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2024年4月10日水曜日

山崎製パンの10年で4人の死者報道を見て

「山崎製パン」約10年で4人の死者が… 大手スポンサーにメディアは忖度、取材に笑いながら「調査いつ終わるかも分かっていません」(デイリー新潮)

 上の記事見出しを見て私は初見で、「10年で4人って……すごいな」という感想を持ちました。で以って記事の中身を見たら、「えっ、4人でひどい工場って書かれるの?10年で二桁行かないのに?」という感想を続けて持ちました。

 決して工場勤務を長くしているというわけじゃないですが、工場で人が死ぬ労災事故なんて決して珍しくないと自分は考えています。自分がいた工場でも大体年一ペースで死亡事故が発生しており、この時の経験から年間1人ペースだったらまぁ普通かという感覚を持っています。
 また大手鉄鋼メーカーにいた知人なんかは鉄工所だと「大体月一くらい死亡事故発生してるよ」と言っており、私もそんなもんだという風に思ってました。

 なので上のヤマザキパンのニュースを見ても、あれだけの規模の工場で年平均1人ペースを切るなんて、よっぽど安全対策のしっかりした工場だと思い、てっきり上の記事も「大きな工場はこれだけ安全対策をしているんだぞ!」的に書かれているもんだと本気で思って開きました。そしたら逆に4人も死んでて冷血な会社だとののしっており、コメント欄でも「これだからヤマザキパンは……」などと否定的なコメントばかりで、「これじゃまるで俺がおかしい奴みたいじゃんか(;´・ω・)」という風に思えてきました。

 実際に自分の感覚がおかしいのかもしれませんが、工場の製造現場というのはそれだけ危険が多く、また死亡事故レベルの労災も決して珍しくはないものだと思っています。ほかの製造現場で働く人に聞いてもままあるという話を聞きますし、「人が死ぬことのない安全な生産」なんてものは夢物語な建前であり、生産現場における死は決して遠くのものではなく身近なものとみています。

 そのうえで言うと、ヤマザキパンをかばうつもりはありませんがこうした製造現場の死よりも日本人はもっと自殺に対して意識向けた方がいいのではないかという気がします。あっちは毎年数万人死にますし、未遂者の数は実際の死亡数の数倍に上るとも聞きます。製造現場での死を嘆いたり、企業を責めるのも確かに必要なことかもしれませんが、人の命を守ったり大事にしたりというのであればもっと自殺に目を向け、その抑止に動く方が絶対数的にも、救える数的にも大きい気がします。
 っていうかヤフコメの反応がこれほどまでヤマザキパンにネガティブだったのが非常に意外でした。今度労災死の実数とか調べてみようかな。

2024年4月9日火曜日

中国の失墜が招くアジアの政治経済変動

 今日も仕事少なくてのんびり……と思いきや、定時2時間前に急に仕事着て、このラスト2時間に物凄い集中力使って仕事したためか、かなり(ヽ''ω`)な状態となっています。やっぱ疲労って集中力に比例する。

 話は本題ですがこのブログは国際政治を専門に語ろうと開設したくせにこのところ一切国際政治を取り扱ってないので、ややマクロな視点でこれから数年間のアジア情勢を語ろうと思います。
 まず今後ほぼ確実に起こる想定というか前提として、経済不調による国際政治上における中国の権威失墜があります。あれこれ手をこまねいていますがそれでもかつての中国と比較して今の対応はスピード感がなく、また最も重要な不良債権処理にも取り掛かろうとしないため、最低でも2、3年間は中国は景気が悪化し続けると私は見ています。なんか最近景気は底打ちしたとか自分で言っていますが、具体的な根拠データもないし、また引き合いに出したデータはどれも統計的に破綻したものしかなく、あんな統計データを出さざるを得ないあたり中国が本当に苦しんでるのが逆によくわかります。

