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2013年4月16日火曜日

また愛知で立てこもり事件(;゚ Д゚)

刃物男、屋根に逃走=知人女性連れ―愛知・稲沢(時事通信)

 愛知県の稲沢市でなにやら、立てこもり事件が現在進行で起きている模様です。幸いというか今のところ誰かが人質にとられているようでもなく死傷者もいないようなのですが、不謹慎と言われること覚悟で述べると、なんで愛知県はこうも立てこもり事件が多いのか本当に不思議に感じます。

名古屋立てこもり放火事件(Wikipedia)
愛知長久手町立てこもり発砲事件(Wikipedia)
愛知・豊川の信金立てこもり:被告に懲役9年 「動機は顕示欲」−−名古屋地裁支部判決(毎日新聞)

 上記の事件はすべて近年に愛知県で起きた立てこもり事件ですが、一番上の「名古屋立てこもり放火事件」は2003年、「愛知長久手町立てこもり発砲事件」は2007年にそれぞれ起きたもので、最後の事件は記憶している方も多いことでしょうが昨年11月に愛知県豊川市の豊川信用金庫蔵子支店で起きたものです。最後の事件については何気にちょうど先週、犯人に対して懲役9年の判決が下りておりタイムリーな感じがします。それにしても、わずか10年で4件も起きてるんだなぁ……。

 別に私は愛知県に対して悪く言うつもりはなく、変な悪感情も持っておりません。むしろ日本全国を左遷され続けたうちの親父が最後に辿り着いて今も住んでいる場所であるだけにほかの地域よりは愛着を持っているつもりなのですが、それにしたって何故こうも立てこもり事件が何度も起きるのか、そろそろ犯罪心理学者はここの地域性とかを真剣に検証した方がいいような気がします。
 何か愛知県民を立てこもりに駆り立てる習慣とか文化があるのだろうか(; ゚д゚)

2013年4月15日月曜日

韓国の近現代史~その十、シルミド事件

実尾島事件(Wikipedia)

 今日は多分知っている人も多いであろう、シルミド事件について取り上げます。

 前回の記事で私は、金日成が朴正煕を暗殺するために工作部隊を送ったという事件を取り上げましたが、この事件を受けて暗殺されかかった朴正煕は非常に激怒し、報復として金日成暗殺部隊を創設することを決断します。この部隊こそ事件の主人公である「684部隊」で、高額の報酬を条件に民間から目的を知らせずに1968年に31人の隊員が集められ、仁川近くの実尾島(シルミド)にて訓練が行われました。

 この時の訓練は非常に過酷だったと言われており、3年後の1971年に至るころには訓練中の事故で7人が既に命を落とし24人にまで減少しておりました。それほどまでの訓練に耐えながらも、684部隊にはなかなか金日成暗殺作戦の命令が下らなかったのですが、その背景にはこの時期に韓国の外交方針が南北融和に傾いており、過激な軍事行動を慎む空気に変わっていたからです。

 そのような中で684部隊に対する待遇も徐々に悪くなり、具体的に何がきっかけだったかはまだはっきりしていませんが、大統領に直訴する意見があるという主張の下に隊員らは教育係を殺害。そのまま島を脱出してソウルへと潜入します。ソウルでは公共バスを乗っ取り大統領のいる青瓦台を目指しますが途中で警官、軍の攻撃を受け頓挫。多くの隊員は銃殺されるか、手りゅう弾で自爆しましたが4人の隊員は生き残り、その後に軍事裁判を受けて全員洩れなく死刑を受けております。

 この事件は表沙汰に出ると軍の威信にも関わることから長らく秘匿され続けておりましたが、2003年に題材にした「シルミド」という映画が公開されたことから市民間でも認知が広がり、これに応える形で政府も情報の公開を始めたそうです。なお映画中では蜂起に至るきっかけとして、用済みの部隊そのものを抹消というか、隊員全員を秘密裏に軍が抹殺しようしたためと描いております。

