」として扱いました。
<マイナビ、ライクスタッフィングについて>
残りの非公開二社についてですが、どちらにもその公開姿勢を問うため電話取材を敢行しました。その結果、マイナビについてはいくらかのやり取りを経てマージン率などのデータを送ってきたため、今年度の調査データにはそのデータを加えてあります。一方、ライクスタッフィングについてはデータすら得られなかったという結果となりました。両社への取材過程、その回答内容については別記事で取り上げます。
<独自姿勢を見せたメイテック、アルプス技研>
今回の調査中、ホームページ上でデータを公開した大手企業の中で異彩を放っていたのはエンジニア派遣の両雄ことメイテックとアルプス技研でした。具体的に述べると、マージン率だけしか公開せず派遣人数や拠点、派遣料金や賃金を公開していません。
どちらもエンジニア派遣大手でありまた公開方法が似通っていたこと、またメイテックさんについては昨年の調査時において非常に協力的且つ情報公開についても隠そうという素振りが見られなかったことから、「何か理由があるだろう」と踏んで、今年もメイテックさんに取材を行いました。
今年、マージン率のみという公開方法を取った理由についてメイテックさんに聞いてみたところ、まずホームページ上で公開に転じたのはやはり例のガイドラインによるものとした上で、当該ガイドラインでネット上での公開が義務付けられている情報にはマージン率だけしか書かれていないため、このような公開方法を取ったという回答を受けました。その上でメイテックさんは、派遣労働者の方々には全情報を常々公開しており、また請求があれば誰にでもすぐデータを公開すると述べ、実際にサンプルとして直近の秋葉原事業所のデータを何も言わずに送って来てくれました。折角だから下記に記載しておきます
「メイテック秋葉原オフィス」
・派遣労働者の人数(一日平均):622人
・派遣先の実数:209件
・派遣料金の平均額(8時間):42,515円
・派遣労働者の賃金の平均額(8時間当たり):25,057円
・マージン率:41.1%
確かにメイテックさんの言う通り、ガイドラインにはネット上の公開が原則としている情報にはマージン率しかありません。その上でメイテックさんは情報公開には熱心であり、断言しますがメディア対応も明らかに他と比べて手厚く、今年のメールのやり取りでも冒頭から、「昨年はお世話になりました」と、昨年しつこく聞きまわったせいもあるでしょうが向こうの広報は私の事を覚えていてくれました。
そうした背景を考えると、今回メイテックさんがこうした対応を取ったことについて私も理解できます。ただリサーチャーの立場として、また派遣大手として範を示すべき企業であることを踏まえ、可能ならば派遣料金などすべてを公開してほしいという要望は伝えました。
<NEOAの見解>
・労働者派遣法におけるマージン率についてのNEOAの考え方(一般社団法人日本エンジニアリングアウトソーシング境界、NEOA)
メイテックさんとアルプス技研のマージン率のデータ公開シートにはどちらも、「※当社が加盟する業界団体における、マージン率の考え方について」という文言と共に上記NEOAのリンクが添付されていました。メイテックさんは取材時にはっきりとは明言しなかったものの、あくまで私の推測で述べれば当該シートに書かれてある以下の文言が今回の公開方法に影響したのではないかと見ています。
「NEOAでは、派遣法上で定められたマージン率という数値には、上記の福利厚生やキャリアアップ支援等の費用が含まれている為、当該マージン率が派遣労働者の処遇を的確に表現しているものではないと考えます。」
既に先にも述べていますが、マージン率には研修費や有給費用、あと会社によっては交通費など派遣労働者のために派遣会社が支払う費用も含まれています。よくマージン率はその数字そのものが派遣会社の取り分だと勘違いされがちですが、実際にはそこからさまざまな経費が差し引かれる上、上記の様に派遣労働者の福利厚生を手厚くすると同時に上昇してしまいます。
こうした観点から上記の意見は私も同感であり、またリツアンSTCの野中社長などもマージン率ではなく派遣労働者への還元率といった数値を公開すべきだと常々述べていますが、研修費などが特にかかり見かけ上のマージン率が高くなりがちなエンジニア派遣大手という立場から、今回メイテックとアルプス技研はマージン率以外のデータをホームページ上で公開しなかったのではと考えられます。
<ニチイ学館のマージン率について>
ようやく最後の特記項目ですが、まずは今年と昨年における派遣料金とマージン率の相関に関する全データ散布図をご覧ください。なおこの散布図の案は昨年データを見た方からメールで送って知らせてもらったものであり、当時送ってくれた方にはマジ感謝です。
・2016年データ散布図
・2017年データ散布図
2016年データは見ての通り派遣料金とマージン率が正比例するかのように近似線が綺麗に右斜め上を向いています。一方、2017年データだと一応右斜め上は向いているものの、その傾きが極端に平べったくなってしまいました。
一体何故ホワイという状況ですが、犯人というか原因は何かというと昨年に比べ、派遣料金が低いにもかかわらずマージン率が極端に高いデータが大量に追加されデータが歪んだからです。そのデータを歪ませた犯人というのも、はっきり名指ししますが今年からデータ公開に転じた介護系派遣大手のニチイ学館です。
あくまで私個人の意見ですが、マージン率が40%を超える様な事業所の平均派遣料金は普通2万円や3万円は超すのが自然だと思います。しかしというかなんというかニチイ学館はさにあらず、正直に述べますが最初データを見た時に、「えっ、マジこれ?」って感じで絶句しました。
リンクを貼った私のデータでもいいですし直接ニチイ学館のホームページを見てもらってもいいですが、端的に言ってどの拠点もマージン率が極端に高いにも関わらず派遣料金・賃金が極端に低いです。平塚支店に至っては今年のマージン率調査において最大値となる脅威の63.5%を記録し、調査しておきながらなんですがよくこの数値を隠さず公開したなという気すらします。
そこで今回、一体これらニチイ学館の拠点はどれだけ歪なデータなのか証明してみようと、あらたに「マージンポイント」というデータを作成してみました。これはマージン率0.1%に対し派遣料金がいくらなのかを示そうとしたデータで、計算式は以下の通りとなります。
・マージンポイント=派遣料金÷(マージン率×1000)
派遣料金とマージン率が比例するという前提であれば、マージン率が上がると共にマージン率も上昇し、上記の数式である程度は「このマージン率に対する適切な派遣料金」らしい数値が出せるのかなと思って作りました。ただ細かい点などは一切考慮しないデータのため、あくまで参考程度にお考えください。
