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2020年9月12日土曜日

昨今の中国の拡張政策について

 たまには真面目なこと書こうと思うので、昨日知人にやってきた昨今の中国の拡張政策について少し意見をまとめます。

 報道でも出ている通り、最近中国はコロナの世界的流行にかこつけてやたらと拡張政策を取ってきています。東は日本の尖閣諸島と台湾、南はベトナムと揉めている南沙諸島、西はインドと揉めているカシミール地方でそれぞれあからさまに挑発的な行動をとっており、これら地域での権益や帰属の拡大を巡って動いています。一体何故中国が今年に入ってからこうした動き活発化させてきたのは言うまでもなくコロナ流行が影響しているとみられます。

 具体的には、多分一般メディアで書いても「隠蔽している」と言われて信じられないでしょうが、中国はいち早くコロナの国内流行を鎮静化させ、一部で集団感染が発生しつつも他の都市への拡大は防いでいます。それに対し日本を始め他の国では未だにコロナが流行し続けており、国内の感染拡大予防措置で手一杯だから外交に手が回らないと踏んだのか、5月くらいから中国は急に上記エリアでの拡張政策を取るようになってきました。
 もう一つファクターを挙げるとすると、米国の大統領選が近いということも中国は計算に入れたかもしれません。大統領選挙での再選を目指し政治的実績が欲しいトランプ大統領(最近だとイスラエルの周辺諸国との国交回復)は、コロナで国内も荒れているし中国との外交のためにいろいろとは動けないと踏んだのだと思います。

 ただ結果論で言うと、仮定とは言えこうした中国の目論見は外れました。結果的にはこれらの中国の拡張政策は「コロナで大変な時に余計な面倒作りやがって(# ゚Д゚)」的な感じで当事者たちの反感を買っただけでなく、香港に対しても突然強権的な態度に切り替えたことは欧州諸国を刺激し、先日のチェコ議長の台湾訪問と「台湾マイフレンド」発言によって、はっきりと表面化するようになりました。
 また静観するとみられたトランプ大統領がここでも中国の期待を裏切る(応える?)形で台湾に対する支援を打ち出すなど、一言で言えば、なんも実入りないのに無駄に周囲のヘイトを高めるだけで終わりました。

 なお中国国内では、「コロナの国内不満をそらすため、中国を悪者に仕立てるよう挑発的な態度を取っている」などとインドなどについて説明しています。仮にインドだけの問題だったら一考に値したでしょうが、こうもあちこちで同時多発的に拡張政策を取っている中国が言ってたら、さすがに私も信じるはずもありません。まぁ大半の中国人は信じてるけど。

 さすがに事ここに至って中国も自分がやっていることがヘイト稼ぐだけであまり意味ないことに気が付いたのか、8月あたりから目に見えてトーンダウンしてきました。それどころか比較的まだ話が通じそう(カモにしやすそう)と踏んだのか、露骨に日本に対して「ニホンマイフレンド」的に秋波を送るようになってきています。この辺、次の菅氏の総理就任後により露骨になってくるという気がします。

 日本の外交としては大きく二つ選択肢があり、一つは中国の秋波に応えて仲良くする態度を見せる。こうすれば中国としてもありがたいし、何か譲歩なりを引き出すきっかけになるかもしれませんが、正直言って今中国から譲歩を引き出して得るものというのはあんまないです。通商とかでも一切揉めてないし。
 一方、「だが断る」戦略としては米国と一緒になって、とまではいかずとも、台湾とより近づくという戦略があります。無論これは米国だからこそあんな露骨にできるのであって、日本がやったら中国をマジギレさせる手段です。ただマジギレさせるほどでなくとも、台湾との交流を増やすとか、非政府系団体を使って台湾政府の立場を応援するなどして、間接的に中国にさらにプレッシャーをかけるというのははっきり言って有効だと思います。具体的には、「これ以上騒動起こすなら日本は米国とともに台湾につく」的な懸念を中国に持たせる方針です。

