友人にMRJのプラモ制作を勧めたら丁重に断られた後、「水槽に沈めたり、砂に埋もれさせたりして退廃的に見せたらいいかも」と案外ノリノリでした。
話は本題ですが以前にも紹介した「ハコヅメ」という警察漫画ですが、リンク先でも話題になっている通り好調なまま連載が続いています。驚異的なのはその連載ペースで、2年半で単行本がすでに15冊に達するなど、恐ろしいペースで原稿枚数が積み上がっています。なんでこんなに早いかって毎回大量のページ数で連載続けられているせいで、作者がガチで元警官なだけあってやはり他の漫画家と比べても体力が有り余っているのが見て取れます。
マジな話、どの業界、どの仕事でも体力あるというのはやっぱり強みでしょう。ちなみに自分も昔は6時間くらい翻訳やったらガス欠してたけど、今調子のいい時なら10時間は集中力保てます、っていうか保てないと仕事的に追いつかないです。
それでこのハコヅメですが、こう言っては何だけど世の中の警察漫画のハードルを一気に引き上げてしまっているとも見ています。他の警察漫画では一切描写のなかった警察学校の中とか、警察署内での具体的な作業風景、張り込みのリアル(車中泊一週間)など、取材とかでは追えない実体験者じゃないとわからない描写が非常に多いです。逆にこうした描写を見た後だと、「他の警察漫画はやっぱりフィクションなんだな」なんていう風にどうしても思ってしまいます。ハコヅメ自体がフィクションと突っ込まないように。
やはりなんにしても、取材した内容よりも作者が実際に体験した話の方が読み手に取って面白いというのは絶対的に揺るがない事実でしょう。逆を言えば、漫画家をはじめとするクリエイターは今の時代、ただ漫画だけを描いているだけだったら手持ちの武器としては弱い、というか実際にそうなっているように見えます。
単純に画力などを含め昔と今とを比べると連載作家に求められる水準は大きく引き上げられており、その上ストーリーも求められるとなると如何に他の作家と異なる自分だけの持ち味を出せるか持ってるか、こうした点が成否を大きく分けてくるでしょう。
かくいう自分も、他の記者と違って無駄に転職してきたことが今大きな武器になっています。やはりずっと新聞社などで記者業しかしたことない人と比べると、一般的なメーカーや商社の価値観やサラリーマン風景に対する認知が違うし、今いる職場も世間で言えばかなり特殊な業界なので、そうした特殊性から一般社会と距離を置いて物を見ることができるようになっています。
そもそも私の人生自体が「小説に書いたら売れるよ」とリアルで言われるほど無意味に波乱に富んでしまっており、その点でもはや変わった感覚と視点を持つに至っています。ただこうした、一つの職業や業界だけではない複数の経歴、敢えて言えば見出しに掲げた二重経歴(なんか幽白っぽい表記だ)を持つ人間というのは、案外これからの時代はますます強くなるんじゃないかと思います。
次々回のJBpress記事でまた雇用関係の話を書こうかと現在準備していますが、いよいよもって日本の雇用慣行はそろそろ崩れるとみており、雇用の流動性が高まるにつれて上記の二重経歴者が増えてくるかと思います。もっともそう言った二重経歴者を日系企業が上手く使えるかはわかりませんが、ことクリエイターに関しては今以上に変わった経歴を持った人が今後登場してきて、ハコヅメみたいにそれまでの同系列の漫画を過去にしてしまう人も出るかもしれません。
そういう意味でこれから漫画家や小説家を目指そうっていう人なら、漫画や小説作品を作る技術もさることながら、他の人間とは異なる特殊な体験や経歴を積むようお勧めしたいです。それこそフランス行って傭兵部隊に入るとかそういう激烈な体験があればあるほどデビューの目は高まる一方、漫画や小説一本足打法だと、綾波レイみたく替わりはいくらでもいるものになってしまうかもしれません。
ちなみにその手の変わった経歴の漫画家で言えば、先日訃報が報じられた「釣りキチ三平」の作者である矢口高雄は元銀行員という方で、なんか銀行業界の漫画も描いてたらしく面白かったと聞いて興味を持っています。
あと島耕作シリーズ作者も元パナで有名ですが、彼の場合は会社を離れても取材力の高さで上手くその物語に現実を反映できていたと思います。ただ元同僚たちは部長までしか出世できず、「部長より先の階級の話はぶっちゃけファンタジー」と言ってて面白いのですが、「部長以前も十分ファンタジーじゃん(´・ω・)」と突っ込んだらいけないのでしょう。