 この事件に対して私からも批評をすると、金日成を暗殺するために育てた部隊が逆にソウルを襲撃することとなり、非常に皮肉な結果になったとしか言いようがありません。それと同時に、この時代は暗殺者が国境を越えて飛び交うという、本当にゴルゴ13の様な世界があったのだと軽いインパクトを受けました。

スピリチュアル体験録

 気の置けない友人がある日、っていうかちょうど一週間前に「君も言ってきたらどうだ」と言ってあるサイトを見せてきました。その友人の言葉に従い先週、運勢判断と言ってはなんですがスピリチュアリストにひとつ見てもらってきました。

 私が訪ねたスピリチュアリストはその筋(?)では有名な人で、MyNewsJapanの編集者の面々が「本物のスピリチュアリストっているのかよ」という目的の元で取材した内容を収めた「第2の江原を探せ!」という本でも取り上げられており、5人の編集者が全員揃って「この人には何かしら、言葉で言い表せない能力がある」と太鼓判を押した人です。別に隠すほどでもないのだから名前を明かしてしまうと荒川静氏という方で、本人曰く「大阪のオバちゃん」に恥じない気さくな感じの人でした。

 一体なんでこの人を訪ねようと思ったのかというと、まず紹介してくれた友人がこれまでに荒川氏のセッションに2回も訪ねており、「あの人は確実に何か持ってるよ」という感想を述べていたからです。仮にこの友人がなんでもかんでも信じちゃうような人物でしたら私も胡散臭く感じたでしょうが、実際にはこの友人は非常に疑り深くかつ世の中に対して斜めに構えてるような、敢えてガンダムにたとえるとカイ・シデンみたいな友人で、彼が言うのだから相当なんじゃないかと思うのと同時に、上記の「第2の江原を探せ!」(この友人が貸してくれた)でも編集者5人が5人とも初対面じゃまず知り得ないパーソナリティを看破されされており、どんなものなのかと前からちょっと興味がありました。

 そんなわけで早速30分/1万円コースのセッションを予約し、先週の火曜日の夜に東京都青山にある荒川氏のセッションルームへ訪れました。門を開けてくれた荒川氏は非常に話しやすい感じの人で、予約していた者だと自分が名乗ると、「えっ、花園さんってアナウンサーみたいな仕事?すごい丁寧で通った声をされてらっしゃる」と言われました。これなんか知ってる人には早いですが、自分はかなり特徴的な発声の仕方をしていて大学時代も、「教室のどこにいても花園君の声はすぐわかる」と言われるほどだったのですが、初対面で直接アナウンサーなのかと尋ねられたのは今まであまり経験がなく、ちょっと新鮮に感じました。
 もう少しこの時の雑談を続けると、「こういう声しているのでよく戦場カメラマン(本人からはわからないがああいう感じの話し方らしい)のモノマネを強制されます」と自分が伝えると、「そうねぇ、私はさすがにイナバウアーしろとは言われないけど」と咄嗟の返しがよく利いてました。

 話は本題に入りますが、早速セッションを開始し、まず自分のオーラの色を見てもらいました。荒川氏によると人間のオーラは個別に約10種類の色に現れ、その色でその人の個性がある程度見えてくるそうなのですが、見てもらった次の瞬間、「えっ!?ちょっとまって!?」と言われ、もう一回見直された結果、「花園さんは意外ですけど、オレンジ色の範囲が広いです」と言われました。
 荒川氏によると、自分のオーラはまずオレンジ色が広く広がっており、体の周囲に少しだけイエローが出て、またオレンジの付き添うような感じでラベンダー色も出ているそうです。この時の私のイメージは三色アイスで、自分のことながらなんかバランス悪そうだなとか思ってました。それで各色の特徴はというと、