 また台湾を絡ませなくても、遠交近攻じゃないですがインドと仲いい振りするのも有効でしょう。「覇権主義に断固反対」と名指しせずに一緒に発言するだけで中国にとっては嫌な主張に見えてくるはずです。インドとしても、対中国政策で最近日本と米国との連携を探っているだけに、また日本と組んでも何も損することがないという点から渡りに船という風に見えます。

 もっともこうした外交はやはり米国あってのものというところがあるだけに、日本としてはひとまず次の大統領選の結果が出るまでは静観の一手に尽きるでしょう。ただもう一つ中国について言っておきたいこととしては、なんで一斉に全方向でこんなことをやったのか、アホなの?と言いたいです。
 仮にターゲットをインドやベトナムに絞ってやっていればここまで世界各国から警戒はされなかったでしょう。それをあからさまにコロナのタイミングを狙って同時にこんなことやってれば、そりゃヘイトを集めるに決まっています。この方向を定めない拡張方針を何故取ったのか、誰が取ったのかはわかりませんが、はっきり言ってあげるとこれは完全なミスであったと断じることができます。センスない政治家もいるもんです。

2020年9月10日木曜日

ドコモ口座事件について


 またネットで拾った画像ですが今回の事件の初動対応を端的にわかりやすく表した画像だと思います。ほんとこの仕事猫大好き。

 それでこのドコモ口座事件ですが、まぁなんてセキュリティの杜撰だと思ったのと、何故アイコン画像が蓋の貯金箱でドコモダケじゃないのかっていうのが気になります。真面目な話に戻すと、去年にも同じような口座抜き取り事件が発生していたと早くも毎日が報じていましたが、その時に何故対策を報じなかったのか、この点が一番肝じゃないかなという風には見ています。その時以降に何の対策をやったんだという質問は、生憎今見ている記事とかだとどれにも触れられておらず、質問もされなかったのかもしれません。

 この事件について友人は、「金融庁も黙っちゃいないんじゃないか?」と言ってましたが、金融庁は最近ゆうちょに大甘なので今回もドコモは無罪放免で行くだろうと私は見ています。真面目にこの国は、大企業であれば何を慕っても許される国になりつつあります。
 ただこの事件でもう少し掘り下げると、他の決済アプリでは同じような事件が起きていないのかという点です。ITメディアが少し書いていましたが、ドコモ口座のように本人認証を全くせずに口座紐づけが行えるアプリは他にも存在する模様です。なんとなくの推測で述べると、報じられていないだけで、他のアプリでも似たような口座現金抜き取りはもうすでに起きているんじゃないかというふうな気がしてなりません。仮にそうだとしたら、そうしたアプリを市中にたくさん放り出していた金融庁こそ責められるべきだという風に私は思います。

 スマホ決済アプリがポイント付きで乱立し始めた際に私は、数が多すぎることと、国が音頭を取って参入業者を制限しないことに疑問を呈しましたが、やはり今の状況を見ているときちんと審査をしていなかったのではとしか思えません。
 またドコモについては、発覚しているだけで現在66口座1800万円ということですが、大抵こういうのって膨れるもので、この5倍くらいは見ておいた方がいいんじゃないかという気がします。となると単純計算で9000万円で、もうちょっとがんばって1億円の大台に乗せようとしているのか、口座紐づけはやめたようですがチャージ自体はまだ継続しているあたりドコモの努力ぶりが窺えます。

2020年9月8日火曜日

ロッテ・澤村のデビュー戦を見て

ロッテ移籍の澤村拓一、入団即登板で3者連続三振! ユニ間に合わず「106」で衝撃デビュー(フルカウント)

 昨日の衝撃のトレード発表から一夜明け、いきなりの登板で三連続三振という景気の良いニュースです。別にロッテファンというわけじゃないですがこの起用はさすがだと思え、前から個人的に好きだった、というかパワプロで「もうこいつにホームラン打たれるのは仕方ない」と割り切っていた井口監督のこの決断は見事この上ありません。でもってそれにきちんと答える澤村選手も大したものです。