計算した結果、このマージンポイントの平均値は51.2ポイントでした。ちょうど平均に一致した拠点の派遣料金とマージン率は以下の通りです。
・株式会社KOSMO:14,088円、27.5%
・ヤマトWebソリューションズ株式会社 大阪オフィス:13,117円、25.6%
料金、マージン率は両拠点で異なるものの、マージン率に対する水準という意味で両データは一致するというわけです。なおこのマージンポイントの最大値は133.3で、派遣料金・賃金で二年連続して最大となった「株式会社メディカルリソース 名古屋支店」でした。
一方、最低値というかワーストランキングはほぼニチイ学館の拠点で占められており、以下にワーストトップテンとそのデータを掲載します。
会社・拠点名
|
労働者派遣に関する
料金の平均額(8時間)
|
派遣労働者の賃金の
平均額(8時間)
|
2017年
マージン率
|
マージン
ポイント
|
株式会社ニチイ学館 浜松支店 |
12,912円
|
6,600円
|
48.9%
|
26.4
|
株式会社ニチイ学館 倉敷支店 |
12,704円
|
6,632円
|
47.8%
|
26.6
|
株式会社ニチイ学館 八戸支店 |
12,068円
|
6,664円
|
44.8%
|
26.9
|
株式会社ニチイ学館 北上支店 |
14,958円
|
6,649円
|
55.5%
|
27.0
|
株式会社ニチイ学館 宮崎支店 |
11,782円
|
6,701円
|
43.1%
|
27.3
|
株式会社ニチイ学館 長野支店 |
13,473円
|
6,856円
|
49.1%
|
27.4
|
株式会社ニチイ学館 福岡支店 |
12,689円
|
6,845円
|
46.1%
|
27.5
|
株式会社ニチイ学館 青森支店 |
12,401円
|
6,842円
|
44.8%
|
27.7
|
株式会社ニチイ学館 和歌山支店 |
13,351円
|
6,920円
|
48.2%
|
27.7
|
株式会社ニチイ学館 札幌支店 |
13,599円
|
6,947円
|
48.9%
|
27.8
|
マージンポイントはあくまで参考値ですが、どうしてこのような派遣料金とマージン率になるのかニチイ学館は説明しなければならないデータではないかと思われます。一社だけあげつらうのも悪いと思うのでもう一社挙げておくと、スタッフサービス系列の株式会社テクノ・サービスもマージンポイントが極端に低い拠点ばかりです。
以上で、今年度のマージン率調査報告を終えます。公開していない大手各社、並びに書き残した点はまた別記事で取り上げます。本当は記事を分けたかったんだけど、記事分けると極端にアクセス数悪くなるので目いっぱい詰め込みましたが、書いててほんましんどかった。っていうか今年は公開する会社が大量に増えてたため調査の手間も増え、矛盾することはわかっていながら「公開してんじゃねーよくっそう(;Д;)」と言いつつ調査してました。
2017年1月20日金曜日
最近好きな俳優
また例年の如く同僚から、「寒くないの?」と言われるようになってきました。決して誇張ではなく、今までの人生で一度も背広の上にコートを着たことはなく、今後もずっとこのスタイルが続くでしょう。
さてあまり書く話題もないので俳優について少し書こうかと思いますが、昨年の大河ドラマ「真田丸」は近年の大河としては比較的高視聴率で終わったと聞きます。生憎私は見ていないのですが真田丸と同じ三谷幸喜氏が脚本を書いた大河ドラマ「新撰組!」は学生時代に通してみており、この時によく友人らとの間で、「一人飛び抜けた俳優がいるよね」と話していました。想像がつくでしょうが、その俳優こそ真田丸で主演を演じた堺雅人氏でした。
新撰組!では堺氏に限らずとも三谷氏がその人脈を使ってかき集めただけあって実力ある俳優(主役に関しては目をつむりました)が集まっていましたが、その中でもそれ以前には知名度があまり高くはなかった堺氏が確実に頭一つ抜けており、一体こんな俳優がどこに隠れていたのだと当時よく話していました。演劇をしていた先輩はさすがにその道とあって堺氏の事を知っており、テレビにはそれほどでないが舞台俳優の中では伝説の人だと当時話していましたが、現在だと「半沢直樹」を筆頭にテレビや映画で引っ張りだこなため、十年一日な感じも覚えます。
そんな堺氏も凄いと思うものの、地味に今一番評価している俳優は誰かといったら真田丸でお兄ちゃんの真田信之を演じた大泉洋氏です。かつては「ゲゲゲの鬼太郎」であのねずみ男を演じただけあって堂々たるキャリアの持ち主ですが、実はこれまで彼の演技はそれほど見たことがなかったものの、前に「アイアムアヒーロー」という漫画原作で大泉氏が主演を張った映画を見る機会がありました。
元々の大泉氏の出で立ち近い感じがする役とはいえ、一言でいえば生き写しでした。漫画自体はそれまで読んだことがなかったものの、ネットで漫画の絵と大泉氏の映画の中のシーンを比較する画像を見たところ有り得ないくらいに一致しており、またその細かい表情の使い分けなども、他の俳優を明らかに食ってしまう演技ぶりで見ていてずっと舌を巻いてました。
特にこの映画で主人公の男は時折妄想をする癖があり、現実とは違ってかっこよくヒロインを助けたりする妄想をするとこも映像化されているのですが、そのかっこいい姿の妄想とやや情けない姿の現実での表情の違いなど、これが同じ人が演じているのかと思うくらい異なっています。この辺の見せ方は大泉氏の演技もさることながら、カットの切り方に監督の妙を感じます。
前まであまり演技とか細かく気にしていませんでしたが、やはりこの「アイアムアヒーロー」を見て二枚目よりも三枚目を演じる方が明らかに難しく、それを演じこなす俳優はやはり偉大だと思うに至りました。なおこの映画ではお笑いコンビ、ドランクドラゴンの塚地武雄氏も出演していますが、演じる役がキャラクターがあっているというのもあるものの、地味に演技がめっちゃうまかったです。芸人やるより俳優のが向いてるんじゃねぇかと正直思います。
さてあまり書く話題もないので俳優について少し書こうかと思いますが、昨年の大河ドラマ「真田丸」は近年の大河としては比較的高視聴率で終わったと聞きます。生憎私は見ていないのですが真田丸と同じ三谷幸喜氏が脚本を書いた大河ドラマ「新撰組!」は学生時代に通してみており、この時によく友人らとの間で、「一人飛び抜けた俳優がいるよね」と話していました。想像がつくでしょうが、その俳優こそ真田丸で主演を演じた堺雅人氏でした。
