ここ中国でもこの事件は大きく報じられているのですが、神戸製鋼グループ内では上の写真のようなメールを飛ばして日本国外では問題ないと社員に言っているようですが、今回の不正は10年前から行われていたということを考えると、一体何故現時点で問題がないと言い切れるのか理解できません。アルミ鋼ということを考えると中国でも日本材を使う、というより日本材を使わざるを得ないメーカーも多いだけに、詭弁もいいところでしょう。こんなメール送るくらいならもっと内容を精査したり、関係先に詫び入れてくればと思わざるを得ません。
言い方変えると、未だに現実に目を向けておらず希望的観測でこんなこと言っているあたりあまり誠実な態度とは思えません。
ざっと神戸製鋼を批判したところで本題に入りますが、恐らく現時点で私と同じ発想に至っているライターは少ないと思うのですが、今回の一件では非常に大きな疑問があります。もったいぶらずに言うと、何故自動車メーカーを含む納入先は今回のデータ不正に気付かなかったのかです。
メーカーでは通常、納入された鋼材に対してその強度はもちろんのこと、カーボンやマンガンといった鋼材の成分がミルシート(材料証明)や指定規格通りであるかを確認するための受入検査があるはずです。硬度や粘り強さなどはメーカー内でも硬度測定や折曲試験などで割と簡単に調べられます。また成分についてはやや設備がないと難しいですが、第三者検査機関に出せば調べてくれます。というより、多分どこのメーカーでも鋼材の受入検査は工程に必ず入っているはずだし、入っていなければ正直その検査体制を疑われても仕方ありません。
繰り返し言いますが、一体何故どの納入先も今回のデータ偽装に気付かなかったのか。報道ではJIS規格指定の鋼材でも規格を下回った鋼材をミルシートを改竄して出していたとのことですが、ならばなおさら受入検査でどうして気づかなかったのか。検査で規格から外れていることがわかれば即不良品認定されるはず、というよりされなければなりません。
考えうる状況としては二つに一つです。一つは神戸製鋼が中国鋼材メーカーみたくサンプルだけ良品を出してきた。もう一つは、納入先のメーカー自身も神戸製鋼が出したミルシートを信用して一切受入検査をしていなかったか、ほとんど杜撰だったかでしょう。言うまでもなく、真に影響が大きいのは後者です。
今のところこの点について指摘するメディアは見受けられませんが、逆を言えば私だからこそこんな指摘ができると思います。知らない人のために説明すると、私は前の会社に営業で入ったにもかかわらず品質管理やらされて、当時こうした鋼材の受入検査もやらされたし、ミルシートの管理とかも日常的にやっていて、鋼材納入プロセスをある程度把握している妙なライターだったりします。
話は戻りますがすでに先日、日産が完成検査で偽装を行っていたことが発覚しましたが、今回の10年以上前から行われていたという神戸製鋼のデータ不正にどこも気づかなかったことを勘案すると、メーカー、特に大手の検査体制というのは一体どうなっているのか疑問です。下請メーカーに対しては細かく突っ込んできて、「ここの工程の間にこういう検査工程を挟め」とかいちいち指摘してくるくせに、自分たちはどうなんだと真面目に声を大にして言いたいです。でもって神戸製鋼も日産も、国際品質管理規格のISO9001を取得しているし、これ取っていないメーカーはサプライヤーにしないって決まりも持ってるのでしょうが、今に限るわけじゃないけどこういう品質規格ほどまるで宛てにならないものはないと常々感じます。
最後に、勝手な予想を述べると日産の件は国の抜き打ち検査でしたが、今回の神戸製鋼の件は内部告発が発覚のきっかけではないかとみています。キーワードは「10年以上前から」で、そのような不正実態が明るみに出るとなったら外部チェックでは無理だし、内部監査による発覚でももっと絞り込むと思うことが根拠です。まぁどっちにしろ、中国企業を日本も笑えなくなってきたなというのが正直な感想です。