 それにしてもシーズンも終盤に入りながらいまだロッテが勢いがあるというのはなかなか見ものです。中日の与田監督とモノが違うんだという人もいますが、今日の起用法を見ていると確かにそんな気もします。ただそれ以上に、ロッテは毎年首位のソフトバンクに対してやたら相性が良く、ソフトバンクは何か弱味でも握られてるんじゃないかと密かに心配です。

 それはそうとシーズン序盤にこのブログで書いた記事で、「春の妖精と呼ばれる荻野選手については、今年は春に試合が一切行われなかったので、シーズンを通した活躍が期待できる」と書いたものの、気が付いたらまた消えていました。なんで知らないうちにそっと怪我で毎年いなくなるんだろうこの人。

2020年9月7日月曜日

オフィスワークにおける戦争神経症

 先日友人に、「俺、日本に帰ったら、五式のプラモ作るんだ」という死亡フラグなセリフを口にしました。五式の英語名って「Type 5」でいいのかなとか考えてます。

 話は本題ですが、今まで内緒にしてたけど先週金曜日は午後に半休(日報には「午後阪急」と記載)を取り、自宅に帰ってネットを少し見た後、三時半から六時まですやすや寝てました( ˘ω˘)スヤァ
 でもって夜は12時に布団入って、多少うとうと気味に目が覚めたことはあっても、翌日昼12時まで寝てました( ˘ω˘)スヤァ

 寝過ぎと思われるかもしれませんが、実際自分でもそう思います。いつもこんな風にたくさん寝ているわけじゃなく、今だからこそこんだけ寝ています。
 まず第一に、日本同様に中国でも気温が下がって過ごしやすくなってきた子が大きいです。真面目に8月中は寝付くのも一苦労なくらい毎日夜までずっと暑く、扇風機はつけっぱで寝てましたがそれでも寝苦しく、寝ていても眠りが浅かったです。それが9月に入ってからは涼しく、簡単に眠りに入れるのでガンガン寝られます。

 次に、自分の中で緊張感が一気に緩んで、これまで蓄積された疲労も一気に出てきているせいだと思います。このブログでも何度も書いていますが6月からずっと仕事で忙しく、平日の残業は当たり前で、土日もほぼずっと仕事していて、ワーカーホリックな一族の名に恥じない稼働率をこれまで発揮していました。それが8月中盤からようやく波がおさまり、土日も普通に休めるようになり(JBpressの記事は書くが)、自分の中で戦争から帰って来たような感覚がマジでありました。

 誇張ではなく、ピークシーズンだった頃はそりゃ辛いと思いつつも体がだるいとか思うことはあまりなく、かなりの稼働率と出勤時間だったにもかかわらず体調の不調とかはほとんどありませんでした。
 しかしやはり疲労は溜まっていたのか、緊張が解けた先週あたりから無性にだるいと感じるようになり、ここ数ヶ月一切なかったのに目の焦点が合わなくなるといった症状もなんか先週末辺りから起こるようになりました。無論、先週にハードワークは一切存在せず、むしろ半休取れるくらい楽になっているのですが、逆に楽になったことで緊張感が抜けて体に一気に不調が出てきたのだと思います。

 冒頭の異常な睡眠時間もその一つでしょうが、こうした体験を受けるにつけ、いわゆる戦争神経症というかシェルショックというのは確実に存在するだろうと思います。生きるか死ぬかの緊張感がずっと続き、その環境から解消されても過去に蓄積したダメージは消えてなくならないというのはオフィスワークでも存在するだけに、実際の戦争体験者なんかはそれこそ動けくなるくらい鬱になるのもおかしくない気がします。

 その上で言うと、やはりピークシーズンというのは緊張感があるからこそ体調的な不調は起こり辛いですが、それを越した後の慣らし期間中というのは今の私の様に、ガクンと体調崩す恐れがあるからやはり気を付ける必要があるでしょう。実際私もそれを意識して普段の仕事量もセーブした上、作業ペースもピーク時に比べ敢えてゆっくり目にやっています。っていうかピーク時、他の人が1.5日かかる作業を自分は0.3日、実に5倍のペースで処理していて、真面目に気分的には三国無双の張飛みたいな感じがしてそれはそれで気持ちよかったです。