新撰組!では堺氏に限らずとも三谷氏がその人脈を使ってかき集めただけあって実力ある俳優(主役に関しては目をつむりました)が集まっていましたが、その中でもそれ以前には知名度があまり高くはなかった堺氏が確実に頭一つ抜けており、一体こんな俳優がどこに隠れていたのだと当時よく話していました。演劇をしていた先輩はさすがにその道とあって堺氏の事を知っており、テレビにはそれほどでないが舞台俳優の中では伝説の人だと当時話していましたが、現在だと「半沢直樹」を筆頭にテレビや映画で引っ張りだこなため、十年一日な感じも覚えます。
そんな堺氏も凄いと思うものの、地味に今一番評価している俳優は誰かといったら真田丸でお兄ちゃんの真田信之を演じた大泉洋氏です。かつては「ゲゲゲの鬼太郎」であのねずみ男を演じただけあって堂々たるキャリアの持ち主ですが、実はこれまで彼の演技はそれほど見たことがなかったものの、前に「アイアムアヒーロー」という漫画原作で大泉氏が主演を張った映画を見る機会がありました。
元々の大泉氏の出で立ち近い感じがする役とはいえ、一言でいえば生き写しでした。漫画自体はそれまで読んだことがなかったものの、ネットで漫画の絵と大泉氏の映画の中のシーンを比較する画像を見たところ有り得ないくらいに一致しており、またその細かい表情の使い分けなども、他の俳優を明らかに食ってしまう演技ぶりで見ていてずっと舌を巻いてました。
特にこの映画で主人公の男は時折妄想をする癖があり、現実とは違ってかっこよくヒロインを助けたりする妄想をするとこも映像化されているのですが、そのかっこいい姿の妄想とやや情けない姿の現実での表情の違いなど、これが同じ人が演じているのかと思うくらい異なっています。この辺の見せ方は大泉氏の演技もさることながら、カットの切り方に監督の妙を感じます。
前まであまり演技とか細かく気にしていませんでしたが、やはりこの「アイアムアヒーロー」を見て二枚目よりも三枚目を演じる方が明らかに難しく、それを演じこなす俳優はやはり偉大だと思うに至りました。なおこの映画ではお笑いコンビ、ドランクドラゴンの塚地武雄氏も出演していますが、演じる役がキャラクターがあっているというのもあるものの、地味に演技がめっちゃうまかったです。芸人やるより俳優のが向いてるんじゃねぇかと正直思います。
2017年1月19日木曜日
世界の四大監査法人と日本の勢力図
最近なんかやたらとこの方面の解説を人にすることが増えているので自分の知識整理も兼ねて世界の四大監査法人ことビッグ4とその日本における系列を簡単に紹介します。
・4大監査法人(Wikipedia)
<四大監査法人の順位>
1位:プライスウォーターハウスクーパース (PricewaterhouseCoopers) - 略称:PwC
2位:アーンスト&ヤング (Ernst & Young) - 略称:E&Y
3位:デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu) - 略称:DTT, Deloitte
4位:KPMG (KPMG)
手っ取り早くWikipediaの記述を引用してこちらの記事に書かれているランキング通りに順番を並び替えました。これを覚えておけば明日の試験もバッチリ!
<四大監査法人って何?>
そもそも四大監査法人とは何ぞやということですが、企業、特に上場企業は年度ごとの業績を市場へ公開するに当たり独立した外部の監査法人から監査を受けなければなりません。その監査を担当するのが監査法人で、その中でも世界でトップ4に入るのが上記の四大監査法人に当たり、そこそこ歴史を持っているのと会計業界の中では明確にグレードが分けられていることによって四大監査法人とそれ以外では色んな意味で大きな隔たりがあります。
特に近年はグローバル化に伴い大企業は世界各地に拠点を持つのが当たり前となっていますが、監査に当たっては国内だけでなく系列の海外法人を含めてまとめて業績を監査して報告しなければなりません。そうした国際監査業務を担えるだけのグローバルネットワークを持つ監査法人は限られる、というか実質的に上記の四大監査法人以外には処理できないため、棲み分けといっては聞こえはいいですがグローバル企業の監査業務は実質的にこの四大監査法人によってほぼ独占されています。
<グローバルネットワークとアライアンス>
四大監査法人のグローバルネットワークについてもう少し説明を加えておくと、各国・地域の拠点を業界用語では「メンバーファーム」と呼んでおりますが、拠点同士の人的交流や情報共有はあっても資本関係は一切ありません。あくまでそれらメンバーファーム同士はそれぞれの国・地域の監査法人が「提携」または「連盟」を組んでいるだけであって、航空業界におけるスターアライアンスなどのような「アライアンス(連盟)」関係に過ぎません。とはいっても、利害関係の衝突から分離したりするようなことはほぼないので、普通に見たり聞いたり接したりする分には通常のグループ会社みたいに思っても問題はない気がします。
<日本における四大監査法人>
経済大国(死語?)である日本にも当然、四大監査法人のメンバーファームは存在しているので以下に各系列の拠点を列記します。
・PwC:PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監査法人
・アーンスト&ヤング:新日本有限責任監査法人
・デロイト トウシュ トーマツ:有限責任監査法人トーマツ
・KPMG:有限責任あずさ監査法人
上記の各法人名は社会人経験者であっても監査法人と関わる業務の人は案外少ないので列記されてもピンとこない人が多いかもしれませんが、最近は大企業の会計不正事件が多いため中には反応できる方も増えているかもしれません。
そんな日本における四大監査法人の勢力図はどうなっているのかですが「公認会計士ナビ」がさすが業界専門メディアなだけに非常にわかりやすくまとめているので以下に主たるデータを引用します。
見ての通り、PwC系列のあらた以外の三法人は割と拮抗する勢力図となっているのですが、あらた一つだけが他と比べて圧倒的に小さい規模となっています。PwCは世界ではナンバーワンなのに何故日本のあらたは四大監査法人ファームの中で最低なのかというと、地味に過去の歴史が影響してたりします。
<あの頃はいろんなことがあった>
あらた監査法人は実は歴史が浅く、2006年の設立でまだ十年ちょっとしか経ってません。ではPwCはそれまで日本にファームを持っていなかったのかというとそうでもなく、かつて1968年設立の中央会計事務所、2000年に青山監査法人が合併してできた中央青山監査法人がPwCの日本ファームでした。
中央青山監査法人は世界同様に出来た当初は日本最大手の監査法人でしたが、中央監査法人の頃を含めると担当していた顧客には山一證券、ヤオハン、足利銀行などと、日本の主たる会計不正事件の歴史を彩る面々が顔を揃えていました。特に2005年に発覚したカネボウの粉飾事件では所属する会計士が粉飾を指南していた(その会計士は後に自殺)として、金融庁から監査業務の2ヶ月間の停止が言い渡されるという前代未聞の事態に発展したことからPwCは中央青山との提携を切り、日本で新たに「あらた監査法人」を設立してこちらを日本ファームとすることにしました。