オレンジ:変わり者。ほかの人が興味を示さないものに対して強い興味を持つなど知的好奇心が強い上、チャレンジ意欲が高くリスクを好む傾向がある。

イエロー:陽気。ムードメーカーであるがやや子供っぽく、また好きな人と嫌いな人に対する意識の差が激しい。

ラベンダー:夢見がちな空想好き。気持ちがポジティブな時とネガティブの時の差が激しく、極端から極端に走る傾向がある。


 多分、直接私のことを知っている人間が以上のオーラの色の判定を読んだら、「よく当たってるじゃん」と思うことでしょう。正直に言って自分の性格を言い表すと、割と上記の判定通りになると私自身も思います。

 その上で細かい自分のパーソナリティを聞いてみると、やはり圧倒的にオレンジ色の影響が強いそうです。元々、このオレンジ色が出ること自体が非常にレアらしいのですが、私の場合は外見が非常に大人しそうに見えるため、とてもリスクを好むような変人に見えなかったこともあって解説に入る前に荒川氏も「当たってるかどうかちょっと自信ないのですが……」と言っていました。ただ自分の見方とも一致していると話すと、「前にもとても地味な外見の女性にオレンジ色が見えたのですが、趣味はと聞くとハングライダーと答えられ、やっぱりオレンジの方って外見と中身が一致しないことが多いのかもしれません」と話してました。

 こうしたオーラの色の解説をしてもらった後、今度は魂の輪郭というかともかくそう言ったものを見てもらいました。それによると私の特徴としては、まず頭の回転が異常に早いところがあって知力に関しては文句なしに抜群であるものの、かえって理解が早いせいか勉強とかしていても「苦労して理解できたぞー」というような快感が余り得られないところがあり、持続的に物事を続けることが出来ない傾向があると判定されました。人付き合いに関しても同じ傾向があり、少し話した段階で気の合う人、気の合わない人を自分の中で判定し、後者とはその後は接触を避けようとすると言われました。多分友人とかは今頃、「この人、花園君のことよくわかってるじゃん( ・∀・)」とか思ってることでしょう。それくらいなまでに私自身も一致している気がします。

 ここまでの解説を受けた段階で、では今後の自分の人生で課題は何かと尋ねたところ、一つとしては持続力をもっと高めること、そしてもう一点、自分の才覚を如何に伸ばして発揮するかと言われました。これはオレンジ色の人間の特徴でもあるそうなのですが、荒川氏によると私にはクリエイティブな才覚が非常に高いものの、自分自身ではその才覚を発揮させ辛いそうです。そのためこれからともかくいろんな人間に会って、その才覚を理解して活躍する場を与えてくれる人と出会うことによってブレイクスルーが起こると指摘されました。

 そしてこれに関連することとして仕事運に関しては、「普通の会社では無理です」と断言されちゃいました。決して能力が大きく劣っているわけではないものの今の日本の企業自体に私の様な、才覚はあるんだけどちょっと不器用なタイプの人材を雇おうとする余裕がないため、まともなサラリーマンを続けるには難があるそうです。仮にバブル期であればテレビ局や広告代理店などで遺憾なくその才能を発揮することが出来たでしょうが今の時代には報われ辛いと、スピリチュアルなのにやけに現実的なアドバイスをもらいました。

 ここで私の上記セッションに対する感想を書いていきますが、はっきり言って大きな驚きは何もありませんでした。なんで驚きがないのかというと、うすうす自分でも感じていること、わかっていることを的確に突いてこられたので、「ああ、やっぱりそうなのか」と終始納得させられっぱなしだったからです。特に「普通の会社じゃ無理」というあの一言ですが、親しい友人ならまだしも初対面の人間にこうも言い当てられるものかとこれに関しては素直に驚くのと同時に、かなりきわどい言葉であるにもかかわらず迷いなく言われたという点において、やはりこの人は只者ではないという印象を受けます。
 
 このほかにも守護霊的な人の意見を聞いてもらったりしたのですがそれは割愛するとして、セッション全体に対しては満足度が非常に高かったです。先にセッションを受けた友人からすれば、やはり赤の他人にいろいろと自分の性格を言い当てられた上で相談に乗ってもらうというのは、よくわかってもらっている友人とはまた別で非常に心が安定するとのことで、私もこの友人の意見に同感です。かなりケチな性格で有名な私なのですが、荒川氏のセッションに関しては1万円でも高くないと本気で思えるほどです。