 ようやく涼しくなってきたので自転車とかも漕ぎだせる季節になりましたが、上海市内で今更自転車で行ってみたいところとか最近はなく、結局土曜にまたいつものプラモ屋に行ったくらいでした。これまで忙しいのと、気力がそこまで持たなかったこともあり、冬にR32のプラモ買っておきながらまだ組んでいませんが、さすがにそろそろ作らないとなぁ。
 っていうか車より飛行機が作りたい気分で、いよいよ航空機プラモで最難関の部類に入るF-14トムキャットにチャレンジしてみようかとも考えています。「エリア88」でも、ミッキー・サイモンが一番共感するキャラクターだったし。

2020年9月6日日曜日

関西弁で紹介するノルウェー人ども

 「能ある鷹は爪を隠す」と言いますが、現代風に言い換えるとしたら「能あるOLはネイルを隠す」とでもいうのかなという疑問が、ここ二、三日もたげています。あとマイクロソフトIMEは「(数字)」の後に追加で「まんにん」と打つと、「満任」と変換するのマジやめろ殺すぞとか本気で思っています。

Vivaldy Brouse

 話は本題ですが、このブログを始めた頃、私が使っていたブラウザは「Opera」でした。このブラウザは現在ほぼすべてのブラウザに搭載されているタブブラウジング機能を初めて搭載した上、マウスジェスチャーを始めブラジングの画期的機能が盛りだくさんなマジで歴史を変えたブラウザであって、私もご多分に漏れず「Opera最強伝説」の信者でした。
 しかし知ってる人には早いですが、Operaの当初の開発者は経営陣と揉めたことから会社から離脱し、それに伴いOperaはどんどん悪くなっていきました。特に「Opera10.0」になった際は過去のバージョンから大きく一新されるに伴い、一ブラウザとしてもまともに機能しないというとんでもない欠陥品となりました。

 具体的にどれだけひどかったのかというと、このBloggerでGoogleアカウントを認証せず、編集が一切できないというくらいでした。恐らく認証関連でもトラブってたと思います。この時私もマジギレして、確かマウスぶん投げて壊して、「クソみたいなブラウザのせいでマウスが壊れた」とか妙な責任転嫁をしてました。
 ただ当時としてOperaに勝るブラウザはないともはっきりわかっており、次善策として「Opera9.xx」
など古いバージョンを使って一時は対応していました。しかしそれでもバージョンアップが滞ることから次第に対応できないサイトが増えたことにより、2014年くらいに泣く泣くFireFoxに切り替えた覚えがあります。その後、Operaは一切使っていません。

 話を戻すと、当初Operaを開発していた人たちはその後自分たちで独立して、彼らが現在リリースしているブラウザソフトが上記のVivaldyです。私は自宅のパソコンはVPNを使う関係でChromeしか使えないのですが、かねてからOperaを評価していたことから会社のPCにはVivaldyを入れることにしました。感想を述べると、「また、会えたね」的な感じで、かつてのOperaを彷彿させる使いやすさと必要十分かつ最低限な設定項目と、もうパーフェクトなできでした。真面目に自宅PCでも取り入れたくて仕方ないくらいです。

 上記過程を昨夜友人に紹介するとともに「ヴィヴァルディ最高やで」とおすすめしたところ、「おい、紹介ページおかしいぞ!」と言われて出されたのが上記リンクです。見てもらえばわかりますが、末尾メニューの「ヘルプ」一覧は下記の通りとなっています。

・Vivaldiヘルプページ
・フォーラム(日本語あり)
・Vivaldi使うたことのない人
・芸人じゃない方のチュートリアル
・バグ教えとく
・しゃべりかける

 何故こうなっているのかというと、表示言語が「関西弁」になっているからです。通常の「日本語」も用意されている中、何故関西弁バージョンを用意したのか、いろいろと疑問です。ただ見た目にはかなり面白く、