あらた監査法人の設立に伴い中央青山からは多くの会計士やスタッフが顧客ごとあらたへと移籍しているのですが、ぶっちゃけていうと看板の付け替え以外の何物でもなく、前に話した人も別に否定してませんでした。
一方、提携を切られた中央青山の方はそっちはそっちで提携を切られた後も存続しており、こっちもこっちで「みすず監査法人」と看板を付け替えはしたものの、再スタートを切った直後に今度は日興コーディアルグループの粉飾を見逃して適正意見を出していたことが明るみとなったのが止めとなり、顧客離れも相次いだことから業務撤退を宣言して解体される事となりました。なおこの際、みすずの京都事務所が独立して出来たのがあらた同様に日本のPwCメンバーファームとなっている京都監査法人です。
<業界変動の波>
地味に、といっても関係ない人には全く関係ないのですが、最近会計業界では業界変動が起こっているというか結構揺れ動いています。というのもここ数年、日本でも巨額の会計不正事件が頻発し、それによって一社で何十億って金が動く大口クライアントの監査法人が切り替えられたりしているからです。
最も代表的なのは東芝で、元々新日本監査法人がここを担当していたのですが知っての通り巨額の不正が明るみとなったことで監査業務の依頼先が切り替えられたのですが、この切り替え先が業界関係者にとっては「まさか」と思われたあらた監査法人でした。
・会計士から見た「東芝の監査人の交代」について(プロボノ会計士の日記)
一体何故あらたが東芝を引き受けることに驚かれたのかというと、前述の通りあらたは四大監査法人の日本ファームの中で最も規模が小さく、東芝ほどの巨大グローバル企業の監査業務をピンチヒッターで担当するには圧倒的にマンパワーが足りないと思われていたからです。上記ブログの方もまさにそのような見解だったようで、「以前から、東芝の監査契約を受注するのは人員数的に、トーマツかあずさだと業界内では言われてきました。」という風に言及しています。
このあらたが東芝を担当する件について知人の会計士に話を聞いたところ、これまた過去の会計不正事件が影響していると教えてくれました。曰く、あずさは以前にオリンパスを担当していたため当局が認めず、トーマツに関してはわからないと言っていたのですが、恐らくトーマツは文芸春秋の報道によると東芝の会計不正処理を指南していたと言われ、それが影響して認められなかったのだと私は考えます。っていうか、新日本に監査業務を依頼していながらトーマツにコンサルタント業務を依頼していた東芝も色々とあれだなと思いますが。
あくまで噂レベルですが、東芝を担当することなってあらたの方では人員を増やしたり引き抜きをしているとも聞くだけに、今後もこの流れが続くようであれば会計士業界ではまだまだ変動が起こるかもしれません。企業を生かすも殺すも会計次第と言いますが、案外こうした過去の巨額不正事件と照らし合わせて業界の変動を眺めると楽しいものです。
おまけ
前に会計業界に詳しい友人が教えてくれましたが、合併淘汰が進み現在の形になる前は「八大会計事務所」という言葉があったそうで、この言葉を使い出したのは八番目の監査法人だったそうです。物は言いようだ。
・4大監査法人(Wikipedia)
<四大監査法人の順位>
1位:プライスウォーターハウスクーパース (PricewaterhouseCoopers) - 略称:PwC
2位:アーンスト&ヤング (Ernst & Young) - 略称:E&Y
3位:デロイト トウシュ トーマツ (Deloitte Touche Tohmatsu) - 略称:DTT, Deloitte
4位:KPMG (KPMG)
手っ取り早くWikipediaの記述を引用してこちらの記事に書かれているランキング通りに順番を並び替えました。これを覚えておけば明日の試験もバッチリ!
<四大監査法人って何?>
そもそも四大監査法人とは何ぞやということですが、企業、特に上場企業は年度ごとの業績を市場へ公開するに当たり独立した外部の監査法人から監査を受けなければなりません。その監査を担当するのが監査法人で、その中でも世界でトップ4に入るのが上記の四大監査法人に当たり、そこそこ歴史を持っているのと会計業界の中では明確にグレードが分けられていることによって四大監査法人とそれ以外では色んな意味で大きな隔たりがあります。
特に近年はグローバル化に伴い大企業は世界各地に拠点を持つのが当たり前となっていますが、監査に当たっては国内だけでなく系列の海外法人を含めてまとめて業績を監査して報告しなければなりません。そうした国際監査業務を担えるだけのグローバルネットワークを持つ監査法人は限られる、というか実質的に上記の四大監査法人以外には処理できないため、棲み分けといっては聞こえはいいですがグローバル企業の監査業務は実質的にこの四大監査法人によってほぼ独占されています。
<グローバルネットワークとアライアンス>
四大監査法人のグローバルネットワークについてもう少し説明を加えておくと、各国・地域の拠点を業界用語では「メンバーファーム」と呼んでおりますが、拠点同士の人的交流や情報共有はあっても資本関係は一切ありません。あくまでそれらメンバーファーム同士はそれぞれの国・地域の監査法人が「提携」または「連盟」を組んでいるだけであって、航空業界におけるスターアライアンスなどのような「アライアンス(連盟)」関係に過ぎません。とはいっても、利害関係の衝突から分離したりするようなことはほぼないので、普通に見たり聞いたり接したりする分には通常のグループ会社みたいに思っても問題はない気がします。
<日本における四大監査法人>
経済大国(死語?)である日本にも当然、四大監査法人のメンバーファームは存在しているので以下に各系列の拠点を列記します。
・PwC:PwCあらた有限責任監査法人、PwC京都監査法人
・アーンスト&ヤング:新日本有限責任監査法人
・デロイト トウシュ トーマツ:有限責任監査法人トーマツ
・KPMG:有限責任あずさ監査法人
上記の各法人名は社会人経験者であっても監査法人と関わる業務の人は案外少ないので列記されてもピンとこない人が多いかもしれませんが、最近は大企業の会計不正事件が多いため中には反応できる方も増えているかもしれません。
そんな日本における四大監査法人の勢力図はどうなっているのかですが「公認会計士ナビ」がさすが業界専門メディアなだけに非常にわかりやすくまとめているので以下に主たるデータを引用します。
あずさ | 新日本 | トーマツ | あらた | |
