ベジータとは言うまでもなくドラゴンボールのキャラクターですが、彼は作中で主人公の悟空に執着し、事あるごとに「おまえを倒すのはこの俺だからな」というツンデレ的セリフを繰り返すほどでした。何故そこまで悟空に執着したのかというと、単に彼に一度負けたというだけでなく、同じサイヤ人、それも承久戦士であるベジータと違って下級戦士であったということから、自らをエリートと自負するプライドからして許せなかった点もあるでしょう。
とはいえ長い付き合いを経て、魔人ブウ編ではその悟空に対し気を許す態度も持つようになるのですが、そうした自らの変化に対して逆に許せないという気持ちも覚えてたりします。具体的にはバビディの洗脳を自ら受けて悟空と戦い始めた際、地球でブルマと結婚し、トランクスという息子も生まれてこうした生活もいいと幸福感を感じていたものの、かつての自分に合った闘争心が薄れていくということもはっきり感じたがゆえに、バビディのいいなりとなってでも悟空と戦う道を選んだと吐露します。
この時のベジータの状況ですが、前述のように家族もできて、しかも逆玉で生活に何不自由もないというのに、彼自身は何が何でも悟空を倒すという気持ちが薄れていることに不安を感じるとともに、「このままじゃいけない」とばかりにストレスをためまくっているのがわかります。別に悟空もバトル好きなんだから、死んであの世にいるとはいえ頼めば戦ってくれるというのに、何が何でも悟空に喧嘩を吹っ掛けなければならない、でもって絶対に打倒さなければならないと自らに対し脅迫的な感情も覚えてたりします。そのせいか、セルゲーム以降の彼は悟空への執着を忘れて幸せに生きようかなと思うこともありながら、それを拒否し続けることとなったわけです。
最終的には魔人ブウとの決戦であの有名な「お前がナンバーワンだ」という名言とともに悟空のことを認めるに至るのですが、これによって険が取れたというか、アニメ版が主となりますがベジータも表情にも少し余裕を見せるようになります。でもって、ギャグマンガへの出演も増えていくことに……。
以上の下りはまさに自分がこのところの日本人の変化について言いたいことを全部体現しており、もういっそこうした心理的兆候、具体的には高すぎる自尊心、プライドによって自らを縛り、周囲や特定の対象に対し自らが劣るという現状が認められずに幸福感を下げていたところ、現状をありのままに受け容れることでかえって幸せになるような心理を、この際ベジータ症候群(シンドローム)と呼んでいいんじゃないかとすら思えてきました。
何もプライドをすべて否定するわけじゃないですが、現状とマッチしていない理想を自らに当てはめ続けるのは絶対的に負担だと思え、「ベジータを見てみなさい」とばかりに彼を手本に現状を否定する結果、受け入れる結果を教訓として扱うべきなきがします。
にしてもやっぱベジータってすごいキャラだったという気がする。先ほどのツンデレっぷりと言い、ギャグキャラっぽいネタになるような負け方を何度もしながらも最後までああして活躍するんだし。