この記事の見出しは当初は「中国人留学生殺人事件」にしようかとも考えましたが、中国人留学生が絡む殺人事件はこれまでに日本で何件か発生しており、混同を招く恐れがあるとして被害者である江歌の氏名を取りこの見出しにしました。
この事件に浮いては自分も今日出ていた日本の報道で知ったのですが、なかなかに衝撃的であるとともに、その後ネットで見てみた中国人の反応も極めて大きいことに素直に驚きました。
発端となった事件のあらましについては、以下の日経ビジネスの記事が非常に詳しく書いております。
・中国人留学生「巻き添え刺殺事件」母娘の無念(日経ビジネス)
自分の方から簡単に説明すると、2016年に中国人女性留学生の江歌が別の中国人男性留学生(陳世峰)にナイフで刺殺されるという事件が起きます。この中国人男性留学生はかねてから別の中国人女
性留学生(劉鑫)と交際していたものの喧嘩別れし、相手に対し復縁を執拗に迫っていました。具体的には、復縁しなければリベンジポルノをお前の両親に送るなどと言っていたようです。
こうした行為を受け劉鑫は知り合いの江歌を頼り、江歌も彼女を自宅アパートに匿ったのですがその住所(中野区)も陳世峰に嗅ぎつけられ、江歌と劉鑫が二人で帰宅したところ待ち伏せされていました。三人は部屋の前で口論となってこの際に陳世峰が刃物を抜いて暴れ出そうとしたところ、劉鑫は隙を見て部屋の中に入り込み、まだ江歌が外にいるにもかかわらずドアのカギを締めたそうです。
これに逆上した陳世峰が江歌を刺殺したというのが事のあらましで、いうなれば別のカップルの痴情のもつれに巻き込まれて江歌が殺されてしまったという事件でした。事件後に逃げた陳世峰はその後日本国内で捕まり、日本の裁判で懲役20年の判決が出て現在も収監されています。
ただこの事件はこれで終わりではありませんでした。事件後、江歌が1歳の頃に夫と離婚してから女手一つで彼女を育ててきた母親が事件直後、劉鑫に当時の状況を尋ねたところ、劉鑫は自分が江歌を見殺しにしたことを隠したどころか、相手が自分の元カレだということも言わず、突然見知らぬ男性に江歌が殺されたなどと話したそうです。
その後、犯人が捕まって劉鑫が保身のため嘘をついたことがわかるも、劉鑫側は一切謝罪の言葉を出さず、母親との連絡も一切断ってきたそうです。
こうした状況を受け母親はネット上で事件内容と劉鑫側の態度を公開した上で、犯人の陳世峰の死刑嘆願の署名を集めるなどの活動を行いました。それに対し劉鑫は中国側の報道を見ると、どうも母親について「娘の死を金稼ぎの手段にしている」などと発信したほか、「江歌は同性愛者だった。日本のバイト先も風俗店だった」などと事実と異なる発信を繰り返したそうです。
度重なる侮辱、それ以前に娘を見殺しにした事実から母親は劉鑫を「娘の生存権を脅かした」という事由で提訴し、今月10日の審理で裁判所は母親の訴えを認め、劉鑫に対し約1300万円の賠償金を支払うことを命じる判決を出したわけです。なお母親は、この賠償金はすべて学費に困窮する子女の支援に用いる予定だと話しています。
最初にも書いた通り、この事件に対する中国側の反応は非常に大きく、ネットで検索をかけたところ多くの人やメディアがこの件について取り上げています。反応は基本的に「正義は勝つ」、「頑張ってきた母親が報われた」などと判決に対し肯定的なものばかりで、むしろ否定的なものは見られません。私自身も同じような感情で、母親に対し非常に同情を覚えるとともに報われる結果になってよかったという気がします。
もっとも実際に殺害した陳世峰についても、母親は日本での懲役を終え中国に帰国した際に必ず裁判を起こして死刑に追い込むと話しており、まだその戦いは完全には終わっていません。ありのままに言うと、この際日本は陳世峰を適当に理由つけて仮釈放して中国に送り返した方が母親にとってもいいのではという気がします。中国なら期待を裏切らず、速攻で陳世峰を死刑にしてくれそうだし。
もう少しこの事件について触れると、先にも書いた通りに中国側の反応は非常に大きく、自分が見た記事では殺害現場となったマンションの廊下の写真まで掲載しているほか、陳世峰が食べているであろう日本の刑務所の食事も写真付きで紹介し、必要以上に豪華だなどと書いてたりしてました。また江歌とその母親についても細かに紹介していて、「ナルト」が好きで日本語を専攻するようになったなどと書いてあったほか、貧乏ながら他の子と差をつけないように母親が大事に育てていたことなどが紹介されていました。
自分自身も現役や元中国人留学生などと交流することがあり、その親とも会うこともありましたが、やはりどの親も自分の子供が異国の地で暮らしていることについて非常に不安そうにしていることが印象に残っています。それだけに異国で、しかも完全な巻き添えで殺されてしまった母親に対しては強い同情を覚えるとともに、恐らくほかの中国人も同じような気持ちでこの事件に対する注目が強いのだろうと想像されます。
いつの世もクズが生き残り、しっかりした善良な人ほど死んでしまうというケースが非常に多いですが、だからと言ってそれが当たり前と割り切るのは違うと自分は思います。だからこそクズを殺し、善良な人を生かす努力こそもっとみんなでやるべきだと思え、この母親の活動こそまさにそうした応援すべき活動であるように思うというのが自分の結論です。