 最後に紹介してくれた友人の意見を一つ書くと、「欧米では宗教が精神面のサポートを行うが、大半の日本人はあまり宗教に頼らない。でも精神面の負担はやっぱりあるのだから、多少は怪しいがこういう占い師とかスピリチュアリストっていう人は必要なんじゃないかな」と言っており、あまり神霊を信じない自分も今回の一件では少し考えさせられました。

2013年4月13日土曜日

北朝鮮は戦争を起こすのか?

 なんかこのところ朝鮮半島に関連するものばかり書いてて食あたり気味です。かといってやる気があまりわかない今の状態でパパッと書くことと言ったら北朝鮮しかないので、パパッと開戦するかどうかについて私の意見を述べます。そもそも、パパッと言うことでもない気がするが。
 結論から述べると、北朝鮮は挑発行動は行っても自ら開戦することはありえないと思います。理由はごく単純で、戦争をするにしても物資があまりにもないからです。

 たとえばこれは中国の話ですが、中国が保有する石油備蓄量は国内消費量の約1ヶ月分しかありません。これに対して日本は約6ヶ月あり、戦闘を継続する能力で言えば圧倒的に日本が高いために中国の軍事専門家ですら「尖閣で有事があった場合、中国は日本に勝てない」とはっきり分析しており、中国も日本並みに石油備蓄量を増やすべきだという意見も出ております。

 北朝鮮が一体どれだけの石油を備蓄しているのかわかりませんが、常にエネルギー不足に悩んでいることから察するに1ヶ月、下手したら1週間も持たないのではないかと推測します。それこそ夏季であればまだいいでしょうが、冬季にでも戦争となったら暖房用燃料の供給すらままならない状況になるでしょう。
 そんな状態では戦争をやろうったって土台無理でしょうし、恐らく軍隊を展開して1週間程度で物資の底が尽き、攻撃はおろか防衛すらできなくなるのがオチだと思います。いくら狂信的な国家とはいえ、さすがにこの辺の事情というか自分たちの懐くらいは理解しているんじゃないかなぁ。

 そんなわけで、ミサイルを撃って脅すことはあっても戦争は起こさない、というより起こせないのが北朝鮮です。どちらかというと相手の政府を脅すより相手の国民を脅すことが目的で、戦争なんか起こせっこないのに「第二次朝鮮戦争が起こるのか!?」などと掻き立てるマスコミは北朝鮮に対する利敵行為だと私は思います。今に始まることじゃないけど、言うねぇ俺も。

2013年4月12日金曜日

反日ドラマに全裸女性?

 昨日までサムスンの長い記事を書いていたこともあるので今日は更新をさぼろうかなとも思ってましたが、ちょっと気になる中国ニュースを見つけたので軽く取り上げます。

抗日剧现裸体女子 网友怒斥无道德底(長江時評、リンク先は中国語)

 上記のリンク先は中国ニュースのページなのですが、どうもみんな大好き反日ドラマの撮影で全裸の女性が使われていたと誰かがブログ上で暴露し、そのシーンの写真もアップロードされたようです。リンク先のページにはその問題のシーンというか全裸の女性の後ろ姿を撮った写真が貼られてありますが、自分もこの写真をブログに上げようかと一旦迷いましたが、さすがに下品なので自粛しました。

 報道を見る限りですとこの全裸の女性が出てくる反日ドラマはまだ放送されていないようですが、ネット上に撮影中と思われる写真が出回ったことによって大きな議論となり、中国のNHKことCCTVも取り上げています。批判内容としては、重厚なテーマの反日ドラマでこのような破廉恥な場面があるなんて言語道断だとか低俗だとかいろいろありますが、それとともに反日ドラマ自体が商業主義に染まりきっており、これ以外でも粗製乱造が多いという指摘も出ています。