うちらの信念
Vivaldiは社員所有やねん。ほんでその方針のままで行く予定やねん。

外部の投資家入れたらな、ユーザーの声聞きながら開発するの難しなるねん。ユーザーが手にすべきブラウザーをユーザーと一緒に作ってく自由が必要やねん。ユーザーのトラッキングはせえへんし、データも売らへんで。

 こんな感じでいろいろ説明してる他、「うちらについて」を見てみると、

ノルウェー、オスロ
うちの本社は、オスロの真ん中らへんにある綺麗な滝の横にあんねん。ほんまもんの滝やで。川でノルウェーサーモン捕りたかったらやってみ。

 などとかなり挑戦的な文章を乗っけています。っていうかいちいち「せやろ」っていってくるのもなぁ。

 末尾には「© Vivaldi Technologies™ — 無断複写・転載はアカンで!」とか書いていますが、関西弁で書かれるとネタ振りにしか見えません。恐らく自動変換ソフト使ってやったのだと思いますが、何故日本語にこうバリエーション付けたのか、よくはわからないですが私個人としてはヴィヴァルディ大好きだし、マジおすすめです。

2020年9月3日木曜日

管理費搾取マンションの恐怖

 また漫画の話ですが、先日発売した前にも紹介したことのある「正直不動産」の9巻はいつもながら面白かったです。この巻ではライバルキャラの悪徳不動産屋に主人公がしてやられる話が多いですが、なかなかキャラの立った悪役が多く、顧客に多額の負債を負わせたことに対して主人公が「地獄に落ちろ!」と言うや、「地獄の住人にタワマンを売ってやるよ」と返す言葉はなかなかの迫力がありました。

 ただそうした悪役以上にこの巻で驚いたというか着目したというか、一番記憶に残ったのは、見出しに掲げた管理費搾取マンションというものでした。元々この漫画、不動産仲介費は特別な約定がない限りは本来借主と貸主で折半しなければならないなど、一般人の知らない不動産業界の呆れた実態を紹介していていつも驚かされるのですが、この管理費搾取マンションというのは完全に初耳であるとともに、その行為の実態を見て正直寒気を覚えました。

 まず管理費というのは、言わずもがなの家主がマンションなどの団地自治体に毎月支払和なければならない料金のことです。これら管理費は団地の清掃や維持などの管理のほか、修繕などに用いられ、管理費があまりに安いマンションとかだとこの方面がおざなりになることもあるだけに、安けりゃいいものじゃありません。かといって、高いとそれだけ分譲家主の負担が重くなり、必要十分な金額が求められる性質の料金と言っていいでしょう。

 それで例の管理費搾取マンションについてですが、作中で主人公はあるマンション一室の売却仲介を請け負うのですが、いざ売ろうと顧客を探すも、周辺相場と比べて割高な管理費がネックとなってなかなか購入を検討する買い手が見つかりません。そもそもそのマンションの管理費は毎年1万円近く引き上げられており、一体何故これほど割高なのにさらに引き上げられているのか調べてみたところ、恐ろしい事実を主人公(永瀬財地)は発見します。
 というのも、そのマンションでは全戸数のうち約半数をある法人が賃貸用として保有していました。そして毎年の管理料の引き上げもこの法人が提案して決議を取っており、他の家主から引き下げ提案が出ても、投票数の過半数を握っているこの法人が毎年否決していました。

 何故この法人が自らも支払うこととなる管理料を毎年引き上げているのかというと、管理料の支払先となる管理会社と癒着しているからです。管理会社に管理委託料を支払いつつ、その一部をキックバックでもらうというよくある構図です。作中でも指摘されていますがこの管理会社への委託料というのはなかなか表に出づらいお金で、こうしたキックバックとか、横流しというのは実際多いそうです。

 話を戻すとこの癒着の事実に主人公は気が付き、このマンションは大きな問題を抱えているとわかったものの、同時にこのマンションから住人はもはや逃げられないという事実にも気が付きます。というのも冒頭で述べたように、既にそのマンションの管理費は周辺と比べ割高であることがネックとなって買い手がつかず、どうしても売ろうというのなら現在価値から大幅な値引きなしでは実現しない状態となっていたからです。
 こうした状況について主人公はこのマンション住人について、「高い管理費から逃れようと思っても売ることもできず、逃れられないまま搾取され続けるしかない」と評していますが、まさにその通りともいうべき状況でしょう。

