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2012年11月28日水曜日

白酒の可塑剤混入問題

 このところ中国の新聞では連日、こっちのやばいほどアルコール度数の高い酒「白酒(バイチュウ)」に可塑剤が混入していたという事件が報じられております。恐らく毒餃子、メラミン牛乳に続く中国食品史の1ページとなること請け合いなので、私もこのブログに書き記しておくことにします。

 この問題を興した会社は「酒鬼酒」という、日本人からしたら「えっ?(;゚Д゚)」と思うような名前の会社です。ちなみに「酒鬼」は中国語で酔っ払いという意味です。
 事の起こりは先週、恐らくタレコミがあったのでしょうがある新聞社がここの会社の白酒を第三者検査機関に持って行って分析を依頼したところ、中国の基準値の2.4倍に当たる可塑剤、具体的にはDBP(フタル酸ジブチル)が検出されました。先に歴史を紐解くとこのDBPの食品含有量に対する規制が始まったのは去年で、というのも台湾の食品メーカー大手の統一集団が作っている清涼飲料から同じように大量に検出されたことがきっかけです。

 話は戻って酒鬼酒についてですがこの報道が出るや型通りに事実無根だ、国の検査機関に鑑定を依頼していると反論したのですが、中国の検査機関でも基準値の2.6倍のDBPが検出され、事ここに至って可塑剤が入っていることを認めました。ただその後の対応が問題というか日本企業も人のこと言えないけど危機管理が弱いというかで、「DBPは食品に対する基準値はあっても、白酒に対する基準値はないから違法ではない」と言い出して、「白酒も食品に入るだろが(#゚Д゚)ゴルァ!!」といろんなところから至極真っ当なツッコミを受ける羽目となりました。さらに製造過程でどうも問題があったらしくて工場の設備を一部取り替えるなどして対応は取るものの、既に流通している商品の回収は行わないとこれまたツッコミがいのある行動を取ってきました。こんな感じなのでこちらの新聞でも、このまま倒産するだろうと書かれています。

 私は元々アルコールに弱いのもあって白酒なんて飲まないので気になりませんが、ここの会社の白酒飲んでた人からするとまたショッキングな内容でしょう。なおこのDBPは相当量を摂取しないと身体に影響は出ませんが、どうもホルモンバランスを崩させる作用があるようです。
 ただ同じ問題がほかの白酒メーカーにも起こっていないのかが少し気になっていたのですが、発覚から一週間たった現在に至っても特にニューカマーは現れていないので、この酒鬼酒の単独の問題だったのかなと考えています。恐らくマスコミも他社製白酒を検査機関に持って行っているでしょうし。

 最後に蛇足ですが、以前にやっていた「太閤立志伝5」という歴史シミュレーションゲームで自分オリジナルの武将が作れるのですが、私はこの武将エディットでその武将の説明乱の末尾に、「毒餃子の食べ過ぎで死亡」、「メラミン牛乳の飲み過ぎで死亡」、「段ボール肉まんの食べ過ぎで昇天」などとよくわからない末路にいつも仕立てあげておりました。中国のこういう食品事件を見る度に毎回思うけど、よくもまぁこうもいろんなことを思いつくなぁとつくづく感じます。この前なんか鴨肉を複雑な工程を経て羊肉に偽装して売ってた人が捕まったし、そんな努力するなら真っ当な方向に使えばいいのにと思わずにはいられません。

2012年11月27日火曜日

嘉田滋賀県知事の新党設立について

 今日はまた帰宅が10時過ぎてたからブログは休もうかと考えてましたが、まだシャワーのお湯が沸かないのでさらりと嘉田新党について書きます。

<未来の党>「卒原発で希望発信」 準備途中、連携など曖昧(毎日新聞)

 結論から言えば嘉田知事が設立したこの「未来の党」は小沢一郎の傀儡政党でしょう。第一、小沢が反原発を唱えること自体が奇妙な話で、自分が言うとかっこつかないから嘉田知事を前面に出しただけでしょうし。正直に言ってあまりいい評価をしていないので悪口が続きますが、自民党の安倍総裁が指摘しているように総選挙直前でいきなり新党を設立するというのは理念や政策は置いといて、選挙で勝つだけが目的としか思いようがありません。こういってはなんですが具体的な理念や政策がないのならとりあえず反原発だけ掲げて無所属で戦っても悪くはないんだし、そもそも嘉田知事自体は選挙に出ない方針であることから一体何のために政党を設立するのか、理解に苦しみます。いやまぁ、小沢の傀儡になるってんなら重々理解できますが。