 この中国の失墜ですが、これがアジアに及ぼす影響は小さくないでしょう。2010年代、というよりリーマンショック以降のアジアは中国が文字通り政治、経済の中心でした。かつて日本はバブル期に欧米から「雁行型発展」という言葉で、日本を筆頭にしてアジア諸国が経済成長していくなどと分析されましたが(実際はそうはならなかったが)、2010年代は中国の経済発展が波及する形でアジア諸国、特に東南アジア諸国も経済成長すると同時に、中国から政治的圧迫を受けるようになっていきました。
 それが今回の中国の不景気によって、水を差された状態となっています。すでにタイやベトナムは中国からの受注や投資が減少し、景気が悪くなってきていると聞きます。このように中国の不景気はその恩恵を受け、経済面で中国への依存度が高かった国に対しても今後さらに波及してくとみられ、いろいろ悪影響を及ぼすと予想します。

 この際、影響をあまり受けないとみられるのがインドで、その理由は取引が少ないわけではないものの、中国への経済依存度が低いためです。ではインドが中国に代わって今後躍進していくのかというと私はそうは思わず、確かに人口からくる潜在力は高く近年の成長はBRICSと言われた時代よりも目覚ましいものの、依然としてインドは女性差別などの社会問題を抱えており、中国みたいな急成長は起こらないという風に考えています。
 その代わりと言っては何ですが、今一番アジアで気になっているのはインドネシアです。この数年間でアジアで最も経済成長していると思われるのがインドネシアで、その人口、また社会構成から考えても伸びしろはまだ余裕があるように思えます。このインドネシアが中国の不景気によってあおりを食らうのか、それとも中国への経済依存度をさらに減らしてもっと発展していくのか、この辺がアジア経済を見るうえではすごい重要になってくるような気がします。

 翻って日本ですが、日本も中国に対する経済依存度は高いものの、近年は米国主導のデカップリングに乗っかることで逆に外国からの投資を集めるような状態となっています。また日系企業も家電を筆頭に中国依存以前にそもそも産業として潰れている業界も少なくなく、最近は観光と投資と自動車で食ってきているところがあり、その自動車もかつてのレアアース問題やロックダウンを受けて他のアジア諸国への生産能力分散が進められているだけに、タイやベトナムほどには中国の不景気のあおりは受けないのではないかとやや楽観的に見ています。

 むしろ対中デカップリングの流れで近年は、台湾、韓国との棲み分けと経済連携を深めており、この環東シナ海連携が深まることでいい風が吹くのではないかとみています。ついでに書くと最近倒産件数が増えているというニュースが出ていますが、本来潰れるべき企業が賃上げや物価高の流れで潰れているように見え、むしろいい傾向だと思います。むしろ今の倍くらいの企業が潰れて産業再編が進み、安い人件費を武器に外国企業の誘致を進めれば日本のダメな経営者も一掃できてなおよくなる気がします。

 逆に中国は近年、金に物を言わせて結構強引な要求を他国に繰り返したうえ、北方のロシアを除く180度範囲で領土紛争を引き起こしているだけに、落ち目になるとヘイトをためた国からいろいろ反撃を受ける可能性があります。自分でも見ていて本当に不思議ですが中国の外交は味方よりも敵を敢えて作ろうとしている節があり、それが今後悪い意味で結果が出てくるかもしれません。
 中国としては国内需要だけでもまだまだ経済成長を達成できると考えているかもしれません。それは決して間違いではないと思いますがその方針に転換するにはあまりにも急すぎるように思え、もう少し時間をかけてやるべきところをなんか急ぎだしており、これがどう出るかがわかりません。

 そのうえで日本としては中国包囲網的な外交を行うのではなく、まずは近くの韓国、台湾との関係をより強化することが何より大事な気がします。変に東南アジアやオセアニアに手を伸ばしてもこれまでもあまり効果がありませんでしたし、むしろ戦闘機をはじめ欧州との提携の方が日本にとっても価値がある気がします。隗より始めよじゃないですが、変に大風呂敷な外交姿勢はかえって失敗しやすいだけに、手近なところから関係を強化していくことで、今後の変遷にもうまく対応できるように考えています。

