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2010年12月27日月曜日

就職情報の嘘と本当

 今年の大学生の内定率はかつて失われた十年と呼ばれた90年代の氷河期を越すほど悪化したと各所で報じられているのを筆頭に、不況ゆえかあちこちで週所気宇に関するいろいろな情報を目にします。それらの情報の全部とはいいませんが、私の見ている限りでもいくつか怪しいデータというか報道内容に疑問を感じる情報も少なくないので、今日はちょっと気になる就職に関するいくつかの情報について私の意見を述べようと思います。

  検証情報その一、「今年の大学生の内定率は57.6%」
 はっきり言えばこの57.6%という数字は嘘でしょう。
 日本、というより中国や韓国を含むアジア諸国は欧統計数字に感情を込めたがる傾向があり、数字に対して徹底的に冷徹になる米に比べて何かと数値がゆがむ事が多いです。特に日本においてこの就職率の数値ほど当てにならないものはありません。失業率についても同じことが言えますがなるべく数値をいい方向に持っていこうとするところがあって実態を把握する数字とはとても言い切れません。

 それではこの内定率算定のどこが問題かというと結論から言えばこの数字は、

  内定を得られた÷就職を希望する学生

 という計算式で算出されるため、全学生のうちの57.6%が内定を得られたという意味ではないのです。
 詳しく解説すると当初は就職活動を行ったものの内定が得られずにやむなく大学院に進学、もしくはまた別の専門学校に進学という選択を行った学生は母数に数えられず、そのほか就職自体をあきらめてしまった学生も加えられていない可能性もあります。

 なので実際のところ、私の勝手な予想を言わせてもらうと本当は就職したかった学生を含めれば今年の内定率は四割前後というのが関の山ではないかと見ております。


  検証情報その二、大企業はともかく中小企業は人手不足で新人が欲しい
 これも学生の内定率が悪いというニュースとともによく、「中小企業は人材が欲しいのに採用のミスマッチが……」という風に報じられますが、半分正解で半分はずれというのが私の見方です。
 そもそも大企業が採用を絞っているのは新たに新人を雇うだけの財務的余力がないということに尽きます。大企業ですら不況でそんな状態なのに、中小企業が新人を雇えるだけの余力があるかというと普通に疑問を感じずにはいられません。

 実際に私もまだ景気が良かった頃に就職活動をしてましたが、大企業と比べて中小企業は本当にいい人材を探そうとしているのか不思議になるくらいぞんざいでいい加減な募集をしているところが多く、「後で面接日などを連絡する」と言ったきりで何の連絡も来ないというのもざらでした。逆にこっちからまだ日程は決まらないのかと聞いたらもう採用は終わったと返事が来るし……。

 ただ人手不足というのは大企業を含めて当てはまる事実で、これも細かい説明は省きますが人手が足りなくて忙しいのに人員を増やせないという負の連鎖が今の日本社会の問題点の根幹であり、その原因はほかでもなくデフレにあるのが私の考えです。


  検証情報その三、企業は即戦力を欲しがっている
 わざわざ書くまでもないですがこれは事実でしょう。先にも言った通りに企業はどこも余力がなくて雇ってすぐに結果を出す人員しか求めていません。実際にはそんな即戦力な人間はそうそう転がっているわけじゃなくて言うこと信じて拾ったら実際とは違っていたというのが多いような気もしますが、社会経験のない新卒の学生にこんなことを要求する自体が間違いでしょう。
 これは逆に言えば学問に対して通常生活では役に立たないと価値を見出せなくなってきているとも取れ、無形の物を評価することができなくなるほど退廃してしまったとも取れるように思えます。今の学生が必ずしも勉強をしているとは私も言い切れませんが、私の就職活動中に大学でどのようなことをしたのかと聞く面接官はいても、どのような学問を学んだかという質問をした面接官はついぞ一人たりともいなかったという事実が如実に現わしているでしょう。

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