 最終的には漫画らしいご都合展開からちょうどいいお助けキャラが登場することで、このマンションは管理費が引き下げられることとなり、主人公も無事にマンションを売り切ることが出来ました。ただ原作者の夏原武氏はこの搾取マンションの話について、「ほぼ実例に則している」と述べ、以前の様に雑誌で書いていたらルポを組んでいたとあとがきで述べています。実際それだけのインパクトがあるネタで、真面目にこの話を見て私も「マンション買うのこえー」とか本気で思いました。っていうかマジで購入検討するとしたら、自治会構成はよく見とかないとヤバイと感じます。

 というわけでややオチに困る紹介でしたが、世の中悪いこと考える奴はいるもんだとつくづく思います。知識で対抗しようにも、なかなか手ごわい相手もいるものです。


2020年9月1日火曜日

いまいち実態の読めない失業者数データ

 なんかネットで「ピエロ岸田」と書かれてあって、可哀想と思う反面、よく思い出し笑いしています。ただいくらか本人にも帰すべきところがあり、禅譲を期待してみすみすチャンスを見逃すところもあったので、こう言われるのも仕方ないかなとは思いますが。
 にしても総裁選挙をにらんで自説まとめた本書いたのに、発売日が投開票予定日の9月14日の翌日の15日ってのがマジ笑える。


 本題ですが、上の記事見出しを見て二重に驚きました。まず一つ目は、「えっ、たった5万人の失業でニュースになんの?」という点です。自分の感覚では定例の雇用統計速報記事ならともかく、さもコロナで失業者が増えていると報じるならば100万人を超えてから、その前兆だと報じるにしても10万人を超えてから報じるべきだと思え、5万人で記事になるという事実に驚きました。
 次に驚いたのは、「これ5万どころじゃなくて実際には少なくとも3倍はあるのでは?」という印象でした。そしたらすぐこんな記事も出てきました。


 こちらの記事では派遣労働者限定とはいえ16万人減という、先ほどの私の「少なくとも3倍」という予想水準に比較的近い数値となっています。ただこの記事、よくよく見ると数値のリソースは、「今年の7月と去年の7月の派遣労働者数を比較したら16万人減少していた」という内容で、減少数が解雇によるものか、それとも労働人口減などの自然現象なのか内訳が分かりません。
 また記事中に、「6月危機」という言葉をもっともらしく使っていますが、実際に6月中に契約を切られた具体的人数がないのであれば、本当に6月に大量のコロナ解雇があったのかどうか判断できません。ぶっちゃけこれ書いた記者には、「お前これわかってて書いてるだろ」と言いたいです。

 それはともかくとして、同じ日に出た記事で解雇者数が5万人超、雇用減少数が16万人となんかすごい差があります。もっとも子細に眺めるとからくりがいくらか見え、後者の16万人は「去年7月と比べた今年7月の差し引き値」であるのに対し、前者は「今年2~8月におけるコロナ関連解雇数(事業所申告ベース)」です。
 ということは後者のデータに比べ前者は去年7月から今年1月までの解雇者数は含まれていないんだから、小さくなるのも当然だね、ってことになるのですが、逆を言えば、労働人口の自然減を考慮に入れたとしても、去年7月から今年1月にかけて派遣労働者限定で10万人以上が失業したっていう風に計算できなくもないです。しかもこの半年の期間はコロナなんて全く流行していなかったのに、今年2~8月の約半年におけるコロナ関連解雇者数(約5万人)の倍もあり、コロナ流行時期と比べ流行してない時期の方が解雇者数(派遣労働者限定)で2倍っていうこっちの方がずっとニュースな感じに見えます、

