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2023年11月25日土曜日

悪役俳優のほうが目立つスパイダーマンの映画

 先月の日本滞在中、かねてより見たかった映画として「ジョーカー」のほか「スパイダーマン」の最新シリーズ三部作のうち2作目の「ファーフロムホーム」と3作目の「ノーウェイホーム」を自宅のAmazon Primeで見ました。ちなみに「ファーフロムホーム」は見た直後に金曜ロードショーでテレビ放送され、翌週には「ノーウェイホーム」も放送されていました。
 まぁ日本語字幕版で見たいから別にいいんだけどさ。

 どちらも前評判にたがわぬ見事な傑作で、特に「ノーウェイホーム」に関しては過去シリーズでスパイダーマンを演じたトビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドがそのまま出演するという非常に豪華な作りで、近年見た中でも稀にみる傑作だと感じました。っていうか公開当時に映画館でちゃんと見たかった。

 ネットでいろいろ批評を見ると結構裏話が多く書かれてあり、決戦前に3人のスパイダーマンが決意を確認しあうシーンで2代目スパイダーマンことアンドリュー・ガーフィールドが「ありがとう、君たちを愛してる!」と抱き着くシーンがありますが、あれは何でもアンドリューのアドリブだったそうです。本人曰く「感極まって、自然と出てきた」そうですが、過去の出演作の「ハクソー・リッジ」の熱演ぶりといい、非常に感情が強い人なんだなぁと思わせられるシーンでした。
 実際にそう伺わせられるエピソードとして、まだ情報公開前にアンドリューが映画関係者に「あんたまたスパイダーマンやるんだって?」と聞かれた際に否定はしたものの、「あんた嘘が下手ね。今のうちに嘘つく練習をしておきなさい」と言われたらしい。

 また別の裏話として悪役のグリーンゴブリン役を演じたウィレム・デフォーについてほかの出演者によると、「ウィレム・デフォーが出るあるシーンを30テイク撮影した。その30テイクには一つとして共通する動画はなかった」と語られています。これはどういうことかというと、ウィレム・デフォーは30テイクすべてで異なる演技の仕方をして見せたそうです。その演技の幅の広さと芸達者ぶりに他の出演俳優らも大いに驚いたそうです。

 実際にというか映画の批評を見ていると、「ノーウェイホーム」で最も評価されていたのはこのウィレム・デフォーで間違いありません。約20年ぶりに同じ役を演じるにあたって、かつての出演時と変わらぬ怪演を見せたほか、オリジナルの1作目でも穏やかそうな父親の表情を見せたかと思ったら、狡猾な悪役の表情へ瞬時に入れ替わる演技が素晴らしく、それが今回の「ノーウェイホーム」でもいささかも衰えていなかったのには自分も驚きました。

 同じく悪役として、ドクターオクトパス役を演じたアルフレッド・モリーナに関しても自分としては感慨深い思いとともにその演技を見ていました。もともと私は全映画の中で「スパイダーマン2」が一番好きで何度も見ているのですが、この作品でアルフレッド・モリーナは変心した大学教授役を演じており、学者らしい知的な表情を見せる一方、こちらもまた狡猾な悪人顔を使い分けており、主演のトビー・マグワイア同様にその演技ぶりには一目置いていました。
 そのアルフレッド・モリーナもこの「ノーウェイホーム」にて、こちらも約20年ぶりの出演ながらかつてと全く変わらない姿で現れ、そのふてぶてしくも知的さを感じるセリフの話し方といい、やっぱすごい俳優だったと改めて感じさせられました。なお本人は相手役のトビーとの再会がこの映画で最もうれしかったことと話しており、撮影途中で何度もトビーと話してたそうです。

 以上の二人を見るにつけ、割とこのスパイダーマンの映画は主役以上に悪役を演じた俳優の方が演技面での卓越さを見せつけられることが多い気がします。3シリーズ目第1作の「ホームカミング」でもヴァルチャー役を演じたマイケル・キートンの演技が自分の中で一番印象に残っており、主役もさることながら悪役俳優の活躍が人気を支えている気がします。

 もっともこれはスパイダーマンに限るわけじゃなく、ほかのヒーロー映画でも共通する特徴なのかもしれません。「ダークナイト」でジョーカーを演じたヒース・レジャーは言うまでもなく、傑作ヒーロー映画はたいてい主役以上に悪役の演技が評価される傾向があり、極端なことを言えば悪役がヒーロー映画の成否を左右する面が大きい気がします。そういう意味では大御所俳優を持ってくるスパイダーマンのキャスティングは毎回当たっているのかもしれません。

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