 話を少し広げると、今回の選挙は過去かつてないほど新党が乱立しています。みんな第三極、第三極と口々に言いますがこれだけ乱立した上で似たような政策を並べ立てても有権者は違いが判らず、現時点では共倒れになって小選挙区制から自民と民主が有利になっていく可能性があります。当初は新しく出てくるのは維新の会と民主党下野組くらいかなと思っていましたが、どうも石原慎太郎氏が出てきた辺りから私もわけがわからなくなってきました。
 仮にこれらの新党が議席を取ったとしても、果たして選挙後の特別国会で足並みをそろえられるかといったら非常に疑問です。恐らくは政党の合流が選挙後にも起こるでしょうが、それにしたって極小と極小同士がくっついても利益があるのか、またTPPと反原発と金融政策と今回はやたら論点も多いだけに、下手に組むと支持者から反発が起こる可能性も高いです。

 なおこの論点ですが、意外や意外に消費税増税論議は未だに大きなトピックにはなっていません。てっきり消費税改革見直しを真っ先に掲げる政党が出てくると思っていましたが、私のチェック不足かもしれませんがまだそれほど目立ってない気がします。

 最後に一つだけ詳しく語りますが、みんなの党が維新の会と合流しなかったのは英断だと思います。時事通信の屋山太郎氏なんかは官僚改革が何よりも大事だと言ってみんなの党をよく持ち上げていますが、私は官僚改革は必要だと思うしみんなの党はこの議論に関しては最も熱心だとは認めるものの、それ以外の政策方針がなかなか見えてこず民主党の政策に反対しかしていないからこのところ評価を大きく落としておりました。
 更に言えば代表の渡辺善美氏がテレビカメラの前だとややオーバーすぎるアクションを取ることが多く、政治家にしては落ち着きがないなぁと思うから次の選挙では厳しいんじゃないかと思ってましたが、変に新しい公約やら議論を持ち出さずに維新の会との合流を切ったことによって、固定支持層が生まれてくるんじゃないかと見直しております。実の所、先の選挙で私は比例でみんなの党に投票してます。仮に第三極が出来るというのなら、ぽっと出よりも曲がりなりにも3年間やってきたこのみんなの党が中心になる方がいいんじゃないかと感じる次第です。

2012年11月26日月曜日

昨今の中国の就活事情

 このところ中国ネタが不足しがちなのを自覚しているので、意外と日本では語られない中国の就活事情について書こうと思います。

中国、公務員試験に112万人 倍率53倍
中国、来年の新卒者700万人に さらなる氷河期到来か(人民日報)

 なんでこんなことを書こうと思ったのかというと、実は先週土曜日から中国の公務員試験が開始されたからです。日本でも公務員試験は近年の人気の高まりぶりから狭き門となっておりますが、上の引用先にも書いてある通りに事情は中国も一緒で、というかやたら人口多い国だけあって倍率が53倍にまで跳ね上がったりしてかなり楽しいことになっております。何故公務員が人気なのかというと、日本では雇用が安定していることに加えて給料が減ることない(しかもやや高い)、でもって仕事が楽という3点セットからですが、中国では安定とかそういうこととかよりも単純に副収入が多いということが最大の魅力となっております。

 これは先月あたりに発覚した話ですが、中国のどっかの地方公務員がネット上で、「あいつ、やけに大量の不動産持ってるぞ」と名指しで書かれた事がきっかけで横領罪で捕まるというニュースがありました。その報道によるとその公務員は月給約15万円にもかかわらず数億円の価値のある不動産をたくさん保有しており、いったいどこからその購入資金を得てたのかというとやっぱり許認可とかで袖の下を受け取っていたそうです。
 最近中国では公務員や政治家の汚職問題が非常に大きくなってきて上記の発覚事件のように世間の目も厳しくなってきてはいるのですが、それでもその副収入の果てしない多さから公務員になりたがる人は多いです。これも最近知りましたけど、日本同様に普通に公務員試験浪人も都市部ではたくさんおり、かつての儒林外史じゃないんだから日本を含めてそこまで熱上げる事もないんじゃないかとよく思います。まぁこう思うのも自分が公務員に向いていないというかなりたがらなかったせいもあるでしょうが。