2024年4月7日日曜日

上海ロックダウンから2年


 またロボティアの記事で、ため記事を一気に配信されたためまた来週からは色々書き溜めなきゃいけなくなりました(;´・ω・)
 今回の記事はスズキのVWとの提携中止で、これまでとは違い前向きなプロジェクトEndな事例です。最近またNHKが日本でプロジェクトXを放送し始めたそうなので、こっちのプロジェクトEも注目集めたらいいなと勝手に思ってます(´∀`*)ウフフ

 話は本題ですが先日友人の上海人と並んで歩いている最中、「今から2年前、あのロックダウンが始まったな(ヽ''ω`)」という言葉がポツリと出てきました。

 あの上海ロックダウンについては当時もこのブログでかなり口汚く文句ばかり書き綴りましたが、長期化するにつれて生活に慣れていったのかその手の文句も減っていったような気がします。ぶっちゃけ歴史的な一事件を体験したとは思いますが、あんな苦しい思いするなら体験しなくてもいいし、中国政府を一生恨む十分な理由ができたと思っています。
 当時のブログにも確か書いていますが、あのロックダウンを受けて当時の日本人の同僚が一人職場を去りました。その理由というのも「こんな国にはもういたくない!」と、同僚の中国人妻が言い出したからだそうです。ああいう事態が起きた後の踏ん切りというか損切の覚悟で言えば、あんな目に遭いながら今も妥協して中国に暮らす自分なんかよりずっと強いんだと、密かに中国人をリスペクトする出来事でした。

 結局、あれほどの犠牲を払ってロックダウンを敢行し経済にも深刻なダメージを与えておきながら、その年の12月には中国はゼロコロナ政策をやめています。執行中はあれだけゼロコロナの優位や効果を謳っておきながら何故やめるのか、経済にも貢献していたというのならもう一回やってみろよと内心言いたいところですが、やるんだったら自分がいないところで、共産党内だけでやってほしいものです。
 
 あのロックダウンを経験して自分が得た教訓としては、何よりもカレーよりも人は自由を譲り渡してならず、自由こそ最も尊重すべき概念であるというアメリカ人っぽい思想です。もちろん公共のためにはいくらか自由が制限されるのは当然ですが、それでもすべての自由を放棄したら本当に人間として、社会としてだめになるし、また国家としても一定の自由を保障できないのであればかえってその国家は弱体化するという風にもロックダウンを見て感じました。
 もう一つの教訓というか最大の思い出としては、ご飯と野菜だけで暮らしていたあの日、団体購入で初めて届いた冷凍シュウマイの味は非常に強烈だったというか今でも忘れられません。あまりの感動からいつか日本に帰ったらお金をためてシュウマイの神社を作ろうと思ったほどで、この願いは今も持ち続けています。それくらい、あの時食べたシュウマイは神のように感じました。

 などと語りだしたら止まらないロックダウンの思い出ですが、先日暖かい日和の中で自転車で駆け出し、外で桜の花が咲いているのを見て、「ああ、桜の花を見る自由すら2年前はなかったのか」などと思いを馳せていました。そういう意味ではこうして自由に動ける春の日々というだけで感謝の正拳突きをしようかなと思えてきます。同時に、あの時のトラウマにまだ自分は囚われてるのだなとも思え、今自分が奪われ、なおかつ戦火にさらされているガザ市民のことを思うと本気で胸が苦しみます。ロックダウンを経験していなければ、ガザへの気持ちは今とは全く違ったものだったことでしょう。

2024年4月6日土曜日

中国よりも経済が心配なあの国



 スパロボに出てくる「ヒュッケバイン」の名前のもととなったTa-183のキットがアカデミーから売られているのをたまたま見つけたので昨日作っていました。ドイツ版秋水ともいうような機体で、ロケットに羽つけただけというやっちゃった感がグッドです。

 話は本題ですがこのブログでもずっと言っている通り中国は大不況の真っ最中ですが、日本のお盆に当たる清明節の祝日により、木曜から今日土曜まで3連休でした。何故か日曜の明日は出勤日にされているのですが……。
 この3連休中、自分は家でゲームとプラモばかりという中学生みたいな生活していましたが、木曜に友人と会った際に最近の景況感について尋ねたところ、「消費そのものはダウングレードはしていると思うが、活発化はしてきているのでは?」という回答をされ、自分もこれには同感しました。この3連休中、街中を自転車で走ると結構人通りが激しく、また商業施設も以前よりはテナントが埋まってきていて空きスペースが減っているように見えました。