 リンク先の記事によると、やっぱり反日ドラマは視聴率が良く、制作費に対する利益率が200%くらい行くそうです。それだけにより視聴率を高めるために好奇的な演出も増えており、今回の全裸女性問題はその典型だという批判のされ方がされています。
 まぁこう言ってはなんですけど、中国人はやっぱりお堅いなぁという気がします。日本のテレビもさすがに女性の裸を映すことはありませんが、この問題でここまで中国人が熱くなるのを見る限りだと日本人の感覚で中国人を図ってはやはり衝突が起こるように思えます。またオチがないのですが、中国人は意外とウブだっていうのを再確認した次第であります。

  おまけ
中国オタクの女神ランキング(人民網日本語版)

 また中国ニュースですが、人民網の日本語版に中国のオタクに受ける美人ランキングがありました。このランキングの3位には楊穎(アンジェラ・ベイビー)という人が入っているのですが、その評論が少し面白いです。
新世代4大女優のトップ人気を誇る楊穎だが、その完璧すぎる容姿ゆえに、常に整形疑惑が飛び交っている。もし整形だったとしても非常に成功した整形だ
 なんていうか、中国人は極めてシュールなことを言うもんだなとつくづく思います。

サムスンと日系企業の絶対的な違い

 前回の「サムスンは何故躍進したのか」の記事の中で私はいくつかのサムスンの成功の要因を解説しましたが、実はまだ本当の核心というか重要な部分を取り上げておりません。なので今日はその肝心要な部分である、サムスンと日系企業の絶対的な違いである「国内競争の壁」を私なりに説明しようと思います。もっともこの話はサムスンというより、日系企業の多かれ少なかれが抱える普遍的な問題点ではあるのですが。

 まず何度も書いている通り、日本の家電メーカーが不振にあえぐ一方でサムスンは世界市場で好調な売れ行きが続いております。サムスンの好調の要因は第一にウォン安が続いて輸出競争力が高まったことが背景にありますが、それとともに前回に取り上げた二番手商法ことリバース・エンジニアリング、徹底した現地マーケティングを行った上での商品開発なども大きく貢献しております。
 このうち、今回私が読者の方により注目してもらいたいのは「現地マーケティングの徹底」で、これに「何故」を付けてもらいたいです。なんか今日は意識してるわけじゃないのに括弧付けがやけに多いですが、「何故サムスンは現地マーケティングを徹底するのか」という疑問を持ったことはあるでしょうか。この答えは明かしてしまうと非常に簡単で、サムスンというか韓国企業にとって商品・サービスの販売先は韓国国内にはなく海外の市場にしかないからです。

 近現代史に詳しい方なら説明はいりませんが、タイや韓国では1997年にアジア通貨危機といって通貨暴落に伴う深刻な経済危機が発生しました。今私がやっている連載でも後で取り上げる予定ですがこの時に韓国はIMFから支援を受ける代わりにその監督下に入る、つまり経済政策を一任することとなるのですが、この時に規制緩和や財閥の統廃合などと言った徹底的な経済合理化政策が取られるようになりました。この時代の呼び方は「IMF危機」、「IMF事態」などと複数ありますが、この時の政策によって韓国国内では貧富の格差が拡大、というよりもむしろ一般市民の収入が激減して生活が成り立たなくなった一方で財閥企業の売上げは増加することとなります。

 この韓国経済の変化がサムスンにどのような影響を与えたのかというと、私が見るに二つのポイントがあるように思えます。一つは韓国国内で格差が拡大して中間層がいなくなり、サムスンの販売する電子機器などといった商品を購入する消費者市場が小さくなった。もう一つは財閥の統廃合が進み、競合企業がLG電子くらいしかいなくなったという点です。この二つの韓国市場の変化によってサムスンは、国内向けに商品を開発したり、必死で売り込んだりする必要性がなくなり、海外市場で売っていくしか生存の道がなくなったように私は思います。