 話は戻って就活事情ですが、日本も来月あたりからまた意味があるとは思えない説明会があちこちで開かれるようになりますが、去年同様に今年も日本企業は各社採用数を絞ってくることが予想されます。ではまだ景気がマシな中国はどうかですが、企業の募集数自体は大きく減少してはいないものの中国もここ数年で大卒者数が急劇に増えており、「大学は出たけれども」という言葉に代表されるようになかなか希望の職に就ける若者は多くありません。
 ただ中国人の友人曰く、「選り好みしなければ大卒は必ず就職できる」だそうで、私の肌実感でも日本よりはまだ雇用環境がマシなのではないかという風に感じます。話が少し飛びますがよく日本でも「中小企業は人手不足なのに最近の若者は大企業ばかり選んで就職機会を失っている」という言葉を言う人がいますが、これに関しては私は嘘だと思います。というのも私自身が就活中に感じた点として中小企業ほど採用に対して熱心ではないというか、はっきり言ってしまってやる気があるようには思えず、なおかつ大企業ですら人員を育成する余裕がない状態だというのに、いわんや資金余力の少ない中小企業がといったところです。この前もどっかのデータで中小企業の求人倍率は3倍超とか書いてありましたが、どれだけ実態を反映しているのか。

 また中国へ話を戻しますが、少なくとも日本の様な大卒ニートの存在はまだ大きくは確認されていないため、就職戦争といわれるほどではない状態だとみております。あと傾向として述べると、最近は発展の遅れている内陸部への外資進出が相次ぎ、給料安くとも地元で就職したいけどなかなか働ける場所がないから北京や上海へ、というような人材をうまく吸収していると聞きます。逆に上海や、中小企業の工場の多い浙江省などでは技能や知識を持つ高級人材の供給が減っており、賃金を上げて募集せざるを得なくなってきております。
 その賃金ですが友人とやっているホームページのコラムにも書きましたが、数年前まで大卒初任給が1500元(約2万円)だったのが今や大都市部では3000元(約4万円)くらいと2倍にまで高騰しており、まだまだ上がっていく気配を見せております。そりゃ製造業もほかの東南アジアへ逃げるわけだ。

 あと人気の企業形態について述べると、10年くらい前は給与が高いことから外資系企業が人気でしたが、数年前くらいからは給与が高くてもバリバリ働くような仕事は敬遠されはじめ、こちらも日本同様に比較的自由に使える時間が多い企業が人気となってきております。業種とかでどこが人気があるかまではわかりませんが、建設銀行など大手国有銀行の就職者はやっぱり周囲の目も違うので人気なのでしょう。
 最後に中国人の外資系企業への就職に関してですが、これは日本人と比べて圧倒的に寛容です。日本では未だに外資系の金融企業とかに勤めることに対して何かしら抵抗感あるような態度を見せますが、中国人は国内の企業とほぼ同じような感覚で外資系企業への就職を選択に入れます。言い方は悪いですが、働き方に関しては日本人の方が中国人よりも価値観がややドメスティックでこうした点は中国を見習うべきだと強く感じます。

2012年11月25日日曜日

中国製タブレットPC購入

 上海はこのところほぼ毎日雨ですが、昨日は珍しく晴れとなりました。そんな晴れの日を狙ったわけじゃないのですが、友人と一緒に電気屋に行って前から購入を検討してたタブレットPCを購入しました。


 買ったのは上の写真の「藍魔」というブランドのタブレットPCです。この「藍魔」はアルファベットだと「ramos」というブランド名なのですが、例のやたらキャラの濃い元サッカー選手とは関係ありません。
 価格は中国メーカー製ということもあって800元(約1万円)と非常にお手頃。ストレージは16GBで大きさはほぼi-Padと変わらず、まずはタブレットPCをお試しで使ってみようと考えてたので十分な性能です。ただ大きさですが、上の写真だといまいちわかりづらいです。何か比較になるようなものはないかなと思って部屋の中を探してみたら、ちょうどいいのがありました。


 タブレットPCの横にあるのは、うちの親父がガシャポンで当ててきた興福寺阿修羅神像です。ちゃんと製作時の色である赤色に塗られてます。親父曰く、奈良県に遊びに行った際に親父の従弟と一緒に仏像専門のガシャポンで手に入れ、何故か去年上海に訪ねてきたときに贈られました。親父の従弟によると阿修羅像が出てくるのは珍しいらしく、出てきたときはいい年したおっさん二人ではしゃいでたそうです。

