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2018年12月10日月曜日

産業革新投資機構の役員辞任報道について

産業革新投資機構vs.経産省 取締役9人辞任の裏側(JBpress)

 既に各所で報じられている通り、日本最大の官民ファンドである産業革新投資機構において民間出身の全役人が突然辞任するという事態になりました。この件について私が見た報道では、民間出身役員らとスポンサーに当たる政府の意向でズレがあったためとされ、そのずれについては一部の報道では、役員らの高額報酬であったり、投資先が当初の目的とは異なる短期的な利ザヤ狙いの会社であったためなどと報じられていましたが、上記の大西康之氏の記事を読んだところ、なんとなくそれらとは違うのではと思うようになりました。

 先に書いておくと大西氏はかねてから自分も尊敬していた記者で、エレキ方面の経済記事であれば間違いなく現代日本でトップではないかとも見ています。なおこの前聞いたところによるとエレキだけでなく経済全般に強く、今をときめく(?)カルロス・ゴーン氏の日産入りを最初に報じた上に、日産に来る直前のゴーンに単独で取材してたりしてたそうです。

 話は戻りますが上記の大西氏の記事によると、政府と役員の対立は投資方針にあったようで、その内容というのもゾンビ企業を救うか否かという点だったそうです。
 これまでも産業革新投資機構は死に体だったJDIやパイオニアなどに投資というか救済を行っていますが、本来ならその名の通り将来の産業革新を担うベンチャーなどを応援する目的で設立されたにもかかわらず、こうした事業破綻した大企業の救済ばかり行っていることに役員らはかねてから疑問に感じていたそうです。

 その上で、本来の設立趣意に沿うバイオ系ベンチャー企業への出資を行おうとした矢先、国と経産省によって潰されていたようです。恐らくこれが前述の「短期的利ザヤ狙い」とされた案件かもしれません。

 この記事で言わんとしていることには納得、というより私も前々から考えていたことで、官民ファンドとは名ばかりに政界に発言力のある大企業を救済するだけの「ゾンビマスター」だと、産業革新投資機構について思っていました。何気にリメイクが発表されているバイオハザード2の話題を見たばかりだったので、「Gウイルス」という単語も頭に引っかかります。
 その上で、こうしたゾンビ企業の救済は果たしてメリットがあるのかという点で疑問でした。はっきり言えば市場主義に舵を切って国有企業の民営化に取り組む中国とは真逆に、日本はこの産業革新投資機構だけでなく年金機構や日銀などが多くの主要企業の最大株主となるなど、実質的に国有化が進んでいます。でもってそれら企業が成長力を持つのかと言えば逆で、むしろ衰退する企業にほど金を流し込んでおり、えてしていうならゾンビやタイラントを作るGウイルスをまき散らしているようなもんです。

 そのような観点で言えば今回役員らが一斉に辞任したというのもうなづける話です。本来ならば市場に任せて取り潰さなければならない旧大企業を政府の意向で延命すれば、市場が歪むに決まっています。今夜会見が行われているとのことですが、明日以降の解説記事もじっくり読む必要がありそうです。

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