 必要ないかもしれませんがもうちょっと詳しく説明すると、韓国ではIMFの介入以降、国民生活は非常に苦しくなり貧しい人が本当に増えました。貧しい人相手の商売では売り上げも利益も小さく、事業を拡大しようにもやってられません。次に国内で競合企業がいなくなったという点ですが、日本みたいに家電メーカーだけでも複数ある所と違って競争相手が少ないのだから、適当に商品を出すだけで国内では売れていきます。なので国内向けに商品を開発するくらいなら、初めから海外市場向けに開発する方がサムスンにとって売上げ上昇を期待できることとなり、必然的に海外現地でのマーケティングにも力が入って各地の市場に受け入れられる商品だったり、スマートフォンのGalaxyシリーズのように全世界を対象にしたグローバルモデルの開発に力が入ってくるわけです。

 翻って日系家電メーカーの状況を見てましょう。なんだかんだ言って日本国内の消費者市場というのは世界的にも非常に大きく、お膝元の国内市場を日系家電メーカーは無視できないというか自然と目が向いてしまいます。それがどんな結果を生むのかというと、「日本市場では売れても海外市場では売れない商品の連発」という、勘のいい人ならもう浮かんでるでしょうが「ガラパゴス化」を招いてしまうわけです。
 別にガラパゴス化自体は悪いわけではありません。独自発達した商品はなんだかんだ言って面白く、性能面でも同時代の海外メーカー製を大きく上回っていることも少なくありません。しかし日系企業の明らかに問題と感じられる点を指摘すると、日本国内で売れている商品をそのまま海外市場に投入しがちなところで、このブログで何度も言ってますが日本で売れたからといって海外の消費者に受け入れられる保証もないのにやけに自信満々で投入してくる日系企業関係者を私自身が中国でたくさん見てきました。凄いのになると、日本でも受け入れられてないのに海外では受け入れられると投入してくる会社もいましたが。

 やはり海外で商品を売っていくには、現地の消費者に合わせたアレンジが多少なりとも求められます。まだ自動車メーカーはこの点を理解しており、たとえばトヨタだと国内では全く売れていない「カムリ」という車がありますが、逆に海外市場では最強の主力車と言ってもいい販売台数を誇ります。詳しく見てないけど、多分「カローラ」に次いで売れてるんじゃないかな。
 同様に日産も微妙にデザインやカラーリングを変えるなどして現地の消費者に合わせる努力が見られますし、こっちも日本じゃあまり見ないけど中国では「ティアナ」が多く走っていて「フーガ」はそんな見ません。彼ら自動車メーカーは日本で売る「国内モデル」と海外で売る「国際モデル」を明確に分けており、それぞれ別個に戦略をきちんと立てております。

 一方で家電メーカー。全くしていないわけではないのでしょうが海外向け商品開発の点ではサムスンに比べその努力は非常に劣っていると言わざるを得ません。特に劣っていると私が思うのはデザインへの注力で、サムスンがロンドン、ミラノ、サンフランシスコ、ロサンゼルス、東京、上海の海外6都市にデザインセンターを置き1000人超の人員を配置しているのに対し、日系メーカーはどうもデザインに対するこだわりが低すぎる気がしてなりません。新商品説明会でもやたら機能をPRしますが、「デザインでは一歩先を進んでいる」といったような言及はあまり見られませんし、私自身も家電量販店で日本製家電商品見比べててもうちょっとカラーリングとかこだわれないかなとこの頃疑問に思うデザインが多いです。ノートPCで言えば、台湾メーカー製の方がいい味出しているし。

 昨日に引き続き長々と書きましたが、冒頭に掲げた国内競争の壁というのは、日系家電メーカーは国内に競合企業も多く市場もあるため、どうしても国内市場向けの商品開発に意識が行ってしまうところがあると言いたかったわけです。逆にサムスンは国内には競争もなければ市場もないため、初めから海外市場向けに商品を開発してくるわけですからそりゃやはり分があるでしょう。
 じゃあ日系家電メーカーはどうすればいいかですが、言うまでもありませんが自動車メーカーのようにもっと国内と海外の販売戦略をしっかり分けることが大事で、「日本人には嫌われても外国人には大受けする商品」を作れる人材や企画をしっかり用いることに尽きます。もっとも、海外なんていいから国内だけで売ってればいいといいう戦略であるのならばそんなことをする必要もないのですが。