 
 話は戻ってタブレットPCの裏面です。


 こちらも阿修羅像と比較。

 なお現在私のいる部屋ではWiFiを飛ばしていないため、今朝スターバックスへ行っていろいろとこのタブレットPCを試してみました。入っているソフトはアンドロイドのため表示言語を日本語に直すのはすぐできますが、日本語入力システムが入っていなかったので探してみると「Simeji」というソフトに行き当たり、無事インストールすることができました。このほかネットにつなげてあれこれ弄りましたが、そこそこ大きさもあることからアクセスしたりページを見る分には問題なく、現在スマートフォンを持っていないので代用品としては十分です。
 ただ中国政府の検閲によって現在中国ではGoogle関連のサイトが使いづらく、Gmailなどにアクセスしてアンドロイドのアプリを探すことが出来ませんでした。真面目にこういうことする奴らには死んで欲しいです。


 話は戻って阿修羅像ですが、折角だからいろいろほかの角度でも写真を撮ってみました。


 横っ面。


 背面図。この場合、後頭部と言っていいものか。


 正面どアップ。


 再び横っ面。なんか手のポーズといい挑発されているような。


 この写真は現在の私の部屋のPCを設置しているデスクです。なんか棚の中の一部がPC設置用に出来ているので使っていますが、見てわかる通りに足を入れる下部のど真ん中にガラス板が置かれていて、毎日この板を股で挟むようにしてブログ書いてます。なんでこんな写真を入れたのかというと、小さくてわかりづらいですが一番上の棚に置いてあるのが阿修羅像で、ここが彼の定位置だからです。


 下から見上げるとこんな具合で、いつも拝みながらパソコンしてます。それにしても今日は一体何の話が主題なのかよくわからなくなってしまった。

  追伸
 自分でもしつこいことは重々承知ですが、例の「積み木くずし」のドラマ放映特需を受けて昨日のインスタントアクセス数が26,891回に達しました。それどころかアクセス数を稼いでいる記事に至っては、gooブログ内の記事別アクセス数で昨日トップになりました。なんとなく実感がわきませんが、素直にうれしいです。

2012年11月23日金曜日

デフレ経済を読み解く~デフレの原因

 間に一回挟んで再びデフレ関連の記事です。今日はみんながデフレだデフレだと叫んでる一方で意外と議論されないデフレの原因について私の考えを紹介します。

 まず最初に断っておきますが、これはデフレに限るわけではありませんが人間というのは基本的に因果関係をシンプルに一対一で結びたがる思考をしています。平たく書くと一つの結果には一つの原因があるはずだと思い込みがちという意味ですが、世の中そんなに簡単なわけではなく実際には一つの結果は二つや三つ以上の原因から生まれることもあれば、一つの原因から二つの結果が生まれたり、場合によっては三つの原因から二つの結果が生まれたりすることもあります。
 このデフレも類に違わず、日銀を中心に「これが答えだ!」と怪しい占い師のように主張してくることもありますが、実際には複数の要因が一緒に作用して起こっているというのが私の考えです。ではどんな原因があるのか、世の中に出回ってて間違っているのも含めて片っ端から書いていくことにします。

1、安い中国製品の流入説
 これは前回の記事でも書きましたが念のためおさらいです。この説は人件費が安い中国で作られた製品が大量に日本に流入してきたことから物の価格が下がりデフレになったというわかりやすい説ですが、これは実際にはデフレの原因にはなっていないと私は考えています。理由は前にも書いたように中国製品とは競合しない散髪や修理といったサービスの価格も下落しているのと、同じく大量の中国製品が流入しているアメリカではデフレどころかインフレを記録しているからです。昔に中国製品が入ってきて価格が下がっていることを「良いデフレ」と評する意見を見たことがありましたが、商品を安くして販売量を増やして儲けた企業、特に家電メーカーがもいたんだからこの点に関してはまさにいいデフレだったと言えるでしょう。