 もっとも消費が活発化したとしても今の中国は不良債権が重しとなっている構造的不況であり、消費がいいから景気も良くなるとは限りません。日本も90年代はほぼ一貫して個人消費は拡大していたものの景気が上向くことはなく、仮に今中国で消費が活発化していてそれで中国政府が「これでもう景気は大丈夫だ」などと言い始めたら、底なしの不況に陥るシグナルに見え逆に危険だと私には思います。一にも二にも、今必要なのは不良債権の処理に限ります。

 そんなずっと経済危機を煽っている中国ですが、実は密かに中国よりもその経済の先行きを不安視している国があります。それはどこかというと、ヒュッケバインの生まれ故郷ことドイツです。


 先日、GDPで日本を追い抜いたことが日本国内で大きく報じられたドイツですが、今このドイツを見ていると不安しか感じません。理由は大きく分けて二つあり、一つはロシアとウクライナ戦争によりロシアに依存してきたエネルギー戦略が大きく傾いたこと、もう一つは日本以上に過度な中国依存型経済によるものです。

 後者について解説すると、よく日本は中国の経済に依存し過ぎだなどと偏った思想の人間が中国に進出する日系企業をよく批判しますが、日本以上にドイツの中国依存度は高かったりします。具体的にはまともな統計が出始めてからほぼずっと、中国の自動車販売ではVWがメーカー別で1位であり、BMW、ベンツ、アウディからなる高級車も中国市場が大きな稼ぎ場となっていました。
 それが2年前より中国資本のBYDが一気にシェアを取り、シェア1位の座をVWから奪いました。で以って、VWの販売台数も大きく食うようになり、日本車も販売台数が落ちていますがその落差はVWには及びません。

 また自動車に限らず工作機械でも近年、ドイツの100年企業がこのところ中国企業によって買収されていたりします。このように製造業を中心に中国経済に依存し過ぎており、このところの対中デカップリングにもなんか出遅れているようにも感じます。
 なお日本は、特に半導体製造装置関連で米国主導のデカップリングの動きに、「どうしても欲しいなら売ってやんよ(´・ω・)」的に、いい感じに漁夫の利を得ている気がします。

 話を戻すと、それ以前に近年のドイツの製造業はよろしくないニュースが多いです。単純に日常で目にする耳にするドイツ企業の名前がかなり減ってきているように思えると同時に、主力の自動車産業も2015年ごろのディーゼルゲート事件で一気にこの市場を失い、今度はEVで挽回しようとしたら中国メーカーに先越されて今度は逆にEVを市場から締め出そうとする始末です。出す策全てが裏目に回っているというか、画期的な技術革新も生み出せておらず、本当にこいつら技術あるのかと疑うようにもなっています。

 そのうえで、今のドイツの主力産業はもはや製造業ではなく、ほかのEU加盟国との経済格差をてこにした金融になっているのではないかとすら思えます。金融で稼ぐならそれはそれでいいのですが、ドイツの場合はEU加盟国という枠の恩恵で稼いでおり、当然ヘイトもたまるだろうしまた金融産業がグローバル競争力を必ずしも持つわけではない可能性もあります。その点で、かなり経済が不安定になってきているように思うわけです。

 単純に中国がこのまま悪くなっていけばドイツもその煽りを受けることは必定で、中国なしでやるにしても決め手に欠けるというか具体策が見えず、本当にこのままで大丈夫なのかとみていて不安です。中国なんかはまだ膨大な人口による内需を利用する手がありますがドイツはその辺をどうするのか。まぁ日系企業でドイツと絡む業界は医療機器や製薬業界などを除くとあまり聞かないので、そんな日本に影響はないと思いますが。