人員総数 | 約5,400名 | 6,284名 | 6,185名 | 2,219名 |
公認会計士数 | 3,004名 | 3,386名 | 3,077名 | 767名 |
監査証明
クライアント総数
|
3,325社 | 4,084社 | 3,574社 | 931社 |
非監査証明
クライアント数
|
2,073社 | 3,583社 | 3,526社 | 1,041社 |
業務収入 | 83,157百万円 | 99,175百万円 | 89,177百万円 | 33,310百万円 |
(「公認会計士ナビ」2016/4/25記事から引用)
見ての通り、PwC系列のあらた以外の三法人は割と拮抗する勢力図となっているのですが、あらた一つだけが他と比べて圧倒的に小さい規模となっています。PwCは世界ではナンバーワンなのに何故日本のあらたは四大監査法人ファームの中で最低なのかというと、地味に過去の歴史が影響してたりします。
<あの頃はいろんなことがあった>
あらた監査法人は実は歴史が浅く、2006年の設立でまだ十年ちょっとしか経ってません。ではPwCはそれまで日本にファームを持っていなかったのかというとそうでもなく、かつて1968年設立の中央会計事務所、2000年に青山監査法人が合併してできた中央青山監査法人がPwCの日本ファームでした。
中央青山監査法人は世界同様に出来た当初は日本最大手の監査法人でしたが、中央監査法人の頃を含めると担当していた顧客には山一證券、ヤオハン、足利銀行などと、日本の主たる会計不正事件の歴史を彩る面々が顔を揃えていました。特に2005年に発覚したカネボウの粉飾事件では所属する会計士が粉飾を指南していた(その会計士は後に自殺)として、金融庁から監査業務の2ヶ月間の停止が言い渡されるという前代未聞の事態に発展したことからPwCは中央青山との提携を切り、日本で新たに「あらた監査法人」を設立してこちらを日本ファームとすることにしました。
あらた監査法人の設立に伴い中央青山からは多くの会計士やスタッフが顧客ごとあらたへと移籍しているのですが、ぶっちゃけていうと看板の付け替え以外の何物でもなく、前に話した人も別に否定してませんでした。
一方、提携を切られた中央青山の方はそっちはそっちで提携を切られた後も存続しており、こっちもこっちで「みすず監査法人」と看板を付け替えはしたものの、再スタートを切った直後に今度は日興コーディアルグループの粉飾を見逃して適正意見を出していたことが明るみとなったのが止めとなり、顧客離れも相次いだことから業務撤退を宣言して解体される事となりました。なおこの際、みすずの京都事務所が独立して出来たのがあらた同様に日本のPwCメンバーファームとなっている京都監査法人です。
<業界変動の波>
地味に、といっても関係ない人には全く関係ないのですが、最近会計業界では業界変動が起こっているというか結構揺れ動いています。というのもここ数年、日本でも巨額の会計不正事件が頻発し、それによって一社で何十億って金が動く大口クライアントの監査法人が切り替えられたりしているからです。
最も代表的なのは東芝で、元々新日本監査法人がここを担当していたのですが知っての通り巨額の不正が明るみとなったことで監査業務の依頼先が切り替えられたのですが、この切り替え先が業界関係者にとっては「まさか」と思われたあらた監査法人でした。
・会計士から見た「東芝の監査人の交代」について(プロボノ会計士の日記)
一体何故あらたが東芝を引き受けることに驚かれたのかというと、前述の通りあらたは四大監査法人の日本ファームの中で最も規模が小さく、東芝ほどの巨大グローバル企業の監査業務をピンチヒッターで担当するには圧倒的にマンパワーが足りないと思われていたからです。上記ブログの方もまさにそのような見解だったようで、「以前から、東芝の監査契約を受注するのは人員数的に、トーマツかあずさだと業界内では言われてきました。」という風に言及しています。
このあらたが東芝を担当する件について知人の会計士に話を聞いたところ、これまた過去の会計不正事件が影響していると教えてくれました。曰く、あずさは以前にオリンパスを担当していたため当局が認めず、トーマツに関してはわからないと言っていたのですが、恐らくトーマツは文芸春秋の報道によると東芝の会計不正処理を指南していたと言われ、それが影響して認められなかったのだと私は考えます。っていうか、新日本に監査業務を依頼していながらトーマツにコンサルタント業務を依頼していた東芝も色々とあれだなと思いますが。
あくまで噂レベルですが、東芝を担当することなってあらたの方では人員を増やしたり引き抜きをしているとも聞くだけに、今後もこの流れが続くようであれば会計士業界ではまだまだ変動が起こるかもしれません。企業を生かすも殺すも会計次第と言いますが、案外こうした過去の巨額不正事件と照らし合わせて業界の変動を眺めると楽しいものです。
おまけ
前に会計業界に詳しい友人が教えてくれましたが、合併淘汰が進み現在の形になる前は「八大会計事務所」という言葉があったそうで、この言葉を使い出したのは八番目の監査法人だったそうです。物は言いようだ。
2017年1月17日火曜日
中国の主要な購買層
先月、中国に赴任したばかりの広告業界関係者相手にこんなアドバイスを送りました。
「日本において女子高生は主要購買層で彼女らの消費傾向は見逃せない大きな指標だが、中国の場合はそもそも中高生が街中を歩くことすらほとんどないため、購買層としても成立しない」
説明するまでもないでしょうが日本では女子高生がどういったものにお金を消費するのかというのは、収入がアルバイトとお小遣いに限られているため使用できる金額に上限があるとはいえ、社会の消費傾向を読み解く上では非常に重要な指標です。特にファッションやブランド品においては強い影響力があるだけに、90年代ほどとはいわないものの大きな存在感を持っています。
しかし中国だと、以前にも一回書いたことがありますがこっちの中高生はマジで勉強漬けのため、休日とかでも街中歩いていて中高生らしき少年少女を見ることはほぼありません。そのため社会で彼らが取る消費行動はほとんどないというかほぼないって言っていいくらいで、学用品ならまだしも消費傾向を図ろうと彼らを観察した所で得るものはほぼありません。
この説明に上記の広告業界関係者も納得していて我ながらいいお土産持たせられたなと悦に入っていましたが、ここからさらにもう一歩話題を進めるとするならば、ならば中国ではどういった層が主要な購買層なのかということになります。結論から述べると、未婚の十代から二十代の女性と、事業家として成功したおっさん連中がやはり二大購買層であると私は睨んでいます。