2、生産年齢人口の減少説
 これは日銀が盛んに主張している説ですが、私の知る限り日銀はこの説に対して具体的なデータを出して説明しているのを見たことがありません。そもそもなんで人口減がデフレにつながるのかよくわかりませんが今回下地にしている岩田規久男氏の「デフレと超円高」(講談社現代新書)によると、生産年齢人口が減少しているドイツやウクライナ、ルーマニアなどではインフレとなっており、デフレなのはこれまた日本だけです。これに限るわけじゃないけど、真面目に日銀の連中が働かずに給料もらっていることが不思議です。

3、生産性の向上説
 これもこのところよく見ますが、なんていうかどれも日本国内だけで考えるからおかしな方向に進むんだなと思う説です。これは生産性が向上、いうなれば一つの製品やサービスを生み出すためにかかる労力やコストが減少することによって商品価格が下がり、物価も下落していったという主張なのですが、先進国中で最低クラスの生産性を誇る日本でよくこんな説を主張できるなといろいろ思います。この点に関しても岩田氏のデータによると、OECDが調べた1995年から2007年までの生産性上昇率で日本の1.27%を上回っている国、下回っている国両方でほとんどインフレとなっており、はっきりいって生産性は何も相関がありません。普通に考えればわかることだけど、ある意味でこの説を主張する人は凄い人だと思います。

4、規制緩和説
 大きな原因ではないけど少し影響していると思うのはこれです。小泉内閣時代に日本はあらゆる面で規制緩和を推し進めたことによって、それまで参入障壁が高かった業種を中心に新規参入が相次ぎました。主なのは人材派遣とタクシー業界、あと大店法が緩和された小売業界ですが、サービス競争よりも価格競争が先行する面も見られ、タクシー業界に至っては複数企業が連名で規制を強化してくれと陳情するほどに至りました。まぁ何が何でも規制緩和は悪いと言うつもりはなく、これによって花開いた企業もあれば、規制に守られて時代遅れになっていた企業も淘汰できています。もっとも、一番規制に守られているテレビ業界で規制緩和がないのが私には不満ですが。

5、年代による富の偏り
 これもあくまで遠因していると思う説ですが、今の日本はかつてないほどに年代別で富の偏りが出来上がっております。具体的に言えば年代が高まるほど富が増え、逆に若年世代は異常なまでに富を持っていないばかりか日々の収入も少ない状況です。育児や娯楽など本来消費が活発化する世代に富が行きわたらず上の世代に富が塩漬けされているような状態から消費が動かず、物価も収入の少ない若年世代に合わせて減少しているというのがこの説ですが、じゃあ若年失業率の高いスペインとかほかの国はどうなのかという疑問がまだあります。反証は出来なくはないけど。

6、政府の政策
 何気に一番でかいと思うのがこの説ですが、政府、というより多くの政策決定者の間で「デフレが望ましい」という意識があるのではないかと思います。というのも政治家を始め政策決定者は比較的高年齢層が多く、預金のある人からすればインフレになればなるほどその預金の価値は減り、逆にデフレであればどんどんと価値が高まっていきます。一応口ではデフレは問題だと言いながらも、内心ではデフレに誘導するように政策を動かしているのではないかと疑わざるを得ません。

7、日銀の政策
 こっちははっきりしていて、日銀はデフレが望ましいと公言しているようなものです。昨日今日の報道でも自民党の政策案に対してハイパーインフレになると否定的ですが、日銀というはバブル崩壊の失敗から伝統的に、「インフレになるくらいなら安定的なデフレの方がいい」という思想が強いと聞きます。残念ながら今の姿勢を見ているとやはりその噂は本当だったと思わざるを得ず、1%のインフレすらあってはならないというような思想の仕方をしている気がします。でもってこういう日銀の姿勢があるからこそ為替取引をする世界中のディーラーも、「日本はインフレになりそうになったら日銀が止めてくれる」と織り込んで日本円を買って円高になってるというのが岩田氏の主張です。

8、社会保障への不安
 これは私が以前からも主張している説ですが、年金をはじめとして日本の社会保障、特に失業が定年となり収入がなくなった後の生活をどう切り盛りするか、行政がきちんと支援してくれるのかという不安がこの15年くらいの間で急劇に高まっており、消費を切り詰め預金しようという意識が強く働くようになっているのも大きな要因だと思います。実際にこの前実家帰った時も、家を買うくらいなら賃貸の方がいいと家族会議で結論出しました。