  参考文献
・サムスンの戦略的マネジメント 片山修 PHPビジネス新書 2011年

2013年4月10日水曜日

サムスンは何故躍進したのか

 先日に「サムスンの歴史」という記事を書きましたが今日はこの記事に続く形で、サムスンがどうして日系家電メーカーを上回るほどの成長を果たすことが出来たのか、その経営的要因を私の分析で以って紹介します。

 まず現在の消費者向け家電市場の状況について簡単に述べますが、日系メーカーに関してはパナソニック、ソニー、シャープと名立たる大企業が空前の赤字を記録するほど不振を極める一方、サムスンはスマートフォンのGaraxyシリーズが大ヒットしたことから世界のスマートフォン市場シェアでトップを握り、全体業績でも過去最高利益を記録するなど絶好調もいいところです。ただサムスンは今でこそブランド力で日系メーカーを上回る(上海の家電小売店のブースの大きさではアップル>サムスン>ソニー)実力を身につけましたが、1990年代までは安かろう、悪かろうと見られるメーカー、さらに言えば日系メーカーのダウングレードという見られ方が長らくされておりました。

   半導体事業で一躍世界メーカーに

 そんなサムスンが世界で一躍知名度を高めるきっかけとなったのは、もはやお家芸と言ってもよい半導体(DRAM)製造でした。1977年に市場に参入してから猛烈な投資を行って先行していた日系メーカーをあっという間に追いつき、1990年代においては世界市場で大きなシェアを握ります。このサムスンの半導体事業においては日系メーカーからのヘッドハンティング、要するに技術を保有する人材を囲い込んでその技術を奪った、卑怯だなどという主張がたまに、っていうか頻繁に見られます。実際私もほんの一端ではありますが半導体産業に関わった時期があってこの時代のことをよく知っている人から、某日系メーカー名の社員が土日の韓国アルバイト(技術指導)に明け暮れていたということを聞いておりますが、これを以ってサムスンが卑怯であるとはあまり感じません。むしろそうやって社員を流出させた点や、機密保持契約をしっかりと行っていたのかという点で日系メーカーに隙があったと考えるべきだと思います。まぁ後の祭りなんだけどね。

 そんな話は置いといて、半導体事業の成功によってサムスンは一躍その名を世界に轟かせましたが、コンシューマー家電ではまだまだ格下扱いを受けておりました。それらの評価が切り替わるのは2000年代に入ってからだったように私は記憶しますが、日系メーカーが強かった先進国市場ではなく、中国やインドといった発展途上国市場から徐々にシェアを広げブランド力を高めていきます。何故サムスンが発展途上国市場で受け入れられたのかというと、日系メーカーに比べて価格を抑え現地の人でも手が出しやすい商品を販売していったことが大きく、その商品開発においては「リバース・エンジニアリング」という手法が効果を発揮したと多方面から指摘されておりますが、

   リバース・エンジニアリング

 知ってる人には早いですがサムスンは韓国の水原(スウォン)市に研究開発所を設けているのですが、ここは別名「水原解体工場」とも呼ばれています。何故そんな異名があるのかというとこの研究開発所で行われていることは本当に他社製商品の解体に次ぐ解体で、部品を一点一点調べてどのような構造、機能を持っているかを徹底的に分析し、どれだけ安価な部品で代替できるか、より効率的に組み立てられるかを調べるそうです。かのi-Phoneも恐らくここで徹底的にバラバラにされてGaraxyシリーズも生まれた事でしょうが、それまでに一体何台のi-Phoneが犠牲になったのだろう( ´ー`)
 このサムスンのリバース・エンジニアリングというモデルですが、言ってしまえば過去の松下電器とやってることは同じです。他社が魅力的な新商品を開発して市場に発表するや、より安価だったり性能が少し上だったりする商品を出すことで一番おいしい消費者層を奪うという二番手商法で、これが「i-Phoneは欲しいんだけど、高くて買えないから似たようなのでいいや」という発展途上国市場で大いに受けました。また解体作業を通してサムスン自体の技術力も向上していき、その後のブランド力アップにもつながっていきます。