未婚の十代から二十代の女性、というよりOL層は日本でも主要な購買層として認識されていますが、こと中国においては日本以上にこの層の購買力が桁違いに高いとすら思います。というのも就労して賃金を得ながら育児費などといった消費科目がなく、実質的に家賃を除けばすべて自由に使えるお金になるからです。その上、中国だと最近は(昔から?)女性に貢がないと男は結婚できないという風潮になりつつあり、比較的貢がれやすいため男の収入すら吸収して消費するという購買力を持っています。
またこれは私自身も驚いたのですが、案外こっちの若い女性は独身ながら住宅を購入して所有しているというケースが案外多いです。もちろん銀行などの融資を受けているのですが住宅バブルの追い風もあって購入した家を下取りに出して、よりグレードアップした新しい家の購入をしたりしていて、転売を繰り返して地味に億万長者なOLとかもいたりします。日本でも一時期は都内のマンションを購入するOLが見られましたが、最近はどうなんだろうな。
もう一つの主要購買層の事業家のおっさんは、これまた日本とも共通していて、一発当てた成金だと思ってもらえばいいです。この層が成功してお金が余るようになってからまず買うのは決まって高級外車で、ランク的には数千万円するようなクラスです。そんな金あるなら従業員に還元してやれよと思うのですが、彼らも成功した証としてなんか儀式の様に高級外車を買い漁るのでとやかく言うべきではないのかもしれません。
これ以外の購買層については大体は日本と状況が一緒で、子持ち夫婦であれば子供の育児費や教育費に家計支出の大半を取られるため一般消費品の購買力は先の二者に大きく劣ります。ただこの記事書いてて閃きましたが、日本だと知っての通り婚姻率が極端に落ちて独身世帯がかつてないほど多くなっており、この層が男女ともに大きな消費力、っていうか層別にみたら最高クラスに消費力持ってるんじゃないかという気がしてきました。もっとも三十代四十代の収入はずっと落ち続けているから、相対的な意味でしかないでしょうけど。
「日本において女子高生は主要購買層で彼女らの消費傾向は見逃せない大きな指標だが、中国の場合はそもそも中高生が街中を歩くことすらほとんどないため、購買層としても成立しない」
説明するまでもないでしょうが日本では女子高生がどういったものにお金を消費するのかというのは、収入がアルバイトとお小遣いに限られているため使用できる金額に上限があるとはいえ、社会の消費傾向を読み解く上では非常に重要な指標です。特にファッションやブランド品においては強い影響力があるだけに、90年代ほどとはいわないものの大きな存在感を持っています。
しかし中国だと、以前にも一回書いたことがありますがこっちの中高生はマジで勉強漬けのため、休日とかでも街中歩いていて中高生らしき少年少女を見ることはほぼありません。そのため社会で彼らが取る消費行動はほとんどないというかほぼないって言っていいくらいで、学用品ならまだしも消費傾向を図ろうと彼らを観察した所で得るものはほぼありません。
この説明に上記の広告業界関係者も納得していて我ながらいいお土産持たせられたなと悦に入っていましたが、ここからさらにもう一歩話題を進めるとするならば、ならば中国ではどういった層が主要な購買層なのかということになります。結論から述べると、未婚の十代から二十代の女性と、事業家として成功したおっさん連中がやはり二大購買層であると私は睨んでいます。
未婚の十代から二十代の女性、というよりOL層は日本でも主要な購買層として認識されていますが、こと中国においては日本以上にこの層の購買力が桁違いに高いとすら思います。というのも就労して賃金を得ながら育児費などといった消費科目がなく、実質的に家賃を除けばすべて自由に使えるお金になるからです。その上、中国だと最近は(昔から?)女性に貢がないと男は結婚できないという風潮になりつつあり、比較的貢がれやすいため男の収入すら吸収して消費するという購買力を持っています。
またこれは私自身も驚いたのですが、案外こっちの若い女性は独身ながら住宅を購入して所有しているというケースが案外多いです。もちろん銀行などの融資を受けているのですが住宅バブルの追い風もあって購入した家を下取りに出して、よりグレードアップした新しい家の購入をしたりしていて、転売を繰り返して地味に億万長者なOLとかもいたりします。日本でも一時期は都内のマンションを購入するOLが見られましたが、最近はどうなんだろうな。
もう一つの主要購買層の事業家のおっさんは、これまた日本とも共通していて、一発当てた成金だと思ってもらえばいいです。この層が成功してお金が余るようになってからまず買うのは決まって高級外車で、ランク的には数千万円するようなクラスです。そんな金あるなら従業員に還元してやれよと思うのですが、彼らも成功した証としてなんか儀式の様に高級外車を買い漁るのでとやかく言うべきではないのかもしれません。
これ以外の購買層については大体は日本と状況が一緒で、子持ち夫婦であれば子供の育児費や教育費に家計支出の大半を取られるため一般消費品の購買力は先の二者に大きく劣ります。ただこの記事書いてて閃きましたが、日本だと知っての通り婚姻率が極端に落ちて独身世帯がかつてないほど多くなっており、この層が男女ともに大きな消費力、っていうか層別にみたら最高クラスに消費力持ってるんじゃないかという気がしてきました。もっとも三十代四十代の収入はずっと落ち続けているから、相対的な意味でしかないでしょうけど。
2017年1月15日日曜日
関ヶ原における謀略合戦
決戦という単語を聞いて私の中で浮かぶのはワーテルローですが、日本においてはやはり関ヶ原が一番多く思い浮かべられることだと思います。実際に戦国最大規模の大兵力同士の野戦であって、参加兵数で言えば後の大阪の陣の方が上であるものの、日本史のその後の趨勢を決めた戦であることを考えると日本史上最大決戦といっても間違いないと思います。
その関ヶ原の帰結ですが、知っての通り石田三成率いる西軍は小早川秀明を筆頭とする西軍参加武将の相次ぐ裏切りを受けて瓦解し、わずか数時間で東軍勝利の結果を迎えています。この結果について多くの解説などでは、「石田三成に人望がなく、また徳川方の激しい切り崩し工作を受けたことによって裏切りが相次いだ」と評することが多いように思えます。書いてある内容に間違いはないと思うものの、少し見方が違うというか「謀略」の下りについて言えば、実際には西軍側も激しく工作を行っていたことを考慮に入れるべきだと思います。
上記に書いた通り関ヶ原の合戦ではあらかじめ徳川方から内応の約束を受けていた武将らが相次いで離反したことによって西軍は瓦解しましたが、その西軍の側でも実際には東軍側の武将に内応を求める謀略を手広く行っていたのではないかと思います。実際に何人かの武将にははっきりと西軍参加を要請する書状が届いていたことが確認されており、関ヶ原の直前においても東軍同様に頻繁な密書のやり取りがあったのではと私は考えています。
