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2014年1月30日木曜日

「極黒のブリュンヒルデ」のアニメ化について



 また趣味の話で申し訳ないのですが、私が以前から熱読している「極黒(ごっこく)のブリュンヒルデ」という漫画が四月からアニメ化するそうです。以前にも紹介した「シドニアの騎士」といい、なんか今年の四月は面白そうなアニメが一気に放映されるなぁ。

 ちょうどいい機会なのでこの「極黒のブリュンヒルデ」という漫画、というより作者の岡本倫氏について自分の所感を述べると、漫画家など芸術家には変わり者が多いとよく言われますが、実存する人物に対して非常に失礼極まりないことを言うと、本当の意味で頭がおかしい人っていうのはきっとこの人なんだろうなどと前から思っています。
 岡本氏の代表作となるとデビュー作でもある「エルフェンリート」という漫画で、この漫画はかわいらしい女の子の絵柄が表紙であるため一見すると萌えマンガにしか見えませんが、その内容は下手なスプラッター映画よりも激しい残虐描写に満ち溢れていて、連載中は「萌えマンガの皮を被ったトラウマ本」とまで言われたほどです。そういう特殊な嗜好性が海外だと妙に受けるというかこの漫画は主にアメリカで大ヒットしており、岡本氏も「シドニアの騎士」の弐瓶勉氏同様に日本国内よりも海外の方が評価が高い珍しい漫画家です。

 話は「ブリュンヒルデ」に戻りますが、岡本氏はこの作品の前に「ノノノノ」という今でこそ旬の女子(男装)のスキージャンプ漫画を描いていてこれもまた非常に面白かったのですが敢え無く打ち切りに遭ってしまいました。その際にどうも知り合いに岡本氏は、「お前が求められているのはエルフェンリートの様な漫画だ」と言われたそうで、原点回帰とばかりにこの「ブリュンヒルデ」を書き始めたと述べています。
 原点回帰というだけあって、「萌えマンガの皮を被った究極のスプラッター」は見事なまでに復活しています。冗談抜きでそういう描写が苦手な人にはこの漫画は一切薦められないのですが、具体的にどれくらいスプラッターなのかというと大体単行本一冊当たりにつき上半身と下半身が分断される人間が一人や二人出てきます。冗談かと思われますがこれはマジです。

 ではストーリーはどうかというと、簡単にあらすじを述べると高校男子である主人公のクラスにある日、幼い時に死んだ幼馴染によく似た女の子が転校してくるのですが、その子は自分は魔女であり超常現象じみた能力を用いることが出来ると話して実際にその力を主人公の目の前で見せます。これだけならよくある展開ですがこの辺はさすが岡本氏というべきか、ヒロインら魔女は鎮死剤という薬を一日一回飲まないと全身から血が噴き出しバラバラになって死ぬという、どうしてそう平然と残酷な設定を用いてくるのか理解の範疇を軽く越えてきます。こうした設定に限らなくても以前から岡本氏は普通の人間じゃ有り得ないとしか思えない展開を平然と打ち出してくることが多く、この「ブリュンヒルデ」でも「あれっ?」て思ったら重要そうな登場人物がさくっと死ぬことが多いです。

 この辺が岡本氏が異常だなぁと一番に思う点なのですが、自分がこの人の漫画を読んでいてよく感じるのは残虐描写に対して全く呵責なく描かれているように見えます。言ってしまえば「エルフェンリート」や「ブリュンヒルデ」などよりも残虐な漫画は世の中いくらでもあります。しかしそれらの漫画と岡本氏の漫画で決定的に違うのは、どの漫画も残虐なシーンをなるべく際立たせるように、読者にショックを与えるように何かしら作者の意図が込められて描かれているのに対し、岡本氏は「よくあるシーン」のような具合で1コマにポンとそういうシーンを何気なく投入してきます。言いづらいのですが敢えて表現すると、そういうシーンを載せるのにためらいがないというかなんとも思っていないとしか思えない展開が多く、同様に漫画の中の登場人物に対して生かそうが殺そうがどうでもいいような、まるで感情がなく淡々とストーリーを展開している風によく感じます。もっとも主要キャラは何があっても死なないというところがあるだけまだ人間味が感じられますが……。

 さっきから岡本氏のことを一体なんだと思っているのかと言わんばかりの評論を書いておりますが、これは言い方の問題であって私自身は岡本氏を当代でも稀有な漫画家だと考えており、弐瓶勉氏と並んで最大限に高く評価しております。ただその才能は漫画というよりはストーリー原作者としての方が高く、いくつか原作のみ参加した漫画もありますがそのどれもが「岡本倫節」というような、見ていてゾッとするようなセリフと展開のオンパレードでした。
 なおデビュー作の「エルフェンリート」はストーリーはいいが絵に難があるとよく言われていましたが、現在においてはややキャラクターの描き分けが上手でないものの昔と比べたら劇的に向上しており、運が良ければ「ブリュンヒルデ」は「エルフェンリート」より売れるんじゃないかとみています。本音を言えばその前の「ノノノノ」が売れてアニメ化もしてほしかったのですが。

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