2024年4月5日金曜日

自民党裏金問題の処分について


 上の記事はまたロボティアで今日配信してもらった記事です。レグザフォンは元々、このプロジェクトEを始めるにあたって真っ先に思い浮かんでいた記事ネタだったため、ようやく本願成就とばかりに配信してやりました。
 にしてもこの記事書いてる最中に初めて知りましたが、富士通の「ARROWS」というブランドはウイリアム・テルばりにリンゴ(Apple)を貫くという意味合いでつけられたブランド名だったそうですが、リンゴに殴り返されただけに終わった気がします。

 話は本題ですが先日、自民党よりパーティ券のキックバックによる裏金問題について処分が発表されました。世耕氏など2名に離党勧告したのを除き大半は戒告で済ませられ、首魁とみられる森元総理については話聞いただけで終わりという内容から世間の批判も大きいですが、私としてはこれでも岸田首相はよくやった方だと思っています。
 こう考えるのも、安倍晋三だったら森友問題のように「何が問題なの?」といって一切調査も処分もせず、場合によっては秘書らに責任を全部おっかぶせていたように思うのと、身内の自民ということで厳しい処分であれば岸田首相本人が降ろされ、処分もなあなあになる可能性があったと思うからです。

 また二階氏については引退に追い込んだだけでも大したもんでしょう。彼は親族を後継に立てると言われていますが、その選挙区に離党勧告された世耕氏が乗り込むといううわさも出ており、この辺は示し合わせたものがあるのかなと少し疑っています。

 もちろんほかの多くの人が処分は生ぬるい、岸田首相自身には何も処分がないと不満を感じるのもよくわかるし、当然だと思います。しかし岸田首相が厳しい処分に踏み切れないのは国民の支持率が低いことも影響しており、仮に高い支持率があれば党内を気にせず安倍派を一掃できたことも考えると、この点についてはもう少し斟酌してあげてもいいのではないかという気がします。
 若干贔屓にし過ぎかとも思いますが、株価は過去最高を更新してるし、経済政策も賃上げインフレ誘導と方向性がはっきり見えるし、外交に関しても余計なことを言わずに着実に回している点などから、私個人としては岸田政権をもう一期見てみたいと考えています。当初でこそ何考えているのか割らず、また発言もブレがあったので不安でしたが、改めて見てみると周りの声に耳を傾けなくなってからの彼の政権運営は目を見張るものがあり、その評価を一転させています。

 そのうえで、やはり自民党以上に野党が頼りないというか維新の会も大阪万博を巡っていろいろおかしくなってるし、ほかの野党に至ってはもはや話になりません。維新の会については若干偏見も入っていますが、どうもあそこは口先だけの人間ばかり評価して実行力とか思考力で人間を選んでない気がします。口三味線を鳴らす人材だけは豊富というか。
 その点を踏まえ次期選挙では自民党に伸ばしてもらいたいところなのですが、現状では批判も多いだけに厳しいでしょう。ただどうせ落とすなら諸悪の根源ともいうべき安倍派だけ落として、岸田政権が続く形で自民党が余計なぜい肉落としてくれたら一番理想的です。

2024年4月4日木曜日

セガサターンの「DEEP FEAR」の思い出


 先日こちらの動画を見てましたが、非常に懐かしい思いがしました。

 この動画は1998年に発売されたセガサターン用ゲームの「DEEP FEAR」を紹介するものですが、自分も当時遊んでクリアしています。ゲーム内容ははっきり言えば大ヒットしたカプコンの「バイオハザード」のクローンゲームなのですが、独自要素が多く、またストーリーが非常にしっかりしていたこともあって当時も今も強く印象に残っています。

 簡単に紹介すると、海底基地で未知のウイルスが蔓延したことにより人間が次々と怪物化してく中で脱出を図るゲームなのですが、部隊が海底基地ということもあり、酸素が非常に重要なファクターとなっています。酸素量が制限されるエリアでは酸素が切れた場合、呼吸ができなくなります。その際にエアラング内に酸素があればそれを吸うもののしばらく使えばなくなり、肺の中の酸素も切れたらそこでゲームオーバーです。
 なお武器の中にはエアグレネードがあり、これを破裂させると室内の酸素量を増やすこともできます。また酸素は怪物に対しても効果があり、酸素を増やすと敵は怯むので攻略上でも役に立ちます。