しかしその時に西軍との間でやり取りされた東軍武将の密書は恐らく、大半が世に出ることなく処分されたことでしょう。というのも仮にそういった密書が残っていて徳川家に見つかりようものなら謀反の疑いをかけられお家取り潰しにも遭う可能性があり、日の目を見る前に内密に燃やされた密書が実際には相当な量があったのではないかと思います。
これは三国志の話ですが曹操と袁紹が争った官渡の戦いが曹操側の勝利で終わった後、袁紹側の野営地から袁紹側への寝返りを約束する大量の手紙が見つかったそうです。実際には袁紹側から曹操側へ寝返った人間が多かったのですが当時の情勢ではどっち勝つかわからず、むしろ曹操側が圧倒的に不利に思われていたこともあり、曹操側でも多くの武将が身の安全を求め袁紹側とコンタクトを取っていたそうです。
ただ曹操はそうしたきわどい状況であったことを口にして、「みんなもいろいろ大変だったと思うから今回は不問にする」といって折角見つけた手紙を中身を改めずに全部燃やしたそうです。もっとも、私が思うに曹操の性格からしたら既に中身は改め終っており敢えてデモンストレーションとして見てない振りして燃やしたのではないかと思いますが。
話は関ヶ原に戻りますが、当時の日本の情勢もどっちが勝つか全く予見できない状況で、恐らく多かれ少なかれこの日本を二分した戦いに参加した武将は身の保全を考え、冷静にどちらが勝つのかを分析した上で、どっちが勝っても生き残れるような保険をかけていたと私には思えます。親子間で東軍西軍それぞれに参加した真田家のような例もありますが、他の武将も東軍に参加しつつ西軍にも連絡を取ったり、その逆に西軍に参加しながら東軍と連絡をみんな取っていたと考える方が自然な気がします。
そしていざ本番の関ヶ原に至るわけですが、こうした「勝ち馬に乗る」という戦略であったためか関ヶ原の序盤は非常に局地的な戦闘にとどまっています。西軍側では宇喜多隊、島左近隊などほぼ三成の直参部隊だけが戦っており、東軍側もこちらは徳川家直参の井伊隊のほかは福島隊、藤堂隊くらいしか真面目に戦おうとせず、東軍の側にもどうも日和見のような姿勢を取っていたと感じる武将がちらほらいるように感じます。もっとも家康もその辺を知ってか、そうした裏切る可能性のある武将を敢えて前面には出さず後ろに控えさせたのかもしれませんが。
結果的には小早川隊の離反を口火に西軍で続々と願える部隊が現れ崩壊したわけですが、それこそほんの少しのかけ違いによってはこれと同じことが東軍にも起こっていた可能性があると思います。少なくとも石田三成、徳川家康の両大将はその辺りをあらかじめ認識していた節があり、味方の武将が事と状況次第では裏切る可能性があると考慮した上で戦闘に臨んでいたと私には思えます。ただ西軍にとっては、小早川隊の離反はある程度想定していたものの毛利隊が全く動かなかったというのは誤算だったでしょう。
そうした点を考慮すると徳川家の直参でないにもかかわらず積極的に戦闘に参加した福島正則、藤堂高虎の二人の存在は東軍にとっても非常に大きかったことでしょう。藤堂高虎は恐らく家康が勝つ方にブックして臨んだ結果でしょうが、福島正則について言えばやはり三成憎しで動いた結果だったと思います。加藤清正については近年、猪武者ではなく理知的な人物でもあったという評価が広がりつつありますが、福島正則は未だ猪武者然とした評価が続いているのもわけありです。
その関ヶ原の帰結ですが、知っての通り石田三成率いる西軍は小早川秀明を筆頭とする西軍参加武将の相次ぐ裏切りを受けて瓦解し、わずか数時間で東軍勝利の結果を迎えています。この結果について多くの解説などでは、「石田三成に人望がなく、また徳川方の激しい切り崩し工作を受けたことによって裏切りが相次いだ」と評することが多いように思えます。書いてある内容に間違いはないと思うものの、少し見方が違うというか「謀略」の下りについて言えば、実際には西軍側も激しく工作を行っていたことを考慮に入れるべきだと思います。
上記に書いた通り関ヶ原の合戦ではあらかじめ徳川方から内応の約束を受けていた武将らが相次いで離反したことによって西軍は瓦解しましたが、その西軍の側でも実際には東軍側の武将に内応を求める謀略を手広く行っていたのではないかと思います。実際に何人かの武将にははっきりと西軍参加を要請する書状が届いていたことが確認されており、関ヶ原の直前においても東軍同様に頻繁な密書のやり取りがあったのではと私は考えています。
しかしその時に西軍との間でやり取りされた東軍武将の密書は恐らく、大半が世に出ることなく処分されたことでしょう。というのも仮にそういった密書が残っていて徳川家に見つかりようものなら謀反の疑いをかけられお家取り潰しにも遭う可能性があり、日の目を見る前に内密に燃やされた密書が実際には相当な量があったのではないかと思います。
これは三国志の話ですが曹操と袁紹が争った官渡の戦いが曹操側の勝利で終わった後、袁紹側の野営地から袁紹側への寝返りを約束する大量の手紙が見つかったそうです。実際には袁紹側から曹操側へ寝返った人間が多かったのですが当時の情勢ではどっち勝つかわからず、むしろ曹操側が圧倒的に不利に思われていたこともあり、曹操側でも多くの武将が身の安全を求め袁紹側とコンタクトを取っていたそうです。
ただ曹操はそうしたきわどい状況であったことを口にして、「みんなもいろいろ大変だったと思うから今回は不問にする」といって折角見つけた手紙を中身を改めずに全部燃やしたそうです。もっとも、私が思うに曹操の性格からしたら既に中身は改め終っており敢えてデモンストレーションとして見てない振りして燃やしたのではないかと思いますが。
話は関ヶ原に戻りますが、当時の日本の情勢もどっちが勝つか全く予見できない状況で、恐らく多かれ少なかれこの日本を二分した戦いに参加した武将は身の保全を考え、冷静にどちらが勝つのかを分析した上で、どっちが勝っても生き残れるような保険をかけていたと私には思えます。親子間で東軍西軍それぞれに参加した真田家のような例もありますが、他の武将も東軍に参加しつつ西軍にも連絡を取ったり、その逆に西軍に参加しながら東軍と連絡をみんな取っていたと考える方が自然な気がします。
そしていざ本番の関ヶ原に至るわけですが、こうした「勝ち馬に乗る」という戦略であったためか関ヶ原の序盤は非常に局地的な戦闘にとどまっています。西軍側では宇喜多隊、島左近隊などほぼ三成の直参部隊だけが戦っており、東軍側もこちらは徳川家直参の井伊隊のほかは福島隊、藤堂隊くらいしか真面目に戦おうとせず、東軍の側にもどうも日和見のような姿勢を取っていたと感じる武将がちらほらいるように感じます。もっとも家康もその辺を知ってか、そうした裏切る可能性のある武将を敢えて前面には出さず後ろに控えさせたのかもしれませんが。
