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2015年12月6日日曜日

平成史考察~明治大学法学部大量留年事件(1991年)

携帯料金会議 格安スマホの普及に独自サービス必要との声(毎日新聞)

 上記リンク先はちょっと古い11月26日の記事ですが、現在値下げ議論で盛り上がっている携帯料金について有識者会議の議論内容を伝えているものです。この携帯料金の値下げ議論については以前にもこのブログで書いていますが、この記事で私が注目したのは乗り換えする人への過剰な優遇どうこうではなくこの会議の取りまとめ役をしているある人物の名前でした。
 その人物というのも新美育文明治大学教授で、この人はかつて明治大学で起こったある事件で非常に有名になった人物です。最初この名前をこの記事で見た時は「どっかで見たような……」というくらいの反応しかできませんでしたが、やや気になったので検索してみたところようやくこの人の経歴を思い出せたので、折角だからここでもかつて起きたその事件を紹介しようと思います。
 それにしても、この名前だけで反応できたのは我ながら凄いと思う。

明治大学法学部大量留年事件(Wikipedia)

 その事件が起きたのは1991年の明治大学でした。当時、日本はバブル絶頂期で明治大学ほどの有名大学の学生であれば卒業後の進路は引手数多で卒業を控えた四年生の学生は誰もが有名企業の内定を得られ、後は卒業を待つだけの身でした。
 そんなバラ色の将来が確約されのんびり過ごしていた学生に激震が走ったのはこの年の3月。この時、明治大学法学部は四年生の学生257人に対し留年させることを決定し、このうち147人は新美教授が担当する必修科目「債権法」のみが未修了であったことから卒業が認められませんでした。

 この発表に対し慌てたのはもちろん学生たちで、卒業後の進路も決まっていた状態でこの通知が来たもんだからまさに青天の霹靂のように受け取り、多くの留年学生が新美教授に対し採点の再考、つまり単位を出して卒業させるよう求めたそうです。しかしこうした学生たちの訴えに対して新美教授は「あくまで厳正な採点の結果」であるとして突っぱね、ならばとばかりに学生が詰め寄った小松俊雄法学部長も明治大学の「独立・自治」の建学精神を引用し、新美教授の判断を尊重するとして卒業を認めませんでした。

 一見すると新美教授は厳しい採点を強行して多くの留年者を出したように見えますが、実態はそうではなかったようです。問題となった「債権法」の授業は二年生時から履修できる科目で、四年間で卒業する学生は都合、三回履修する機会がありました。しかし留年した学生らはその三回の機会に未履修、または落第し、更には夏に行われる再試と、卒業間際の三月に行われた特別試験でも満足な成績が残せませんでした。
 採点を行った新美教授は最後の特別試験の結果を鑑みてさすがに留年者数が多過ぎると感じ、試験を難しくし過ぎたのかとも感じたそうです。しかし改めてリポートなどで各学生の学力を確認するとやはり学生個人らの学力が不足していると思え、厳しい判断になることは承知の上で大量の「不可」を出すことにしました。

 この決断について新美教授は取材に対し、簡単に内定が得られる時代もあってか最低限の勉強すら行わない学生が増えていると話したそうです。学会内でもこの新美教授の決断に対し、授業への取り組みに対し警鐘を促してくれたなどと好意的な意見が多く集まるなど歓迎され、事件が大きく報道されるにつけ大学入学後は勉強しなくなる学生をそのまま放置して卒業させることに問題があるなど大学教育全体を問う議論へと発展していきました。

 ここから私の所見となりますが大体90年代中盤から後半に至る間、猛勉強して大学入った後は何も勉強しない学生というのがちょっとした社会問題になり、「分数の出来ない大学生」などといった本も出版されていました。実際に昨日会って話聞いた人も午前中に大学行って麻雀のメンツ集めるとそのまま雀荘へというのが普通で、授業なんてほとんど出なかったと述懐しており、こういってはなんですがやっぱり自分の世代とは違ってたんだなぁって気がします。
 この新美教授の行動はその後の世論を考えるだに、勉強しない学生に対する警鐘としては最初期に当たるものだったのではないかと思います。少なくとも一回こっきりのワンチャンスにめちゃくちゃ難しい試験で振り落すということはしておらず、むしろ何度もチャンス与えた上での決断ですから至極真っ当な判断で教育者としては実に立派な態度と言えるでしょう。それだけに最初の有識者会議も仕切っていると聞いて、この件でこの人が関わっているというだけでなんとなく良くなるんじゃないかという期待感が持てます。

 なおこの記事を書くに当たって明治大学出身の友人に、「この人知ってる?」と振ってみたところ、「直接授業を受けたりとかはないが、伝説となっている教授」だと返信が来ました。

  おまけ
 私が学生だった頃、よく大学教授からは「最近の学生はちゃんと授業に出席する」とよく言われ、先ほども言った通り時代というのは大きく変わってきており大学に入って遊び放題する方が今は少数派なのかもしれません。さらに、私はその中でも特別授業に出席する方で、卒業単位は124単位で足りたけど興味ある授業に片っ端から出てたためか最終的には160単位を数え、単位認定されない授業も含めれば180単位くらいは取っていたように思います。なのであんま、大学でもっと勉強したかったと思うことはないな。

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