 無論、上記の試算はあくまで適当に数字弄っただけなので、実際にこういう数値が実態を表しているかとなると議論の余地があります。そもそもなんでこんなあやふやなのかというと、「コロナ関連解雇」という変な指標を設けているせいで、やや基準が曖昧となるこの要素を取り入れることは、まだ参考として入れるならともかく、こうして大々的に報じる数値なのかというと正直疑問です。はっきり言えば、全体失業者数などだけ報じて、こうした余計な数値はむしろ報じない方が適切でしょうか。この辺、次の記事を見ればそのあたりが分かりやすいでしょう。


 見出しは例の「5万人超」という数字を並べてはいますが、こちらの毎日の記事の良いところは、全体データをきちんと入れている点です。その数値というのも、「7月時点の完全失業者数は前年同月比41万人増の197万人」というデータです。増加率にして26%アップとなりますが、繰り返しますがこっちの方がニュースじゃね?
 さらにこの毎日の記事だと他の細かい内訳データも報じており、いくつか抜粋すると以下の通りとなっています。

<2020年7月時点就業者数データ>
・就業者数は前年同月比76万人減の6655万人
・このうち非正規労働者数は同131万人減の2043万人
・このうち正規労働者数は同52万人増の3578万人

 さてこのデータを見て何を感じるでしょうか。ピンときたら110番じゃないけど、自分はこれ見てああなるほどと思いました。

 ポイントは内訳の部分で、非正規労働者が131万人減少した一方、正規労働者数が52万人増加しているという点です。朝日新聞の報道では、派遣労働者が16万人減少したということですが、非正規全体(131万人)から見れば約10%の分量に過ぎず、派遣労働者も大事かもしれないけどアルバイトやパートタイマーの失業ももっと注目した方がいいんじゃねという風に見えてきます。そう見えるからこそ、朝日は131万人という数値をあの記事では出さなかったのかもしれません。

 次に、去年7月と比べると確かに全体で失業者数が増え、就業者が減少していることは間違いないものの、非正規労働者が減少している一方で、正規労働者はこの1年で52万人も増えているという事実に気付けるか否かです。見方を変えれば確かに正規の雇用は保たれる一方、派遣が犠牲に合っているという風に読めなくもないデータですが、去年7月からのデータということを考慮するならば、非正規から正規へ雇用形態の切替えがなされた人も相当数いるのではと窺えるデータの様に私には見えます。そう考えると、派遣労働者が減少したという朝日新聞の報道も、単純に契約が切られたというだけでなく、雇用形態切替えによる減少も相当数存在するのではという疑念も持たれます。これっていいことじゃん。

 いろいろと憶測に基づく試算を繰り返してきましたが何が言いたいのかというと、この雇用統計の構成、報道自体、きちんとした全体値や内訳をはっきり示していないということにかなり問題があるということです。本来用意すべき指標要素、具体的に言えば就業者数の減少が解雇なのか定年などによる自然減なのか、あと非正規労働者から正規労働者への転換数など、こうしたデータがなければ実態を掴めることができません。元データは面倒くさいから見てないけど、少なくとも今回引用した記事ではまだ毎日は良いとして、他の共同と朝日の報道は本当に一部を切り取ったデータをただ出しているだけという評価をせざるを得ません。
 本来この手の雇用統計はもっと分析してしかるべきだというの、数字だけ出して失業が問題だとか派遣がどうのこうのとか、んなことしてる暇あったら自分の代わりにマージン率調べろよと言いたいです。

 っていうか仕方ないから面倒だけど元データも見てみましたが、前年同月比で分析しているから各メディアは報道で失敗しているように見えます。特に非正規労働者はピーク値から現在どれだけ落ちているかを報じるべきだったでしょう。
 その上で、やっぱりこのデータの真のニュースポイントは、今年5月単月(マイナス1万人)を除き、コロナ期間中も一貫して増え続けている正規雇用者数でしょう。なんでコロナで大変大変言ってる割には正規雇用者数は増えているのか、これこそもっと追求すべきところじゃないでしょうか。

 っていうかなんでどこも月次グラフを作らないのか。もう次のJBpressでこのネタ使おうかな。