   徹底した現地マーケティング

 こうしたリバース・エンジニアリングモデルに加えサムスンの経営で特筆すべき点は、その徹底した現地マーケティングにあります。サムスンは毎年社員から募集を募って各地域にマーケティング調査要員を置いているのですが、そのやり方というのも「年間給与をこれまで通りに払いつつ、1年間全く仕事をさせずに現地で生活させる」という、日本の会社じゃ多分思いつかないような方法を採っております。これで調査員となった社員は本当に1年間何してもいいし、家族と滞在国で好き勝手過ごすのもアリであれば、地元の大学に入って現地の言葉を学ぶのだってOKです。ただし一つだけ厳しい条件があり、現地法人などにいるサムスン社員とは一切接触してはならないこととなっております。これは言葉などが出来る現地社員に頼らせず、部屋探しから行政手続きまで全部一人でやらなければならない状況に追い込むためと言われています。

 調査員は1年、場合によっては2年経った後に本社に現地向け商品企画案を出すよう義務付けられているのですが、これらの企画案から生まれた商品は正直に言って非常にユニークなものが多いです。私が知っているのは3種類ですがそれらを全部挙げると以下の通りです。
  1. 鍵付き冷蔵庫(インド)
  2. 音楽プレイヤー付き洗濯機(インドネシア)
  3. メッカの方向がわかり、礼拝の時間を知らせるアプリが標準搭載された携帯電話(中東)
 一つずつ詳しく解説すると、1番目はインドでは家の中に忍び込み冷蔵庫の中身を盗難する人が多くてそれの防止用として大ヒット。2番目についてはインドネシアでは選択をするのは基本家政婦で、これらの人は貧困層出身が多く娯楽と言ったら歌うことしかなく、洗濯中にも音楽鳴らして歌えるということでこれまた大ヒット。3番目に関しては言わずもがななので省略します。
 これらの商品というか機能は日本にいたらまず気が付かず、現地で生活した者じゃないと出てこない発想と言えるでしょう。3番目に関してこれは友人の証言ですが、サムスンは中東地域に調査員を派遣するに当たり、まずその調査員をイスラム教に改宗させたそうです。徹底的に現地に溶け込ませるという狙いもあるでしょうが、改宗によってその調査員はイスラムコミュニティに入り込むことが出来、現地の人脈作りにおいて大いに効果を発揮したと言われております。

 かねがねブログでも書いておりますが、日系家電メーカーはこのマーケティングという面で非常に拙いです。よく前職でも同僚と話しておりましたが、日本で売れた物を自信満々にそのまま中国市場に投入してくることが多く、一体その自信はどこから湧いてくるのかといつもみんなで不思議がってました。また以前に某家電メーカー大手の知り合いにマーケティングが足りていないと指摘すると、「うちの会社でもマーケティングの重要性は認識しているつもりだが、マーケティングを行うだけの資金的余力がない」と答えられ、この時は私もマジで怒りました。
 というのも上記のようなサムスンのやり方であれば300万円もあれば十分で、下手したら現地に留学している日本人留学生に100万円くらいお小遣い上げて報告書を書かせたってもいいのです。それすらもやらずに弱音を吐くというのはさすがに問題だと、ちょっと厳しく叱りました。

 とまぁ初めてこのブログで中見出しつけたりするなど長々と書きましたが、まだいくらか書ききれていない点があるので、続きはまた次回に書きます。先に触りだけ書くと、日系メーカーにはどうあがいても越えられない「国内競争」という壁があるのですが、それをサムスンは既に越えているという話です。

  参考文献
・サムスンの戦略的マネジメント 片山修 PHPビジネス新書 2011年