結果的には小早川隊の離反を口火に西軍で続々と願える部隊が現れ崩壊したわけですが、それこそほんの少しのかけ違いによってはこれと同じことが東軍にも起こっていた可能性があると思います。少なくとも石田三成、徳川家康の両大将はその辺りをあらかじめ認識していた節があり、味方の武将が事と状況次第では裏切る可能性があると考慮した上で戦闘に臨んでいたと私には思えます。ただ西軍にとっては、小早川隊の離反はある程度想定していたものの毛利隊が全く動かなかったというのは誤算だったでしょう。
そうした点を考慮すると徳川家の直参でないにもかかわらず積極的に戦闘に参加した福島正則、藤堂高虎の二人の存在は東軍にとっても非常に大きかったことでしょう。藤堂高虎は恐らく家康が勝つ方にブックして臨んだ結果でしょうが、福島正則について言えばやはり三成憎しで動いた結果だったと思います。加藤清正については近年、猪武者ではなく理知的な人物でもあったという評価が広がりつつありますが、福島正則は未だ猪武者然とした評価が続いているのもわけありです。
2017年1月12日木曜日
上皇呼称に関する報道について
最近ジャーナリズム論ばかり書いているので今日は張り裂けそうになるような話でも書こうと思っていた矢先、また毎日がやらかしました。
・<退位後称号>「上皇」使わず 政府、「前天皇」など検討(毎日新聞)
・天皇退位後「上皇」に 政府検討 秋篠宮さま「皇太子」待遇(日経新聞)
・天皇陛下の譲位 政府首脳、毎日新聞の「前天皇」報道を否定(産経新聞)
これは全部今日出たニュースで、見ての通り毎日だけ明後日の方向向いています。恐らく「上皇」という言葉を使いたくない人間が適当なことを吹いて、細かく確認しないまま毎日だけが躍ったのがこの結末でしょう。場合によっては、毎日自身が話を作った可能性も毎日なだけにあり得ます。
仮に「上皇」という呼称が好ましくないという証言者がいたとしても、それをそのまま伝えるということはその証言者を利するだけの結果を生むだけに、本来やってはならない報道です。それこそ政府や別の委員に事前確認してそういう議論があるのかを確かめるなど裏付けを取った上で、「上皇呼称に抵抗示す声も」などと書けばいいのに、はっきりと上皇はアウトみたいなこんな見出し作るなんてアホ以外の何物でもありません。また駄目な理由についても「上皇は歴史的な称号で権威を与えかねず」といっていますが、それ言ったら天皇って呼称の時点でアウトだろうし歴史を知らないにもほどがあるでしょうこれ言った人。
悪いけど毎日はここ数年、滝のように誤報を垂れ流している印象しか浮かびません。
さてそもそもこの報道で何故ここまで憤っているのかというと、かねてから私の中で評価の低い毎日がまたやらかしたというのもありますがそれ以上に、密かに「上皇」という言葉が復活することを待ち望んで止まないためでもあります。なんでそんなウキウキしてるかって、恐らく歴史好きという趣味もあって単純にうれしいんだと思うのですが、今上天皇が「平成上皇」と呼ばれたりする時代が来るのかと思うとそれだけで楽しくなってきます。
それだけ待ち望んでるだけあって、私としては退位後の今上天皇の呼称は上皇以外有り得ないと考えています。歴史的にもずっとそうした使われ方がされてきている上、皇室の伝統を維持する上でも呼ばない理由はどこにもありません。
歴史上だと恐らく後白河上皇と後鳥羽上皇の二人が有名なトップツーでしょうが、まさか現代でこの二人のような権力を上皇が持つなんてはっきり言えば頭のおかしい人しかいないでしょう。むしろ私はこれまでの生活における制約が非常に厳しかったと思うだけに、上皇となられた暁には今上天皇ご夫妻にはもっと自由な生活を与えてあげて、それこそマックにぶらりと現れビッグマック食べたりするような生活を送ってもらいたいものです。
そういう点を考慮しても、お勤めから解放させてあげるという意味でも生前退位は特別法とは言わず恒久法にするべきだという立場も取ります。
・<退位後称号>「上皇」使わず 政府、「前天皇」など検討(毎日新聞)
・天皇退位後「上皇」に 政府検討 秋篠宮さま「皇太子」待遇(日経新聞)
・天皇陛下の譲位 政府首脳、毎日新聞の「前天皇」報道を否定(産経新聞)
これは全部今日出たニュースで、見ての通り毎日だけ明後日の方向向いています。恐らく「上皇」という言葉を使いたくない人間が適当なことを吹いて、細かく確認しないまま毎日だけが躍ったのがこの結末でしょう。場合によっては、毎日自身が話を作った可能性も毎日なだけにあり得ます。
仮に「上皇」という呼称が好ましくないという証言者がいたとしても、それをそのまま伝えるということはその証言者を利するだけの結果を生むだけに、本来やってはならない報道です。それこそ政府や別の委員に事前確認してそういう議論があるのかを確かめるなど裏付けを取った上で、「上皇呼称に抵抗示す声も」などと書けばいいのに、はっきりと上皇はアウトみたいなこんな見出し作るなんてアホ以外の何物でもありません。また駄目な理由についても「上皇は歴史的な称号で権威を与えかねず」といっていますが、それ言ったら天皇って呼称の時点でアウトだろうし歴史を知らないにもほどがあるでしょうこれ言った人。
悪いけど毎日はここ数年、滝のように誤報を垂れ流している印象しか浮かびません。
さてそもそもこの報道で何故ここまで憤っているのかというと、かねてから私の中で評価の低い毎日がまたやらかしたというのもありますがそれ以上に、密かに「上皇」という言葉が復活することを待ち望んで止まないためでもあります。なんでそんなウキウキしてるかって、恐らく歴史好きという趣味もあって単純にうれしいんだと思うのですが、今上天皇が「平成上皇」と呼ばれたりする時代が来るのかと思うとそれだけで楽しくなってきます。
それだけ待ち望んでるだけあって、私としては退位後の今上天皇の呼称は上皇以外有り得ないと考えています。歴史的にもずっとそうした使われ方がされてきている上、皇室の伝統を維持する上でも呼ばない理由はどこにもありません。
歴史上だと恐らく後白河上皇と後鳥羽上皇の二人が有名なトップツーでしょうが、まさか現代でこの二人のような権力を上皇が持つなんてはっきり言えば頭のおかしい人しかいないでしょう。むしろ私はこれまでの生活における制約が非常に厳しかったと思うだけに、上皇となられた暁には今上天皇ご夫妻にはもっと自由な生活を与えてあげて、それこそマックにぶらりと現れビッグマック食べたりするような生活を送ってもらいたいものです。
そういう点を考慮しても、お勤めから解放させてあげるという意味でも生前退位は特別法とは言わず恒久法にするべきだという立場も取ります。
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