2012年11月22日木曜日

手段の目的化に伴う弊害

 最近はすっかり読まなくなりましたが、以前によく漫画家の小林よしのり氏の「ゴーマニズム宣言」を読んでおりました。読まなくなった理由はもうちょっとついていけないかなーっと思う回数が増えてきたせいでありますが、あの薬害エイズ問題が大きく取り上げられたころの話は非常に面白く、今でも他人に薦めることが出来ます。
 その薬害エイズ問題のくだりで書かれた話ですが、管直人元首相(当時厚生大臣)が被害者に正式に謝罪した後、「運動から日常に帰れ」と小林氏は主張しておりました。この言葉の意味とは薬害エイズ問題でデモ運動を繰り返したことによって政治家、ひいては厚生省を動かす事には成功したのだから、後の処理は政治のプロに任せてこれ以上は必要でない限りデモ運動などするべきではない、普通の日常に戻るべきだそうです。

 当時はなんとなく、「へぇ変わったこと言うなぁ」とか考えてましたが、後年に改めて思い返してみると実に重要な提起だったとこの言葉を高く評価するようになりました。というのもその下りでも書かれていましたが、薬害エイズ問題の被害者への謝罪と補償を要求する手段として運動があり、その目的が達成された後も運動を続けるというのは運動それ自体が活動の目的になってしまっており、本末転倒な行動となってしまうからです。
 以前にも、といっても本人も覚えていませんが私はブログ(恐らく陽月秘話時代)で、手段それ自体を目的にしてはならないと主張しましたが、その源流はこの小林氏の言葉にあります。最近またこのテーマであれこれ思索を進めたのですが、やはり手段が目的化するとどんどんと行動が矮小化していくというか、はっきり言ってしまえばくだらない人生になる可能性が高いという弊害があるように思えてきました。

 いくつか例にとると、「何故働くのか」という問いに対しては普通、少なくとも私の常識では「生計を得るため」が一番まともな答えだと思います。構造的には「生計を得る」が目的であって、その目的達成手段として「働く」があることになるのですが、この例で手段が目的になるということは「働くために働く」という風になります。
 もちろんこんなの日本語の文章としても明らかにおかしく成立するはずはないのですが、一工夫するとこれが成立するようになります。その工夫とは、手段が目的となるのに合わせて新たな手段を作ることです。先程の例だと、「働くために仕事を増やす」、「働くために遅く残る」、「働くために会社を辞めない」という具合で、なんていうか不毛な言葉ばかり並びます。ただ不毛と言いつつも、こういったことが今の日本に起こっているのではないかと本気で考えてます。

 更に話を発展させると、手段が目的化するのは何も一回だけとは限りません。これまた同じ例だと、「仕事を増やすために余計な作業手順を作る」、「余計な作業手順を作るため人員を増やす」と、このように下がれば下がるほど本末転倒というか何がしたいのかだんだんわからなくなってきます。それでも強気で言い続けるなら、これが今の日本の現状だと私は考えます。
 こんな具合で話をまとめると変な感情は挟まず手段はやはり手段だと割り切るべきで、目的というのは窮屈にもなりますし高尚なものへ引き上げる必要は全くありませんが引き下げてはならないものだと思います。引き下げてしまうと本人は満足かもしれませんが、少なくとも私の目から見て楽しい人生にはなりません。

 もっともこう言いつつも、実際には多かれ少なかれ目的が手段化するのは必定なところもあるとは認めます。最近また社会学的な思考が復活しつつあるのか物事を構造でとらえる傾向が高まっているのですが、人間というのは目的と手段がいくつか入れ子構造になっており、一番大事な目的(生存など)を敢えて第一目的とするなら、それを達成するための第一手段というのが第二目的になるのだと思います。でもって第二目的の達成手段が第二手段=第三目的……という具合で、段階欲求論を主張したマズローさんだったらきっと理解してくれそうな感じで今理解してます。
 最後に重ねて言うと、曖昧でもいいから人生の目的こと大目的というのは多少は意識した方がいいと思います。自分の場合は前の記事で書いたような花園家再興とともに自分の実力をどこまで引っ張り上げられるのかがこの大目的に当たりますが、この目的にそぐわない行動はほとんど取らず、逆に沿う行動に対してはかなり大胆に実行できている気がします。少なくとも今の人生にはあまり後悔はなく、悪い気はしないので人にも勧めたいと思った次第です。