 ゲームの難易度はバイオハザードと比べると非常に簡単というかやさしく設計されており、弾薬や回復剤が無限に供給されるため、ごり押しでもなんとかクリアできます。友人はラスボスの攻略の仕方がわからず詰まってましたが、光ってる最中にだけ攻撃できることを知れば何のことはなくアサルトライフルでハチの巣にしてやることができます。
 そんな感じでゲームとしての面白さはバイオハザードには劣るものの、前述の通りストーリーは非常に優れており、一緒に脱出を図っていた仲間が次々と亡くなるどこrか、人によっては怪物化して襲ってくるという展開にもなり、終始話を追いたくなる展開でした。また主人公が怪物化しないことについては、主人公は元々風邪を引いており、そのインフルエンザウイルスがウイルスの侵入を防いでいたという単純ながらしっかりした理由付けがなされていました。

 今でこそ「ガンダムは宇宙ばかりじゃなく深海でも戦うべきだ」とか、「日本はアッシマーかハイゴッグを量産すべきだ」などと主張するなど深海物を好むようになった自分ですが、恐らくそうした一歩出るだけで水圧で死ぬ深海という特殊なフィールドを舞台にした作品で初めて触れたのは、このDEEP FEARだった気がします。そう思うと非常に貴重な第一歩目を踏ませてくれた作品だったとも思え、こうして今でも取り上げる人がいる辺り、いいゲームに出会えたもんだとかみしめる思いがします。

2024年4月3日水曜日

「だんドーン」が西郷隆盛をナポレオンに見立てた背景

 「ハコヅメ」は全巻買ってたけど、同じ作者の泰三子の新作である「だんドーン」はこれまでなかなか手を付けなかったのですが、知人に勧められたのでこの前ようやく1巻を購入しました。一読した感想としては同じ単行本1冊でもほかのマンガに比べて読む時間が非常に長く感じるほどボリュームが厚いと思った半面、ページというかコマ割りは「ハコヅメ」時代よりもすっきりしているように見え、なんか前よりこの作者は漫画の構成力が上がっている、それもかなりの水準でと感じました。

 その「だんドーン」ですが、日本警察の父と呼ばれる川路利良を主人公としています。彼は元々は薩摩藩士であり、物語も幕末時代、より細かく言えば13代目の徳川家定がまだ生きてて一橋派と南紀派が後継争いをしている頃をスタートしています。主要キャラは川路のほか同じ薩摩藩の藩主である島津斉彬、そして後の明治維新勲功第一号とされる西郷隆盛となっています。
 ちなみにそんな時代劇を舞台とした漫画ですが、隙あらばと言わんばかりに下ネタがたくさん入っています。元々、セリフ回しが「銀魂」の作者の空知英秋氏に似ていると「ハコヅメ」時代に思っていましたが、下ネタ盛り沢山な点も空知氏に似てきたような気がします。っていうか絶対この人、下ネタ大好きだろ。

 話を戻しますがこの漫画の第一話で、ナポレオン伝を持ってきた西郷に対して斉彬が「お前が日本のナポレオンになれよ」というセリフがあります。多分、知ってる人はみんな同じように反応したのではないかと思いますが、私はこれを見てすぐ「ああ、つまりはフーシェってことね」と考えました。

ジョゼフ・フーシェ(Wikipedia)

 フーシェというのはフランス革命期からナポレオンが支配した第一帝政時に活躍した政治家で、以前に麻生元首相が「伝記が面白い」と言っていたこともある人物です。具体的にどういう人物だったかというと、警察長官となってフランスの警察組織を作ったのですが、後のこの警察システムを日本を含むほぼすべての国が参考にしており、実質的に世界の警察システムの生みの親ともいうべき人物です。
 こういうと街中の治安維持において非常に貢献した高潔な人物のように聞こえますが、実際にはその真逆というか権謀術数に長け、この時代のあらゆる暴力に係わっています。彼が作った警察システムも、治安維持というよりは国内諜報のために作られたような面が大きいです。