  おまけ
 以前に人生の目的などについて友人と議論した際、「僕はニュータイプになりたいから宇宙に行くことを人生の目的にするよ( ゚∀゚)」と言い出す友人がおりました。その友人曰く、「宇宙に行けたのなら帰りは燃え尽きてもいい」、「いざそうなったらシャア少佐ーっ、って叫んでやるよ」とまで話してたので、「いやそこはアメリアっー、だろ」と一応突っ込んでおきました。

2012年11月21日水曜日

デフレ経済を読み解く~構造デフレ論について

 また例の如く本題とは関係ありませんが、ついに鳩山由紀夫元首相が政界引退を決めました。野党などはトカゲのしっぽ切りだなどと引退に追い込んだ民主党執行部を批判しておりますが、私に言わせればトカゲのしっぽどこかがん細胞と言っていいくらいの人間なので、批判したい気持ちはわかりますが今回ばかりは日本政治界全体にとっても明るい話題なので「おめでとう!」、「よくやった!」くらい言ってもいいんじゃないかと勝手に思ってます。

 話は本題に入りますが、デフレに関する議論がようやく活発化してきました。一番大きいのは自民党がデフレ対策としてインフレ目標を定めることや日銀に建設国債を引き受けさせる、さらには日銀法を変えるという内容を公約に掲げていることですが、これに対してデフレの諸悪の根源ともいうべき日銀、野田首相を始め批判する人は多く、恐らく選挙における主要なテーマになっていくでしょう。
 ただデフレ自体が議論されることは私としても大いに歓迎したいです。というのも経済対策として公共事業とか支援策とかあれこれ言う人は多いですが、デフレが解決されないことにはそういった政策ははっきり言って無に等しいです。ではデフレはどう対処すればいいのか、麻生元首相なんかは二の矢、三の矢の公共事業だとかいいそうですが、そんなの借金作って終わりだと私は考えてます。

 そういうわけで頃合いもいいし、前から準備していたのもあってこれからしばらくデフレについてあれこれ書いていこうかと思います。書く前に先に紹介しておきますが、ここで書いていく話は先日読んだ岩田規久雄氏の「デフレと超円高」がベースになっています。

デフレと超円高(Amazon)

 学者ということもあって所々に専門用語が多いのがたまに傷ですが、日本のデフレに関してよくまとめられているのでお勧めの一冊です。そんなこの本で構造デフレ論についてなるほどと感じさせられたので、今日はこの箇所に絞って解説します。

 まず構造デフレ論とはなんぞやからですが、いくつか種類がありますが代表的なのはグローバル化に伴う価格下落です。90年代以降、日本を始め世界各国では中国に代表される人件費の安い国で作られた製品が流入しましたが、これらの価格の低い商品に対して国内メーカーも競争せざるを得なくなり、どんどんと商品単価が下がっていったことがデフレの原因だとする説です。
 この議論で整理しなければポイントはいくつかありますが、まず競合する商品の価格が下落していったのは確かな事実です。それこそパソコンなんて90年代は30万円を超すのもざらだったのが、今や10万円を切るのが当たり前です。このほかの家電、繊維、あと100円ショップで売られる雑貨なども中国製に押されてどんどん価格が下がっていきました。

 そうした状況を見れば確かに中国製品との競争の結果、物の単価が下がっていきデフレになっていったと言われればなんとなく納得できそうですが、上記の岩田氏はこの構造デフレ説をただの一言で否定しています。その一言というの、「海外と競合していない商品、サービス代も下がっている」というものです。
 岩田氏が例に挙げたのは散髪代というサービス費用ですが、統計によると90年代以降はこの散髪代はほぼずっと下がりっぱなしです。仮に家電などの製品が安くなれば手元に残るお金は増え、自然な経済環境であればその余ったお金は別方面に使われていきますが、先ほどの散髪代のようにほぼすべての方面で日本は90年代以降は価格下落が起こっております。ならその余ったお金はどこに行ったのか、言ってしまえば社会保障の先行き不安から大半は預金へと回ったのが実情ですが、こうした競合しない商品・サービス代でも価格が下がっていることから構造デフレ説は間違いだと主張していますし、私もこの説を支持します。

 では何がデフレの原因なのか。これもパパッと語ると預金へと回ったお金がその後どこへ運用されたのか、こういったところがポイントになって最終的な結論として日銀の金融政策と世界の状況が問題だと岩田氏は主張するわけですが、その辺についてはまた次回以降に説明します。