 ざっとその来歴を触れていくと、初めは教師でしたがフランス革命を機に革命運動に参加し、ジャコバン派のロベスピエールとの親交を深めるにつれ徐々に地位を高めていきます。この革命期における王党派えの弾圧は非常にすさまじく、王党派というだけで多くの人を大量に虐殺し(リヨンの大虐殺)、またルイ16世の処刑も熱心に推し進めていました。
 しかしロベスピエールと関係が悪くなるや、やられる前にこちらからとばかりに彼の追い落とし工作を行うようになり、結果的にこれが功を奏してロベスピエールをギロチンへと送り込むことに成功します。その後、ナポレオンに近づいて彼の政権奪取に協力すると、第一帝政期の長い期間に渡り警察大臣を務め、外務大臣のタレーランと並ぶ内政の重鎮として君臨します。

 しかし位人臣を極めながらも野心は止まず、ナポレオン周辺を含め常にあらゆる方面に密偵を送っては多くの人間の弱みを握り、自らに抵抗できないよう脅迫を続けていたそうです。それどころかナポレオンが遠征している最中に勝手に軍を編成したり、対立していた英国との和平交渉も勝手に始めるなどしたことから、その優秀な才能を惜しみながらもナポレオンも一時はフーシェを解雇していますが、その後彼の後継となる人物がいないためにまた採用しなおす羽目にもなっています。

 そんなフーシェですがナポレオンが一度その地位を退いてエルバ島に流され、ルイ18世が王座に就いた際は王党派から嫌われていたこともあり、失職することとなります。しかしナポレオンがエルバ島から脱出するとすぐさま彼のもとに馳せ参じて、再び警察大臣の職に就きます。
 この時、ナポレオンはフーシェに対して警戒していたそうですが、その才能というか情報収集能力は際立っていたため採用ざるを得なかったそうです。結果的にこの懸念は的中したというか、ナポレオンがワーテルローの戦いへと至る遠征へと出かけるやフーシェはナポレオンの敗北を早くも予想し、議会工作をすぐ始めています。

 フーシェの予想通りにナポレオンがワーテルローの戦いに敗北すると、ナポレオンの皇帝退位を議会で主導して彼をフランスから追い出すことに成功します。その後、フランスが連合軍に攻め寄せられる中で臨時首班の座に就くと、連合軍と戦ってフランスの共和制を守るというスタンスを取りながらルイ16世ら王党派と連絡を取り、共和主義者を裏切る形で王党派をフランスに迎え入れることに成功しました。こうしてフランスは再び、ブルボン朝の王政復古が始まります。
 この辺の下りはちょうど今、長谷川哲也氏の漫画「ナポレオン 覇道進撃」の中で展開されている話です。

 王政復古後にフーシェはフランス国内で屈指の権力者となるものの、ルイ16世を含む王党派から強い嫌悪感を持たれていたこともあり、その意を受けたタレーランの工作を受けてフランスあkら追放されます。しかし追放後もフーシェは多くの主要人物の弱みを握り続け、暗殺されることなく無事天寿を全うしています。

 話を「だんドーン」に戻すと、日本警察の父と言われる川路利良は同じ警察畑ということから「日本のフーシェ」という人が一部います。その上で西郷をナポレオンに見立てたということは、ナポレオンに止めを刺すフーシェという役どころを川路に持たせるという構想があるのではないかという風に考えたわけです。実際どうなるかわからんけど。

 最後に漫画の話をすると、最近はサンデーの星野真氏という作家が一番興味を持って眺めています。現在「竜送りのイサギ」という漫画を連載中ですが、前作の「ノケモノたちの夜」はアニメ化も果たしており、今この本を読み進めています。
 セリフ回しにセンスを感じるのと、細かい衣装の造形が非常によく、あと絶望感や殺気をはらんだ眼の描き方がうまいように思え、こんな作家がいたのかと感心しながら読んでいます。まぁこの人の漫画を読むきっかけは「竜送りのイサギ」に、「竜殺しのタツナミ」というどっかの中日監督を連想させるキャラクターが出てくるからだけど。